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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第2章 新たな町に行けば新たな出会いがあります。
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29. いつから錯覚していた? って言ってみたいですよね。

 ……なんだこれ。


 無表情なロティアが同じく無表情のヴラーデの胸を揉んでいる。どういう光景だってばよ?

 しかしヴラーデは悶えてるかのように体を動かしている。流石ロティア……とか言ってる場合じゃない。

 操られてるんじゃなかったのか? そうだとしたらこんな行動するとは思えないんだが。


 しばらく唖然としていると、満足したのかロティアが手を放し、ヴラーデは力が抜けたかのように座り込む。

 そして立たせようと差し伸べられたロティアの手を取ると、思いっきり腹パンした。

 とはいえあまり力が込められなかったのか、ロティアは気絶することなくお腹を抱えて蹲った。


 ……ホントになんだこれ。

 今の一連の流れが全て無表情で行われていて正直かなりシュールなんだけど。

 むしろまるで日常の光景から表情だけを切り取ったような……


 ロティアは床を這って移動してなんとかノートと筆記具を取ったかと思うとこちらに近付き、何かを書き始めた。


『これから出す質問に答えなさい。

 「イエス」なら首を縦に、「ノー」なら首を横に振ること。

 分かったら一度頷いて頂戴。』


 ……は? どういうことだ?

 一度ロティアの顔を見るが、相変わらずの無表情。

 ノートを強調するように更にこちらに近付けられ、抵抗しても無駄そうだと頷く。


『さっきの茶番中に会話していて、

 今もこの質問を読み上げてるんだけど、

 私たちの声は聞こえているかしら?』


 ん? そもそも口すら動いてないぞ? 首を横に振る。

 っていうか茶番って自覚あったのか。


『物音は聞こえるかしら?』


 頷く。


『この町での最初の爆発の後、

 私たち以外の声は聞いたかしら?』


 最初の爆発って……三人が操られ始めた時か。あの後インフィさんと会話しているので頷く。


『私たちに異変が起きている。

 そう思っているんじゃないかしら?』


 ……え? 違うのか? 不安が生じるが一応頷く。


『今からヨータの拘束を解くから、

 ルナさんのポーションを取り出して飲みなさい。

 ただし、私たちに攻撃しないこと。従わないと……』


 寒気がしたので高速で首を縦にぶんぶん振る。

 ロティアに拘束を解いてもらい、言葉通りにポーチからルナのポーションを取り出して勿体ないと思いつつ飲むと、視界に映るロティアたちの姿がノイズが入ったかのようにぶれる。

 目を擦り、再度目を開くとぶれはなくなっていたが、


「私の声が聞こえるかしら? ヨータ」


 いつも通りの三人がそこにいた。


「え? あれ? なんで? さっきまで――」

「私の声が聞こえるかしら?」

「あハイ聞こえます! 聞こえるんで落ち着いてください!」


 黒いオーラを放つ笑顔に思わず丁寧語になってしまう。


「とりあえず元に戻ってくれたみたいね」


 黒いオーラを引っ込めたロティアがそう言う。


「……元に戻った? 俺が?」

「やっぱり自覚はなかったみたいね。異変が起きてたのは私たちじゃないわ。ヨータ、あなたの方よ」

「は? どういうことだ?」

「その前にヨータの話も聞きたいわね。私たちがどう見えてたのか、インフィさんをどこかに連れてった後の話もね」


 三人が操られたと思った時から、今に至るまでを話す。


「私たちと逆ね。こっちからすればヨータが無表情だったのよ。一言も喋らない冷たい人形みたいだったわ。何度呼び掛けても反応しないし」

「……そうだったのか。でもなんでだ? このブレスレットがあれば大丈夫なんじゃなかったのか?」

「結論から言うと支配系や暴走はないと見ていいわね。誘導されて間接的に操られた、とでも言えばいいのかしら」

「誘導?」

「例えば靄は私たちへ攻撃させるために見せたんじゃないかしら。正体はともかくね」

「なるほど」


 詳しく聞くと、まず俺が最初に逃げた後、結界が張られるのが見えたため町から出ず宿に戻り対策を練る。もうこの時点でロティアは転移させられると予想していたらしい。ヴラーデが最初に使ったあれもその対策だとか。

