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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第2章 新たな町に行けば新たな出会いがあります。
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26. 道中はこんな感じです。

 ラーサムの南にあるモトナに向かって歩き、適当な雑談はするが注意は怠らない。

 時々魔物を見かけるが、襲ってきたり害がありそうなら倒し、害がなさそうなら放置。戦っても逃げられた時は深追いしない。別に討伐がメインじゃないからな。モトナに着くのが少しでも早いほうがいい。


「助けてくれ~~~!!」


 とか思ってるとすぐこれだからな……いや以前あったわけじゃないけど。

 駆けつけると商人が狼型の魔物、ウィンドウルフに襲われそうなところだ。少しでかいな。

 馬は死んでなさそうだが馬車はボロボロ。他に人の姿は見当たらないが冒険者とかはいなかったのだろうか?

 【空間魔法】の練習がしたいからと俺一人で戦わせてもらうことにした。


 まず商人とウィンドウルフの間に割り込む。ウィンドウルフが鋭い爪で攻撃しようと猛スピードで迫ってくるが、俺にとっては遅い。

 剣で受け止めて押し返す。スピード特化の分パワーに少し欠けているから簡単に吹き飛ぶ。

 ウィンドウルフが着地するタイミングで囲むように壁を四つ固定するつもりだったが……本能で悟られたのか固定に割り込まれキャンセルされる。


 ……上手くいかないもんだな。演算補助があろうとタイムラグはどうしようもない。


 そのまま前足を振り下ろすと風の刃――俺の剣で出せるものに酷似している――が飛んでくるが事前に固定しておいた壁に阻まれる。防御面は素晴らしい性能だな。

 それを確認して少し高めにジャンプ。ウィンドウルフが追ってジャンプしてくるが……


「よっと」


 残念、釣りだ。

 足場を固定し更にジャンプ。


「え、空を!?」


 商人が驚いているがそれどころではない。ウィンドウルフも驚いたようで、何より空中のため動けない。

 剣で頭を一突きし、ついでに討伐証明になる右前足も斬り落としておく。

 衝撃を殺して着地すると、ロティアたちが寄ってくる。


「……なんというか、凄いわね」

「いやまだまだだ」

「十分凄いわよ?」


 今のとこ目標はどっかで見た超高速空中機動。あれできたらカッコいいと思うんだ、うん。


「はっ! 助けてくれてありがとう!」


 少し呆然としていた商人が我を取り戻して感謝を述べるが、まだ焦っているように見える。


「申し訳ないんだが、彼らも助けてやってくれ!」

「彼ら?」


 素直に聞き返すヴラーデ。


「ああ、護衛をしていた冒険者たちが魔物の群れを引き寄せて離してくれたんだ。まさかもう一体こちらにいるとは思わなかったが……」


 その言葉を聞き、四人で走り出す。【察知】を全力で使って辿り着くと十体くらいのウィンドウルフと戦っている数名のボロボロな冒険者たち。商人を置いてきてしまったが周りに魔物はもういなかったし大丈夫だろう。

 それよりもこっちだ。明らかに不利だが一応声を掛ける。


「おーい、助けは必要かー?」


 数々の小説で見かけるようにこの世界でも助けに入る前に一声掛けるのが暗黙の了解となっている。やっぱり『あの状況からでも倒せるはずだったんだ! だからお前らに手柄は渡さん!』とかいう輩がいたんだろうな。


「はい、お願いしますっ!」


 一瞬だけこちらを見た犬耳の女性が答える。拳闘士といったところか?

 ヴラーデが回復、それを俺が壁を固定して囲み、俺含む三人でウィンドウルフを倒していく。

 壁を上手く固定し一体ずつと戦えるようにしたつもりだったが、時々失敗してしまった。

 それでも特に問題なく全滅させることができたのでよしとしよう。


「すいません、ありがとうございました」


 拳闘士っぽい女性が言う。魔法使いらしき男性が文句言いたげにしてたがその女性の一睨みで黙っていた。力関係が分かりやすいパーティーだな。

 というか犬耳触りたい。だが教会の子供たちとは違う。しかも大人。勝手にやるのはもちろん触っていいかと聞くのもなんかな……


 その後商人と合流しラーサムに向かっているとのことだったので別れ、しばらく進んでやや遅めの昼食にすることになったが、


「さ、ヨータ、あれ出して」


 ロティアたちがでっかい中から取り出したのは数々の調理器具。

 ……え、ここで料理すんの?




「いやーやっぱ料理できるっていいわねー」


 食べ終わり移動を再開してロティアが言う。

 そこら辺に落ちてる枝や葉っぱで燃やす物も確保し、火や水は魔法で出す。料理中も食事中も周りを固定した壁で囲むことで安全地帯にする。料理の匂いにでも釣られたのか魔物が猛スピードで飛んできては見えない壁にぶつかり動かなくなった。途中からは時々諦めたのか転がってる死体を持ってったりしていたが。


「……で、ヨータは何してるの?」

「ん? 【空間魔法】で固定した足場を渡る練習」

「……よくやるわね」


 なるべく地面に足を着かないように足場を固定して渡っていく。

 足場をできるだけ最小限に、固定する時間も短くしていく。今は演算補助のおかげで変な失敗はしてないが、最終的にはそれがなくてもできるようにはなりたいかな。いつかスマホに戻してもらいたいし。




