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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第4章 いわゆる状態変化という奴です。
60/165

60. 第五種目:少年漫画だとキャラが剣になるのは少なくない気がします。

「さあ第五種目の時間だ! 現時点での差を考慮してここからは取得ポイントがグッと増えるぞ!」


 そんな嬉しい宣言の後、五番目に呼ばれて『3』の小屋に入る。

 次に入ってきた相手チームは様々な武器を持っている。剣と槍と斧と槌に、棘付き鉄球が繋がったあれはモーニングスターっていうんだっけ。

 だが驚いたことに全員女性だ。筋肉は引き締まっているが、斧とかでかい槌を持てる程には見えない。流石ファンタジー。


 そしてスタッフがくじを持ってきたが、今回は棒が箱から出ている。

 五人で一本ずつ持ち同時に引くと、棒の先端が俺とヨルトスのが赤く、他三人が白くなっていた。見事に男女で分かれたな。

 相手チームも剣と槌を持っていた人のが赤だった。


 スタッフがヴラーデの近くに寄り、何か会話を交わす。声が小さくてよく聞こえないがその後にヴラーデが床に寝転がったことから変化に関する内容だったのだろうか。

 またスタッフの操作で壁から謎の腕が出てくると、最初にヴラーデの姿勢を整える。今のヴラーデは仰向けで直角に曲げた肘を腰に当て、手を握り足先をピンと伸ばしている。


「んっ……ふあ……」


 続いて体を粘土のように捏ねられ始めたヴラーデが気持ち良さそうな声を出す。まあ傍目マッサージだしな。

 そんなヴラーデの形が少しずつ変わり始める。胴の肘を当てているところから上を頭を含めて一つの少し潰れた円柱状に、手は指がなくなった。残りは薄く長く伸ばされていき、踵がなくなって先端が尖る。

 捏ねていた腕が離れるとそこには一つの剣。柄頭はヴラーデの頭で鼻が省略された表情が動いている。鍔は曲げていた肘から先。握りと剣身が胴と足だ。

 服や体の凹凸は全くなく、平面化して貼り付けたようにも見える。唯一髪を結んでいた部分がアクセサリーっぽく揺れている。

 また足の部分に両足アピールなのか線が入っているが、剣身そのものに切れ込みがあるわけではなさそうだ。あと靴の色が先端に反映されてるから剣のデザインとしては微妙な感じになっている。


「気分はどうだ?」

「ちょっと体の形が変わっただけで普通に固められた感じね」


 『普通に』と言えるほど固められるのに慣れてしまったらしい。そんなに固められてたのか?

 一応その日の種目が終わった後は時間があるので自由行動になっていて、俺も色々回っている。


 続いてロティアが同じように仰向けになるが、ヴラーデと違うのは肘も曲げておらず、指先まで伸びている。気を付けをしたまま横になったかのようだ。

 そしてまた謎の腕がロティアを捏ね始める。今回はただ細長く伸ばされていき、最終的に鞭が出来上がった。

 ヴラーデの時と違うのが顔は分かるが、それより下が細長すぎて体のどの部分がどこにあるのか分からない。一応肌色や来ていた服の色合いになっているんだが……うん、やっぱり分からん。


「早く私で何か打ってみてほしいわ~♪」


 ロティアは変態度が増えてしまったようだ。


 小夜は立った状態で両手を上に伸ばし、両手で丸を作る。頭も後ろに倒してまるで丸からその向こうを見ているようだ。

 そのまま上半身を前に倒すと小夜の姿勢を変えていた腕とは別にもう一本やってきて重心が前に寄った体を支える。上半身を倒したことで顔が正面に向き直ったな。

 姿勢が整ったら捏ね始める。両足がくっつき、お腹には何かを取り付けているのが見えた。体は小さくなっていくが腕が太くなり、両肩から手首までくっつくという意味不明な状態だ。

 小夜の両手で作った丸から体を捏ねていた腕の一本が中に入り、恐らく外側にある腕とで挟んで形を整えている。

 最後に両肩がくっついたことでどう生えてるのか分かりづらくなった頭を薄くして、円盤というよりは凸レンズに近い形になった。

 完成したのは銃。頭はスコープだろうが透明にはなっていないので、小夜自身が照準を合わせてくれるのだろうか。横から見ると腕の先に掌がないのだが、正面から見ればその面影が無理矢理ながら残っている。

 そしてお腹に取り付けられていたのはどうやら引き鉄だったようだ。そこに付けなきゃいけないのは分かるんだが、あと少しずれていたら……これ以上は言うまい。


「まさか、私、自身が、銃に、なる日が、来るなんて、思いません、でした」


 そりゃそうだろよ。

 次は俺たちか、と思ったら相手チームの変化を始めた。赤引いた人は変化しない感じ?

