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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第2章 新たな町に行けば新たな出会いがあります。
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35. 久々の教会とその他です。

 小夜がランク3になってからは討伐メインの日々。まあ俺が方向と距離を教えたら八割以上仕留めてくれるので結構手柄が多い。これは俺たちとランクが並ぶ日も近そうだな。


 そんなある日。


「久し振りに教会に行きましょう」


 とロティアが提案した。


「そうね」

「最近行ってないしな」


 ヴラーデに続き俺も賛成するが、小夜は首を傾げている。


「そっか、小夜は知らないよな」


 頷きが返ってくる。


「まあ行ってからでいいか」




 というわけで、


「皆さん、今日は久々にヨータさんたちが来てくださいましたよ」


 その言葉に子供たちが盛り上がる。なんか嬉しいが恥ずかしくもあるな。


「ねー、そのお姉さんはだあれ?」


 子供の一人が小夜を指して言うと視線が一気に集まり、怯えた小夜が俺の後ろに隠れようとする。


「はっはっは、させるわけないじゃないかー」


 棒読みで言いながら小夜を前に押し出す。


「ほら、手伝うからさっき言ったようにな?」

「うぅ……はい」


 折れた小夜が片方に、俺がその反対に移動する。子供たちの期待の表情が眩しいな。

 あらかじめ用意しておいた小石を大量に上に投げると同時、小夜が銃を取り出して構え、小石が落下を始めると同時に撃ち始める。

 緊張しててもこの距離だからか射撃は正確で、全ての小石が砕かれていく。

 射撃を終えると銃をしまって中央に戻り、


「えと、サヤ、です。よろしく、お願い、します」


 お辞儀をしてそう言う。すると、


「うおおおおおお!! すっげええええええ!!」

「たくさんあったのがバーンって!」


 子供たちから歓声が起こり、小夜も恥ずかしそうだがどこか嬉しそうだ。

 ……恨めしそうな視線が後ろから来ているが見なかったことにしよう。




 昼食後の外で遊ぶ時間、新たに射的場が増えた。子供たちにとって未知のものである銃に興味津々だったため、小夜の銃を貸して適当な的を狙わせることにしたのだ。

 一応この世界の常識なのか子供たちも魔力の操作はできるので銃を使うことはできるんだが……当然なかなか上手く当たらない。まあ悔しがったりしつつも楽しそうなので問題はない。

 ……あれ、小夜がちょっと不機嫌そうだ。前髪が長いからか銃に夢中だからかは分からんが子供たちは気付いてない。

 いつも通り簡単に剣の稽古をしている獣人の子供たちに一言告げ、こっそり小夜の近くに寄ると、


「持ち方が違う……ああそうじゃない……片手が難しいなら両手で持てばいいのに……もっとよく狙って……」


 ブツブツとダメ出しをしている。正しく銃を使えてないことに不満があるらしいが無茶だろ。


「小夜」

「わひゃぅ!?」


 声を掛けて独り言を打ち切らせる。予想以上に驚かれて正直俺も少しびっくりした。


「あんまり言ってやるなよ? さっきまで銃を知らなかったのに今日中に使いこなせるようになったら逆に凄いぞ?」

「で、でも……」

「でもじゃありません。というかそんなに気になるなら直接教えてやれよ」

「う……む、無理です……」

「なら文句言わない。子供たちが楽しめればいいんだからさ」

「はい……」


 小夜が納得いかなさそうにしゅんとなったが、後は再び任せることにして俺は戻ることにした。




 そして帰り。


「なんでサヤちゃんまで……絶対こっち側だと思ったのに……」


 ロティアがボソボソと呟いている。いつも通り一人だけハブられていたのが納得いってないらしい。


「一人が銃を持って逃げ出した時はどうなるかと思った」

「そうね、すぐ見つかったからよかったけど」


 ヴラーデとそんな会話を交わす。余程銃が気に入ったのか、それとも俺たちに帰ってほしくないのかは分からないがそんなトラブルが起きた。追いかけようともしたが他の子供たちが邪魔するので一度逃がしてしまった。

 教会内で隠れてたから魔力を辿ることで素早く発見できたが教会を出られてたらもっと大変だったかもしれない。

 というか俺の剣には防犯システムがあったから銃もそうだと思っていたんだが、小夜に確認したところルオさんからそのような話は聞いてないらしい。まだ実験段階だから実装してなかったのかもしれないな。


 こうしてこれからは小夜も一緒に時々教会に行くことになった。




 それからまたしばらく経ち、気が付けば小夜もランク5になっていた。

 なんだか展開が早い気がするが、ほぼ毎日魔物を見つけは撃って見つけは撃ってと地味な作業を繰り返した結果だからやっぱり妥当かもしれない。


 小夜に受付に行ってもらってる間に、


「それでは第一回サヤちゃん会議を始めます」


 ロティアが真剣な表情でそう告げる。……そのネーミングどうにかならないのか。


「今回の議題は、迫るランク6への試験対策です」


 現在、対魔物で遠距離のみだったのでどうにかなっているが、今回は対人試験。遠距離でも構わないだろうが、いざという時に人を攻撃・あるいは殺害することができるかを問われるこれは小夜には厳しいと思う。

 小夜にランク5のままでいてもらうのもありだが、俺たちとランクが離れていると一緒に行けない依頼があるかもしれない。基本俺たちの誰かが近くにいるようにしたい以上そうなるのはよくない。

