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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第2章 新たな町に行けば新たな出会いがあります。
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30. また日本人が増えました。

「さあ、私の研究が報われる時が来た!」


 魔法陣が強い光を放ち目を開けていられなくなる。

 だが、それがずっと続くわけはなく、すぐに弱まっていく。


「なんだ、これは……」


 インフィさんの声に目を開き、まだ弱い光を放っている魔法陣を見ると、


「え?」


 中央に人が横たわっている。こっちを向いていないため顔は見えないが、黒く肩より少し下まで伸びた髪と平凡なセーラー服はその人が女子学生であることを示している。


「まさか、異世界召喚……?」

「なんだとっ!?」


 俺の呟きにインフィさんが声を荒げる。


「異世界召喚魔法は教会の秘匿のはず。これでは成果として表に出せないじゃないか、くそっ!」


 まだそんなことを言ってるのか……!

 しかし、異世界召喚の魔法陣は俺の知る限り教会やルナにルオさん、魔族しか持ち得ないはず。それがなんでこんなとこに? 教会やルナたちがわざわざ広めるとは思えないし、魔族だって……あ!


「インフィさん!」

「……なんだ、私はこれからどうするか考えているんだ、邪魔しないでもらおうか」

「あの魔法陣、拾ったって言ってましたけど、もしかして小さい紙に書かれてたんじゃないですか!?」

「……君のだったのか。それならそうと言ってくれればよかったのに」


 と言ってポケットからその紙を取り出す。


「俺だって今気付きましたよ!」


 正確には俺のではないが、心当たりがある。

 善一(よしかず)がルナに見せようとしていたがなくしたと言っていた魔法陣。そして善一はこの町に一度来ているとも言った。

 だがそれだけでは不十分なのでインフィさんに尋ねたのだが、本当に出てくるとは……!

 一応その紙を善一に見せるまで百パーセントそうだとは言い切れないが、可能性は非常に高い。


「とりあえず、その紙は返してください」

「ああ、私にはもう必要ない。拘束も外しておこう」


 そう言って俺たちの拘束を解き、返してもらった紙はポーチに入れた。


「しかし、私はこれからどうすればいいんだ……」

「……自分のやったこと分かってますか? 直に――」


 部屋の扉が乱暴に開かれ、


「インフィ・レーヴォさん、身柄を確保させてもらいますよ」


 ルーレさんを先頭に騎士が複数この部屋に入ってくる。

 実はここに来る前に町長への報告を済ませており、騎士たちにここの入り口で待機してもらって結界の解除と同時に突入するよう言ってあったんだが、結界解除したっけ?