 その予想通り、相手チームで白を引いた人がその武器に変化させられた。刃の両面が横顔になった斧、足首より先が刃になった槍、跳ねた髪が棘で頭が鉄球になったモーニングスター。

 ……頭の扱い酷くねえか。モーニングスターへの変化時に首が細長く伸ばされて鎖状に形作られるのはちょっと引いた。

 一方俺たち赤組は謎のジュースを飲まされるだけだった。


『お待たせ! ちっと変化に時間かかっちまったな! 第五種目は武器化、題して……『マスター、私を使って?』……だ!』


 タイトルだけ何故か女声が聞こえた。最早タイトルじゃなくて台詞じゃねえか。

 後で聞いたらわざわざ女性に変身して顔を赤くして上目遣いで言ってたらしい。何がしたいんだあの人。


『ルール説明です。先程白を引いた人にはお好きな武器になっていただきました。赤を引いた人にはその武器を使用して戦闘を行っていただきます』


 まーた戦闘かよ。


『その趣旨上、他の道具や武器、相手への魔法の使用を禁止とさせていただきます』


 んー、それだと俺の【空間魔法】なら相手を閉じ込めるのはダメだけど自分の防御とか足場としてなら――


『補足するが、壁や床に細工したり、第三者や空気・空間といった相手に影響がありかねないのも全部ダメだぞ! 例外として防御は構わねえがすぐ消せよ! もちろん変化した武器を使用するためならオッケーだ!』


 俺の戦術が大体封じられてしまった、残念。防御用に出したのを放置しようとか思ってたんだが。


『安全のため、赤を引いた人には外見は変化しませんが変化している状態になる薬を飲んでいただきました』


 ん? 変化してないのに変化してるってどういうことだ?


『つまりだ、『変化の遊戯場(ここ)』じゃあ石になろうが砕けようが生きてられんだろ? あの薬には体は変化させねえがその状態にする効果がある。簡単に言えば死ななくなるっつーことだ』


 死ななくなるというところだけ聞けばとんでもないことだが……


『まあここでしか使えねえしここだと変化しとけば死なねえからこういう時にしか作ったり使ったりしねえんだけどな』


 そうなんだよな。だから実はそんなに凄いとは思ってない。

 因みにパンフレットのどっかに書いてあったんだが、変化も一日は続かず戻る時に体の時間が一気に進むから不老は無理らしい。


『ルール説明に戻りますね。先に相手を二人共戦闘不能にしたチームの勝利です。ポイントは勝利チームの残り人数とダメージ量で計算します。以上、ですかね。皆さん頑張ってくださいね』


