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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第4章 いわゆる状態変化という奴です。
53/165

53. 予選:絵の中で生き残りましょう。(前)

「レディ~~スエ~~ンジェントルメ~~ン! 第一回『変化の遊戯場』新春大会の開催だあっ!」


 司会の言葉に盛り上がる選手と観客たち。司会は【風魔法】の魔導具で拾った音を大きくしているらしく、この巨大コロシアムでその声が届かない場所はない。ぶっちゃけマイクだ。


「司会と実況はこの俺、『変化の遊戯場』オーナーのマサシ・センザキがお送りするぜっ!」


 ホント何やってんだろうなあの人。つーかテンション高え。


「そして解説はこちらっ!」

「どうも、技術協力のルオ・シフスです。よろしくお願いします」


 今度はざわつくギャラリー。『あのルオ・シフスが……?』といった声も聞こえる。

 当然俺はルオさんが『変化の遊戯場』に来ていたのは気付いていたし、さっきも会ってきたがまさか解説担当とは。大丈夫だろうか。

 あと会うついでにキュエレのサポートとユニークスキルは禁止ということで、スマホは没収、【繋がる魂(ソウルリンク)】も魔導具で封印された。まあ仕方ないとは思うんだがなんか納得いかん。


「まず簡単に概要を説明しよう! 各種目ではランダムに決めた変化を利用したゲームを行う! 基本的に二チームずつで対戦し、成績に応じてポイントゲット! もちろん対戦相手に勝てばポイントは多く、負けても僅差ならその分多く貰えるぞ!」


 なるほど、負ければ終了のトーナメントとかじゃなくて良かった。


「第四種目と第七種目が終わった時に一定順位内にいないチームは残念ながらリタイアだ! でも負けたからってすぐに帰らない方が身の為だぜ!」


 そう言うってことは敗者復活戦があると考えていいのだろうか。というか七種目あってまだ終わらないのかよ。


「第八種目以降はトーナメント形式で競い、優勝したチームには……ここの永久無料チケットだああああっ!!」


 正志(まさし)さんが掲げる五枚のチケットを見て大盛り上がりの参加者たち。まあここの入場料そこそこ高いし欲しいよな。仲間内だとヴラーデが大騒ぎだ。


「皆っ、勝つわよ!」

「お、おう」


 こちらに振り返ったヴラーデは迫力ある表情で、燃えるオーラが見えた気がした。


「早速第一種目! ……と言いたいとこだが、こちらの想定以上の参加人数だったので予選を行う! セット準備!」


 参加者集団と正志さんたちの間に白い板のようなものが下から出てきた。


「それでは前の方からこの中に入ってくれ! ……一旦ストップだ! スタッフよろしく!」


 ぞろぞろと二割ぐらいが入ったところで正志さんが止め、板が高くなる。

 どうやら予選は絵画封印のようだ。さっき入っていったと思われる人が白黒で描かれて黒線の足場に立っているように見え、自由に動いている。

 四回目で俺たちの番が来た。中は白黒の世界で、黒線の足場は奥に無限に続いている。体も元の色に合わせた白黒のみ。外の世界は見れるが手を着けれたので出れなさそうだ。体は普通に動く。

 五回で全参加者が一枚の大きな絵に入ると、見える外の世界が大きくなっていく。いや、こっちが小さくなってる?

 拡大か縮小か、それが止まると正志さんが説明を始める。


「予選は題して『ホワイトアンドブラック~消しゴムの恐怖~』だ!」


 何そのネーミング、確かに白黒世界だけども。いやそれより消しゴムってまさか……


「今こいつらには鉛筆で描かれた絵になってもらった。それを消そうとする消しゴムから逃げてもらうぞ! 消されたら消しカスという結末が待っているから頑張って逃げてくれよな!」


 やっぱりそういうことか……消しカスは嫌だな。因みに鉛筆と消しゴムは例によって過去の勇者が開発したがこの世界ではあまり使われていない。中世らしくペンが主流だ。


「どれだけ奥に逃げても意味はないから注意だ! むしろ奥に行き過ぎてこちらが判断しにくいほど小さくなると失格だから気を付けてくれ! 因みに今の選手たちの身長は平均十センチくらいだぞ!」


 まあ遠近感なんて消す側には関係ないからな。そしてこっちが小さくなってたみたいだが、考えてみれば等身大の絵を消すってなかなかつらいよな。


「一人でも残っているチームが四十になるまで続け、その四十チームが予選突破だ! また競技に集中してもらうためこちら側の声や音は選手に届かなくなるから悪口とか言いたい奴はチャンスだぞ! これは本選も同様だ!」


 ちょっと待て何を吹き込んでるんだおい。

 因みに参加者は千人くらい、約二百チームといったところか? そこから四十チームだと二割しか生き残れない。


「もちろん必要な連絡はちゃんと届けるから選手諸君も安心してくれ! それじゃあ行くぞ! スリー! ツー! ワン! スタート!!」


 開始の合図と同時に騒がしかった外の音声が途絶えるが静かにはならない。中の声は聞こえるみたいだ。

 外の世界で巨人に見えるスタッフが消しゴムを持って上の方に消しゴムを付けると、


「!?」


 一気に下ろした。足場と巻き込まれた人が消失し、周りが一瞬静かになった後騒然となる。

 ……あれ、消しゴムってこんな簡単に消せたっけ?


