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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第1章 チート魔女に召喚されました。
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14. ダンジョンに挑みましょう。(前)

「酷い目に遭ったわ……」


 翌朝のロティアの第一声がそれだ。自業自得だろうが。思わずため息が出る。


「これに懲りたらちょっとは――」

「今日はどうする?」


 聞けよ。懲りる気ねえだろお前。




 昨日とは変わって晴れている今日はギルドに行くことになった。

 ギルドに着くとイキュイさんがいたので挨拶をする。そこで、


「あなたたち、ダンジョンに挑んでみないかしら?」


 という提案を受ける。ダンジョンか。そういえばルナの家ってダンジョンコアから作ったんだっけ。

 行ったことないし、挑戦するのもいいかもな。三人も興味があるようだ。


「もう知ってるかもしれないけれど、これも仕事だから説明するわね」


 と言ってこの世界のダンジョンについて教えてくれた。

 まずこの世界のダンジョンは出現するものらしく、その詳しい原理などは解明されていない。一応魔力が集まりやすい場所にできることが多いとかそのくらいだとか。下手すると自然現象扱いになりそうだな。

 ダンジョンはゲームや小説でよくある魔物が出現する迷宮を進んでいく『通常型』と、この世界の法則にすら当てはまらない現象が起き、主に仕掛けを突破して進んでいく『特殊型』がほとんどだそうだ。

 共通点は魔物が出現すること――『特殊型』の方は出現しないこともあるらしいが――、罠があること、ダンジョンコアを守護する存在があり突破すると制覇アイテムが入手できることなど。

 アイテムは難易度が高いほど貴重なものになることが多く、なくなってもランダムに再生成される。その気になれば何回でも挑戦できそうだと思ったが、『通常型』はダンジョンそのものの構成がランダムで変わるし、『特殊型』は制覇した人が再挑戦をしようとしても入れないことが多いとか。

 またこの世界では【空間魔法】は生物には作用できず転移ができないので以前は来た道を戻る手間があったが、いつかの勇者がダンジョンの性質を上手く利用し、ダンジョン専用で入口に戻れる帰還用の転移をできるようにしたとかなんとか。挑戦するときはそれ専用の魔導具が渡される。ありがとうご都合主義要員(ゆうしゃ)

 あとダンジョンコアは壊したり持って帰ったりするのは禁止と言われた。魔物との戦闘の訓練とか素材とかアイテムとか有益なものが多いのでよっぽどのことがなければダンジョンはそのままにしたいらしい。

 代わりに制覇アイテムを提示することでランクのポイントが貰える。


「とまあ概ねこんな感じ。それで今回は『特殊型』の一つ、『鏡の洞窟』をオススメするわ」


 なんでもこの町ラーサムではダンジョンの初挑戦には大体これをオススメするらしい。魔物も出現せず即死してしまうような罠もない、大きさも小さめで適性ランク――これを下回るとギルドの受付があるダンジョンでは挑戦を拒否される――も3という初心者用のダンジョン。

 ただし一人だと入れないらしく最低人数は二人。ソロで行動している人は臨時で誰かと組むか挑戦しないことになるとか。

 制覇アイテムは何の効果もない普通の手鏡もあれば、何らかの能力が宿った魔法道具(マジックアイテム)である鏡もあり、受付で鑑定してくれるらしい。

 比較的安全そうだし挑戦してみるか。


 三人も了承してくれたのでイキュイさんに挑戦することを伝え、ダンジョンがある場所を教えてもらう。

 ラーサムから東、いつもの討伐依頼などとは違うルートで森を進んだ場所だ。利用者が多いからか、道はしっかり整備されていた。


 移動は【身体強化】を使用しての高速移動。さりげに初めて三人が使う様子を見たが考えてみれば今まで近場でしか活動してないから中々使う機会がなかっただけか。戦闘も魔法メインだし。

 ただロティアは苦手だったのか、ダンジョンに着く頃には一人息を切らしていた。


 ダンジョンの近くには受付がある建物や色んな店が並んでいる。やはり町などよりは値段が高い。

 しかし準備は既にしてあり買うものもないので受付がある建物に入り、適当な席に座ってヴラーデお手製のお弁当タイム。


 受付ではまず簡単な説明。鏡を使った仕掛けがある『特殊型』ということだが、生存率が高い割に制覇率は低いらしい。謎解きとかが難しいのか?