 ルール説明が終わってすぐ戦闘開始……とはいかず、まずどの武器をどっちが使うか決めないといけないので、床に落ちてる三人も含めて会議の時間だ。


「まず、ヴラーデは剣をいつも使ってるヨータでいいでしょ?」

「そうだな」

「そ、そうね」

「で、ヨータの利き手が埋まるから私はヨルトスに使ってもらった方がいいでしょうね。思う存分振るいなさい」

「……分かった」


 意外とあっさり(ヴラーデ)(ロティア)が決まった。


「問題はサヤちゃんよね。二人共銃は……」

「無理」

「……俺もだ」


 流石のヨルトスも無理か。まあ銃が普及してない世界だし仕方ない。

 普及してないのに変化のレパートリーにあったのはルオさんの仕業だろう。


「あ、あの」

「ん?」

「私、引き鉄を、引かれなくても、弾を、発射できる、みたいです」


 そう言って銃口を光らせると魔力弾がいくつか発射された。マジか、引き鉄の意味は何だったんだ。


「しかも、私の方で、向きを、少しだけ、変えれるので、大体の向きを、合わせてくれれば、自分で、狙い撃ち、できます」

「じゃあ左手で適当に持ってればいいわけか」

「はい」

「それならヨータが使ってあげなさい。全く経験がないわけじゃないでしょ?」

「そりゃそうだが……」


 子供の頃に水鉄砲で遊んだり、祭りでたまに射的をやる程度だ。


「なら決まりね」


 自信はないが、小夜が自分で撃ってくれるならいいか。

 無事に決まったところで剣と銃を拾おうとして気付く。


「なあ、これ普通に持っちゃってもいいのか? 特にヴラーデは、その……胸、だぞ?」

「ふぇっ!?」


 そう、着ていた服とかが模様になってるから逆に胸だって分かっちゃうんですよ。

 ヴラーデも今その事実に気付いたのか顔が赤くなった。


「大丈夫よ。持たれるところだけ感覚がなくなってるから。……勿体無い」

「そうなのか?」


 ロティアの余計な呟きは無視して二人に問い掛ける。


「確かに、上半身の感覚ないかも」

「私は、足の、感覚が、ないです」

「そうか」


 なら安心……


「じゃあ持つぞ……小夜から」


 ……なわけない。


「ヘタレ」

「うっせ」


 相手に感覚がなかろうと胸だと分かってるとドキドキすんだよ悪かったな。

 (さや)の足に触れ、左手で持つ。感触は普通に硬く元が人肌とは思えない。


「ど、どうだ?」

「その、持ち上げられてる、感じは、するん、ですけど、足を、持たれてる、感じは、しない、ですね」


 とりあえずこっちは一安心。


「ヴ、ヴラーデ……行くぞ?」

「え、ええ、来なさい」

「早くしなさいヘタレ」

「うっせ」


 チラッと見たら既に(ロティア)がヨルトスに持たれている。

 意を決し、(ヴラーデ)の胸……ではなくその横の肩から肘までの腕を触ってみる。


「ヘタレ」


 さっきからロティアがうざい。


「ヴラーデ、大丈夫か?」

「ええ、全く触られてる感じがしないわ」

「よし……持つぞ」


 緊張からか唾を飲み込む。一度深呼吸して心を落ち着け、改めて右手で(ヴラーデ)の背中から持つ。……指が胸に……!