 因みにその時ルーレさんが隊長であることを知った。


「チッ、魔法陣の発動のために結界を解除しなければいけないのがここで裏目に出るとはな……」


 なるほど。

 結局はただの研究員であるインフィさんに抵抗の術はなく捕まることとなった。


「行方不明となっていた冒険者六名、他四名の無事を確認しました!」

「そうですか。指示していた通り客室に運んでおいてください。ヨータ君、君も来てください」

「はい」


 ルーレさんが色々と対応している。他四名というのは未だ起きないヴラーデたちと召喚された女子のことだ。


「待て、一人足りないぞ」

「……どういうことですか?」


 しかしインフィさんの言葉に足を止め、ルーレさんが尋ねる。


「一人だけ自ら協力してくれた人がいたんだが……」


 まあ、そりゃ行方不明にはカウントされないわな。


「その人の名前は?」

「……ん? 何故だ? 思い出せない……」

「特徴は?」

「……ダメだ、記憶の中のその姿がどうしてもぼやけてしまう。白と黒しか分からない……」


 どう考えても何かされているが騎士たちが調べても何も出てこなかったため、いつの間にかここを出ていたことにして俺たちもここを出た。




 先にインフィさんを尋問をするということで、俺はヴラーデたちがいる部屋に案内してもらった。


「こちらです」

「ありがとうございます」


 中に入ると、


「あ、ヨータ、遅いわよ」

「……すまん」


 ロティアにそう迎えられ、三人とも起きてたのかと驚きながら返事をする。


「聞いたわよ、インフィさんが異世界召喚を行ったって」


 もう聞いてるのか、こっちから話す手間が省けたな。一応ルーレさんに頼んだのでこの部屋にいるはずだ。

 異世界召喚に関してはあの場にいた人や関係者のみの情報とし、決して口外しないように言われた。


「で、その召喚されたって娘なんだけど……」


 と手招きされる。

 そういえばまだ顔を見てなかったと、ロティアが長めの前髪を慎重にどかしたところを覗いてみると……


「……え?」

「やっぱり似てるわよね……」


 その顔はルナにそっくりだった。ルナの外見年齢よりは幼く髪の色も違うが、姉妹と言われたらすぐに信じてしまいそうなほど。

 一応この世界の住人であるルナとそんな関係ではないと分かっているが、それでも似ているものは似ている。


「んん……?」


 四人で顔を覗き込んでいるとどうやら起きたようだ。

 ゆっくりと目を開け、日本人らしい茶色い瞳を俺たち一人一人の顔に向けた後、急に目を見開き息を大きく吸って……ってまさか。


「きゃああああああああああああああああああああ!!!!」


 そんな悲鳴が響き渡った。

 ああ、そうだよな……目が覚めていきなり知らない人に囲まれてたらそうなるよな……


「だっ誰ですか!?っていうかここどこ!?まさか誘拐!?私をどうする気ですか!?身代金なんて求めてもそんなにお金ないですよ!?すぐに警察が来てあなたたちをむぐっ!?」

「落ち着いてくれ頼むから」

「んー!!」


 怯えてパニック状態となっていたので口を塞いで強引に黙らせる。当然暴れられているがそのくらいじゃどうにもならん。

 というか声までルナそっくりだったな。やっぱり何か関係あるんじゃないのか?


「ヨータ、『ケーサツ』って何?」


 ヴラーデがそう尋ねてくる。この世界には警察ないのか。というか言葉は通じてるみたいだな、なんで俺だけ……


「犯罪者を捕まえたり、町の警備をしたりする職業だな。この世界なら……兵士や騎士が近いか?」

「ふーん」


 違う気もするがまあ大体合ってるだろう。


「ところでヨータ。手放してあげて?」

「え? ……あ」


 ロティアにそう言われ見ると完全に気絶していた。だんだん抵抗しなくなってきたと思ってたが強く押さえすぎたか。


「どうしました!?」


 案の定駆けつけてきた騎士たちには謝って戻ってもらった。




「んん……ひっ!」


 そして再び目を覚ます。そして俺と目を合わせると怯えて後退る。

 因みに他の三人には隠れてもらっている。


「あー、その、なんだ、さっきは悪かったな。この状況について話したいんだが……いいか?」


 しばらく体を震わせるだけだったが、やがて小さく頷いた。


「と、その前に自己紹介だな。朝倉陽太、高二だ」

「……香月小夜(こうづきさや)、中三、です」

「じゃあ香月。香月はネット小説って読むか?」

「え?」


 言って気付いたが、この状況について話すって言ったのに突然この質問はないな。


「関係ある話だから答えてくれ」

「えと、読まない、です」

「そうか、じゃあ――」


 有名なのを、と思ってアニメ化された異世界召喚・転移の小説のタイトルを出していくと、何個目かで知ってると答えてくれた。好きな声優が出てるんだそうだ。


「それに似た状況、つまりここは日本でも地球でもない、別の世界だ」

「え?」


 驚くと同時に体の震えが止まる。これはフリーズしたな、戻るの待つか。


「……大丈夫か?」


 しばらくして体が震え始めたので尋ねる。


「は、はい。でも、本当、なんですか……?」

「ああ。この世界は科学はそんなにだが、魔法がある世界だ。えーと……これでいいか」


 ポーチを外し、香月の目の前で軽く上に投げて【空間魔法】で固定する。


「え?」

「ほれ、触ってみろ」

「え? ええ??」


 ペタペタと固定した箇所――ポーチを覆うようにしたのでその表面――を触っている。


「種も仕掛けもない、正真正銘の魔法だ」

「あれ?」


 【空間魔法】の転移でポーチを自分の手元に戻し、同時に解除したので消えたように見えたことだろう。


「ええ!?」


 俺の手元にそのポーチが戻っていることのを見て更に驚いたようだ。


「とりあえずアニメみたいな世界だというのは分かったか?」

「は、はい。で、でも、私、帰れるんですか……?」


 泣きそうな顔をされると答えづらい。


「ごめん、帰る方法は……見つかってない」

「……」

「一応俺を召喚した人がその研究をしていたんだが、最近行方をくらませてしまって、今はその人を探してる」

「……うぅ」


 そのまま香月は静かに泣き始めた。

 考えてみれば当たり前だ。いきなりこんな世界に放り出されて、しかも香月が知ってたのは普通に人が死ぬシリアスなバトルものだから自分がいつ死ぬかも分からない状況と思ってるだろう。更にそこから帰れないと聞いて平然としてる方がどうかしてる。ルナのせいだが俺のことですね。


