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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第1章 チート魔女に召喚されました。
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2. 説明回は大事です。(前)

「とりあえず中に入りなさい」

「えっと、この家は?」


 玄関の戸を開けるルナに、なんとなくわかってはいることを確認の意味も込めて聞いてみる。


「私の家よ」


 予想通りの答えを聞きながらルナに続いて中に入る。


「お、お邪魔します……」

「私一人しか住んでないし遠慮はしなくていいわよ」


 そうなのか。外見は一階しかないが大きいという印象で、五人くらいなら余裕で住めそうだとか思ってたんだが。




 土足のままリビングに通され、夕食の準備をするから待っててと言われたので、椅子に座っておとなしく待つ。

 ルナは厨房に引っ込んでいった。この部屋と繋がってはいるが大きめでドアのない出入口以外は壁なので中の様子はよく見えない。ドアの開閉音も聞こえるのだが裏口があるのだろうか。


 それにしてもこの家は結構広そうなのだが、一人で住んでるとなると掃除とか大変じゃないだろうか。

 因みにこの家にはトイレやお風呂もあるらしい。窓ガラスなども普通にあるし、元の世界の家との差は少なそうだ。電気は通ってないし明かりは火だが。

 とはいえ、ここにいると異世界だということを忘れそうだ。さっきのドラゴンの一連の流れも実は夢だったんじゃないかと思え……ないな。流石にそれはない。未だに思い出すだけで恐怖が蘇る。


 退屈なのでスマホを取り出すが……バッテリー切れかよチクショウ。そういえば家に帰ったとき充電してなかったよ。


 仕方なしに窓のとこまで歩きすっかり暗くなった空を見る。満月がでかい、見慣れたものの何倍あるだろうか。

 そういえば、太陽も月もあるが地球と同じような仕組みだろうか、それともこの世界は天動説なのか。


 他にもこの世界の食べ物を俺は食べれるのか、などと色々考えているとルナがワゴンを押して厨房から出てくる。

 そしてテーブルに出されたのは、水、お米、ステーキ、サラダ、デザートにはメロン。ステーキが既に切られているからかナイフはないが、箸とフォークもある。

 見た目に違和感がない、なさすぎる。


 ……異世界ってなんだっけ。

 小説とかだと最初からこういう食事はなく、主人公が流行らせたりするものだが、この世界は違うのだろうか。

 それとも見た目は一緒でも味が違うのだろうか。


 最初はおそるおそる、やがて通常のスピードで食べる。


 普通に美味しかった。味にも違和感はなく、ステーキとサラダの味が逆になってるとか、メロンがスイカの味だとか、そんなことは全くなかった。

 聞けば、勇者と協力して作り広めたものだという。また勇者か。

 この家でもお米や野菜、果物を育てているのだとか。厨房にあるドアは裏口で、出たところに畑にあるらしい。


 あれ?


「じゃあステーキは?」

「あれはさっきのドラゴンよ」

「へー」


 ルナが空の食器を乗せたワゴンを押して厨房に入る。


「……え?」


 あまりにも普通の受け答えだったから流すところだった。あのドラゴン、消えたと思ったらここで出てくるとは。一体今までどこに、っていうかドラゴンの肉を食ったのか俺。実感ないけど。




 ルナは片付けを終えて戻ってくると、


「じゃあ、説明を始めるわね。興味なかったら聞き流しといて分かんなくなった時に改めて確認してくれればいいわ。今後、別の説明を受けることもあると思うけど同様よ」


 俺に向けられた言葉じゃない気がするのはなんでだろう。


「あなたは私がこの世界に召喚した。これはもういいかしら?」


 頷く。数々の不思議現象を見せられて今更否定する気はない。


「じゃあまずはこの世界についてね。まずは時間とか。太陽と月が一周するのを二十四時間として――」


 時間については、一日二十四時間で、分と秒も六十ずつと同じでこの世界の一秒が明らかに早かったり遅かったりもなかった。すごい偶然じゃないかと思う。だがその先が違った。


「四十五日を一か月として、八か月が一年。後で詳しく説明するけど、シサール暦というのを使っていて今年はちょうど五百年よ」


 月とか年が違った。しかし落ち着いて計算してみれば一年の日数は五、六日しか違わない。

 暦が違うのは、まあ仕方ないだろう。この世界に西暦があるとは思ってない。しかしちょうど五百か……


「一か月は十五日ずつ三つに分けて、順に上月(じょうげつ)中月(ちゅうげつ)下月(かげつ)という言い方をするわ。例えば今日は三月九日なんだけど、三の上月という感じね」


