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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第2章 新たな町に行けば新たな出会いがあります。
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27. 新たな町に到着しました。

 モトナの町に着いて、ロティアが門番に調査依頼で来た冒険者であることを伝えると、まず町長に会うことになった。ギルドないんだったなこの町。

 町の様子だが、活気があるわけでもないが活動はしている感じだ。異変があろうと仕事はしなきゃいけないからだろう。重傷者や死者は出てないらしいし。


 そのまま町長の執務室まで案内される。そういえばそういう立場の人と会うの初めてな気がするが大丈夫だろうか。地味にラーサムではそういう人を見たことも会ったこともないし。

 一応案内してくれた騎士からは『堅苦しいのは苦手な人だから気軽でいい』と言われたが……

 その騎士が扉をノックして、


「町長! ラーサムより派遣された冒険者をお連れ致しました!」


 ……しーん。


 その後も何度か呼び掛けるが……あの、騎士さん? だんだんノックが強くなってますよ?


「はあ……またですか。町長! 入りますよ!」


 乱暴に扉を開けると、中には筆記具を片手に机、というか書類の上で眠っている薄い茶色の長髪の女性。


「はあ……起きてください町長! 起きてくださいってば!」


 体を揺するが起きる気配がない。大丈夫かこの人。

 騎士が少し顔を赤らめて耳元で言う。


「起きてください! リッシュ!」


 名前を呼ばれたことでようやく女性が体を起こす。上半身しか見えないがかなりスタイルがいいおっとり系美人。二十代の純人に見えるがこの人が町長?


