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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第3章 勇者に魔人に実力試験とてんこ盛りでお送りします。
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43. いざ幽霊屋敷に向かいましょう。

「この世界に幽霊やお化けって概念はあるのか?」


 対策を立てるためにまずそこをはっきりさせておきたいと思いヴラーデたちに尋ねたが、ヨルトスが一歩下がった。なんだ?


「ええ、あるわよ。魂が成仏せずに留まった存在、よね? ヨルト……あーそっか、そうだったわね」


 ヨルトスは青い顔をして知らんぷりをしている。この反応は……


「まさか……ホラー苦手?」

「そうなのよ」

「……否定はしない」


 あらまあ意外。でもそれをネタにふざけている場合ではない。因みに小夜も少し怖がっている。


「成仏はこの世界だとどういう認識なんだ?」

「物語の中だけの話ね。実際は……どうなんだっけ?」

「……空気中の魔力に変換されて拡散する、というのが一般的な見解だ。……立証はされていないが」


 うろ覚えだったらしいヴラーデの問いにヨルトスが顔を青くしながら答える。


「幽霊も物語の中だけだと思ってたけど……色々それっぽいわよね」

「俺もそう思う」

「……やめてくれ」


 完全……かどうかはともかく一致点は多い。

 しかしどう対策したものか……


「浄化とかそういう魔法はないのか?」

「[聖火(セークリッドファイヤー)]じゃダメなの?」

「それも試してみないとか」


 ダンジョンに挑戦した時などでアンデッド系の魔物と戦ったことがあるが、それに有効だということでヴラーデを一番前にその魔法を使いまくってもらった覚えがある。


「ていうかヨルトス、アンデッド系の魔物は大丈夫じゃなかったっけ」

「……あれは魔物だ」

「そ、そうか」


 基準がよく分からん。


「あ、あの」

「ん? どうした小夜」

「その、見えないん、ですよね?」

「「あ」」


 そっか、そこから対策しないとか。

 見えない敵にどうやって魔法を当てるか……広範囲を殲滅したくても囚われた魂に被害がないとは限らない。というか一緒に浄化しそう。


「何か、見えるように、なるような、能力って、ないん、ですか?」

「ん~私じゃ無理ね。そういえばヨータの【察知】では捉えられなかったの?」

「残念なことに目の前でも無理だった」


 今のところ聴覚でしか捕捉ができていないので黙られたら終わりだ。やはり見えるようにしたいところだが……見えるように、ヴィジュアル化、視覚化、可視化……可視化?


「……あ!」

「ヨータ?」


 ヴラーデの呼び掛けを無視してポーチからあれを取り出す。


「あ~! あったわね、完全に忘れてたわ」

「俺も忘れてた」

「陽太さん、この、鏡は、何ですか?」


 小夜はまだいなかったし知らないか。


「これは『真実の鏡』っていう魔法道具(マジックアイテム)で【可視化】ができる」

「なるほど」

「とりあえず、一度職員に話しに行くか」

「ちょっと待って」


 ヴラーデは安らかな寝顔のロティアの側に寄り、


「待っててね、ロティア。すぐに助けるから」


 大切な幼馴染に告げる。何かを自分に言い聞かせるようにも聞こえた。




 職員に今回の件の解決に向かうと話したところ、非常に嬉しがられた。調査の依頼をギルドとして出そうとしていたが、調査の難易度の高さの割に同じ目に遭うというリスクが高すぎるせいで出すに出せなかったらしい。原因の予想すら立たないのに無駄に冒険者を送るわけにはいかないそうだ。