 そして挑戦者名簿に全員の名前を記入し帰還用の転移カードを受け取る。使い捨てで使用するとダンジョンの入り口横の魔法陣に転移するそうだ。

 因みにダンジョンごとに決まった期間内に帰還が確認できない場合捜索隊が派遣されるらしい。


 それではいざ、ダンジョンの中へ。




 中に入ると二つのドア。その前に立つ看板には、


『この先二手に分かれてお進みください。

 ドアは同時でないと開きません。』


 とあったので、ヨルトス作のくじ引きで決めた結果俺とヴラーデのペア、ロティアとヨルトスのペアに分かれる。

 今までもくじ引きは行ってきたが、二回に一回はヴラーデと組んでる気がする。残りは半々くらい。

 まあ何か悪いことがあるわけでもないので突っ込まないのだが。


 そして俺が左の、ロティアが右のドアを開け中に入る。

 中は普通の洞窟で、正面には先程と同じく看板、右の壁にはあまり大きくない穴がたくさん。ロティアたちの姿も見える。

 そういえば光源がないように見えるのに普通に明るいのだが、ダンジョンの仕組みなどと一緒でこれも不明らしい。奥は少し離れたところから暗くなってるしなんなんだろうな。


 看板には、


『横にあるのは鏡です。』


 とそれだけ。


「なんで左右逆なのかしら、読みづらいんだけど……」


 とヴラーデが言ったが、俺は翻訳のおかげで文を見れば読めてしまい文字は知らない状態なので分からなかった。

 しかし、鏡? 別に穴を見ても自分の姿は映らないし、向こうにはロティアたちがいる。向こうも疑問に思ったのかこちらを見たため目が合った。

 穴に近付きおそるおそる手を出せばそこには透明で平らな板があるのがわかった。だがやはり鏡というよりは光を反射しないガラスといった感じだ。


「ヨータ、あれ……」


 とヴラーデが指差す先を見れば……石が浮いていた。なんだあれ。しかしこれで驚かないあたり俺も異世界に慣れてきたなと思う。


「……やっぱりな」


 と言うヨルトスはその手に石を持っていた。その石をどこかへ投げると同時に俺たちの前で浮いていた石が俺の方に飛んできたのでキャッチ。するとヨルトスが投げた石は空中で停止した。つまり……


「私たち以外鏡写し、ということね」


 ロティアがいいところを持っていく。いや別にいいんだけどさ。

 最初で二手に分かれるのは鏡の中と外に分けるためなんだろうな。そして鏡文字があったことからこっちが中。

 そういえば穴に見えるのが全部鏡だというならどうして向こうの声がちゃんと聞こえるのだろうか。


「……ねえ、進まないの?」


 ヴラーデが少しイライラした様子で言う。確かにここで考え込んでも仕方ないか。


「ああ、すまん。行こうか」




 そのまま四人でしばらく歩くが……


「……何もないわね」


 ここまで魔物が出てこなければ罠もなく、ただ一本道を進むだけ。

 だがロティア、それはフラグだぞ? と冗談半分に思っていたのだが、


 カチッ。ヒュン!


「!?」


 スイッチ音に一瞬遅れて何かが俺の目の前を通り過ぎたことに寒気が走る。危ねえ……

 飛んでった先を見れば鏡に矢が刺さ……先端吸盤じゃねえか、初心者向けってそういうことなのか?

 その向こうではロティアが青い顔で自分の首の後ろを……いや髪を確認している。かすりでもしたか。

 矢も鏡を寸分の狂いなく同じ位置でくっついて挟んでるから向こうからも飛んできたんだろう。流石鏡写し。


 そしてスイッチの音がした方を見ると、確かに地面に洞窟内と同じ色のスイッチがあったが、俺もヴラーデも踏んでない……はず。スイッチのある箇所は通ってなかったと思うんだが自信なくなってきた。


「……皆」


 その声にヨルトスの方を見ると、しゃがんで指で地面をなぞっているが……いや、よく見ると地面じゃなくて微妙に空中をなぞっている。まるでそこに透明の何かがあるかのように。

 続いてもう片方の手でヨルトスにとって鏡の向こうにあるスイッチを指差す。スイッチとの位置関係は……


「まさか……」

「……だろうな。ロティア、何か踏んだような感覚はなかったか?」


 ロティアの呟きを拾うついでに尋ねるが、


「うーん、あったような……なかったような……?」


 はっきりとは覚えてないらしい。直後の矢のインパクトが大きくて飛んでったのかもな。


「まあいいさ、次見つけた時に試してみればいいだろ」




 そして少し歩いたところで今度はロティア側にスイッチがあるのを見つけたので、対応ができるように一番身体能力が高い俺が押すことになった。鏡の向こうを見ながら丁寧に位置を探り、それらしきものを見つけたところで押してみる。


「うぉっ」


 突然周囲の地面が凹む。当然落ちるが一メートルもなかったので普通に着地、怪我はない。


「ヨータ、大丈夫?」

「ああ」


 ヴラーデの問いに答えながら飛び出ると、鏡の向こうにも同じ穴が開いていた。確定だな。

 スイッチはどちらかでしか見れないこと以外は完全に鏡写し。ちゃんと両方に存在していて、片方を作動させればもう片方も作動。


 分かってしまえばこっちのもの。スイッチなどを見つけたらもう片方の位置を特定し押さないように気を付けるだけ。

 あれから一度も罠を作動させることなく進んでいくとやがてドアが見えてきた。


「やっと次のドアね……」


 そのドアの前には二つのスイッチ。四角く大きいものがこちら側に一つ、ロティア側にも一つ。位置はどちらも通路の左側。


「何よ、無駄に最後だけ優しいじゃない」


 とヴラーデが目に見えるスイッチを避けて歩く……って!


「バカっ、待てっ!」

「ん? 何よ」


 カチッ。


 咄嗟にヴラーデの手を引くと、そこにたらいが落ちてきて、地面にぶつかることで良い音を奏でる。……なんでここに来てたらい?


「何? なんで?」

「はぁ……よく考えてみろ」

「え? えーと……あ!」


 少しじーっとスイッチを見ていたら気付いてくれたようだ。

 鏡写しになっている二つの通路で、両方左側にあるのはおかしい。片方が左側にあればもう片方は右側にあるはずなんだから。

 つまり両方左側で計二つに見えるスイッチは実際両方の右側にもあり二つずつの計四つ並んでいることになる。

 ヴラーデはそのことに気付かず最後の最後で引っ掛かってしまったわけだ。当然向こう側ではスイッチの上にたらいが落ちているように見える。


「ったく、気を付けろよ?」

「う、ごめん……」


 スイッチが一回しか発動しないとも限らないので踏まないよう丁寧に進み、俺とロティアで同時に次に進むドアを開けた。

次回予告


陽太  「そういえば『鏡の』っていう割には大迷宮じゃないのな」

ヴラーデ「え? なんで? 別にいいじゃない」

陽太  「ナンデモナイデスワスレテクダサイ(そうでしたここ異世界でした)」

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