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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第3章 勇者に魔人に実力試験とてんこ盛りでお送りします。
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50. ドラゴンに挑みましょう。

「ドラゴンですって!?」


 驚きの声を上げたのはイキュイさん。


「あなたたちはここで待ってて、話を聞いてくるわ」


 続けてそう言われるが、そもそも体が動かない。暖を取ってるはずなのに寒気がしている。


「……ヨータ?」

「陽太さん?」

「震えが酷くなってるわよ? 大丈夫?」


 二人には気付かれてしまったようだ。


「いや、大丈夫だ」

「嘘ね」

「嘘、ですね」


 強がったら即否定されて睨まれた。

 強い目線から目を逸らすが……ダメだ、こりゃ勝てねえや。


「はあ……ドラゴンはトラウマなんだよ」


 この世界に来て最初に出会った敵が巨大なドラゴンであり、その時の恐怖が今でも残っていることを話す。

 俺としては思い出す暇がなかったしトラウマが消えてればいいとか思ってたんだが、そんなに甘くはなかったようだ。


「そうだったの」

「確かに、それは、怖い、ですね……」

「ピアス着けてこれなら仕方ないわね」

「……苦手なものがない者などいない」

「でも時には克服することも重要よ?」


 四人の声に紛れて、ここにいないはずの人のものが聞こえた。


「「「「「……」」」」」


 いや、あの。


「いつからいたんですかイキュイさん」


 出ていったはずの人が自然に混ざっている。さっき呼びに来た職員がやや後ろで苦笑いだ。


「そんなことどうでもいいわ。それよりドラゴンだけど、あなたたちだけで倒してみない?」

「……は?」

「この町に向かってるのは確かなんだけど、まだ遠いところからゆっくり来てるし、そんな強くなさそうなのが一体だけだから挑戦してみないかって。どう?」

「いやどうって言われても」


 トラウマって話したばかりの人に言うことではないと思う。


「もちろん断ったり挑戦してダメそうだったりするなら私が瞬殺しとくわ。どうする?」


 いや普通に断りたいのだが。


「あのドラゴンを倒せればランク9に昇格させた上でボーナスポイントも付けるわ」

「よし、やるだけやってみましょう」


 誘惑のせいでまずロティアが敵に回った。


「いつもヨータが最前線だし、たまには守るのもいいんじゃないかしら」

「陽太さんは、私が、守ります」


 二人もやる気みたいだ。ただ防御に徹するなら【空間魔法】以上のものはなかなかないんだがな?

 最後の一人に視線を向ける。


「……まあ、頑張れ」


 何をだ。


《おにいちゃん》


 くそっ、幽霊までも敵に回るというのか。


《外は晴れてるし、あれやろうよ!》


 ……あ、忘れてた。ドラゴンに通用するかは分からないが、実践の場には丁度いいか。


「俺も試したいことがあるんで参加します。接近はしないので大丈夫だと思います」

「そう、じゃあついてきて」


 立ち上がった時には体の震えは止まって……


「ホントに大丈夫?」


 いなかった。やっぱやめとこうかな……




 やっぱやめたと言う訳にもいかず、町を出て少し歩く。

 向こうに見えるのはゆっくりと歩くドラゴン。あの時程の大きさはなさそうだがやっぱり怖い。


「じゃあ頼む」


 そう言い残して逃げるように【空間魔法】で上へ。ここに来るまでにそうすることを話してあるので文句はない。

 ヴラーデたち三人はドラゴンの方に走っていく。


(キュエレ、この辺りでいいか?)