「ん~? おはよルーレ~」

「『おはよ』じゃないですよ全く! ほら、この人たちに挨拶してください!」

「……この人たちは~?」

「ラーサムから来てくださった冒険者です! 例の件についてですよ!」

「なるほど~」


 ……ホントに大丈夫かこの人。


「失礼しました~。私このモトナで町長をしております~、リッシュ・オレフです~。こちらの男性が――」

「私の紹介はいいです」

「つれないですねルーレは~」


 町長改めリッシュさんが拗ねた表情で、


「昔は可愛かったんですよ~? いつも『リッシュ、リッシュ』って私についてきて――」

「私の話はいいですから! 話が進まないでしょうが!」


 騎士改めルーレさんが顔を真っ赤にして黒歴史を暴かれまいと止め、こちらに促す。


「ロティアです。ところで、二人はどういう関け――」


 うずうずしていたロティアの頭を叩く。涙目で睨まれたが、そういう話をしにここに来たんじゃないだろうが。


「小さい頃からの付き合いですよ~。ね~?」

「……そうですね」


 答えるんかい。まあ正直、状況が状況じゃなかったら俺もこの二人は見守りたいんだがな。


 俺たちも自己紹介をして本題に入る。


「詳細は聞いてると思うので省きますね~。ざっくり言うと~、原因だけでも判明させて~、余力があれば解決もお願いします~」


 ホントざっくりだな。


「書類が増える一方なので~、私としては解決を望みます~。昨日も徹夜だったんですよ~、それでさっき――」

「町長が寝てるのはいつもでしょうに」

「も~、余計なこと言わないでよ~。それと~、ちゃんと『リッシュ』って呼んで~、っていつも言ってるでしょ~」

「ダメです。公私混同はよくないですから」

「でも~、さっきちゃんと呼んでくれたじゃないの~」

「あれは町長が寝てたから……ってまさか、起きてたんですか?」

「あっ」


 黒いオーラを出し始めたルーレさんにリッシュさんが焦る。


「いつか冒険者が来ると思って皆さんの宿は確保してありますので~、そちらをご利用してくださ~い。ルーレ~、案内してあげて~」


 逃げたな。


「はあ……分かりました。皆様、ついてきてください」

「よろしくお願いしますね~」

「町長、後で覚えておいてください。特に、戻ってきた時に寝てたら……分かりますね?」

「はっ、はい~」


 しかし逃げ切れなかったようだ。




 宿へ向かう途中。


「あの人もやる時はやるんですよ? あの歳で町長になるくらいですし」


 ルーレさんが愚痴り、ロティアが熱心に聞いていた。ヴラーデも聞いてないようで聞いてるな、チラチラと視線を向けている。


「ですが、普段がだらしなさ過ぎなんですよあの人は。そもそもですね――」


 時々ノロケが愚痴の中に混ざっていたが、なんかだんだん男女の仲というより親子みたいに思えてきたぞ。


 到着したのはそこそこ高級そうな宿。リッシュさんとお話ししてくると言うルーレさんとはそこで別れた。

 宿の説明――食事の時間や風呂の場所など、また確保済みと言ってただけあって料金は不要だそうだ――を受け、二部屋分の鍵を受け取ってその部屋に向かう。

 その部屋は隣に並んでいて、当然男女で分かれた。中はそこそこ広く、ベッドが二つ並んでいる。


 例のでかい荷物は女子部屋で出した。ヨルトスのものが少なくその方が早いらしい。

 荷物の整理だけで夕食の時間になり、そのまま風呂にも入ってその日は寝ることにした。




 翌日は調査開始、といっても昨日教えてもらった場所に向かっているだけだが。

 小さいが魔導具の研究所があるらしい。ルオさんのところが研究・開発なのに対して製造がメインだと聞いた。

 因みに移動中聞き込みをすることも欠かさないが、有力な情報はなかった。


 到着した俺たちを出迎えてくれたのはメガネをかけた、あまり手入れされてないであろう暗い金髪の女性。


「こんなところまで訪ねてきてくれてありがとう。私はここの所長のインフィだ。よろしく頼む」


 ハスキーな声だなとか思いながらこちらも自己紹介し、出されたお茶を飲む。


「何これうまっ……」


 三人もびっくりしていたようで、そんな俺たちの様子にインフィさんが微笑む。


「ふふっ、そうだろう。魔法を利用して美味しくできないか研究したことがあってね」


 そんなことができるのか。


「これどう作ってるんだろ……」

「残念、詳細は企業秘密だ」


 ヴラーデの呟きを拾ってそう返された。


「それで、君たちが調査している件だが、悔しいことにこちらでも何も分かってなくてね。よければついて行きたいのだがどうだろうか?」


 研究者だから分かることもありそうだし、何かあっても一人くらい守れるだろうし、俺には断る理由はないな。

 否定の声はなく、インフィさんが同行することになった。


 しかしやることは変わらず、インフィさんの町案内を受けながら聞き込みをしていくがやはり成果はない。


「ふむ、このメガネでも異常は見られないな」

「それ何なんですか?」


 ただのメガネだと思ってた。


「魔力を視覚化するための魔導具だ」

「あー……ルオさんも使ってた奴か」

「ルオ・シフスと知り合いなのかい?」

「え?」


 声に出てたか。それよりも……


「ええ、まあ。確かに知り合いですけど……どうかしましたか?」

「いや、何でもない」


 険しい顔をしていたから聞いたんだが。何かあったんだろうか。




 昼食後、インフィさんの案内で人気のない道に入っていく。こういう所に何かが潜んでてもおかしくはない。

 聞き込みする相手がいないので俺たちはメガネで色々確認しているらしいインフィさんの後ろを歩くだけだが、それだけなのも悪いので俺も【察知】で周囲の魔力を確認している。まあ俺たちのものしか反応がないんだが。


「ふむ、ここも異常は……むっ!? 危ない!!」

「うぉっ!?」


 といきなり一番近くにいた俺の手を引っ張ったかと思うと、横の壁が爆発し直前まで俺がいた箇所をその爆風が襲う。

 咄嗟のことで反応が少し遅れ、インフィさんに勢いのまま体当たりしてしまう。同時に首に何かチクリと小さな痛みが走る。何か当たったか?

 俺はなんとか倒れずに済んだが、インフィさんは地面に倒れ、その際頭を打ったのか少し血が流れていて気絶しているようだ。

 一体何が起こったのかと後ろを振り向くが煙で見えない。ヴラーデたちは大丈夫か?

 しばらくして煙が晴れると、ヴラーデたちに怪我はなさそうだったが……


 なんだあれは……?


 三人の体に何か黒い靄のようなものが纏わりついている。その影響なのかは分からないが、三人は冷たい機械のように無表情。


 ……まさかこれが!?


 その靄を払わなければと剣を取り出し攻撃するが避けられてしまう。操られてるのか……!

 その後も剣を振り続けるが三人に怪我をさせないようにしてると避けられてしまう。かと言ってピアスを着けた状態だろうがヴラーデたちに手は出したくない。はっきり言ってキリがなさそうだ。

 ここは一旦退こうとインフィさんを抱えて【空間魔法】で足場を固定し近くの建物の上を通って逃げる。チラッと三人の方を見ると靄は消えてしまっていた。


 なんだったんだあれは。あれが異変の正体か? でもそんな証言はなかったと思うが……

 他にも、あの時【察知】を使っていたのに何も気付けなかった。それ以上に隠すのが上手いのか、それとも――


「うう……」


 インフィさんが目を覚ましたようだ。


「君は……そうか、私は気を失っていたのか。聞きたいことはあるがその前にこれを……」


 一応お姫様抱っこなのだが全く気にしていないようで、服の中から何かのスイッチを取り出して押す。

 すると、上空に何か薄い膜のようなものが現れて広がっていく。それはやがてドーム状になったが……この町を覆っている?


 これは一体……


「異変を見つけた時のために用意した結界装置を起動させた。これであちらも逃げられないはずだ。それにしてもこれは昨日完成させたものなんだが、こんなに早く使うことになるとはね」


 結界!?


「ああ、心配はしなくていい。町長には許可を取ってあるし、町の住人にはこれが発動したら外出しないよう連絡が回ってるはずだ」


 そうじゃない。いや、インフィさんの対応は正解なんだろうが、俺にとっては間違っている。

 何故なら【繋がる魂(ソウルリンク)】の転移を利用した脱出ができなくなってしまうからだ。

 案の定、善一の元に転移しようとしたが失敗してしまった。


 しかし、そうするとどこに行こうか……

 【繋がる魂(ソウルリンク)】で分かる限り三人は一緒にどこかに向かっているようだ。

 視界の隅にスマホの画面を表示させて地図で確認すると……俺たちが泊まってる宿か? となると宿には行けないな。

 そうするとインフィさんの研究所だろうか。


 そう悩んでいると、


「済まないが、このまま私の研究所まで連れていってもらえないだろうか」


 インフィさんからそう言われたので従うことにした。

次回予告


陽太  (やっぱり三人と戦わないといけないのか……? というかこの人なんでお姫様抱っこ動じてないんだろう……)

インフィ(この歳になってこんな日が来るとは想定外だったな……)

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