 そろそろ日が暮れるという頃、適当な場所でテントを組み立てて昼と同じように夕食。

 その後、風呂を作る。もう驚かねえぞ。【土魔法】で形を作り、料理の時と同じように水と火を出す。


「ねえ、【空間魔法】で見えないようにすることってできる?」


 その際に、ロティアからこう言われ、黒い壁をイメージしたらその通りになったので今は風呂の周りをそうしている。因みに現在女子二名が入浴中だ。

 確かに普段空間を固定した時も向こう側は見えている。それはつまり光は通しているわけだ。今作った黒い壁は光すら通さないもの。


 だったら……

 まずは拡大・縮小じゃなくて変形を……おおできた。次は物も固定してみて……ああ、それはダメなのか。

 というように試行していった結果、最終的に空間を上手く歪めることでレンズを作ることができた。中が空気だけな分魔力消費はそこそこ。

 これができたら次にやりたいのは小学校の――


「いいわよー」


 っと、熱中してたら二人は終わったようだ。続きはまた今度だな。

 一度黒い壁を解除して入れ替わり、俺たちが風呂に入る。




 そして寝る前。


「……行くぞ」


 俺がそう言い、ピアスに手を伸ばす。三人、特にヴラーデが心配そうに見てくれている。


「うっ!」


 ピアスを外すと今日の戦闘がフラッシュバックしてきて、思わず吐いてしまう。

 三人が駆け寄ってくるが、手で大丈夫だとサインをする。前回みたいな倦怠感はなく、吐いた後の気持ち悪さと多少の頭痛がするくらいだ。このくらいなら我慢できる。

 ピアスを着け直して、感謝の言葉を掛ける。


 この後は二人ずつ見張りと就寝に分かれ、途中で交代することになっている。ヴラーデは夜に弱いのでずっと寝ることになり、ピアスを一度外して体調が万全でない俺は先に寝ることになった。俺の番の時は一人になってしまうが防御面で心配がないので問題はない。

 ヴラーデが先にテントに入ったが、俺が入る頃には、


「早っ!」


 すやすやと眠っていた。昼寝が得意な某小学生も真っ青ではなかろうか。


「しかし、可愛い寝顔だ。改めてこの世界は美人が多く、ヴラーデもそうなんだと実感するな。この寝顔を守ってあげたい。やっぱり俺はヴラーデに惚れ――」

「ロティアさん?」

「ゴメンナサイ」


 勝手に人のモノローグを作成しないでいただきたい。というか上手い少年声だったがそれでも無理あるぞ。


「ていうかなんでこっちの世界の方が美人多いって知ってんの?」

「昔の勇者でそう言った人がいるって聞いたことがあるの。半信半疑だったけどその反応を見る限り本当のようね」


 こいつは……

 ロティアが顔を引っ込めるのを確認し、ピアスを外して俺も寝た。




 ロティアに体を揺すられて起きる。交代の時間か……

 残る眠気と戦いながらピアスを着けて外に出るとまだ外は暗かった、って当然か。


 ……地味にロティアの言葉を引きずってヴラーデのことが頭から離れなくなる。

 そう、美人なんだよなあ。毎日一緒にいるから普段は意識しないが言われてしまうと気になってしまう。

 それを払うように頭を振ると顔を出していたロティアと目が合う。『あっやばっ』みたいな顔しても遅えよ。


「寝ろよ」

「いや、だって……ねえ?」

「その気持ち悪いニヤケ顔やめろ。眠れないなら物理的に眠らせてやろうか?」

「ゴメンナサイ」


 顔が引っ込んだ。ロティアも美人のはずなんだが……言動がなあ。

 翌朝ヴラーデたちが起きてくるまで【空間魔法】の実験の続きをしたが、あまり集中できなかった。




 昨日と同じように進んでいると、誰かが話す声が聞こえる。


「どうしたの?」


 ヴラーデが尋ねてきたので小声で返す。


「誰かが隠れてる。ちょっと待っててくれ」


 耳を澄まして会話を聞く。


「呼んだか?」


 ちょうど別の人が来たみたいだ。


「次のターゲットを見つけた。あの四人組だ」

「ん? なんだガキじゃねえか。新米冒険者か?」

「持ち物は少なそうだが、やらない理由もねえだろ」


 はいアウトー。


「盗賊だな」

「そう。じゃあまずヨータの【空間魔法】で閉じ込めて色々と聞いてから判断しましょう」


 盗賊たちはまだ話しているようだし、さっさとやるか。

 周り、今回は上と地中も含めて固定する。【察知】で確認できた奴は全員閉じ込めれたっぽい。


 そこに向かうと、盗賊たちは見えない壁を叩いたり魔法で攻撃したりしていたが、俺たちに気付くと何かを叫ぶ。まあ振動すらしない壁での完全密閉だから声なんて届かないんだが。

 ロティアが例のでかい荷物からノートと筆記具を取り出し筆談で会話を始め、色々と聞きだしている。途中から盗賊たちが酸欠で苦しそうにしていた。

 盗賊たちが気絶したのを確認して固定を解除する。


「どうだった?」

「人数もアジトへの距離もそこそこだから余計な寄り道になっちゃうわね。少し移動したところに拘束しといて誰か通るのを祈りましょう」


 結構他人任せな処置だが、本来の目的を見失うわけにもいかない。

 少しだけ道を戻ったところで身動きと口を封じ、アジトの場所を記したメモを貼って放置した。




 そんな感じの道中だったが、数日後の昼過ぎにようやくモトナに到着した。

次回予告


陽太  「新たな町に行く、それは即ち!」

?(A)「私たち~、新キャラの出番ですね~」

陽太  「ぶっちゃけると数分で適当に考えたキャラだけどな!」

?(B)「酷い言い様だな。一応私は大まかな設定だけはあったみたいだが」

陽太  「だって再登場予定なさそうじゃないですか、特にあなたたちは」

AとB 「「……」」

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