《う~ん、もうちょっと上かな。そしたら九時の方向に……そう、そこらへん》


 位置を調整してから太陽に背を向けドラゴンに視線を向けると、まだかなりの距離があるというのに少し体が震える。

 次に小夜を転移させてきて、護衛を頼む。これをやっている最中は無防備になってしまうからだ。


「小夜、頼む」

「はい」


 小夜が銃を両手に構え周囲を警戒する。最初は弱気キャラだったのにいつの間にか凛々しくなったな。まだ口調はあれだけど。


(じゃあキュエレ始めるぞ)

《うん》


 二人で始めるのは【空間魔法】の演算。位置と大きさ、更に変形のさせ方を正確に計算するために俺とキュエレの頭を使用するため、思考力が奪われぼーっとしてくる。今の俺たちは無表情になってそうだ。


 最低限の意識と思考力でドラゴンの方を見ると三人と戦闘を始めたようだ。時々火柱や岩などが見える。

 ドラゴンも爪や尻尾で応戦したり、爪から飛ぶ斬撃やブレスも放っている。以前のドラゴンは火炎放射のようだったが、今回は火の球が大量に吐き出されている。

 しかし三人の目的はドラゴンを余り移動させないことであり、回避優先のためダメージはなさそうだ。

 時々流れ弾が来ても小夜が全て撃ち落としてくれている。避けるだけの余力がないので助かっている。


「わるいな……さや……」


 言葉も上手く出てこないし自分でも無機質な声だと思った。でも小夜はどことなく嬉しそうに見えた。


《演算完了》


 しばらくして明るさがなくなったキュエレの声が頭に響く。

 直後に演算に基づいて【空間魔法】を発動。太陽からドラゴンまで円盤の形に固定した空間が並ぶ。大きさは太陽に近いほど大きく最大のものはキロ単位。間隔もそれなりに広いが大きさに合わせて狭くなってっている。

 それを確認したら三人を転移させ、戸惑うドラゴンを無視して固定した空間を変形させる。

 凸レンズと凹レンズが交互に並ぶ形になったそれは光を屈折させ、ドラゴンに近付くにつれ太陽光が収束されていく。


 するとどうなるか。

 周囲は暗くなり、光は凸レンズで収束され凹レンズで真っ直ぐになるのを繰り返した結果として細い一本の線になる。

 元の世界の小学校の理科の授業でやった、虫眼鏡で太陽光を集めて黒い紙に熱で穴を開ける実験。それの応用だ。


 変形させていたのは一秒にも満たない。それでもドラコンの体を焼き穴を開けるには十分だった。むしろこれ以上やると地面に穴が開いてしまう。

 【空間魔法】を解除すると周囲が明るくなると同時に思考力が戻ってきた。

 ……成功してよかった。


 以前は凸レンズと凹レンズのセット一つですら演算の途中で意識が完全に飛んで失敗してたんだが、キュエレとやることでなんとか成功した。あとは縮小コピーで並べていくだけなので実は量は演算時では問題なかったりする。

 ただ魔力の消費が半端ない。元々変形時には多めに消費するがそれを大きさも量も揃えなければいけないとなるときつい。今もほとんど魔力が残っておらず体がだるい。

 しかし足場が消えると五人揃って落下死エンドなので最後の力を振り絞って帰り道を作る。

 最初に上に来なければこんな危険はないのだが、【空間魔法】は距離が離れると魔力消費量が増えるらしく、普段は気にならないほどだがあの大きさと量だと増加量もとてつもないので上に行かざるを得なかった。丁度いい丘や崖もないので足場を作るしかなかったのだ。


「もう無理……誰かおぶって……」


 体がだるすぎて力が入らなくなってきたのでそう言うが反応がない。全員ドラゴンの方を見て唖然としている。

 その状況に文句を言う気力もなく、体が倒れるとその方向にいたヨルトスに支えられた。

 それで我を取り戻したのか足場を降り始めた。




「一撃だなんてやるじゃない。一体何をしたの?」


 下で待っていたイキュイさんにそう尋ねられたが、光の屈折とかの説明が面倒だったので【空間魔法】で太陽光を歪ませて集中させたと雑に説明した。ついでに[太陽光線(ソルレーザー)]と名付けておいた。


