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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第8章 精霊篇
130/165

130. こういうネタをもっと色々な作品でやってほしいです。

 皆で協力し夕食の準備が終わった頃。


「お待たせしました」


 話を終えたらしいヴラーデとシーラさんが姿を見せた。


「どうだった? 自分の親のこと知って」

「よく分かんない……だって、顔や声も知らなかったのよ? 他人も同然じゃない。他人だと、思ってたのに……」

「そっか。別に焦る必要もないし、ゆっくり整理つけてけば良いさ」

「うん……」


 そういえば俺たちに話したのと同一の内容だったのだろうか。それともヴラーデにだけ追加があったのだろうか。

 まあシーラさんなりの考えもあるだろうし追究はしないでおくか。


「お飲み物もどうぞ~」


 そのシーラさんが数種類の飲み物とコップを乗せたワゴンを運んできたので、それぞれ好きなものを注ぐ。

 全員が席に着いたところで、シーラさんが何故か乾杯の音頭を取る。


「それでは皆様。ヴラーデの快気を祝って……」

「えっ私!?」

「かんぱーい!」

『かんぱ~い!!』


 約一名戸惑っていたが、その一名も含めほぼ全員でまず飲み物を一口……異変はすぐに起きた。


「んむっ!?」


 急に喉に込み上げるものを感じ両手で口を押さえようとするも、体が上手く動かない。

 焦りと混乱の中、顔を上に向けさせられたかと思うと口の中から白い光の球が出てきた。

 声も出せずかろうじて動く目で周りを確認すると、少なくとも両隣の小夜とヴラーデも同じ状態のようで、気付けば俺たちの上で球が十個くらい集まっていた。


「なるほど、概念に置き換えているのですか」


 その中でシーラさんの声が聞こえれば、思うことはただ一つ。多分皆も。

 この人の仕業か……!