 更にロティアとヨルトスは気絶したふりだったらしい。マジかよ。


「でも確かに縛ったはずだが?」

「あのくらいどうってことないわよ」

「えー……」


 なんなのこいつら。

 そして俺を気絶させて拘束しここまで運び、ロティアは『ヨータは自分の意思で動いている』と予想を立てて話したそうだ。最初は逆に自分で動いてないから攻撃が甘かったと思ってたみたいだが、三人との戦い、特にヴラーデに視力を潰された時に全く攻撃しなかった点などからそう思ったらしい。

 それで確証を得るためにあの茶番をしたというが、正直必要だったのかは疑わしい。


「ロティアが『いい考えがある』っていうから……揉まれるなんて思わないわよ……」


 とヴラーデも言ってたしやりたかっただけなんじゃないのか。

 一応その時俺は少し動いていた体を完全に停止したらしく、それで『自分の意思がなかったら無視してるはず』と確証を得て質問をすることにしたそうだ。

 ルナのポーションを飲ませたのは予想した解決法の中ですぐにできるからだそうで、あれで戻らなくても他の手段を用意していたらしい。


「で、結局原因は――」

「あら、分からないとは言わせないわよ」

「いや分かってるよ」


 誘導とはいえ俺が操られてた、となると不可解な点が出てくる。それは――




 研究所の裏、インフィさんの研究施設の入り口で、首飾りに魔力を流す。

 しばらくして階段が現れたので中に入るとインフィさんがいた。


「ふむ。意外と早かったと言うべきか。一人ずつ運んでくると思ったんだが」


 背中合わせに縛られた三人を見てそう言う。


「あの部屋の場所は覚えているだろうか?」


 頷く。


「そうか。では私は準備をするから先に向かっていてくれ」


 と言って、行きかけるが、


「ああそうだ。昨日はどこに泊まってたんだ?」


 振り向いてそう聞かれたが無言を返す。


「……そうか。ではよろしく頼んだよ」


 今度こそ去っていったのを確認し、


「ふー、危ねー」


 一度行きかけた時に無表情を止めかけてた、ホント危なかった。


「ギリギリ及第点ね」


 いつの間にか自由になっていたロティアがそう言う。


 あの時『俺が無表情だったなら普通に会話していたインフィさんはおかしい』ということでインフィさんが犯人であるという予想を立て、こうしてここに忍び込むことにした。町の外へは出られない以上、俺達でどうにかするしかないしな。

 その際に、ロティアから無表情の演技指導を受け、三人を縛って俺は無表情、三人は気絶したふりでここまで来たというわけだ。


 そして四人で一緒に施設内の探索。四人一緒なのは手分けした時の危険性が計り知れないからとロティアが提案した。

 探すのは行方不明となった冒険者、結界の仕組みと解除法、異変の直接の原因、インフィさんの目的に繋がるもの。結界に関してはロティア曰く『大規模な結界をこれほど長く維持できるのはおかしい』とのことで、異変に関係あるかもしれないからで、また解除しないといけない理由もあるからだ。

 結界もそう多く張れないのかそれぞれの部屋は普通に開けることができたが、大半は魔導具の製造法だったり、研究の資料だったりで目当てのものが出てこない。


「この先に誰かいる……!」


 魔力を確認するがインフィさんのものではない。幸い曲がり角の先なので丁寧に覗くと、剣を持った獣人の男性の姿。尻尾から判断するに狼だな。行方不明になった冒険者か?


 と思っていると、何もない表情がこっちを見た。


「嘘!? 気付かれた!?」

「え!?」


 まだ結構距離があるはずなんだが……


 もう直接見てないがダッシュでこちらに向かってるのが気配で分か……マジかよ!?


