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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第10章 記憶喪失・魔人篇
146/165

146. 主人公側を巻き込む異変って解決すると大体勝手に直りますよね。

「ヨータ!」

「陽太さん! そんな、遅かった……」


 残った意識で打開策を考えていると、ヴラーデと小夜がやってきてしまった。


「くふふ……、あなたたちもお友達になって……?」

「えっと、あの爪に気を付ければ良いのよね?」

「はい、ヨルトスさん曰く、爪で傷付けられたら、アウトだそうです」


 ん? 俺の見解と違うぞ?

 ……いや、そうか。自分が傷付けなくても良いならお友達とやらにナイフでも持たせれば済むのか。


「みんな、あの子たちを捕まえて……?」

「数多くない!? ホントどんだけいんのよ!」

「……私は、一旦退きます。ちょっと、無理です」

「えっ、サヤ、どこ行くの!?」


 数の差に小夜は簡単に諦めて動きを封じた人の山に隠れてしまった。

 小夜はガンナーだし仕方あるまい。転移で引っ張り出すのも可哀想だし。

 ……あれ、この状態で転移ってできるのか?


「嘘でしょ? えっと、ヨータたちは巻き込みたくないし、え~っと……、私も離脱!」


 今にも押し寄せんとする人の波に、堪らずヴラーデは飛翔して逃げた……けど、あいつずっと『精霊化(エレメンティア)』状態だったからそろそろ……


「あ、やっぱ無理」


 強制解除されて落ち始めた。白目剥いて気を失ってるからこのまま頭から落ちるのはまずいな。

 発動しろ転移!


「消えた……?」


 ぶっつけ本番だったが、転移はちゃんと発動しヴラーデは落下スピードが付く前に俺の足元に倒れた。これなら怪我もないだろう。

 ドールマスターはヴラーデが消えたことに困惑していたが、そのヴラーデを見つけると腕を軽く切り、血から人形を作り上げて埋め込ませた。

 ごめんヴラーデ、転移はできても体が動かないから守れない……!


「この子も遅い……?」


 どうやらヴラーデも人形が溶け込んでいくのが遅いらしい。

 となると、異様な力を持ってるのが理由か。


「起きそうにないなあ、消えたことについて聞きたかったのだけど……。一緒に居たあの子を探そう……」


 小夜に目を付けたらしいドールマスターが歩き始め、俺とカルーカの体もついていく。

 しかし、ドールマスターがいくら動いても戦闘音は近くならない。完全に避けられてますねこれ。


 さて、さっきの件で転移が発動できるのは確認できた。

 【空間魔法】は……ダメだ、魔力が使えない。消費なしで使えるユニークスキルだから発動できたってところか。

 誰かをこっちに転移させる? いや、こんな敵地のど真ん中に転移させても捕まってしまう。

 俺が誰かのところに……転移して何ができるんだ、って話だよな。キュエレに頼めそうなこともないし。

 う~ん、どうしたものか……


「ソルルさん! 私を、そちらに!」


 小夜? どこに……あ、隠れてる。この体がそっちに向かわないのはドールマスターの近くにいることを優先してるからだろう。

 ソルルは以前事故で性転換した時の名前だ。そっちで呼ぶ理由は分からないが、恐らくさっきのヴラーデの転移を見ての判断だろう。

 何を考えているのかは知らないが、どうせ俺からは大したことができないんだ。乗ってやろうじゃないか。

 というわけで小夜召喚!


