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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第1章 チート魔女に召喚されました。
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6. 冒険者になりました。

 翌日、今日は冒険者に登録しようということで、現在ルナと近くの町へ移動中だ。ただし訓練の一つとして【身体強化】の練習も兼ねているのでなかなかのスピードを出している。

 この【身体強化】には魔力を使うのだが、魔導具を使うときの魔力の送り方と似ていて自分の体に魔力を行き渡らせることは簡単にできた。だがこちらはそれを維持する必要があり、それがまた難しい。


 因みに訓練する予定のスキルは【身体強化】の他に【魔力操作】【剣術】【体術】【察知】【隠蔽】だ。

 この【察知】というスキルは、周りの気配や魔力を感知するためのスキル。逆に【隠蔽】は自分の気配や魔力を隠すためのスキル。ついでに【魔力操作】でも魔力の隠蔽はできるそうだ。

 そして【剣術】と【体術】はそれぞれレベル5であるルナが直接指導するらしい。他もルナに教わっている以上この『直接』というのがなんだか怖い。

 ……召喚魔法陣による成長率増加があると言っていたがどこまで行けるだろうか。


 なお事前にルナに【自動翻訳】の魔導具をもらっているので、言葉の心配はない。これはルオさんが持っていた食べるタイプではなく紫色の綺麗なピアスで左耳に着けてある。異世界に来てまで耳に穴を開けるとは思わなかった。




 しばらく移動するとラーサムという町に着いた。位置的にはルナの家から少し南。

 町は石壁に囲まれていたが、ルナ曰くほとんどの町はそうらしい。魔法があれば作るの楽そうだしな。

 壁がある以上やはり門があり、そこにはもちろん門番。小説だとここで身分証がどうのこうのというイベントが起きるところだが、ルナの一声であっさり通してもらえた。なんか物足りない気もするが面倒が起きるよりはいいか。


 町に入ると、小説や漫画、ゲームでしか見たことのない景色を実際に見てなんか感動してしまった。建物もそうだし、人の服装もそうだし、時々獣人もいる。エルフの姿は見えないがどこかにいるだろう。

 獣人を実際に見たら獣耳はどうなってるとか人間の耳の箇所はどうなってるとか尻尾はどう生えてどう服の邪魔にならないようにしてるとか気になってきてしまった。だがそんな生物学的興味を引かれていても迷惑なだけなので一旦打ち切る。


 昼食にはまだ早い時間なので先に冒険者登録をすることにし、ルナの案内でギルドへ。

 いかにもな建物に入ると、それまでざわついていた中の人たち――冒険者だな――が一瞬だけこちらを見て静まり返る。そして小声で話し始める。身体能力と共に視覚や聴覚も強化されているのではっきりと聞こえている。


「おい、ありゃあ誰だ?」

「お前、『月の魔女』を知らねーのか」

「あの人が『月の魔女』……初めて見たわ……」

「一緒にいる男は誰だ?」

「あの『月の魔女』が人を連れてくるとは珍しい……」


 ルナは『月の魔女』と呼ばれているようだ。由来を聞いたら以前ある勇者が『ルナ』という言葉が『月』を意味すると言ったのが定着したかららしい。……なんで最初に会ったときにそれじゃなくて『チート魔女』の方を言ったんだろうか。

 人連れが珍しいというのは、ルナも冒険者なのだが勇者への協力や送還魔法の研究に対する報酬のおかげで稼ぐ必要がなく、色々な町に行くのは買い物や素材の調達がほとんどで、それに複数人もいらないと一人で行動することが多いからソロのイメージを持たれているんじゃないかとのことだ。


 そしてルナに連れられて空いている受付へ。犬の獣人のお姉さんが営業スマイルで、


「ラーサムのギルドへようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 と定型句を言い、ルナが返す。


「この人の冒険者登録をお願い」

「かしこまりました」


 まず登録申請書を受け取る。名前・種族・性別・年齢・出身地・得意スキルなどの項目があるが最悪名前だけでもいいとのことだ。

 因みに【自動翻訳】だが読み書きにも適用される。書くときは自分の思っているのとは違う動きをするのでなんか変な気持ちだ。

 名前を書くが『ヨウタ・アサクラ』と書いたつもりが『ヨータ・アサクラ』になっていた。ルオさんに名前を呼ばれたときに感じた違和感はこれか。発音が優先なのか? 言葉って難しいね。

