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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第9章 ドラゴンに限らず人化も定番だと思います。
144/165

144. 番外編でカラオケに行く話を書こうと思った時期もありました。

「お世話になりました」

「うむ、達者でな!」


 翌朝、船に乗って出発しようとする俺たちは、メトーニ姫を始めとするドラゴンたちに見送られ――


「ちょぉぉぉっと待ったぁぁぁぁ!!」

「んだよハルカ、うるせえな」


 どうしてこいつは毎回横槍を入れないと気が済まないんだ。


「うるさくもするわよ、『龍の加護』はどうなったのよ!」

「あ? それについてはもう……いや、あの時お前寝てたわ」


 途中で間違って強い酒飲んでぶっ倒れたんだっけ。


「それについては後で説明するから。ほら、ドラゴンたち戸惑ってるじゃねえか」

「う……わ、悪かったわよ」




 改めて別れの挨拶を交わして船が出発。

 直接魔族たちが住むエサルグ大陸には向かわず、荷物等の準備のため一旦ゼトロヴ大陸の港町ニュイフに戻ることになっている。


「よっちゃん、改めて『龍の加護』について聞かせてもらおうじゃない」

「そんな態度の奴に教えることなんてねえな」

「ごめんなさい教えてください陽太様」


 こいつにそこまで頭下げられると逆になんかアレだな。

 フェツニさんに色々貸してもらっては慣れない手付きで一振りする小夜を眺めながら、とりあえず昨夜聞いた説明を簡潔にまとめてハルカに話すことにする。


「『龍の加護』なんてなかった。以上」

「……は?」

「分かる。俺たちもそんな反応だった」

「ま、まさかじゃないけど、『ここまでの冒険こそが宝物さ』的なオチ?」

「残念ながらその通りだ」


 もしかして、過去の勇者の冒険譚で伏せられてたのってこれが理由だったりしないだろうか。考えすぎか?


「でも、そんなたった数時間だったのに、加護に匹敵する成長なんてあり得ないわよ?」

「本来なら一周目で多少の死亡数が出て札が減ることでやり直しを強要させられ、しかもやり直しの度に出てくるドラゴンも強くなっていくことでより時間をかけさせる予定だったらしい」

「あ~……、それを一周目でノーミス、札も大量だったせいで真の姿を拝めなかったのね」

「途中で料理出てきただろ? もっと後には寝具も控えてたらしいぞ」

「寝れないでしょ絶対……。時間感覚も狂ってくだろうし」


 メトーニ姫は気にしてる様子はなかったが、もしかしたら内心で超焦ってたりしたのかもしれない。

 改良するって言ってたし、未来の勇者一行が不憫だな。頑張れ。

 因みに昨夜の宴の余興でバトってたのは出番がなくて欲求不満だったドラゴンたちだそうだ。


「じゃ、じゃあ、あたしたちってただ行って帰ってきただけになるの……?」

「成長的な意味で言えばそうなる。強いて言うなら俺が強制で進化させられたくらいだ」

「一番何もしてないのに?」

「一番悲惨な目に遭ってるんだが?」


 今回の件で、何度も惨たらしく殺される以上の状況があるなら是非教えてくれ。


「ていうかさ、わざわざ俺に聞きに来なくても良くないか?」

「だって、人為(ひとなり)様に尋ねるのも悪いじゃない」

「俺なら良いのかよおい」


 こいつの中で俺の立ち位置はどうなってるんだ。

 ん? 小夜がこちらが近付いてきた。どうしたんだろうか。


「陽太さん、ハルカさん。次は楽器なので、聞いてて、体に違和感がないか、教えてください」

「ああ、分かった」

「う~ん、折角ならメロディも付けない? ただ鳴らすだけじゃ発動しないかもしれないし」


 言いながら、ハルカがどっからか楽譜を取り出した。


「なんで楽譜持ってんだよ」

「こんなこともあろうかと、好きだった曲は記憶の限り採譜してあるわよ。ケルベロスの時はやれなさそうだったから出さなかったけど」


 お前の記憶どうなってんの。職業とか覚えてないの嘘だったりしない?


「この世界でも楽譜は大体一緒なのを知って、つい燃え上がっちゃったのよね~。勇者の誰かが広めたのかしら」

「簡単な奴ならちょっと練習すればワンフレーズくらいすぐできると思うが……どうする、サヤ?」


 フェツニさんに尋ねられて折角ならと小夜も頷く。

 楽器ごとにそれに合う曲をハルカがいくつか選び、その中から演奏が難しくないものをフェツニさんが選んで練習。


「……アニソン多くない?」

「別に良いじゃない。この世界の人はそんなの分からないわよ」


 先代勇者である正志(まさし)さんが召喚されたのは約五十年前だが、元の世界では俺とたったの一年差。

 だからこの世界に転生して十何年のハルカが割と新しめの曲を知ってても別におかしくないわけで、俺や小夜が知ってる曲も結構あった。

 懐メロ特集で見かけるような奴も少なくなかったが……まあ、こいつもそういう特集見てたんだろ、うん。


「くぅ~~、やっぱり良いわね、テンション上がってきたぁ! 小夜っち、ちょっと歌ってみよっか!」

「えぇ!?」


 楽器での演奏だけでなく歌唱も求めるという無茶振りだが、発動条件かもしれないと言われると小夜は否定できない。

 小夜が知ってる曲はもちろん、知らない曲もハルカが先に手本として歌って強制的に歌わせている。

 ハルカが意外と上手い歌声で非常に楽しそうにしている半面、小夜は恥ずかしさがあるのか控えめに歌っている。

 どうでもいいが、一番凄いのは初見のはずの曲の伴奏を完璧に演奏しているフェツニさんだと思う。


「うんうん、結構上手いしこの感じだとウィスパーボイスで可愛い曲とか似合いそうね! これとかどう!?」

「うぃ、うぃす……?」

「あーもう、教えてあげるから!」


 ただ、楽しく歌うあまり目的忘れてないか?

