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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第2章 新たな町に行けば新たな出会いがあります。
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34. 討伐試験とお酒?再びです。

 それからしばらくして、葉っぱが赤くなってきたなーとか思い始めた頃。ある朝、ルオさんと善一(よしかず)が帰ってきた。


「どうでした?」

「インフィさんはそのまま私の研究所まで護送してもらってます。これで魔導具の幅が広げられます!」


 まあ満面の笑みを浮かべてたしそうだろうとは思った。


「それではサヤさん、テストの報告をお願いします」


 それから二人は結構話し込んでいた。珍しく小夜が色々主張してた気がする。

 だんだん専門用語が飛び交い始めたのでさっぱり分からない俺は善一に話しかける。


「そういえば、無理矢理連れてかれたお前は何をしてきたんだ?」

「僕自身は何も。でも助手という立場を知らせることにはなったのかな」

「そうか」


 意味はちゃんとあったんだな。




 小夜との打ち合わせを終えたルオさんは善一と共にシサール王国へ向かうという。


「ヨータさんにはこれをお渡しします。インフィさんが使ってたものですが貸してもらいました」


 ん? これって……


「片方に魔力を流すともう片方が光るようになってますので、何か用がある時はこれを使ってお知らせします。そしたら手が空いた時に私のところに来てください」


 見覚えあると思ったらインフィさんの地下施設に入る時に使ったものだこれ。

 首飾りを受け取って首にかけ、珠を服の中に入れる。


「はい、ありがとうございます」

「陽太、小夜ちゃんもまたね」

「おう、頑張れよ」

「さようなら」


 二人が乗った馬車を見送り、


「さ、俺たちもギルド行くぞ」

「はい」


 パッと見だと分かりづらいが小夜のテンションは高い。

 それも当然、何故なら今日は小夜の討伐演習の日でついに銃を実戦で使えるからだ。


 今日までヴラーデと交代で小夜について見守ってきたが、弱々しくも健気に依頼をこなす彼女の評判は良い。

 テンプレとしては誰かに絡まれそうだと心配したがそういうことはなかった。

 あと、小夜が俺にくっついてばかりではなくヴラーデにもくっつくようになった。仲良くなって似てはないが姉妹のようになったのはいいが、これは進歩なのだろうか。……一応進歩ということにしておこう。




 ラーサムのギルドに着きヴラーデたちと合流、小夜は受付に行った。


「今日はどうするの?」

「当然ついてく」

「……はあ」


 ロティアの問いにそう返すが、呆れた顔をされた。


「演習を受ける人と試験官以外の同伴が禁止されてるの知らないの?」

「え」


 そうだったの。ていうかヴラーデも驚いてるんだけど。


「まあそれでもこっそりついてくけど」

「……そう言うと思ったわ。ヴラーデも行きたいんでしょ?」

「ええ」

「なら絶対にバレちゃダメよ。試験が中止になっちゃうから。私とヨルトスはこっちで適当に過ごすわ」

「分かった」




 しばらくして小夜が試験官と思しき獣人の女性と一緒にこちらにやってきた。


「あら? あなたたちは……」


 ん? どっかで会ったっけ?


