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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第2章 新たな町に行けば新たな出会いがあります。
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31. 解決したなら帰りましょう。

 町長の執務室では簡単な取り調べを受けた。その時にインフィさんや他の冒険者から得た情報も聞いた。


 まず、最初にインフィさんに会った時に飲んだお茶。あの時点で既に仕込まれていた。

 摂取すると体内の魔力を放出してしまう毒を薄めたものをあのお茶に微量入れていた。つまり俺たち四人は魔力を少しずつ放出しながら町を歩いていたことになる。


 三人が操られたと勘違いする直前の爆発。あれはあのタンクから魔力を転送して引き起こしたもの。

 その爆風に紛れて俺に針を刺すことで薬を入れていた。首に走った小さな痛みがそれだ。前述の毒の解毒薬と【感覚魔法】の魔導具を混ぜたもので、放出された魔力が見えるようになり、その元となっている人物を無表情に見せ、その声もシャットアウト。また本人を無表情にして喋らせずその違和感も感じさせない。

 靄の正体はただの魔力だったわけで、逃げる時に振り返った際に靄がなかったのは毒が切れたため。ていうか魔導具の効果の幅広すぎだろ。


 しかし俺はインフィさんと一度会話している。

 そう言うと、あれもお茶に含まれていた魔導具の効果だと教えてくれた。一時的に喉にスピーカーのようなものが貼り付き思念を受信して声を出すというもの。自分の声に感じた違和感はこれだった。


 あの後もらった夕食に本人の意思を残す程度に洗脳する【精神魔法】の魔導具が入っていたと聞いた時はぞっとした。ここに来る前に借りたブレスレットが役に立った形だな。

 ただそのせいであそこにいた冒険者たちはこの町に来てからの記憶がないらしい。その人たちもあの手この手で捕まえていったそうだ。

 因みに取り調べを終えた人たちから帰ってもらっていると聞いた。


 結界もタンクから魔力を供給して維持していて、魔法陣の発動にその分も回したため結界が解除され騎士が突入した。

 また結局インフィさんが言っていた謎の人物については何も分からなかった。


 とまあ、こんな感じ。

 俺たちは依頼達成ということでラーサムに戻ることに、小夜は俺たちについてくることになった。

 どういうわけかルナが召喚魔法の研究をしていることを知っていたリッシュさんの提案でルナが召喚したことにしようということになったためだ。善一(よしかず)もついでにそうしとくか。


「それでは~、みなさんまた来てくださいね~」

「はい、ありがとうございました」

「お幸せにー」

「なっ!」


 ロティアの一言で顔が赤くなるルーレさん。分かりやすいなー。

 こうして俺たちはモトナの町を出た。




「ところで、どうするの?」

「何が?」


 町を出た直後、ロティアが尋ねてくる。


「サヤちゃん、魔物との戦いなんて見せたら卒倒するんじゃない?」

「……」


 全く考えてなかった。


「小夜、これから時々グロ映像になるかもしれないが……大丈夫か?」

「え?」

「あのアニメもそこそこ流血表現とかはあったが、比にならないくらいグロいぞ?」

「……」


 泣きそうな顔でしばらく悩んでいたみたいだが、


「頑張って、みます」

「無理はするなよ?」


 小さく頷くのを確認して、


「だそうだ」

「そう。安心してサヤちゃん。あなたには傷一つ付けさせないから。ヨータが」

「俺に振るのかよ!?」

「だって【空間魔法】以上のことなんてできないわよ?」

「う……」

「ま、いいわ。行きましょ」


 しばらく歩くと、ゴブリンが一体いたので試してみることにした。当然【空間魔法】で小夜の周りを固定してある。

 まず左足を浅く斬って様子を見てみる。小夜は既につらそうだがちゃんとそれを見ている。血は大丈夫そうだな。

 次に右腕を切断。目を背けたがチラチラと努力しているのがうかがえる。うーん際どい。

 思い切って首をはねてみる。……ダメか、見向きもしなくなった。

 正直先が思いやられる。グロ耐性ってどうやって付けてあげればいいんだ。……やっぱ慣れるしかないよなあ、俺もピアスがあるからどうにかなってるところもあるし。かと言ってこのピアスを着けさせるのもなあ……


 とりあえずそこは少しずつ慣れてってもらうことにして進むことにする。

 昼食時、小夜はやはりヴラーデの料理に驚いていた。料理はすると言ってたが……まあヴラーデに勝てる奴なんてそうそういないだろ。




 行きと同じく風呂を作った時、出てきたロティアが落ち込んでいた。


「ねえ……サヤちゃんの……ヴラーデ程じゃないけど……私よりも大きかったのよ……」


 その視線がどこに向いてるのか分からないんだが誰に話しかけてるんだ?