 なぜその十五日を一か月として一年二十四か月にしなかったのか。


「この世界の四季は一月と二月が春、その後二か月ずつ夏・秋・冬よ」


 この世界にも春夏秋冬があるらしい。そして今は初夏ということか。元の世界でも六月の初めと一致はしているが偶然かなにかだろう。


「ここまでで質問はある?」

「んー、曜日はあるのか?」

「……それ勇者にもよく聞かれるわ。この世界に『曜日』はないわ」


 げんなりして答えんでも。ていうか何回出てくるんだ勇者。

 しかし曜日は無しか。といっても曜日は特に気にしてない。俺が読んだ小説でも曜日があるものはほとんどないしな。




「次は簡単な地理ね」


 言いながらテーブルに学校で使うノートくらいの大きさの紙を置く。

 あれ、どこから出した? だが今聞くことではないか、後で聞こう。


 そして、やはりいつの間にか持っていた羽ペンで地図を描き始める。

 といってもかなり簡略化したものであるらしく、簡単な図形と直線的な区切りで描かれていた。


 一番大きくやや横長で四角っぽい丸は、まず右側の三分の一くらいを上から下まで緑に塗られている。残りの上半分をピンク、さらに残った部分の左半分が赤で右が青。

 この丸の右に、緑部分の横幅を少し広げ縦幅をその分縮めたくらいの大きさの楕円がある。位置は最初のカラフルな丸と下揃えなくらいで、茶色に塗られている。

 その茶色い楕円を横にしたようなものが青部分と緑部分の下くらいにあり、こちらは紫。

 ……凄い配色である。しかし一回もペンを持ち替えてないような気がする。っていうかインクないし。


 東西南北はこの向きのままだそうなので、カラフルなのが北西、茶色が東、紫が南という位置関係だな。


 ルナがカラフルな丸を指して言う。


「これがゼトロヴ大陸で、ピンクがシサール王国、赤がスギア王国、青がトーフェ王国。色分けは王族の髪と瞳の色よ。まあその色自体は王族以外にもいっぱいいるけど、少なくとも私が知ってる王とその兄弟は全員その色ね」


 なるほど、意味がわからなかった色分けはそういうことか。だが他の色は適当らしい。


「シサールは規模が大きい施設が多く、スギアは武器、特に剣の技術が発展していて、トーフェは魔法が発展している感じかしら。一応スギア生まれの魔法使いやトーフェ生まれの剣士とかもいるけど……そういう人は早いうちに引っ越しちゃうわね」


 剣のスギアに魔法のトーフェか。別に仲が悪くて互いの技術を共有しないとかではなくて分担をしているようなものらしく、シサールはどちらの技術も取り入れているとか。魔法剣士もいるらしい。

 因みにこの家はトーフェ内の北東、シサールや緑部分に近い場所だそうだ。


「次にこの緑色のところだけど……一言で言って森ね。他に森がないわけじゃないけどここは別格の広さね」


 俺が召喚された洞窟もこの森の中らしい。

 森といえばエルフとか異世界ものの定番の一つだな。せっかくだしそういう里とか行ってみたいものだが、ルナは口止めされているらしく場所とかは教えてくれなかった。残念。だが口止めされるということはどこかにあるのだろう。


 ルナが茶色い縦長の楕円を指す。


「これがメトーニ大陸、ドラゴンの大陸ね。ここのドラゴンは人語を解する誇り高き種族よ」


 ドラゴン。さっきの件で半ばトラウマと化しているやつである。だがあれは人語を解する様子などなかったが……


「さっきのは?」

「あれは多分違うわね。メトーニ大陸の方角から来たから口上を述べてみたけど反応しなかったし」


 別にドラゴンはメトーニ大陸にしかいないというわけでもないのか。近くにいるかもと思うと逆に少し怖いんだが。

 しかしルナはその心配を見抜いたかのように続ける。


「まあこの大陸のドラゴンはメトーニ大陸に比べて弱いし、そもそも自分の巣から出て人間を襲うとかは滅多にないわ。さっきのは……偶然の可能性もあれば誰かが仕向けた可能性もあるわね」