 因みにイキュイさんは別件でこちらには来れないらしい。ギルドマスターって普段何やってるんだろうか。


「では、依頼の内容は『原因の確定もしくは解決』としますが、よろしいですか?」

「はい、お願いします」

「因みに、敵に遭遇し勝ち目がないと判断された場合はいかがなさるのですか?」

「俺には緊急離脱用の手段があるので囮になろうと思います」


 もちろん転移のことだ。実際一度成功してるしな。


「ちょっ、ヨータ!」

「なっ、陽太さん!」


 しかし女子二名の抗議の声。腕を掴んで揺さぶってくる。


「あんたまた一人で勝手にそういうことすんじゃないわよ!」

「そうです! 陽太さんまで倒れたら私、私……」

「仕方ないだろ! 魂抜かれそうになった時苦しくて動けねえんだから、即逃げれる俺がやるべきだろうが!」

「う……」

「それは……」


 言い返せないのか黙り込む二人。

 仲間として心配してくれるのはありがたいが、俺にしかできないならやるしかないじゃないか。


「お待たせしました。処理が完了いたしました」

「あ、はい」

「危険性を考慮し今回の依頼は失敗時のペナルティをなしとさせていただきました」

「ありがとうございます」


 つまり無理矢理やるくらいなら安全を優先してさっさと帰ってこいってことか。

 とりあえず一旦ギルドを出て作戦会議をする。


「まず俺が転移で忍び込む。そこで幽霊に会って『真実の鏡』が効いたらお前らも転移させる。無理だったら逃げてくる」


 この内容で小夜たちも理解はしてくれたようだ。


「もし幽霊がいなかった時は魂をポーチにしまえないか試してくる。しまえなくても最低限ロティアのは確保してくる」


 あの時魂が入った瓶は少なくとも二十はあった。瓶は片手で持つサイズだったがそんなものを二十も持てるわけがないため片手に一つだけ持つ。他の人には悪いが当然仲間最優先だ。

 炎の色は似ているものもあったが俺なら判別できるので俺がロティア、ヴラーデたちの転移後は適当に持てる分を回収してくるつもりだ。


「……いいな? いくぞ」

「ええ」

「行って、らっしゃい」


 ちゃんと返事を確認して、ロティアの魂の元へ転移を発動……!




 ……あれ?


「「「……」」」


 三人の視線が痛い。転移発動……! 


「「「……」」」


 発動……


「「「……」」」


 しない……だと……


「すまん、対策されたらしい」

「えぇ……」

「今の作戦会議何だったのよ!」


 いや俺もこうなるとは思ってなかったもん。


「仕方ない、プランBだ。直接乗り込むぞ」

「そんな話なかったでしょうが!」

「ごめんなさい」


 でもせっかくキメ顔で言ったんだから乗ってくれても良かったと思うんだ。




 転移はできなくても位置は把握できているため、四人で向かう。

 そこはどこぞの貴族の別荘で数十年前に売り払われたが買い手が見つからずその内放置するようになり廃墟となったんだそうだ。ボロかったのはそういうことか。

 しかしあの周りは森なんだがどうしてそんなとこに別荘建てたんだろうか。魔物の被害とか考えなかったのか?


「……それにしてもアンデッド系が多いわ、ねっ!」

「そうだなっと」


 互いに剣を振りながら言葉を交わす。俺の剣は現在【火魔法】の刃を出している。

 小夜も赤い弾丸を連射し、ヨルトスは俺たちの援護に回っている。


 廃墟に近付くにつれ魔物が多くなってきていて現在は連戦状態。しかも骨だけのスケルトンや体が腐り始めたゾンビなどのアンデッド系ばかり。

 人型だったり色々な動物、魔物の形だったりしているが幽霊の影響だろうか。


「あ~もう面倒くさい! あれやるから備えて! ~~」


 長い連戦にヴラーデがキレたのか[火剣(ファイヤーソード)]を消し、もう片方の手で持ってた杖を両手に持ち直して魔法の詠唱を始める。

 ヴラーデには【詠唱省略】のスキルがあったはずだが……『あれ』って?


「……ヨータ! ……周囲を固定しろ!」


 ヨルトスが小夜を引っ張って俺の近くに来た。その慌てようを見て大人しく四人を固定した壁で囲む。


「……そうじゃない、ヴラーデは外に出せ! ……あと上と下も閉じて黒くしろ!」


 突っ込みたいところはあるが尋ねてる暇がなさそうなので言う通りにする。

 直後、ヴラーデの残っている魔力が一気に半分以下になるのが分かったと思ったら、固定した壁にそれを突き破りそうな衝撃がぶつかった。


「いっ、やばっ!」


 慌てて魔力を更に流し強度を上げる。っつーか何したんだあいつ、固定した空間すら破りそうになるとかよっぽどだぞ!