「わっ」

「っ! 危ねえ……」


 持ち上げたところで小さい悲鳴が発され手を放しそうになるのを必死に耐える。


「ど、どっか触っちゃったか?」

「い、いえ、持ち上げられてびっくりしただけ。サヤと一緒で持たれてる感じはしないわ」

「そうか、良かった。ところで小夜は自分で弾を撃てるが、ヴラーデとロティアは……そうだな、魔法を使えたりしないのか?」


 胸に触ってるという事実を隠すように話題を変えることにする。


「試してみるわ。[火球(ファイヤーボール)]」


 ヴラーデが魔法名を唱えると火の玉が出た。ただし、鍔となった右手から。


「うぉっ!?」

「きゃっ!」


 幸いこっちには向いてなかったので当たらなかったが、剣身から出るものだと思っていたので驚いてしまい落としてしまう。


「わ、悪い。大丈夫か?」

「ええ、大丈夫。足から全身に衝撃が伝わってきたけど痛くはなかったわ」


 再度拾いながらそんな会話をする。一回持ったからか胸を触ることへの心配は薄れていた。


「とりあえず、手から出すのはやめてくれ」

「あっ、ごめんね? いつも杖から出してたから……」

「足先から出せないか?」

「う~ん……慣れてないから難しいかも」

「そうか……」


 せっかく魔法を使えるんなら有効利用したいところだが……


「陽太さん」

「なんだ?」

「【付与】を、使ってみる、というのは、どうでしょうか」

「ん? ああ!」


 その手があったか。


「よし、ヴラーデ、また魔法を使ってくれ、飛ばさなくていいから」

「分かったわ」


 今度は鍔から小さい火が出る。それを使って(ヴラーデ)にその魔力を付与する。

 【付与】で自分が使えない魔法を付与する場合、使える人が使っている時の魔力を借りれば付与できる。

 【火魔法】を付与された(ヴラーデ)の剣身が炎に包まれる。【付与】は生きているものには使えないが変化した時は対象にできるのか。


「熱いとかはないか?」

「ん、大丈夫。むしろ温かくて気持ちいいわよ。上半身もこうしてほしいくらい」

「それはやめてくれ」


 俺の右手が炭になってしまう。

 同じように(ロティア)も水を纏う。ひんやりして水浴びしてる気分だそうだ。

 異様に長かった準備が終わりようやく開始。向こうのチームが待ちくたびれていたのかこちらを睨んでいた。ごめんなさい。

 そんな相手チームは槌を持っていた人が斧を両手に、もう一人が右手にモーニングスター、左手に槍を持っている。


「ふっ!」

「危ねっ」


 最初にいきなりモーニングスターの鉄球が飛んできたので【空間魔法】で防御。生首が飛んでくるの怖えよ?

 お返しに銃を向けると勝手に弾が発射されていく。この状態でも小夜は流石の命中率を誇っている。

 しかし弾は斧と鉄球に防がれる。どっちも顔だから申し訳なくなってくるな。


 スパァン!


 そこにヨルトスが鞭を振るうが回避され床を抉りつつ良い音を立てる。最早しなやかな剣だな。


「んんっ……やばい、これは一発でクセになったわ」


 同時にロティアが床を打った衝撃で何かに目覚めそうだ。

 それは置いといて銃を向けつつ俺も接近、近付いたところで剣を振るうと斧に防がれる。


「やあぁぁっ! あついあついあつい!!」

「えっ? あっゴメン!」


 斧の悲鳴に持ち手が戸惑い、その隙に銃をがら空きの体に向ける。


「小夜、強めで頼む」


 若干のチャージ後、威力が上がった弾が炸裂する。


「あぁっ!」


 その衝撃で少し浮いた体を剣で斬り裂く。血が出ないとは親切設計だな。


「ヴラーデ、人を斬るってどんな感覚なんだ?」


 戦闘中だがふとした疑問を尋ねてみる。


「ん? 一瞬だったからよく分からなかっ――ヨータっ! 後ろ!」

「えっ? ……ぐっ!」

「あっ!」


 後ろを振り向いて何かが飛んできたのを確認したが一歩遅く、回避しようとして左肩に何が刺さる。

 その痛みに(さや)を落としてしまった。今回も苦痛をカットしてくれればいいのに。

 相手チームのもう片方が槍を投げていたようだ。その周辺の床や壁が抉れまくっているがどれだけ鞭を振るったんだ。


「ヨータ! 回復するから傷に当てて!」


 まず力が上手く入らない左手でなんとか剣を持ち直し、右手で槍を引き抜いて適当に放り投げる。そして再び剣を持ち替えて鍔を傷に当てるとヴラーデが【回復魔法】を唱えて治してくれた。


「くっ、仇も討てないというの……?」

「あら、余所見だなんて余裕ね」

「えっ? ……しまった!」


 俺が回復するところを見ていたのか悔し気に呟くが、その体に鞭が巻き付く。

 それをヨルトスがジャイアントスイングのように思いっ切り振り回し、かなり速度が上がったところで壁にぶつけて勝利が決まった。




「いつもより大分時間がかかったが全試合が終わったようだな! 第六種目はまた明日の朝からだ!」

「今回の武器化でアトラクションにないものもありましたが只今からリストに加えますので是非皆さんも体験してみてください。それではまた明日!」


 時間が押してるといってもまだ夕食には余裕がありいつも通り自由行動になったんだが、少し疲れてるしたまにはいいかと俺は宿に戻り、一先ずベッドに寝転がることにした。

次回予告


陽太  「すー……すー……」

小夜  「陽太さんの寝顔……」

ロティア「ただいまー!」

小夜  「しーっ」

ヴラーデ「どうしたの? ……あら、寝てる」

ロティア「今のうちに何に変化させとけばいい?」

ヴラーデ「やめなさい」ズビシッ

ロティア「にゃっ」

陽太  「すー……すー……」

小夜  「次回は、二人目の、ゲスト、だそうです」

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