 しかし文句も言おうにも声は出ないし体は動かない。いつの間にか球は輪に並んでルーレットの如く回り始めており、もうどれが誰から出てきたものか分からない。

 強制的に成り行きを見守らされていると、球が並んだ輪は急に停止し、その中の一つが俺の口に入ってきた。どうやら他の人にも一個ずつ入ったようだ。


「皆さん、もう大丈夫なはずですよ」

「……ホント、だ……?」


 シーラさんの言葉に体を動かし、声も出るようになったが……


「あーあー? この声……?」


 俺から発せられるのが自分の声じゃない。ヘリウムを吸ったような変な声でもない。以前性転換してしまった時の声でもない。だけど、確かに聞き覚えのある女声。

 他の皆も違和感があるらしく、夕食を忘れて確認しようとしている。一部男声が出るようになってしまった女性陣が悲鳴を上げているが。

 俺も色んな高さ、色んな声色を出してみて、ようやく気付いた。


「あ、これ、ネージェさんの声だ」


 って冷静に分析してる場合じゃない。


「だ、大丈夫か皆?」

「陽太さん、私もう死にたい……」

「ご、ご主人! ぼくからご主人の声が!」

「あー、とりあえず二人とも落ち着いてくれ」


 小夜は哀れなことに男であるフェツニさんの声を出している。正直面白いが、小夜に悪いのでどうにか堪える。因みにさっきの悲鳴のうちの一人。

 カルーカは俺の声を出していることに興奮しているようだ。尻尾の動きが激しい。


「ヴラーデはどうだ?」

「私はロティアね」

「ヴラーデさんずるい! ダメージ少ないじゃないですか!」

「そんなこと言われても……ってサヤ!? あ~、その、えっと……ごめん」

「う~、なんで私だけ……」

「いや、お前だけじゃないぞ」

「え?」


 俺が指差したことで小夜もそっちを見る。そこには……


「……俺の声でこれ以上喋るな」

「嫌よ! 折角のこのチャンス、遊んで遊んで遊びまくってやるんだから!」

「……殺す!」

「危なっ! だけどギャグ補正が入ったあたしは簡単には捕まらないわよ!」


 この状況を悲観することどころか楽しんでいるハルカと、それを追いかけるヨルトスの姿があった。

 本人が気付いてるかは知らんがヨルトスはヴラーデの声だな。


「……ハルカさん、楽しんでる、じゃないですか」

「すまん」

「だっはっは! こりゃあ面白え! 俺が大人しくなってやがる!」

「笑うなバカ」

「いだっ!」


 フェツニさんが後ろからハルカの声で大笑いし、それをネージェさんがカルーカの声で止める。もうカオスだよこれ。


「ごめんサヤ、こいつバカだから。許してあげて」

「私もすまない。どうやらサヤ殿の声をいただいてしまったようだ」

「え、あ、はい?」


 確かにサリーさんは小夜の声だ。サリーさんが喋ると小夜ともルナとも違うな。ルナは小夜の声を若干低くしたような声だったが、更に凛々しさが足されている。


「ちょっと勇者ぁ! どうしてあなたたちだけ無事なのよ!」


 突然の大声に驚いてそっちを確認すると、人為(ひとなり)さんとニルルさんに怒りを向けているロティアの姿があった。

 あいつの声はサリーさんか。ロティアに喋らせるとこれまた新鮮だな。


「当然です。シーラ様がわざわざ出すような怪しい飲み物、飲ませられるわけありません」

「というわけです。毒見をさせる形になってしまい申し訳ないです」

「それはそうだけど……あ~なんかムカつく!」


 どうやらニルルさんの過保護が発動し二人は難を逃れたようだ。というか俺たちが油断しすぎか。

 俺はてっきりロティアだけが対象だと思ってたからな。まさか俺たちを巻き込むとは思ってなかった。

 一緒に飲んでたはずの両親ズは飲み物が違うらしく無事である。さては共犯だな?


「で、お母様。効果はよ~く分かったけど、どういうことなのこれは?」

「声を入れ替える薬を飲み物に溶かしておいただけですよ?」

「他に効果は?」

「無いはずですよ」

「戻るのよね?」

「それを今調査中です」


 小夜が死んだ。


「あはは、一生この声……あはは……」

「さ、小夜帰ってこい! 大丈夫! まだ決まったわけじゃないから!」

「流石に自分の声でここまで落ち込まれるとショックなんだが」

「バカ、そういう問題じゃない」


 フェツニさんの気持ちも分かるが、何故か興奮してるカルーカや楽しめるハルカとは違って小夜は男の声になったってだけで相当ショックなのだろう。


「でお母様? これどう収集つけるの?」

「しばらく様子を見ましょう。時間で戻る様子がなかったとしても最終手段くらいは用意してますので」


 小夜が生き返った。


「良かった……本当に良かった……」

「ねえ今度は俺が泣いていい?」

「ダメに決まってるでしょバカ」

「あ、そうだヨータ。ネージェの声で何かやってくれね?」

「「はぁっ!?」」


 切り替え早っ!


「いや~、ネージェって普段クールな感じじゃん? どうせだしもっと色んなの聞いてみたいだだだだっ!」

「人の声を玩具にしないで」

「スマン! スマンって! だから殴るのやめてくれ!」

「問、答……無用!」

「ぬあああぁっ!!」


 凄ぇ……ネージェさんが格闘コンボ決めてアッパーでフィニッシュした……!