「なるほど」


 イキュイさんは一言返して何かを考え込むように黙ってしまった。


「『太陽の魔法剣士』……うん、これがいいわね。今後この二つ名を広めていきましょう。『月』の弟子が『太陽』ってところも洒落てるわね、うん」

「え?」


 どうやら俺の二つ名を考えていたらしいが、何故このタイミング。


「いえ、いつまでも『月の魔女の弟子』っていうのもどうかと思ってたのよ。だから、ランク9に昇格させるついでに新しい二つ名を付けたかったの」


 イキュイさん的にはいいタイミングだったらしい。

 ……俺の名前には『陽』という漢字があるので妙に恥ずかしい。からかわれそうなので黙り通そう。


「他の皆も既に二つ名は付いてるわよ。サヤは『射撃姫(ガンスリンガープリンセス)』」

「うっ……」


 小夜に何かが刺さった。やっぱりその名前は広めてほしくなかったようだ。


「ヴラーデは『炎の王女』」

「え!? 王女だなんていいのかしら……」


 嬉しそうだが謙虚な反応。そういえば『味の王女』とも呼ばれてたな。


「ロティアは『蒼の女王』」

「いやですね~そんな柄じゃないですよ~」


 謙虚そうなのは言葉だけ。お前はむしろ『お~っほっほっほ! さあ、跪きなさい!』とかノリノリでいうタイプだろ。


「ヨルトスは『大地の忍』」

「……悪くない」


 凄いピッタリだ。この中で一番しっくりくる。


「そんな感じね。とりあえずドラゴンの死体を回収して戻りましょうか」




 ギルドに戻って今は昇格手続き待ち。

 因みにドラゴンに近付くと死体だというのに恐怖が湧いた。そう簡単に克服はできないようだ。


「お待たせしました」


 職員に呼ばれて受付に行き、カードを受け取る。当然ながらランクの箇所は9になっていて、ポイントも少し入っている。


「それじゃあ今日は打ち上げよ!」


 そのロティアの言葉で三人の家に行く。流石のロティアも毎回は仕掛けてこず、俺も小夜もヴラーデも酔わない平和な打ち上げとなった。……平和な打ち上げってなんだよ。




 因みに。


「実は試験なんてしなくてもランク9として十分認めていたのよ」


 ある日、突然現れたイキュイさんが爆弾発言をした。


「……でしたら、あの模擬戦とドラゴン戦は一体……」


 しばらくフリーズしていて最初に我に戻ったロティアが尋ねる。


「模擬戦は私がやりたかったから」


 おい。本当に戦闘狂かよこの人。


「ドラゴン戦はヨータの二つ名が思い付くまでの時間稼ぎね」


 おい。そこは建前でも経験を積ませるためとか言ってくれよ。

 ルナに再会したらイキュイさんを懲らしめてもらおうかと本気で思ってしまった。


 ……ルナがいなくなってから半年くらいか。

 相変わらず欠片の情報も入ってこず、イキュイさんから聞いた限りだと各地ではもうお手上げ状態らしい。

 しかしこの半年もなかなかに濃かった気がする。小夜に会った。勇者たちにも会った。まさか魔人がスマホに入るなんて思ってもいなかった。ランクも9に上がった。いい加減俺もアクティブに探さないとな。

 だが次は年明けに『変化の遊戯場』に行くことになっている。年明けももうすぐだ。

 それも楽しみだがその前に……この世界の年末年始について誰かに聞いておくことにしよう。

次章予告


陽太「というわけで次回から『変化の遊戯場』編だ!」

小夜「私たちが、あんな姿や、こんな姿に!?」

陽太「予習として『状態変化』でpi○iv検索することをオススメするぞ! ただしR18系は作者が苦手だから無視して大丈夫だ!」

小夜「更に、Twi○terで、呼び掛けた、ゲストも、います!」

二人「「お楽しみに!」」


陽太「……なんだこの台本」

小夜「さあ?」

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