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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第2章 新たな町に行けば新たな出会いがあります。
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28. 三人と戦うことになってしまいました。

 研究所に到着したところでインフィさんを下ろすと、


「ついてきてくれ」


 と正面ではなく裏の方に向かっていった。

 そこでインフィさんが何かを操作すると地下への階段が現れる。


「私専用の研究施設のようなものだ。一応ここにも結界は張っていて、町に張ったのはそれの拡大版だな」


 そのまま一つの部屋に通される。色々と散らかってるが……


「汚い部屋で済まないね。滅多に他人を入れないから掃除する余裕がないんだ」


 その後、俺が出されたお茶を飲んでる間にインフィさんは簡単に怪我を治療し、


「では、あの時の様子を教えてくれ」

『はい』


 あれ? なんか違和感が。自分の声なのに微妙に違う所から出てるような奇妙な違和感。


「ん、どうかしたのかな?」

『あー、いえ、なんでもない、と思います』

「そうか、何かあったら言ってくれ」

『はい、ありがとうございます』


 わずかな違和感を無視して、ヴラーデたちに靄のようなものが纏わりついていたこと、恐らく操られているであろうことを話す。


「なるほど。しかし、彼女たちは君に攻撃してきてないように思えるな」


 そう言われれば確かに。避けに専念してた気がする。逃げた時も魔法が飛んできたりはしなかったな。


『ところで、あの爆発は何だったんでしょうか。魔力はそれまで感じていなかったのですが』

「分からない。たまたま魔力が急に現れて大きくなるのを見つけたから咄嗟に近くにいた君の手を引いただけだ。私としてはそれで気を失ってしまって恥ずかしい限りなんだが」


 恥の欠片もない顔に見えるんだが俺だけだろうか。

 しかし、魔力が現れた、か。あの時は俺たち以外の気配はなかったはずだが……よっぽど隠れるのが上手かったりするのか?


「魔力を感知できなかったという靄も気になるが……やはり情報が足りないな。またついてきてくれ」


 今度は何もない、空っぽの部屋だった。


「この部屋は結界を張った上で私しか開けられないようにしてあるから、可能であれば彼女たちを拘束してここまで連れてきてほしいんだ。それで色々調べることにしよう」


 確かにこのままではヴラーデたちを戻す方法も分からない以上何も進展しないし、協力するか。

 というか結界多くね? 町を覆ったもの、この施設のもの、この部屋のもので三つ。その魔力はどこから来てるんだ? まあ企業秘密って言われそうだしいいか。


「そのために君にはこれを渡しておくよ。これに魔力を流すと私が持っている方が反応するから、その時は私の方でここの入り口を開けてこの部屋の前で待っていよう。そうしないと結界を通れないからね」


 結界がある、ということはあの部屋に直接三人を転移させるのは無理ってことなんだよなあ。あまり戦いたくはないんだが……

 渡されたのは首飾り。白い珠が一つ紐に通されたシンプルなもの。試しに魔力を流してみるとインフィさんが持っている珠が白く光った。

 常に着けておいてほしいとのことなので首にかけて珠は服の中に入れる。


「それじゃ、よろしく頼んだよ」


 頷いてここを出ようとする。


「……ああそうだ」


 ん? なんだろうか。


「良ければ夕食も食べていってくれ」


 このタイミングで言うか。




 というわけで夕食後、改めて外に出てどうしようか考える。

 今は三人とも宿にいるが、器用で火力が少し高く回復も行うヴラーデ、頭が良く司令塔で自身も戦えるロティア、察知や速さなどに優れたヨルトス、この三人の連携は敵に回したくない。というかこうして考えるとバランスいいなこのパーティー。

 操られててこの連携が機能するかは不明だが、機能した場合を考えるとリスクが高い。

 なのでバラバラにしたいところだが普通に考えると無理だろうな。誰が操ってるのかは知らんが離れる気配がない。

 ついでに寝込みを襲うのもあり得ない。というか操られてても寝るのかそもそも。

 【空間魔法】で閉じ込めるか? でも察知されてかわされそうだな。だからって宿ごと閉じ込めて酸欠を待っても俺の魔力が持つかどうか。持ったとしてもとんでもない時間がかかりそうだし、酸素ボンベ的な物を向こうが持ってたら意味がない。


 ……やっぱり転移しかないか。勝手に転移させるなと言われたが仕方ないとして見逃してくれよ。


 近くの適当な公園に移動し、剣を取り出して転移直後から行動を起こせるように準備する。

 さて、誰から転移させるか。一番火力があるヴラーデは先にしたいが、他二人は残すとロティアは対策を立てそうだし、ヨルトスは最大の警戒をするだろうからな。

 ……どうもさっきから操られてない前提で考えてる気がするが……何も考えず行動するよりはマシか。


 少し悩んだ後、最初に転移させたのはロティア。やはり何されるか分からない以上先に捕まえておきたかった。

 転移させた直後、反応される前に首に一撃を与えて気絶させる。まさか漫画やアニメで見たこれを自分がやる日が来るなんて思いもしなかった。原理はよく分かってないが、【体術】スキルのおかげかやり方がなんとなく分かる。不思議だ。