 一応フェツニさんも鍛えてる人なのでダメージはあまりないようではあるのだが。

 というかフェツニさんも見切った上でわざと喰らってるよな、あれ。まあ抵抗しない程度には空気が読めるということだろう。


「あのバカの言うことは気にしないで」

「あ、はい……」


 正直言われなくても遊ぶつもりはなかったのだが。

 誰のものでもない新しいものならともかく、誰のか分かってる以上はちょっとな。


「ところでさ」

「うわっ!? ……なんだ、ハルカか」

「ネージェの驚き声可愛いじゃねえか」

「黙れ」

「へぶっ!?」


 こいつ一体どこから湧いて出たんだ。というかヨルトスを振り切ったのか。

 後ろで殴られてるフェツニさんはスルーで。ごめんネージェさん。


「どうしたんだ?」

「これさ……小説でやるネタじゃなくない!?」

「あ、そういう」


 メタ発言係さん今回もご苦労様です。


「……ヨータ、そいつを捕まえろ!」

「げっ、もう来た! へへ~ん、捕まってあげないよ~だ!」

「あっ逃げた」

「……また俺の声でふざけた喋り方を……!」


 なんかヨルトスが可哀想になってきたので手を貸すことにしよう。


「ほい転移」

「へ? ……あ! よっちゃんそれはずるいって!」

「……すまん助かる。……さて、どうしてくれようか」

「あ、えっと、その……ごめんちゃい☆」

「……そうか死にたいか」

「むぐっ!? む~~!!」


 もうこれ以上喋らないようになのかハルカの口が塞がれ、一瞬で手足も縛られてしまった。


「一応今食事中なんだからグロいのは控えてくれよー」


 さ、俺も飯食おう。

 先に席に着いていたのは声が入れ替わってない人たちと、ヴラーデ・ロティア。

 俺も席に着こうとしたら考えるのを止めたかのような表情の小夜と飽きてきたらしいカルーカもついてきた。


「珍しいな、お前がふざけないなんて。てっきりサリーさんの声で遊ぶか、自分の声になったヴラーデで遊ぶもんだと思ってたけど」

「なんかお母様の思い通りになるようで気分が乗らなかったのよ」

「あら? この反応も予想通りですよ?」

「んなっ!?」

「ロティアはこのような時、完全に無関心を装うか完全に羽目を外すかのどちらかですからね」

「う……」


 流石母親。


「それより、ロティアの声になったヴラーデに是非読んでいただきたい文章があるのですが……」

「えっ?」

「お母様!?」


 ここにもフェツニさんの同類がおった。


「……ヴラーデ、ダメだからね?」

「わ、分かってるわよ!?」

「そうですか、残念です……」


 ちょっとやってみてもいいかも、って顔してたぞ一瞬。


「あなたたちこそ、ヨータの声になったカルーカちゃんに喋ってもらいたい言葉とかないの?」

「おい」

「嫌よ。どうしてヨータが嫌がることをさせなきゃいけないのよ」


 俺を生贄にしようとするんじゃねえよロティア。

 ヴラーデが乗らなくて良かった。小夜も声を出さずに頷いている。カルーカは……話を聞かずに黙々と食ってやがる。

 まあ良いや、俺も食べよ。


「……あれ? 冷めてない」

「皆のは温め直してあるわよ」

「マジか。悪いな」


 通りであまり混ざってこなかったのか。

 フェツニさんたちやハルカを吊るしたまま放置したヨルトスも席に着いて夕食が再開されるのだった。




 その夕食が終わる頃、入れ替わった時と同じようにしてようやく声が元に戻った。


「良かった……本っ当に良かった……!」

「ちぇっ、まだ遊び足りないんだけどね~」


 心から喜ぶ小夜やちゃっかり復活していて残念がるハルカを始め、安堵したり疲れきっていたりと反応は様々。


「皆様ご協力ありがとうございました。これからはどうなさる予定なのでしょうか?」

「本来であれば予定外のルートですので、明日にも一旦ラーサムに戻り再出発の準備を調えようと思っております」


 シーラさんの問いにはニルルさんが答える。

 善一(よしかず)たちもラーサムに残っているので合流する意味も含まれているのだろう。

 リオーゼさんがいるから転移で連れてくることもできないしな。

 因みにいつの間にか今日はここに泊まることになっていた。


「それではまずお部屋に――」




 急に夜が明けたかと思った。

 それを稲光だと気付かせたのは直後の轟音。


「ひっ!!」

「な、何!? 雷!? だとしたらとんでもない近さよ!?」


 誰がどんな反応を示したかなど気にも留めず、全員で外を見る。


「よぉ。殺しに来たぜ……姫さん」

次回予告


ロフダム「というわけで俺っち華麗に参上!」

陽太  「うわ、また出た」

ロフダム「今度こそ俺っちの華麗な活躍に乞うご期待!」

陽太  「また『華麗』って言った」

人為  「ふふふ、それはどうでしょうか?」

ロフダム「はっ、人間風情が何を偉そうにしてんだか」

陽太  「こいつこんなキャラだったっけ」

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