『す、すいませんっ』


 ルオさんの声が聞こえてきて、一度場が静まる。


『伝え忘れていたんですけど、今回使用する消しゴムは擦らずに一度で消せる強力なものを使用してます。マサシさんからは『面白いから今消えた奴の復活はなし』だそうです』


 うっわひっでぇ。

 当然起こる暴動。しかし絵の中に閉じ込められている以上できることもなく消されていく。一度こちらにも来たが場所を予測して避ける。消しゴムが境界面に触れると対応する箇所全てが消えていくが実際に見えるわけではないので消しゴムの位置から予測するしかない。

 消しゴムからはパラパラと消しカスが散る。少し黒く染まっているのが消された人か? 人の原形がなければ元の人の柄になることもない、本当に元々人だったのか怪しい物体になっている。……あんな姿にはなりたくねえな。


 消しゴムは今最下層を狙っているので【空間魔法】を使って足場がさっき消えた箇所から上に行こうと思ったのだが、


「あれ、透明じゃない……?」


 出した足場は黒線で囲まれ、薄い黒で塗られている。


「まあいいか、上行くぞ」


 五人で足場を渡り一つ上の階層――面倒だから三階と呼ぶ――に移動。他の人もついて来ようとしたが足場を消して落とすと消しゴムに巻き込まれた。ついでに四階の人を一部閉じ込め、一気に消されるのを見守った。

 蹴落とすようで可哀想だが俺たちも負けたくはない。野次も飛んでくるが妨害しちゃダメって言ってなかったしな。


『消しゴムを追加します』


 唐突っ!

 ルオさんの言葉でスタッフが一人増え、最上階の五階を狙い始めた。

 そして魔法も飛んでくるようになったし、武器を持って攻撃してくる人も現れた。もはやカオスな戦場だ。戦いに気を取られて消される人もいれば、消しゴムに気を取られて攻撃が当たり怯んだところを消される人もいる。周りを見る限り衝撃はありそうだが外傷はなく血とかは全く出ていない。

 しかし面倒になったな。消しゴムと他参加者の妨害の両方に気を付けなきゃいけないじゃねえか、誰だ最初に妨害したの。

 魔法も白黒で一見何の魔法だか分からないので対処はせず避ける。当然こちらも応戦している。


「きゃっ!」

「ロティ――ぐっ!?」


 ロティアの短い悲鳴に振り向いた瞬間に脇腹を衝撃が襲い、痛くはないが少し押される。消しゴムを持つスタッフがこちらを見ていなかったのはラッキーだった。

 ロティアは左手首から先が斬り落とされていた。俺は【土魔法】の岩に押されたようだった。


「ロティア! ヨータ! 大丈夫!?」

「ええ、痛くないのが幸いね」

「俺も大丈夫だ」


 ヴラーデの言葉に平気だと返す。ロティアの左手は断面が上手く誤魔化されている。なんというか、どっからどう見ても途中から先が消えていってるように見える。一体どうなってるんだ。

 なんとなく周りを見ても体の一部がなくなってる人は同じような感じだった。また下半身がなかったり頭がなかったり、胸に剣が刺さってたりする人が動いてないところを見るに実際に死亡するダメージを受けると意識がなくなるようだ。……ホントに死んでねえよな?


『ペン一回目行きます』

「……ペン? 消しゴムじゃなくて?」


 再び唐突にルオさんの声が響き、思わず疑問を呟く。

 新たに増えたスタッフが持っているのは確かにペンだ、消しゴムはおろか鉛筆にも見えない。一点にその先が着くと、スタッフが視線を動かす。一瞬だけ目が合ったような気がした。まさか……!


「まずい、逃げろ!」

「危ない!」


 近くにいた小夜の手を引く。同時にロティアがヴラーデを突き飛ばす。

 スタッフが手を動かすと同時に、世界に真っ黒な壁が生まれ、そこにロティアが巻き込まれた。


「ロティア!」

「何、これ……抜けない……!」


 ヴラーデを突き飛ばした姿勢で巻き込まれたロティアは壁に埋まり、こちらから見ると壁から上半身を生やしたように見える。右手で壁を押して脱出しようともがいているようだが全く動かない。

 他にも顔だけ出てたり、足だけ出てたりする人がいるがどれも抜けなさそうだ。


「マジかよ、巻き込まれたら一発アウトじゃねえか……」


 それを呟いたのは俺かはたまた別の誰かか。この世界で動けなくなる、それはつまり……


「ロティア! 待ってて今助けるから!」

「ダメっ! ヴラーデ逃げて! 私はいいから!」


 壁に攻撃を繰り返しているヴラーデだが壊れる気配はない。魔法も通じず、水すら白黒の絵で表現されてしまうのでインクを流すことも叶わない。

 ロティアがヴラーデを逃がそうと訴えるが抵抗を続ける。ついに消しゴムがペンで書かれた線の片端に着いた。


「ヴラーデ! もうダメだ!」

「いやあっ! ロティアがっ!」


 涙を流すヴラーデに心を痛めつつ小夜と協力して手を無理矢理引く。

 そして消しゴムが動き始めて壁に埋まった人を次々と消していき、


「ヴラーデ。絶対生き残ってね。あなたならやれる。信じてるわ」

「ロティアああああぁぁぁああああぁぁあああぁぁぁっ!!!」


 最期に微笑んだロティアの姿が消え、穴すら開いてない真っ黒な壁だけが残った。

次回予告


スタッフ「な、なあ、このチームだけ何故かシリアスな雰囲気なんだけど」

スタッフ「消しゴム向かわせるの、なんか悪いですよね……」

スタッフ「とりあえず放置しとこう……」

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