「覚えてるかしら、あなたたちが討伐演習を受けた時も私居たのだけれど」

「あの時援軍を呼びに行った方ですよね」

「ええ」


 ロティアが答えたことで俺も思い出せた。確かにそうだった気がする。


「それでこれからこの娘を預かるけど、魔物の討伐だけで討伐証明部位やその他素材の剥ぎ取りは除いていいのよね?」

「はい、それで大丈夫です」


 剥ぎ取りは俺たちがやればいいことだからな。


「陽太さん、ヴラーデさん、行ってきます」

「「行ってらっしゃい」」


 二人が出ていって時間を置いた後、ヴラーデと二人でその後を追う。距離は離れたが【繋がる魂(ソウルリンク)】のおかげで見失うことはない。

 スマホ画面を表示させて気付いたが小夜のアイコンがかっこよく銃を構えているものに変わっている。何その機能、変わるものだったのそれ。


 小夜がいるのは俺たちが討伐依頼でよく来る場所だった。そこで銃を撃ちまくっている。

 いつの間に改良されたのかは知らんが発射音や反動は抑えられていて討伐というより暗殺だった。

 ……これを量産させたらやばそうだな、いつ狙い撃ちされるか分からない生活なんて嫌だぞ。


 それは置いといて、討伐そのものは大丈夫そうだ。撃つ時も多少怯えてはいるがあまり躊躇わずかなりの命中率を誇っている。流石に発射してから察知されて避けられることもあったので百発百中ではなかったが。というかそういうの相手でも高確率で当てるって凄いと思う。

 因みに試験官と一緒に魔物の死体に近付いた時は体を震わせていて苦笑いされていた。ゲームみたいに遠くから撃って多少の血を見るくらいならいいが、実際に近付くのは怖いってところかね。




 尾行を続けてお腹が空いてきたなと思い始めた頃、試験官が小夜に終了の旨を伝えるのが聞こえたのでヴラーデと一緒に素早くラーサムに戻り、ギルドにいたロティアたちと合流。

 しばらく待っていると小夜たちが帰ってきて、受付の後に嬉しそうな表情でこっちに来た。


「おかえり、どうだった?」

「合格、でした」

「そっか、おめでとう!」

「あ、ありがとう、ございます」


 まあ見てたし大丈夫だろうとは思ってたが。


「それじゃ昼食も兼ねて打ち上げにしましょうか」


 というロティアの提案でヴラーデたちの家で決行。もちろん料理はヴラーデ作。


「ではサヤちゃんのランク3昇格を祝って……かんぱーい!」


 『どうしてロティアが仕切るんだ』というツッコミは間に合わず各々が声を出す。

 料理はいつも通り美味いし、ジュースも甘さとほんのわずかな苦みがマッチして……苦み? 何のジュースなのこれ。……まあそういうのがあるんだろう。


 しかし十分くらいたった頃、正直なんだか暑くなってきた。ピリッと来るものや熱いものもあったので当然かとも思っていたんだが……


「ヨータ♪」


 腕にヴラーデが抱き付いてきた。なんかデジャヴを感じる。


「……おい、ロティア」

「うふふ、なぁ~にぃ~?」


 あ、ダメだこいつ。


「酒混ぜただろ」

「酒じゃないわよ、あなたたちのことを考えて、飲むと酔った気分になる薬を入れただけよ。ホント、十五でも飲めない世界の人は不幸ねー」


 呂律がまだちゃんと回っているからか字面だけだとちゃんと喋っているみたいだ。……いや翻訳のおかげか?

 というかまた……どこで仕入れたんだそんなの。……あれ、でもアルコールじゃないならいいんでね?

