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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第2章 新たな町に行けば新たな出会いがあります。
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25. 冒険者活動を再開しましょう。

「ん~~……あぁ~」


 あーよく寝た。気持ちいい朝だな。

 軽く体を解し、ピアスを着けてリビングに入ると、苦笑を浮かべ少し元気がなさそうな善一(よしかず)が座っていた。


「朝からどうした?」

「……お腹が空いてるんだ」

「そうか、ちょっと待ってろ、今出す……あ」


 よく考えてみると、俺が昨日夕食前に寝てさっき起きたってことは……


「すまん、完全に夕食忘れてた」

「いや、いいよ。色々あったんだし」

「ホントすまん……」


 一応ルナがこの家の裏で色々育ててたみたいだが勝手に持っていくのもなあ。っていうかお世話どうしようか。何故かお世話なんてしなくとも勝手に育つ気がしてならないが。

 買い溜めしていたものを朝食として食べているとルナの料理が恋しくなり、本当にいなくなってしまったという実感が湧くが、別にブルーな気持ちにはならない。


「そういえば善一は冒険者とかにはならないのか?」

「そんな余裕はなかったからね。町に入るのも毎回仮身分証を作ってもらってたよ」


 余裕があればなりたいとも受け取れるが案の定、


「でももう解放されたし僕もなろうかな。どの道この家にいてもできることは限られるし、いずれは手持ちも尽きちゃうしね」


それもそうか。


「あ、そういえば、ルナさんに見せようとしてたものがあったんだけど、ってあれ、どこやったかな……」

「どうした?」

「いや、僕を召喚した魔法陣、少し改造させたって言ってたけど、それを見せるよう言われてたのを完全に忘れてたんだ」


 まあ色々あったし仕方ないか。そもそも見せる余裕もなかったはずだ。


「それで陽太にも見せとこうかなって思ったんだけど……あれ、ないな……」

「俺は無理して見たいとは思ってないからいいぞ、見ても何も分からんし」

「いや、もし誰かが拾ってて発動させちゃったら一大事だ。小さい紙であれじゃ発動しないって言ってたから大丈夫だとは思うんだけど、万が一があるからね」


 しかし持ち物や部屋を漁っても結局見つからず諦めることにした。


「そういえば、昨日はどんなものをもらったの?」

「ん?」


 ああ、説明してなかったか。


「これだ。元々は俺のスマホだったんだが、完全に生まれ変わってしまった」


 一応戻せるらしいが、現状元の機能がまるで使えないしな。


「簡単に言うと、俺のユニークスキル【繋がる魂(ソウルリンク)】用の魔導具だな」

「……それはまた凄いね」


 俺専用なのに細かい説明をしても仕方がないので詳細は省く。


「そして、それだけじゃない」

「?」


 適当なものを上に放り投げて固定する。……位置が若干ずれたが演算による補正か? それが綺麗に固定した空間の中央にいる。


「え? これって……」

「なんと、【空間魔法】が使えるようになりました!」

「え!?」

「しかも【無詠唱】付き!!」

「ええ!?」

「まあもらったようなもんだけど」

「十分羨ましいよ……」


 いや【闇魔法】も大概だぞ。簡単な攻撃と精神魔法しか知らないが他にもありそうだし。


「自分で固定した空間は把握できるの?」

「ああ、それなんだが――」


 スマホの機能について簡単に話す。


「なるほど、随分驚異的な能力だね」

「まあ、不便なとこも多いんだがな」


 若干の時間差があるとか生き物には使えないとかな。


「それでもだよ。生き物に直接使えなくても薄い面で囲めば閉じ込められるし、相手には見えないから安全な罠としても使える。自分で足場として使って奇をてらった攻撃をしたっていい」