「仕向けた?」


 そんなさらっと言わないでほしい。あんなのがまた現れそうで怖いじゃないか。


「あくまで可能性よ。それにまた現れても撃退するだけだし」


 やだこのお姉さんかっこいい。さっきも圧倒的だったしルナといれば安全だろう。怖いものは怖いが。


 最後に紫の横長の楕円を指す。


「そしてこれがエサルグ大陸。魔族と魔王が住んでいるわ」


 魔王出ました。そして何回か出てきた勇者。とすると最初に想像されるのは……


「つまり勇者が魔王を討伐しに行くと?」

「そうよ。まあ、討伐じゃなくて封印だけど。そこらへんは後でね」


 封印ときたか。こういう時のパターンって、魔王が定期的に復活とかだよな。


「ここまでで質問は?」

「この他に大陸とかはないのか?」

「確認されてないわ。海を越えようにも魔物が強くて沈められるか引き返すかになって、過去に海に出た人達は諦めてすぐに帰ってくるか二度と帰ってこないかのどっちかね。私は興味ないし越えようとは思わないけど」


 このチート魔女なら越えれそうだと思うんだが海の向こうに興味はないらしい。


「通貨とかってどうなってるんだ?」

「あー、忘れてたわ」


 と言って七種類の硬貨をどこからか出す。いくつかには日本の五円玉や五十円玉みたいに穴が開いている。


「三つの王国共通でブルといって、これは順番に銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨。銅貨が一ブルで後は順番に十倍ずつよ」


 つまり白金貨は百万ブルか。あっさり百万以上出したわけだが、それが当たり前なのかルナが金持ちなのか。しかし金銭感覚についてはいずれ慣れるとだけ言われた。

 因みに穴が開いているのは大と付く硬貨三つ。わかりやすくていいな。


「エルフとか魔族とか出たが他にはどんな種族がいるんだ?」

「獣人やドワーフ、他にもメトーニのドラゴンが人の姿をとることがあるし、魔物の上位的存在の魔人というのもいるわ。あとは……えっと、陽太も含めた普通の人間は他と区別して純人(じゅんじん)と呼ぶわね」


 各種族の特徴も教えてもらった。まとめるとこんな感じ。

 獣人は各動物の特徴が表れている。魔法はほとんど使えないが身体能力が高くその動物としての能力もある。寿命は七、八十年で純人もこのくらいで魔力量も同じくらい。獣人は小説によって人間ベースと動物ベースが分かれるイメージだがこの世界では前者らしい。

 エルフは耳が長く、身体能力は純人と大差ないが、魔力量が多く色々な魔法を使いこなす。寿命は五百年。美形が多いイメージだがこの世界ではどうなんだろうか。

 ドワーフは成人でも見た目は純人の子供とあまり変わらない――俺が持ってたドワーフのイメージと違うな――が耳が少し尖っていて、身体能力が高い――ただし獣人ほどではないが。魔力量も少ないし魔法はほとんど使えないが製造技術が高く、特にスギアの工房はほとんどドワーフだとか。寿命は二百年。ついでにエルフとの仲は悪くないらしい。

 魔族は個人ごとに多少の差があるが髪と同じ色の角が二本頭に生えている。獣人とドワーフの間くらいの身体能力で、使える魔法の種類は多くないがエルフ以上の魔力量を誇る。角もその魔力が具現化した説があるとか。寿命は二百年。

 メトーニのドラゴンが人化したときの姿は色々あるが、強いものほど純人に近くなる傾向があり、鱗や尻尾が残っていることもある。また半人というのも可能らしい。

 魔人は魔物が進化して人化したものや、一部の特殊な魔物のことで、魔物との線引きははっきりしてないが理性があるかどうか、人語を話せるかどうかで判断することが多いとか。主にエサルグ大陸にいて魔王サイドについている。魔人と一括りにするのは、それぞれが種族といえるほど数が多くないからだそうだ。

 ついでに何かもう一種族いるように聞こえたのだが尋ねてもぼかされてしまった。余計なことを知って命が狙われる、なんてのも嫌だし大人しく黙っておこう。


 因みに身体能力とか魔力量などはあくまで一般論で、純人でも獣人より強かったりエルフより魔力量が多かったりと覆ることも少なくないらしい。

 また異なる種族の子供がどうなるかを研究した者は少なく、はっきりとしたことはわかってないそうだ。


 しかし純人のいいところがない気がしたのだが、鍛練や戦闘での成長率が高かったり、エルフや魔族が使う属性系の魔法に加え他の魔法も使えるとか。

 ……魔法とかそこらへんの話をまだ聞いてないからいまいちわからないが。


「そういえば姓名の順番は?」

「家名が後になるわ、海の向こうではどうか知らないけど」


 つまり俺はヨウタ・アサクラと名乗っとけばいいわけだ。




「じゃあ次は勇者と魔王についてね」


 気になっていたことの一つである。まだまだ説明は長そうだ。

次回予告


陽太「説明回後編! 魔法使いたいから早く説明して!」

ルナ「あらすじを読みなさい」

陽太「ファッ!?」

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