「わっ! ホントに……」

「あなた、さっきの……。どうやってここに……!」

「陽太さん、カルーカさん、失礼します!」


 俺の隣に現れた小夜が鎖を放つ。

 ドールマスターは普通に避けたが、操られるだけの俺とカルーカは巻き付かれてしまう。

 腕は胴体ごと、足も両足まとめて押さえられては立つこともままならず、すぐに退却して身を隠す小夜を倒れながら見つめるのみだった。


「こんなものでお人形さんたちは……ど、どうしたの?」


 なかなか鎖から抜け出せない俺たちを見てドールマスターが焦り始める。

 なんとも言い難い変な感じがするから、多分魔導具か魔法道具(マジックアイテム)とかで抜け出せないのはその効果のせいだろう。

 焦ったドールマスター、俺の鎖を解こうと体をまさぐり始めた。くすぐったい。


「は、端はどこ……!?」

「ソルルさん、もう一度!」

「しまっ――」


 ドールマスターの背後に現れた小夜が、その頭を撃ち抜いた。

 同時に、俺の体も俺のものに戻り、操られていた人たちも全員倒れる。

 俺もしばらく自分の意思で動いてなかったせいか体に力が入らなくて鎖を破れない。


「さ、小夜……」

「陽太さん! 元に――」

「まだだ……!」

「え……?」

「くふふ、くふふふふ……!」


 響く笑い声。頭を撃ち抜かれたからか苦しそうではあるが、やっぱり生きてたか。

 キュエレも縦に真っ二つになりながら生きてたしな。


「そんな……」

「集めてきたお友達が……。もういい、あなたは殺す……!」

「小夜、逃げろ!」

「わたしは『楽園』を探してるの……! こんなところで終われない……!」

「いいえ、終わりですよ」


 小夜に迫るドールマスターだったが、突然光の奔流に飲み込まれた。


「あ、ありがとう、ございます……」

「大丈夫でしたか?」


 何も残さない光の発射元は案の定人為(ひとなり)さんだ。


「というか、今の……」

「ああ、最初から倒しきって解除ができなくなっては困りますから」

「あっ! そ、そこまで、考えてませんでした……」

「結果オーライです、構いませんよ」


 確かに、考えてみれば大元を倒せば戻るなんて保証はないか。


「あっ、陽太さん、今解きますね」


 小夜が俺の背中側で何かすると、鎖がパキンと壊れた。使い捨てだったのか。

 そろそろ体の重さもなくなってきたし、ゆっくり立ち上がる。

 この分なら数分もあれば全快だな。少しストレッチもしとこう。


「それで、陽太君だけ意識が残っているようですね。他は怪我のない者を含め気を失っているのですが」

「そうなのか? 人形を作って埋め込むことで操ってたけど、俺とヴラーデだけ埋め込みが遅いみたいだったしそれが関係あるかもな」


 ヴラーデが気を失ってるのは力を使い果たしたからだし。


「後遺症は……陽太君を見てるとなさそうですが、油断はできないですね。期間が長かった人もいるでしょうし」

「とにかく、この大量の人をどうするか決めないとな」


 方針を話し合った結果、まず魔族と他の人たちを分けることに。

 後でニルルさんが大規模な回復の魔法で怪我を治すみたいだが、怪我が酷い人は死なないよう応急処置程度の魔法を個別に使っている。

 魔族は完全放置の予定。敵にかける情けなんてなかった。

 因みに骨折していたロティアや軽傷のカルーカは治療済み。そこはやっぱり仲間だからな、最優先だ。

 さっき落とした俺の剣もルオさんがあっさり見つけてくれた。


「しかしこの角どうなってんだろうな」


 魔族には角が生えている、というのは聞いていたが実際に見るのはこの大陸に来てからだ。

 タンクのような役割でも持っているのか、魔力を探ると角にかなりの密度で集まっているのが分かる。

 折ったらどうなるんだろ。こう、仕分けるついでにうっかりを装って……


「陽太さん」

「うひゃぁ!?」

「……ど、どうしたんですか?」

「い、いや、なんでもない、大丈夫だ」


 急に後ろから小夜に話しかけられて担いでる魔族を落としかけた。危ねえ~……


「で、どうしたんだ?」

「いえ……、何か、企んでいそうな、顔をしていたので」


 無駄に鋭い。

 鋭いどころか心を読んでくるロティアに普段は隠れているが、小夜も結構鋭いんだよな。

 現にこうやって話しかけてきて……


「あれ? お前後ろから話しかけてきたよな? どうして表情が分かったんだ?」

「……企業秘密、です」

「そこ隠されると怖いんだけど」

「乙女の秘密、です」

「……そうか」


 乙女の、なんて言われたら問い詰めるわけにもいかない。

 怖さはなくなってないけど。


「そういえば、『楽園』って、何でしょうね?」

「ああ、あいつが最期に言ってた奴か」


 魔人は魔族側に属することがほとんど、と聞いてたので魔族まで操り人形にする理由が気になってたんだが、多分『楽園』とやらを探すために色々な種族を集めていたんだろう。

 操り人形が町の外をうろついていたのは『楽園』を探すためで、拠点をこの崖際の屋敷に選んだのは見晴らしが良いからだろうか。


「人為さんが消しちゃった以上聞けるわけもないし、ちょっと情報が少なすぎるな」

「そうですね……」


 消さなかったら消さなかったでドールマスターに実はまだ奥の手があった、なんて状況になると困るわけだから人為さんに文句を言うわけにもいかない。


「その『楽園』が、特定の場所を指すのか、魔人にとっての楽園を指すのか、でも変わってくるよな」

「魔人の、楽園……」


 魔人が集まる楽園……危ないから近寄りたくはないが、ファンタジーの寄せ集めだと思うとちょっと興味湧くな。

 ハルカなら『モンスター娘大集合!』とか言って興奮しそう。娘とは限らないのに。


「ま、あるかも分からない場所のことを考えるのは後にして、今はとにかくこの作業を終わらせちまおう」

「はい」


 さ、もう少し頑張るとするか。




 無事に仕分けが終わったところで、ニルルさんが被害者を一斉に癒している。

 ロティアやカルーカも含め、未だに誰かが目覚める気配はない。


「この人たちを保護したのは良いけど、どうやって帰せば良いんだ?」


 それぞれ休んでいる中、俺は今後の予定を人為さんに尋ねた。

 魔王城まで同行してもらうわけにもいかないだろうし、かと言ってここで俺たちが戻ってくるまで待ってろというのも他の魔族が来る可能性がある以上厳しい。


「仕方ありませんが、一度引き返すしかないですね。魔王の封印も大事ですが、この人たちも見捨てられませんから」


 勇者がそう言うなら俺たちも従うしかない。そもそも俺も見捨てるつもりはないんだが。


「魔族たちはどうする?」

「殺すのも忍びないですし恩を売っても良いのですが、仇で返されかねない以上はやはり……」

「まあ、そうなるか」


 ここで目覚めた魔族が俺たちを見て襲いかかってこないとも限らない。

 であれば、目が覚める前に――


「ふあぁ~……」

『!?』


 魔族を積み上げた山の上から女性のあくびが聞こえ、俺たちは同時にその主を確認する。

 その魔族は、眠そうな目で周囲を確認しようと適当に切ったような短い赤髪を揺らしていた。


「ん~? ……どこだここ?」

次回予告


善一(よしかず)「あの人……!」

ルオ「お知り合いですか?」

善一「僕が召喚された時に居た魔族の一人だ。あの時はすぐにどこかに行っちゃったけど、顔覚えられてるかな……」

ルオ「刺激しないよう隠れていましょうか」

善一「そうしとくよ」

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