 光や音すら遮断したこの中では外で何が起きたか分からなかったが、しばらくして衝撃がなくなったので固定を解除する。


「「えっ?」」


 そこには地面がなく少しだけ落下する。


「うわぁ……」

「……」


 ちゃんと着地して周りを見渡し俺と小夜が唖然とする。ヴラーデを中心に半径三十メートルくらいのクレーターができていた。

 杖を立てて地面に座り込んでいるヴラーデはすっきりしたかのような笑顔だったが、ヨルトスが近付いて、


「……やりすぎだバカ!」

「痛っ!」


 ヴラーデの頭を叩いた。

 聞くとヴラーデが使った魔法は[大爆発(ビッグエクスプロージョン)]という、自身を中心に広範囲の爆発を起こす魔法。

 自分で出した[火剣(ファイヤーソード)]を持てるのと同様に自分や装備へのダメージはないが、威力はこの通りである。

 もし【空間魔法】での防御がなければ俺たちは灰も残らなかったであろうと考えると……やば、怖い。


「いいじゃない。ヨータがいるから大丈夫だと思って使ったし、敵は倒せたし、延焼はちゃんと防いだし」

「そういう問題か?」


 まず明らかにオーバーキル。そして木々を焼き尽くしたせいで上空から見ればここだけ緑がないであろうことが容易に想像できるくらいの環境破壊だ。……後で怒られるんじゃねえかなこれ。


「それより、どうする? もう日が暮れるが……」


 予想以上に戦いが続いたせいで思ったように進めずもう太陽が沈みかけている。


「何言ってるの! 早くロティアを助けなきゃ!」

「その気持ちは分かるが、今からだと着く頃には間違いなく夜になる。ヨルトス、この世界の物語で幽霊は夜になると力を増すとかってあるか?」

「……少なくはないな」


 ホラー苦手なくせに結構読んでるらしい。


「とするとリスクが高いかもしれない。焦るあまり俺たちが全滅するわけにはいかないし、今日は適当なところで身を休めよう」


 小夜とヨルトスに続き、ヴラーデも不満そうに頷く。

 【水魔法】を使えるロティアがいないため、水を使う際は近くの川に移動しヨルトスがその安全性を確認した。




 夕食後の話し合いで、この状況では眠れないのか珍しくヴラーデも見張りをすることになり、くじの結果男女に分かれた。

 もし例の歌が聞こえてきた時は寝てるのを叩き起こして全員で逃げる。逃げきれそうにない場合は俺が囮になるか、最悪ルオさんか善一(よしかず)のところに転移する。緊急事態だし分かってくれるだろう。


 だが運がいいことになんにも遭遇せずに夜が明けた。

 再びアンデッド系の魔物を倒しながら進み、ついに廃墟に着いた。


「……行ってくる」


 転移がダメだったからって作戦全てが台無しになるわけではない。転移の部分が俺一人での直接の乗り込みに変わっただけだ。

 どこから忍び込むかだが……不思議なことに窓は開かず壁も含め何も壊せなかったため正面の扉しかなかった。

 その扉を開け、一歩踏み込んだ瞬間、


「わっ!」

「えっ?」

「……!」


 後ろから声が聞こえたかと思うと、


「うおわっ!」


 三人から突進され結局四人で入ってしまった。しかも扉が勝手に閉じるというベタなおまけ付き。


「つつ……何すんだ」

「な、何か地面が動いたのよ!」


 小夜とヨルトスが青い顔で頷く。特にヨルトス、大丈夫かお前。

 この状況にもしかしてと思い立ち上がって扉に触るが、


「ダメだなこりゃ、閉じ込められた」


 案の定開くことはなかった。力ずくでも全然ダメ。

 そして崩れ落ちるヨルトス。この中で一番カッコよかったはずのお前がそれって誰得だよ。いやそういう話じゃないけど。


「仕方ない、四人で行くぞ。ほらヨルトスちゃんと立て!」


 あまりに怯えるヨルトスの手を掴んで立たせる。小夜は何故か落ち着き始めているが、あれか、自分より酷いのを見てって奴か。


『~♪』


 しかし、そこに少女の歌声が聞こえてきた。

次回予告


陽太  「次回幽霊の正体が明らかに!」

ヨルトス「……頼むからこれ以上怖くなるのだけはやめてくれ……」

陽太  「というか章タイトルで察しちゃうよな」

ヨルトス「……それは言うな」

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