 地味に不安だったんだが、気絶はさせられるみたいだな。何度倒しても起き上がるようだったらどうしようかと思ってた。

 というかロティアが呆気なさ過ぎて逆に怖い。いや純粋な戦闘能力で見れば三人の中では下なんだが、それでもこいつは何か仕出かすからな。


 短剣と杖を回収し、ロープで縛って口も塞ぐ。少し離れた位置の木に寄りかからせて、次に転移させたのはヨルトス。

 だが転移させた瞬間に距離を取られる。やはり警戒されてたか。

 ヨルトスは【土魔法】の使い手なので地面に立っているとこちらが不利。だから軽くジャンプして【空間魔法】で固定した足場に立ち、そこから飛んで接近戦を仕掛ける。

 だが、いくら剣を振っても全く当たらない。俺の【剣術】スキルもそこそこ上がってると思ってたんだが。更に反撃も激しくさっきから紙一重で短剣を避けている。これは怪我させないとか言ってる場合ではないな。

 足場を固定して上に行こうとするが、何か呟く声が聞こえたかと思うと岩が飛んできた。何も喋らないと思っていたが魔法は違うらしい。

 一度上昇をやめてその岩を斬るが、


 ガンッ!


 何か強い衝撃が頭を襲う。気が遠くなるのを堪えて何が起こったのかを確認するとどうやら上からも岩が落ちてきたらしい。

 しまった、こいつ結構魔法での生成箇所が自由なんだった……!

 再びヨルトスの方を見るとロティアの元へ向かっている。間に合え……!

 上昇を再開し、もうすぐ着きそうなヨルトスを転移させる。足場は俺一人分の広さしかないため、走る体勢だったヨルトスは落下していく。流石にこれならこいつでも無事では済まないだろう。

 念のために足場を駆け下りてヨルトスを追うと、ヨルトスは手を下に突き出し、


「……[粘土(クレイ)]」


 そう唱える。すると地面が一瞬だけ淡く光った。

 そのまま地面がクッションと化したようにヨルトスを優しく受け止める。マジか、これでもノーダメージかよ……!


 だが、そっちに気を取られたな。


 俺の接近に気付いたのかヨルトスがこちらを振り向くが一瞬遅い。腹に剣の柄頭で落下の勢いも含めた重い一撃を与える。代わりに頬に薄い切り傷を受けたがそれだけだ。

 流石のヨルトスも気を失い、地面が元に戻る。ロティアと同様の処置を施しその横に置く。

 少し頭がふらつくと思ったら頭から血が出ていたのでポーションを飲んで治す。ルナが作ったものがもったいなかったので安物だが十分だった。


 ……ふー、これであと一人。だが少し疲れたな。


 少し休憩した後、ヴラーデを転移させる。しかしヴラーデが俺を確認した瞬間、顔を逸らし目を閉じ両手で何かを俺の目の前に出したかと思うと、それが強烈な光を発する。


 しまった、目が……!


 何かは分からないが、恐らくはロティアが持たせたものだろう。さっきの眩しさが残ってよく見えないが、【察知】と【繋がる魂(ソウルリンク)】をフル活用することで補う。

 ただその状態だと地形や魔力反応、場所しか分からないため迂闊に攻撃できない。胴を攻撃したつもりが頭だった、なんてことになれば大惨事だ。


「[火剣(ファイヤーソード)]」


 そんなことを考えているとその声が聞こえ、ヴラーデが迫ってくる。魔法で作られた剣だから見えなくても魔力を感じることで対応できているが、攻撃が鋭い。いつの間に【剣術】スキルを習得したんだ。

 とりあえず目が治るまで時間稼ぎをしなければと、ヴラーデの攻撃を避けたり剣で受け止めたりするが、この状態では無理があるのか、時々打撃を受けている。俺の服は打撃にも強かったはずなんだが、その上からでも少し衝撃が伝わってくる。


 小さいダメージが重なり息が切れてくる頃にようやく視界が回復した。結構攻撃を受けてしまったが、これでこっちも――


 あれ……?


 体がふらつく。そこまででかいのは受けてないはずなのに……

 考えても理由など分からないので耐えながらヴラーデと戦おうとしたところで、


 グニュリ。


 な……!?


 踏み出した足が深く沈み、勢いのまま前に転ぶ。同時に手にしていた剣もすっぽ抜けてしまう。


 これは……まさか!?


 気絶していたはずのヨルトスが地面に手を付けていた。横には同じく目を覚ましているロティア。二人とも拘束は完全に解けていた。どうして……!?

 そしてそれに驚いていたのが悪かった。急接近してきたヴラーデに気付く頃には、俺の剣の柄頭を振り下ろしていた。




 目を覚ますと、そこは敵の本拠地……などではなく、宿だった。

 すぐに気を失っていた原因、即ちヴラーデたちと戦っていたことを思い出し、はっとなって体を起こそうとするが動けず、どうやらきつく縛られてるようだった。

 そして周りには無表情の三人、ポーチと刃のない剣が近くに置いてある。こりゃ脱出は厳しいな。

 ……こうなるなら手間を承知で一人ずつ運べばよかった。早く助けたいと無意識に焦ってたのかもしれない。

 一応少しでも拘束が緩むように少しずつ体を動かしていると、俺が起きたことに気付いたらしいロティアがゆっくりとヴラーデの元に行くと、後ろから手を回し胸を揉み始めた。


 ……はぁっ!?

次回予告


陽太(次回、黒幕とその目的が明らかに! ……なったとしても俺も操られてバッドエンド一直線じゃないかこれ?)

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