 最後の一言だが案の定いつかの勇者がそう言ってたんだそうだ。正確には世界というより国なんだが……細かいことはいいか。


「ヨータ、ロティアと話してないで私を見なさいよ」

「がっ!」


 首を強制的に回され、とろんとしながらも怒りを含んだ瞳と目が合う。

 だが直後、後ろから強い衝撃を受けて三人で倒れる。そう、三人で。


「つつつ……。何すんだ小夜」


 後ろから体当たりをしてきた小夜にそう言うと、


「ヴラーデさん、独り占めはダメですよ」


 そんな滑らかな言葉が小夜から発せられ、俺の思考が驚きで停止する。


 ……あ、酔ったことで気分が大きくなって呼び捨てかつあの口調じゃなくなったのか、納得。

 どうやら俺が考え込んでいる間に二人は何か話していたらしく、立ち上がった俺の両腕に抱き付いてくる。


「……二人共? これじゃ俺何もできないですよ?」

「そうね、じゃあ今日は……」

「私たちが甘えさせてあげる♪」

「私たちが甘えさせてあげます♪」


 甘えたいって言った覚えないんだけどなあ。


「ヨータ、何が食べたい?」

「え……じゃあハンバーグで」


 ヴラーデに腕を引かれ、ハンバーグが乗った皿の前まで来ると、ヴラーデがフォークでそれを一口大に切って刺すと、


「はい、あーん♪」


 ああなるほど、この前の逆パターンですかそうですか。

 抵抗するのも面倒なので従う。リア充っぽいが後で正気に戻った時のことを考えると怖いので素直に喜べない。


「陽太さん、どうぞ」

「ん? おお、ありがと」


 小夜の手には俺が使っていたコップ。移動する前に確保していたのか。

 流石にこれは飲ませてもらうと高確率で危ないので一度小夜に離れてもらって自分で飲む。コップを置いた直後にまた小夜が抱き付いてくる。

 こっちはこっちで正気に戻った時にしばらく塞ぎ込みそうだな……


「……ヨータはなんで酔ってないのかしら」

「確かに」


 ロティアの呟きをヴラーデが拾う。俺が強いっていうよりお前たちが弱すぎ……あれ、なんか嫌な予感がする。


「もっと飲ませましょう」


 そう言ってヴラーデが瓶を手にする。


「え、ちょっと待ってそれ原液――」

「他人に飲ませるのは危なんぐっ!?」


 ロティアや俺の制止も間に合わず、小夜が俺の顔を上に向かせヴラーデがジュースを流し……待って、今原液って言って――




 ……それからの記憶はない。いつの間にか眠っていたらしく目が覚めると部屋の中が荒れていて全員適当な位置に倒れていた。一体何があったというのか。

 そういえば頭が痛いとかはないな。酒じゃないからだろうか。


「んん……」


 最初に起きたのはロティアとヨルトス。


「あれ……いつの間に寝て……あ、ヨータ」


 俺を確認したロティアが真剣な表情になる。


「ヨータ、絶対酔うまでお酒を飲んじゃダメよ」

「え? お、おう……」


 ……つまりこの惨劇の犯人は俺、と。ついでにヨルトスも青い顔で頷いていた。


「初めて自分の行いを後悔したわ……」


 その呟きは聞かなかったことにしよう。そこまで酷かったのか……


「あれ? もしかして覚えてない?」

「え?」

「……となると原液を過剰に飲んだからああなって記憶も抜け落ちたのかしら……」


 そのまま考え込んでしまったのでとりあえず放置。


 次に起きたのは小夜。俺を見た途端顔が赤くなり倒れたテーブルに隠れてしまった。


「えーと、小夜?」


 しかし反応はない。


「落ち着いたら教えてくれよー」


 とだけ言って放置。俺の手には負えません。


 最後に起きたヴラーデは、


「~~!!」

「うぉっ」


 真っ赤な顔で殴りかかってきた。しかし前回の件で学んでいるので回避し、案の定来た二発目以降も同様に避ける。

 しばらく拳を避けながらさりげなく移動していると、なかなか当てられないことにイライラしたのか最終的に、


 ドゴッ!


「なんで……私……?」


 近くにいたロティアに腹パンし、そのままロティアは床に倒れた。……よし、計画通り。


「え? あ! ごめんロティア!」


 どうやら近くにいたのが誰か気にしていなかったらしい。


「さて、片付けるとするか」


 ロティアは気絶したままで、小夜は恥ずかしさで逃げ回り、ヴラーデは隙あらば記憶を奪おうと殴りかかってくるため片付けに時間がかかってしまったのは言うまでもない。

次回予告


ロティア「ヨータが本当に酔ったらどうなるのかしら?」

陽太  「いや知るわけねえだろ」

ロティア「そうよねえ……今度また混ぜとくわね♪」

陽太  「おい」

ロティア「そういえば最近あそこ行ってないわね」

陽太  「ああ、そういえばそうだな」

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