 ……えげつねー。

 実際は魔力察知で勘付かれるだろうけど、それができない相手にとっては完全に恐怖だな。

 こりゃ色々やってみなきゃだな。


「さて、そろそろ行くか」




 善一を連れてラーサムのギルドに入る。


「あ、おはようヨータ。……と、ヨシカズも」


 ロティアに声を掛けられたので挨拶を返す。


「それと、ヴラーデ。昨日はホントにありがとな」

「っ、何よ改まって……別にいいわよ」


 善一が冒険者の説明と登録で受付に行っている間、俺は三人に自分のユニークスキルと昨日色々もらったことを話す。三人とも凄く驚いていた。


「それで、お前らとも契約しとこうと思うんだが、いいか?」

「ええ、いい――」

「待って」


 即答しかけたヴラーデを止めるロティア。


「そのスキル、デメリットとかはないのかしら」

「ん? んー、特に思い付かないな」

「例えば転移。それって強制じゃないの? ヨータのことを信用してないわけじゃないけど、変なタイミングや場所に転移させられる可能性もあるじゃない。最悪契約してしまえば即死の状況を作ることだってできるわ」

「……すまん、分からん」


 そういう考えがなかったから確かめてない。確かにそう考えるととっても危険な能力だな。


「じゃあ、目視できる場合を除いて基本的にヨータが転移してくること。他にもあるけどそのくらいでいいわ。もし破ったら……」

「破ったら?」


 無意識的に唾を飲み込む。


「これ以上は私の口からじゃ言えないわ……」

「何それ怖い」


 こいつなんでもやりそうだから余計に。


 そして三人とも契約し、画面にロティア、ヨルトス、ヴラーデのアイコンが追加される。

 また時々転移を使った戦法を練習することになった。


「これ可愛いって思ってたけど、自分の見た途端恥ずかしくなってくるわね……」

「そうね……ヨータ、私とヴラーデの絵を百枚ずつもらえないかしら」

「「なんで!?」」


 百枚もどうすんだよ!?


「……待て」


 止めたのはヨルトス。まあそりゃ止めるよなと思っていたが……


「……俺のも百枚」

「いや無理だからな!?」


 お前もかよ! というか現像する手段がねえよ。あってもやらんけど。


「あ、そうそうヨータ」


 そのままの流れでロティアが軽く言い始めたが、


「ユニークスキルはあまりこういう場で言うものじゃないわよ。気を付けなさい」

「え?」


 急に低い声に変わりびっくりした。しかしすぐに元の雰囲気に戻り、


「ま、もう遅かったみたいだけど」


 そう言って視線を俺の後ろに向ける。そこには、


「今の話、詳しく聞かせてもらえるかしら」


 優しくも冷たい微笑を浮かべるイキュイさんの姿があった。




 イキュイさんの執務室で簡単に説明する。登録を終えた善一も一緒に、異世界人だということを含めて。

 善一が誰に召喚されたのかということは伏せておいた。魔王の元でお世話になったとか言ったら疑われるだろうしな。

 あと一応ルナを探してもらうよう各地に伝えてもらうことになった。正直見つかるとは思ってないがやらないよりはマシだ。


「イキュイさんも契約しときます?」

「私は遠慮しとくわ。私にはちょっとメリットが小さいもの」


 うーん、残念。


「あと、長距離転移は禁止よ」

「え? なんでですか?」


 便利だから使っていきたいんだが。


「ヨータ、よく考えてみなさい。転移、というか【空間魔法】は普通生きている物に使えないのよ? その中で転移なんてしたら、利用するためにあなた狙われるわよ?」


 呆れた様子でロティアがそう言う。

 ……確かに某漫画のどこにでも繋がるドアのようなものがあれば欲しいわな。


「まあ近距離も問題ではあるけれど、そのくらいが許容限度かしらね」


 イキュイさんが続ける。

 なんだか悔しいが大人しく従った方がよさそうだ。


「それはともかく、ヨータは冒険者を続けるのね?」

「はい。そのつもりです。ピアスについてはしばらく様子を見てみます」

「つらくなったらいつでも言って頂戴。戦いとはほぼ無縁の生活を提供するわ」

「ありがとうございます。でもなんでそこまで……」

「あら、自分の町の住人くらい守るわよ」


 なんでもないように言うが、こういうところがギルドマスターたる所以なのかもな。


「さて、ヨータが冒険者を続けると分かったところでここからが本題なのだけれど」

「え」


 待って今まで本題じゃなかったの。


「今のも大事だけれどそうではなくて、あなたたちに調査依頼を受けてほしいの。冒険者を止めるって言ってたらそのまま帰してたわよ」


 言いたいことはあるが飲み込んでおこう。


 内容としてはモトナという町――ギルドはないらしい――の異変を調査してほしいとのことで、発端は十日くらい前、たまたまそこを訪れた冒険者たちの一人が急に仲間を襲いだしたという。その時はなんとか抑え込んで町の外に連れ出したら元に戻ったがその間の記憶がなかったそうだ。