「ねえ、私たちいつまでこうしてればいいのかしら……?」

「さあ……?」


 うっせーぞ外野。さっきから『コーニ? チューサン?』とか各タイトルもオウム返ししてたの全部聞こえてるからな? 香月には聞こえてないみたいだからいいけど。

 ていうか隠れてろとは言ったがどうして三人で狭いところに入り込んだんだ。さっきから微妙に体力ゲージが減ってってるんだけど、どんな体勢してんのお前ら。


 やがて香月は泣き止み、


「あ、あの」

「ん?」

「私は、どうすれば、いいんですか……?」

「好きにしていいぞ」

「え?」


 だって、わざわざ俺が縛ることでもないだろう。


「俺みたいに冒険者をやってもいいし、それが嫌でも別の仕事だってあるだろ」


 そういえばこの世界の職業には詳しくないが……まあ、イキュイさんに聞けば良いか。


「なら、私、冒険者に、なりたい、です」


 え、意外。言葉が細かく切れちゃうほど気弱っぽいし真っ先に否定すると思ったんだが。

 さっき言ってた好きな声優がそのアニメで演じてるキャラが冒険者をやってる強いキャラだからだそうだ。


「でも危険な仕事だぞ、大丈夫か?」


 別に挑発してるわけではなく、本気で心配して問う。


「はい。私、こんな性格、ですから、いじめられてたことも、ありましたけど、だからこそ、強く、なりたいん、です」


 ……そんな強気の目をされたら無理に否定するわけにはいかないな。好きにしろとも言ったし。


「そうか。じゃあこの世界について説明したいんだがその前に」

「?」

「さっき俺といた三人をここに連れてきたいんだが、いいか?」


 息が切れ始めてるから早く解放してあげたいんだよ。

 香月は少し迷った後、小さく頷いた。


「よし、そこの三人もう出てきていいぞー」


 ドオォォォォン!


 大きな音を立てながら勢いよく出てきたせいで香月がビクッとなる。


「……あー、すまないな。おい、もうちょっとゆっくり出てこれなかったのか」

「いや……もー……無理……限界……」


 息を切らしながらロティアが答える。

 仕方ねーな、と回復する間に香月にこの世界の説明――ルナから受けたものを所々省略したもの――をした。

 その際に下の名前で呼び合うのが一般的と言って互いに『小夜』『陽太さん』と呼ぶことになった。最初は『陽太先輩』だったんだが、なんだかむず痒くなったからやめてもらった。

 やっぱり魔法が使えないかもしれないという話の時は少し落ち込んでたな。

 ついでに善一のことと俺たちのユニークスキルについても話し、契約もしておいた。他の人のは決めポーズだったり普通の立ち姿だったりするアイコンだが、小夜のは怯えてる様子のものとなった。

 因みに小夜の元の世界での最後の記憶は休み時間に廊下を歩いているところで、ちょっと出るだけだったのでスマホなども持ってなかったそうだ。だから手ぶらだったのか。


「それでどうだ? 何か見えたり聞こえたり、変に感じることはあるか?」

「えと、わからない、です」


 少なくとも常時発動型(パッシヴスキル)ではないということか。


「まあいつか調べればいいか」


 確か教会に確認用の魔導具があったはずだし、貸してもらえば……貸してもらえるのか?


「……っと、もう大丈夫そうだな。こいつらは俺と行動を共にしてる冒険者だ」

「ロティアよ、よろしくねサヤちゃん」

「ヴラーデよ、よろしく」

「……ヨルトスだ」

「は、はい、よろしく、お願いします」


 ロティアが手を出したのに避けられて少し落ち込んでいるがまあ触れないであげよう。

 五人で色々と話しているとコンコンとノックの音が響き、


「町長と隊長がお呼びです」


 その声が聞こえて五人でそこへ向かった。

 小夜は見慣れない騎士が怖いのか俺にしがみつき最後尾に回された。正直恥ずかしいんだが拒絶するのも悪いのでそのままリア充っぽいシチュを堪能させてもらうことにした。

次回予告


陽太  「結局謎が残ってるままな気がする」

リッシュ「ということで~、解決編ですよ~。ばっちり真相を聞いておきました~」

陽太  「マジですか」

リッシュ「でも~、それだけだと文字数が少ないので~、そのまま帰っちゃってくださ~い」

陽太  「えっ」

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