 後は種族・性別・年齢を書いてルナが出してくれた大銀貨と共に提出。カードの発行中に説明を受ける。


 冒険者のランクは基本1から10だが、10+という特別なランクがあり、勇者への協力などの実績があるルナはこれだそうだ。他にもいるらしい。

 ランクによる処遇はそれぞれに任せていて、平等に扱うところもあれば低ランクお断りのところもあるそうだ。

 依頼にもランクがあり一つ上か下までしか受けることができない。そして後述の理由でランクが2・5・8のときは一つ上も受けられない。

 依頼には人数と一人あたりのポイントも設定されており、依頼に成功するとこの二つの積を実際に受けた人数で割った数のポイントがもらえ、ランクが違う人はさらに五割増減し、最後に小数部分を四捨五入。ややこしいな。

 例としては、一人100ポイントで二人と設定されたランク4の依頼をランク3・4・5の三人で受けると、3の人は100ポイント、4の人は67ポイント、5の人は33ポイントもらえることになる。

 失敗した時は五割の増減が逆になる。さっきの例だと3の人は33ポイント、4の人は67ポイント、5の人は100ポイント。

 この制度があるためギルドにはパーティのシステムはない。ただし、実質パーティと化した冒険者は多いそうだ。

 このポイントが一定以上になると昇格、一定以下になると降格、その都度所持ポイントはリセット。ランクが上がるごとにこのラインは厳しくなる。

 複数の依頼を受けるのは原則不可。ただ緊急依頼など例外はあり。この緊急依頼もそうだが、人数が設定されなかったりボーナスポイントがあったりランクがいくつ以上になってたりといった特殊な設定がされることや指名依頼もある。詳しくはそのときに説明するそうだ。

 ポイントを貯めたうえで演習・試験を行うランクがあり、3に上がるには魔物の討伐演習、6に上がるには対人試験、9に上がるには実力試験を行う。具体的内容はそのとき次第。ランク2・5・8に制限があるのはこのためだ。

 ポイントは一人あたりだが、報酬は総額が設定されている。お金以外になることもあり山分けは自由だがその際のトラブルにギルドは関与せず責任も持たない。それ以外のトラブルも大体そうらしい。因みに失敗時は報酬の五割を払わなければいけないが、これも受けた人で合わせてその額になればいい。

 その他ペナルティなどもあるが予想外なものはなかったので普通にしてれば大丈夫だろう。


 因みに冒険者やギルドといった概念も初代勇者の手によるものだとか。初代勇者、またの名をご都合主義要員、大変便利だなおい。他の勇者も仕事しろ。


「以上となります。ご質問はありますでしょうか?」

「いえ、大丈夫です」

「ありがとうございます。それではこちらがカードになります。再発行時は二千ブルの手数料が必要になりますのでご注意ください」


 礼と共にカードを受け取る。書類に書いた通り『名前:ヨータ・アサクラ』『種族:純人』『性別:男』『年齢:16』と書いてあり、『ランク:1』『ポイント:0』というのもある。そういえば俺の誕生日はまだだったんだがこの世界だといつになるんだろうか。後でルナに聞くか。


 そしてこれまた定型句を受けて受付を離れ、ルナと一緒に昼食のために外に出る。

 昼食ついでに色々と店を見て回ったが食べ物は日本で見られるようなものもたくさんあったし値段を見てもブルと円はほぼ同価っぽい。あと箸とかも普通にあった。




 再びギルドに戻ってくる。初めての依頼を受ける時が来たのだ。といってもランク1・2は何かの手伝いだったり町から離れずに採取したりと危険の少ないものばかり。まあ討伐演習の前なら当然か。

 ルナと相談した結果【身体強化】の練習を兼ねて運搬の依頼を受けることにした。


 結論から言って、苦労はなかった。依頼人も気のいい女性だったし、低ランク向けなものだけあってそこまで重労働でもない。失礼だが身体能力が上がっている俺には役不足な感じだ。おそらく【身体強化】を使わなくてもこなせただろう。むしろ魔力を使う分疲れた気もする。もちろんそんなことは口に出さないし練習のためにも【身体強化】は使うのだが。