「後ろからも来てる!」


 やがて見えてきたのは純人の女性。杖を持っているから恐らく魔法使いだろう。

 そして間が悪いことにここは一本道。つまり、


「挟み撃ちか……!」


 だが、逆に対応も楽だ。壁を固定すれば二人ともこちらには来れない。二人とも激突はしなかったが破ろうと攻撃をしている。一応酸欠にならないよう若干の隙間も空けてある。


「どうする!?」

「ちょっと待って……!」


 それでも一時しのぎには変わらない。更に二人とも強い冒険者なのか魔力を多めに流さないと壁が維持できない。スマホの画面でも俺の魔力が目に見えるスピードで減ってってる。


 だが、不意にその攻撃が止む。


「大人しく投降してくれないか」


 獣人の男性の後ろからインフィさんが現れてそう言う。


「それにしてもやはり効果が切れてしまっていたのか。まだ数時間は大丈夫だと思っていたんだがな。一体何をした?」

「残念、企業秘密だ」

「そうか。改めて言おう、大人しく投降してくれないか。私の研究に協力してくれればそれでいいんだ」

「人のこと操っといて何が協力だ」

「そうか、残念だ」


 ポケットから取り出したスイッチを押すとシャッターが下りてきて俺たちを閉じ込める。


「こんなもの……うっ!?」


 シャッターを壊そうとするが体が痺れ眠気に襲われる。三人も同様らしく俺たちは揃って床に倒れ意識を手放すこととなった。




「うぅ……はっ、ここは!?」


 まだ痺れてるのか思うように動かない体で部屋の中を見ると、端にタンクのようなものがあり、さっきの二人を含めた冒険者と思われる人たちが壁際で座り込んで……寝ているのか? ここからではよく見えない位置にいる人もいるっぽいから何人かは分からない。

 俺たちはというとタンクの近くの壁に手足を拘束された状態で繋がれている。今の状態では破れそうにない。

 そして部屋の中央には魔法陣。これで一体何をするのか。


「もう目覚めたのか……かなり強い薬を使ったんだがな」


 インフィさんが何かを操作しながらそう言う。


「まあいい。まだ麻痺は残ってるようだし、このまま始めるとしよう」


 すると、何かが吸われる感覚が走ったのでスマホの画面を見ると俺たちの魔力が少しずつ減っている。

 同時にタンクが少しだけ光る。まさかと思って【察知】を使うと、


「魔力を奪ってるのか……?」


 俺たち、正確にはこの部屋のインフィさん以外の魔力が減っていき、タンクの魔力が増えている。


「その通りだ。私は魔力の転送と保存の研究をしていてね。その成果を示すために君たちの魔力をもらっているんだ」

「な……それだけの理由で……?」


 無理矢理冒険者をさらわなくても、近くの別の町でギルドに依頼を出すとかやりようはあるはずなのに。


「それだけと言わないでもらおうか。私は彼女のせいで見放されたんだ。一刻も早くそれが間違いだったと証明する必要がある。強引な手段も全てそのためさ」

「彼女?」

「ルオ・シフスのことだ」

「え?」


 なんでそこでルオさんが出てくるんだ?


「あの時、別の研究の発表をした時、何の偶然か彼女の複数の魔法を含めた魔導具の発表と重なってね。それと比較されれば……後は分かるだろう?」

「……それルオさんは何も悪くないんじゃないですか?」

「そんなことは分かっている。実際彼女は尊敬しているし魔導具も使わせてもらってるからね。だから私は彼女ではなく見放した奴らを見返すんだ」

「だからって――」


 突然魔法陣が光り出す。


「やっとこの日が来たか……!」

「この魔法陣は……?」

「最近拾ったものなのだが、調べてみると発動に尋常でない量の魔力が必要であることが分かってな、私の研究の成果として相応しいと思ったのさ」


 変化がないように見えて嬉しそうな口調で言うが、そうじゃない!


「これは何の魔法陣なんですか!?」

「さてな、私でも分からん部分が多かったからな」

「そんなものを使おうってんですか……!」

「安心しろ、詳細が不明なだけで魔法陣そのものに危険性はない可能性が高いということが判明している」


 そんな言葉を簡単など信用できず、かと言って拘束され痺れが残っている体ではできることはないので見守ることしかできない。


「さあ、私の研究が報われる時が来た!」


 その言葉と共に操作を終了すると、タンクから魔力が流れた魔法陣は強い光を放ち始めた。

次回予告


陽太  「魔法陣……うっ、頭が」

インフィ「どうした?」

陽太  「いや今まで魔法陣って一種類しか聞かされてない気がして」

インフィ「一応それ以外にもあるぞ? 効率が悪いから使わないだけで」

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