 一応まだ何の効果も出てないから続ける意味はあるが、小夜の喉が心配だ。


「よっちゃん! 男女のデュエットもあるから一緒に歌いなさい!」

「はぁ!? 俺は関係ないだろ!」

「やりましょう、陽太さん!」

「あっれぇ!?」


 急な飛び火を回避しようとしたら『二人で歌うことが条件かも』と言われ、いつの間にか小夜も乗り気だったので俺も歌うことに。

 どうしてこんなことに、などと思ったりもしたが数曲歌ってたら俺も楽しくなってきたから不思議なものだ。

 もはやただのカラオケになってしまった現状を止める者はなく……


「……何やってんのあんたら」


 様子を見に来たヴラーデにドン引きされた。

 事情を説明したら一応は納得してくれたので、一緒に来ていたロティアも含め参加。


「ロティア歌上手っ!!」

「再生数を稼いできたあたしが敗北を認めざるを得ないなんて……」

「当然よ。仕事柄、話すテンポやリズム、声色や高さに大きさ、多少の芝居も混ぜて喋らないといけないもの。歌くらいどうってことないわ」

「ヴラーデさんも、かなり上手いですね……」

「小さい頃ロティアと一緒に色々歌ってたから。そんな理由だったなんて知らなかったけど」


 普通誰か一人くらい音痴が居そうなものだがそんなことはなかった。

 俺? 変な反応されてないし大丈夫だと思う。この中で一番下手な自信はあるけど。

 ところでハルカ、お前やっぱ前世の記憶が中途半端なの嘘だろ絶対。


「よし次! 小夜っちとヴィッちゃんであのアニメの初代のオープニング!」


 選曲担当のハルカの暴走は酷くなり、歌うだけでなくキャラとしてのセリフまで混ざってくる曲とか、元の曲で既に入っている合いの手を全力でこなしたりとか、果てには人間が歌うようにできてないぶっ飛んだ音域や超高速な曲を歌わされたりもした。

 そういえば『ヴラーデ』から『ヴィッちゃん』になった理由を聞くの忘れてたな。今もちょっと割り込めそうにないしまた今度で良いや。


「あー楽しかった!」

「でも疲れた……」


 思う存分歌ってハルカやロティアはやりきった感を出しているが、俺たちは完全にへばってしまった。

 肝心の小夜のユニークスキルについてだが一切何の成果もなく、ただただ楽しいだけだった。




 行きで苦労しなかった航路が帰りで突然難しくなる、なんてこともなく当然のようにニュイフに帰還。

 町人の歓迎を受けながら準備を進め、数日後にエサルグ大陸に向けて出発。やっぱり自動航行だった。


「ねえ、普通魔王のいる大陸ってさ、こう……どんよりとした赤黒い雲に覆われてるイメージなんだけどさ」

「分かるっちゃ分かる」

「思いっきり晴天じゃない!」


 それを俺に言われてもな。


「ひび割れた荒野なんて広がってないんでしょうね……」

「そんな生きるのも難しそうなところに侵攻したくねえよ」


 そこに長年住んでいる種族なら適応してるかもしれない程度だろ。

 さて、エサルグ大陸は過酷な環境ではないようだが完全に敵地。そこをどうやって進むのか。

 目的は魔王の封印なので、わざわざ村や町を滅ぼしながら進んだりはせずに戦闘は可能な限り避ける。

 当然村や町があっても寄るわけにはいかないので野宿しながら進んでいく。大量の荷物を準備したのは買い物ができないからだ。


「魔族に変装すれば良くない?」


 なんて意見も出たが、これが不思議とバレる。

 どういうわけか変身した正志(まさし)さんでさえ一目で『こいつは敵だ』と言われてしまったとか。

 初代勇者が『魔族は純人の敵だ』なんて言ったことがあるらしいが、そのあたりが関係しているのだろうか。

 まあそんなわけで、一目でバレるくらいなら最初から遭遇しないのを目指した方が良い、ということでコソコソ進むことになっている。

 果たしてそれが勇者らしいのか、なんて疑問は持つだけ無駄だ。




「あー、サクッと終わってくれねえかなー」

「どうしたんですか? ストレートに、嫌がるなんて、珍しいですね」

「珍しいか?」


 口には出してないけどヴラーデも頷いてやがる。

 あれ、でもこの世界に来てからはっきり『嫌だ』って言ったこと……普通にあるな?


「まあ珍しいかは置いといて……今の俺の本来の目的ってさ、あいつを捜すことなんだよ」


 全然成果ないけど。


「今までは寄ったところで色々調べることができた。だけどさ、敵地で、しかも人里を避けての移動だろ? 何をどう調べろってんだよ」

「それでやる気ないのね」

「貴重な、姿ですね。手は、止まる気配、ないですけど」


 むしろカルーカの頭を撫でて癒されてるんだよ。獣人だからだと思うけどカルーカが一番心地良いんだこれが。


「というわけでしばらくテンション低いと思うけど許せ」

「戦闘になったらそんなこと言ってられないわよ?」

「それはちゃんとやるよ、死にたくないし」


 死んだらルナと再会するも何もなくなってしまうからな。

 だから、せいぜい戦闘回数が少なくなって敵も大して強くないことでも祈っておこうか。

次章予告


ずっと愛し続けるつもりでした。

例え私が全てを失ったとしてもこの愛だけは捧げることをやめない、と。

だけど、だけど……、まさか貴方がなんて、考えてもいなかったんです。

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