 因みにルナは依頼人と仲良く話していた。付き添っといて手伝う気なしかよ。別にいいけど。


 ギルドに戻り、依頼人のサインとギルドカードを提出。報酬金と共に返ってきたカードは『ポイント』の数字が増えたのみ。先はまだまだ遠い。

 空が赤くなり始めていたので他の依頼は受けず帰ろうとするが、


「あら、『月の魔女』が男連れなんて珍しいわね」


 後ろから声をかけられる。


「何の用かしら、イキュイ」


 ルナが振り返りながら言う。俺も一緒に振り返ると、やや背の高い美人が立っていた。耳が長いしエルフなのだろう。ウェーブがかかったやや長めの髪は黄緑というよりは緑が薄く混じった黄色で、目は濃い青。


「いえ、別に用はないのだけれど、普段一人で行動してる『月の魔女』が人を連れてるなんて珍しいと思っただけよ? しかも異性なんて」

「陽太、騙されちゃダメよ。こいつこんなんでも百オーバーだから」


 美人に見とれていたところに名前を呼ばれハッとなる。この見た目二十代の美人も百歳以上か、なんか俺が会った人高確率で年齢詐欺な気が……ってあれ? エルフって確か寿命五百年って言ってなかったっけ? だったら詐欺でもなんでもなく妥当じゃないか?


「あら、エルフなのだから当たり前じゃない。それに、あなたがそれを言うのかしら?」

「ぐ……」


 俺の考えを裏付ける発言をし、さらにルナに反撃する。三百年以上生きているルナにダメージが入ったようだ。


「……そんなこと言って、昔調子に乗ってて私に勝負を挑んだ挙句ボロボロに負けたのはどこの誰だったかしら」

「な……それは今関係ないでしょう!?」


 今度はルナの攻撃にイキュイさんが顔を赤くする。黒歴史なのだろうか。


「確かにあの頃は……でも、感謝もしてるのよ? あれがなかったらこうしてギルドマスターなんてやらずに今も相変わらず一人で突っ走ってただろうし」


 イキュイさんがしゅんとなっている。この口喧嘩はルナに軍配が上がったようだ。

 ていうかギルドマスターだと?

 ところで周りの注目を集めていることには気付いてないのだろうか。俺もそのギャラリーに混ざってしまいたい。


「ま、いいわ。これからしばらくここに通うことになるからよろしくね。ほら、行くわよ陽太」

「お、おう」


 ギルドから出ていったルナについていこうとするが、


「待ちなさい」

「?」

「なんであの人があなたに入れ込んでいるのかは知らないけれど、つらくなったらいつでも私のところに来てね」

「は、はい……?」


 曖昧に頷いてしまった。なんか同情というか、憐憫というか、そういったものを感じる。え、ルナに何かされるの俺。

 少し逃げるようにギルドを出てルナと一緒に帰る。帰りももちろん【身体強化】の練習だが、依頼の時でも使ってたせいか家に着く頃には息も絶え絶えになっていた。




 夕食後、回復してきた俺はルナによる訓練を受けることになるが、これがひどい。【剣術】【体術】の訓練なのだが教え方なんて知らないというルナとの実戦形式オンリー。ひたすらルナ相手に攻撃を当てようとしたり逆に回避や防御をしようとしたりするのだが上手くいくわけもなく。そしてダメージが溜まってきたり魔力量が少なくなってくると【回復魔法】で回復させられ再開。……無限ループって怖くね?

 アドバイスはしてくれるのでマシではあるのだが被虐趣味なんて当然ない俺にはつらい。たすけてギルドマスター。

 因みに訓練の場所は家の地下。魔法なしでも頑丈にできててそれに魔法を合わせているとかなんとか。


 解放され風呂に入った後ベッドに入ったらすぐに寝てしまった。

次回予告


陽太「次回は俺が冒険者として依頼をカッコよく解決する様子を――」

ルナ「カットして討伐演習よ」

陽太「ねえ、俺主人公だよね? 活躍させて?」

ルナ「新キャラも出るわよー」

陽太「聞けよ」

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