 なので、小夜には俺たちとランクを合わせるべくこの試験は突破してほしいのだが、


「まず、普通に考えてあの娘に人を撃つ度胸なんてないでしょう」


 小夜も平和な国に生まれた日本人だ、ロティアの言う通りそんな度胸はないだろう。俺だってピアスを外したらまだきついし。

 このピアスのことはイキュイさんも知っているので貸すというのも却下。というかこの前イキュイさんから他人には渡さないよう釘を刺された。


「ですので――」


 と、そのタイミングで小夜の受付が終わったらしく、こちらに向かってくる。意外と早かったな。


「……それではまた次回に決めましょう。解散」


 その言葉と共に家に帰ることとなった。




「小夜、模擬戦してみるか?」

「え?」


 いつも【体術】以外は互いに危害のない内容で訓練してきた――【体術】も体育の授業の発展みたいな感じで危険がないものだ――が、さっきのほぼ何も話してない会議でのロティアの言葉を思い出し、少しでも慣れさせようと提案してみた。


「で、でも……陽太さんに、当たったら……」

「大丈夫だって、そう簡単に死んでたまるか」


 死ななきゃルナのポーションで大体直るし。ただ残り数には気を付けないとな。


 しばらく説得した末に渋々やってくれることになった。地下だと狭いとのことで家の外へ出て、小夜が遠距離の準備をすると木々に入っていく。

 少しばかり待ってから、


「おーい、先手は譲るから準備できたらかかってこーい」


 小夜に聞こえるように大声で伝えて【察知】を使う。

 ……実際に小夜の銃の相手をするのは初めてだが、どこまで見切れるか。


 だが……


「……」


 ……攻撃が来ない。


「……はあ」


 転移発動、銃を構える小夜の後ろに出た。


「えっ!? 消え――」

「ダアホ」

「たっ」


 隙だらけの頭を手刀で軽く叩く。


「……な、何を、するん、ですか」

「いや、来いっつってんだから来いよ」

「うぅ……」


 ……ダメか。


「ていうか【察知】使ってなかっただろ?」

「あ」


 使ってたら俺が後ろに出現したことに気付いたはずだ。




 結局いつも通りの訓練をした後、


「陽太さん」

「ん?」


 少し疲れた様子で小夜が話しかけてきた。


「陽太さんって、誰に、強くして、もらったん、ですか?」

「……そういやちゃんと話したことはなかったっけか。えーと……町で依頼を受けてて『月の魔女』って名前は時々聞いてたよな?」

「はい。よく、『似てる』って、言われました、から」


 そりゃそうか。


「その人に色々鍛えてもらったんだ。まあ今はいなくなっちまったが」

「え?」

「ほら、俺を召喚した人が帰る方法を研究してたけど今は行方不明って前に話したろ? その人だ」


 因みに有力な情報はもちろん、目撃情報すら未だにない。俺も聞き込みくらいで積極的に捜索したわけじゃないが、果たして見つけることができるかどうか……


「どんな人、だったん、ですか?」

「あー……顔は小夜にそっくりだ」

「やっぱり……」


 小夜が納得したように呟く。


「ただ見た目の年齢は俺よりも少し上だし、髪は白、目は赤と違う点も多いぞ」

「そう、なんですか……」

「ああ、声は非常に似てる」

「ええ!?」


 その驚きを見るにそっちまでは予想外だったらしい。


「そうだな、アニメだったら同じ声優が少し声の高さを変えただけってくらいには似てる」

「……」

「……もしかしてだが本人じゃないよな? 若返って俺を騙してるとかないよな?」

「違います!」


 唖然としてたのに否定の声が早かったな。

 もちろん冗談で言っただけだ。本人じゃないことくらい分かっている。そもそも小夜が召喚されるのを俺自身が見てる時点で違うし。


「じゃあ姉妹とか」

「一人っ子、です」

「従姉妹とか親戚に似てる人がいる」

「同一人物を、疑われるほどの、人は、いない、はずです」


 これも冗談。ルナはこの世界の住人だ、小夜と血の繋がりがあるとは思ってない。


「話を戻すか。性格はお前と全然違って気は強め、冒険者のランクは10+で実力も俺とは比べ物にならない程。イキュイさんですら勝ったことないらしい」

「……」

「ただ謎も多い人だな。生まれや育ちは不明らしいし、本人は純人って言ってたがどういうわけか三百年も生きてるし、契約も弾くし、その時感じた魔力も今思うとどこか変だったな……って小夜?」


 唖然とした表情でフリーズしている。目の前で手を振っても反応がないしどうやらキャパオーバーのようだ。

 仕方ないので軽く叩いてみる。


「帰ってこーい」

「……はっ、不老不死の秘薬は何処!?」

「何の話!?」

「はっ……すいません、予想以上の、人だったので、イメージが、妄想に、進化、してしまった、ようです?」


 そこで首を傾げられても。


「とりあえず……『なんかとてつもなく凄い人』って認識でいいと思うぞ」

「……それで、いいん、ですか?」

「いや、フリーズされるくらいなら雑にまとめた方がいいかと思って」

「ぅ……」

「さて、さっさと風呂入って寝るぞ」


 ……不老不死の秘薬、ねぇ。可能性を捨てきれないのがまたなんとも。

 まあいくら考えたところでそれが正しいか確かめる術などないんだが。


「はあ。ホントどこにいるんだか」

「?」

「なんでもない。ほら、先入ってこい」


 こりゃ再会したら質問攻めしないとな。




 だからってすぐに再会できるわけもなく、そのまま小夜の対人試験の日がやってきた。

次回予告


?「フフフ……ついにこの計画を実行する時が来た……ついでに視点もあの小娘周辺の第三者になってもらおうじゃないか……フハハハハ!」

?「なあ、そのキャラ無理がないか?」

?「……いいじゃない別に」

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