「背も小さいしあんなナヨナヨしてて細そうだったのに! どうしてそこだけ!」


 小夜に聞こえてるから。ちょっと刺さってるから。


「落ち着け」

「ふにゃっ!」


 とりあえず頭を叩いておく。


「うぅ……誰も、誰も私の気持ちなんて分かってくれないんだああああ!! うわああああん!!」


 ロティアが大量の涙を流してどっかに走り去っていった。どうしたんだあいつ、キャラが崩壊してるぞ。

 ここは一応魔物とか出るとこなんだけど不思議と心配はできなかった。その後普通に帰ってきたし。




 小夜がテントに入った後、日課となったピアス外しを行い俺もテントに入る。

 案の定寝ていたヴラーデを確認し、小夜の隣で横になると、服を弱く掴まれる。


「……眠れないのか」


 小声で尋ねたが返答はなし。


「まあ不安だよな、いきなりこんな世界に飛ばされて」


 俺だって怖いものは怖い。今はピアスを着けてないから尚更だ。でも、


「俺は、守れるものは守りたいと思ってる。もちろん、小夜も」


 ルナがいなくなった時の自分の荒れ様は覚えている。あの時は勘違いもあったし別に二度と会えないと決まったわけじゃなかったから前向きに戻れたが、もし本当に俺が殺していたら……いや、そんなことを考えるのはよそう。

 別に俺は勇者や救世主などではないから全てを助けるなんて無理だしそうしようとも思えないが、この手が届く範囲、自分の日常となった範囲は守り通したい。

 ヴラーデたちはもちろん、小夜も同じ日本人として。というかルナに瓜二つなのもその気にさせる原因かもな。


「守りきってみせる。もう、誰も、失いたく……ないから……」


 小夜にかけるというより自分に言い聞かせるようにして、意識を沈めていった。




 ロティアに体を揺すられ目を覚ます。体を起こそうとして抵抗を感じたので見てみると、小夜が服を掴んだまま眠っていた。

 振りほどくのも忍びないのでロティアに尋ねる。


「あー……このままでいいか? ちゃんと【空間魔法】は維持しとくから」

「……仕方ないわね。断る理由もないしいいわ」


 なんか気になる言い方だがいいか。


 当然暗い中で暇になるわけだが【空間魔法】の実験が途中だったことを思い出して色々と試した。




 翌日、同じように進んでいると、複数の人が近付いてくるのが分かった。


「誰か来るぞ、構えとけ」


 そして出てきたのは一人の男。


「よお、また会ったな」


 ……えーと、


「……誰?」

「さあ?」


 ロティアに尋ねるがそう返ってきた。


「ふざけんじゃねえぞ! てめえらだろうが! 透明な壁で閉じ込めて道に放置してったの忘れたとは言わせねえぞ!」


 あー、なんかそんなこともあったな。無事だったのか、運のいい奴らめ。


「だが今度は油断しねえ! 変なことする前にぶっ飛ばしてやへぶっ!?」


 こっちに突撃しようとして顔面を思いきりぶつける。喋ってる間にそいつの四方に壁を固定しておいたから当然の結果。

 しかし動き出しで勢いがなかったためかダメージは少なそうだ。


「ぐっ……またその変な壁か……もう容赦しねえ! てめえらやっちまいな!」


 直後、小夜の後ろから振り下ろされた剣を受け止める。気配でバレバレだっつの。


「やらせると思うか?」


 そして小夜の周りを固定する。微妙に隙間を残したため酸欠にならないはずだ。


「小夜、見たくなければ目つむってていいからな」


 十人足らずの盗賊たちは俺たち四人であっという間に殲滅。はっきり言って弱すぎ。

 生け捕りにした方が儲けが出るので殺してはないが、連れてくの面倒だよなあ。


「くそ、なんなんだてめえら!」


 最後に残るのは当然閉じ込めたこいつ。


「どうする?」

「そうね……また同じことになるのも面倒だし、今回は潰しましょうか」




 ロティアが尋問で聞き出したアジトに向かう。この盗賊もそこまで馬鹿じゃなかったのか場所が変わっていた。

 因みに尋問(くすぐり)の様子を見ていた小夜はしばらく体を震わせていた。


 そして大して人数が残っていなかったアジトもすぐに制圧。あまり多くない戦利品は全てポーチの中、盗賊たちは一つに繋いで連行中。ロティアの技術が素晴らしいのかこいつらがダメなのかは知らんが抜けられる気配はなかった。

 黙ってついてくると思ってたらロティアから視線を逸らそうとしていることに気付いた。何されたんだろうか……


「陽太さん」

「ん?」


 小夜の方から話しかけてくるとは珍しい。


「私を、鍛えて、ください」


 ……そうきたか。

 何も知らない異世界人を鍛えてくれる人にあてはないし俺が面倒を見ることになる気はしていたが、まさかそっちから来るとは。


「俺でいいのか?」


 一応確認のために問う。


「はい。よろしく、お願いします」


 と言って頭を下げる。


「……まあいいが、まずは戻ってからだな。それまでちょっと待っててくれ」

「はい」


 俺の経験は教会の獣人と模擬戦しただけなので、どう鍛えればいいのかという考えがまとまっていない。

 ラーサムに戻るまでにある程度決めときたいな。




 ラーサムにも近くなった頃、そういえばヴラーデの口数が少ないなと思って見てみると、こっちを凄い形相で睨んでいた。


「ど、どうした?」

「……別に」


 これは相当不機嫌でいらっしゃる。俺につられて視線を向けた小夜がびっくりして俺を盾にしたくらいだ。

 こういう時は下手に触らないに限る。原因も分からないのに余計なことして爆発させるわけにもいかないからな。決して怖いからじゃない、決して。

 というかこういう時はロティアの出番だろ、と思ったのだが……


「お前はお前でどうした」

「べっつにぃ~?」


 一歩引いた位置でニヤニヤとしている。なんだこいつうぜえ。


 結局ラーサムに着くまで気不味い思いをすることになってしまった。

次回予告


陽太「なんか次回は小夜の意外な一面が見れるらしいです」

小夜「!?」

陽太「出てきたばかりなのに意外も何もないと思うんですがどうでしょう」

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