 その冒険者たちが別の町のギルドに報告する頃には同様のことが多数起きていたらしく、中には仲間を襲った冒険者を置き去りにせざるを得なかったという報告もあった。

 ただ、不思議なことに襲われた冒険者たちに怪我人は少なく、いても軽傷で死者も出ていないとのことだが、それでも異変があることには変わらず帰ってこない人もいるため、原因を突き止めて解決しなければならない。


「僕、ここに来る前に一度その町を通っているんですけど、特に変なところはなかったように思います。一応その少し前なのでそのせいかもしれませんけど」


 善一がそのように言うが、イキュイさんも既に商人などからほぼ同じ証言をもらっていたらしい。


「それで、誰に頼むかなんだけど、さっきの話を聞いてあなたたちに任せようと思ったの。ランクも6になったばかりで丁度いいし、ヨータのユニークスキルなら何かあってもすぐ脱出できるからね。さっき禁止しといてなんだけどそのように脱出する場合は仕方なしとして黙認するわ。だから少しでも危険と感じたら大人しく逃げること」

「待ってください」


 ロティアが真剣な表情でイキュイさんに尋ねる。


「逆にヨータが私たちを襲い始めた時はどうすればいいんですか?」


 ……確かに。もし誰かが暴れ始めても俺が町から出てしまえば他全員を転移させれば脱出できる。

 だが、実際脱出できる、させられるのは俺だけだ。その俺が我を忘れてしまったら脱出の難易度が高くなる。


「だからヨータにはこれを貸すわ。【精神魔法】による暴走や操作などを防ぐブレスレットよ」


 ピアスの効果も打ち消されるのでは、と思って左手首に着けて善一に見てもらったが問題はないらしく、前回の操作系の魔法を使ったら弾かれたそうだ。これなら安心か。

 ロティアも一応は納得してくれたらしく、依頼を受けることにしたのだが、


「あなたたちには悪いけど、ヨシカズにはこの町にいてもらうわ。万が一の時の転移のため、というのもあるけど登録したてのランク1を送るのは色々と問題があるのよ。代わりに私の監視下で、ポイント高めの依頼を受けさせておくわ」


 善一にはついてきてもらって誰かが暴れ始めた時にその心を見てもらおうと思ってたんだが……ここはイキュイさんも譲れないらしく、諦めることとなった。




 モトナまで数日はかかる見込みなので適当に食料を買ってはポーチに突っ込んでいく。

 ヴラーデたちは野宿の準備があると言って一度家に戻っている。善一はイキュイさんに連れてかれた。


 適当なところで切り上げて町の門に向かい、しばらく待っているとヴラーデたちが近付いてくるのを感じた。


「お待たせー」

「おう……ってでかっ!」


 三人で持ち運んできたそれの中身が気になる。


「ヨータ、これ入る?」


 しかも俺頼りかよロティア。


「いやこれだけでかいと入れようがねえぞ」


 ある程度の誤差は大丈夫だが、基本的にポーチの口に入るサイズでないと入らない。


「いやそっちじゃなくて、[道具空間(アイテムボックス)]の方よ。使えるんでしょ?」


 こいつ……俺を便利な道具だと思ってねえだろうな。


「分かったよ……」


 一度作成してるからか思ったより魔力の消費は少なかったが、それでも何割か持ってかれた。


「それじゃあ行きましょうか」


 荷物をしまったのを確認してロティアが言い、ラーサムを出た。

次回予告


陽太  「地味に初めて別の町に行くな……それよりあのでっかい荷物には何が入ってるんだ?」

ロティア「道中役に立ちそうなものを詰め込んできました♪」

陽太  「具体的には?」

ロティア「それ話したら次回予告の意味ないじゃない」

陽太  「えー……」

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