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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第7章 折角のファンタジーなので性転換もやっておきたいですよね。
110/165

110. 選手宣誓とか優勝旗の返還とかは特にないらしいです。

 今日はいよいよ闘技大会開催の日。

 人数に関わらず全て一対一の試合を行うらしいので出番がない日もあるらしいが、初日は開会式やトーナメント表の発表もあるので全員参加である。

 当然俺もフル装備で向かわなきゃいけないわけで……あ~また注目集めてる、慣れねえもんだなこれ。


 闘技場に着けば受付で参加証の確認を行い中に入る。

 既にアリーナも観客席も大量の人で埋め尽くされており、開始を今か今かと待ちわびてるようだ。

 ユニークスキルで小夜たちの位置を探るが……観客席ではなく来賓用っぽい部屋からこちらを見下ろしていた。

 勇者一行ということで特別扱いされているのだろう。俺もあっちにいれたらどれだけ楽だったことか……

 あと小夜、アピールしてるつもりだろうが正体隠してる以上反応できないからな?


 まだ入るのかと思うくらい人が増え続ける中、ようやく開会式が始まった。

 最初に開会の挨拶で王様が小夜たちがいた部屋の一つ上で拡声器のような魔導具を持つ。

 ジョットの父、フェツニさんの兄ということになるが……うん、フェツニさんとは歳の差がありそうだがどことなく似てるな。

 そういえば王都に来た時に人為(ひとなり)さんたちやフェツニさんたちは挨拶しに行ったらしいが、俺たちは行かなくて良かったのかな、今更だけど。


『え~、皆様、本日はご来場いただき誠にありがとうございます……なんて、そんな適当な挨拶なんぞいらねぇよなあ! 思う存分暴れ回りやがれ!!』


 性格は似てないのか丁寧な挨拶を始めたかと一瞬思ったが、熱血タイプだったようだ。

 王としてその振る舞いで良いのか、とも思うが盛り上がってるしここではあれが普通なんだろう、きっと。


『それと今回はなんとぉ! 勇者一行の来訪に合わせてこの三人に参加してもらうことになった!』


 その言葉と共に、王様の横に人為さんたちが現れ、人為さんは微笑んだまま丁寧に、サリーさんがきっちりと一礼をし、フェツニさんは軽く手を挙げる。


『当然実力も相当なものだが……なるほど、今回の参加者も強者揃いだな! 油断できんぞ愚弟よ?』

『どうしてそこでこっち振るんだバカ兄貴』


 フェツニさんの声は拾いきれてないのか小さく聞こえたが、気軽に言い合いができる仲の良い兄弟のようだ。

 それは置いといて、今あの人がアリーナを見渡した時、俺と目を合わせたような気がした。

 気のせいであってほしいが……あ、もしかして今の俺の事情を聞いているのか?


『さて、そろそろ飽きてきてる奴もいるようだし、こっちはおしまいにしてさっさと始めてもらうとするか! 本当は俺も出たかったが流石に止められたので観客共々楽しませてくれよ! 以上、諸君の健闘を祈る!!』


 たった数分で終わった開会の挨拶の後はルール説明。

 簡単にまとめると、戦闘不能、場外、降参で負けとなるが、相手を殺す他に決着したのに相手を攻撃し続けたり、故意に場外や降参を妨害したと判断されたりすると失格。当然ながら近接戦に関係ない魔法・スキル等の使用も禁止である。

 あと、身体欠損を治せるほどの【回復魔法】の使い手がニルルさん含め複数いるので気にせず戦って良しとのことだ。

 ……骨折・切断お構いなしか、気は進まないのでやむを得なくなるような強敵と当たらないように祈っておこう。


 さて肝心のトーナメント表の公開だ。今回は第四ブロックまであって、それぞれのトップで準決勝を行うとのこと。

 俺はえーっと……あった、第三ブロックか。ブロック単位で進行するって言ってたしそれまでは暇になるな。

 ついでにフェツニさんが第一、サリーさんが第二、人為さんが第四。教会の陰謀を感じる。

 あとツグアさんは……俺と同じ第三だが、当たるとしたらブロックの最後か。これ絶対ニルルさんの仕業だ、そこまで頑張って勝ち抜けってかあの聖女め。




 さて、開会式が終われば第一ブロックの人は控室へ、他は解散だ。

 折角だしフェツニさんのでも観戦を……あれ、どうすればいいんだ?

 この格好じゃ観客席に行くのも小夜たちに合流するのも厳しいよな。着替えれそうな場所もないし教会に戻るのも……


「ソルル、ここにいたのか!」


 あ、どうするか決める前にツグアさんが嬉しそうにこちらにやってきてしまった。

 ん? どうしてそんなに嬉しそう――


「会いたかったぞ!」


 よし逃げよう、しかし袖を掴まれてしまった。


「無視しないでくれ」

「人違いです」

「そんな格好してるのにか?」

「ぐ……」


 いや逆に他の人が成りすまして……参加証譲渡不可だったわそういえば。

 完全に逃げ道がない、仕方ないな。


「はぁ……何の用でしょうか?」

「む? 言ったではないか、『会いたかった』と」


 何か理由があって会いたかったんじゃなくて会うのが目的かい。


「あれ以来ずっと、貴女と一戦交えることを考えると胸の高鳴りが止まないんだ。そう! これぞまさしく恋!!」

「ただの戦闘狂じゃないですかねそれ」

「もちろん貴女の弟子になるという目標も忘れてないぞ!」

「ダメだ聞いてねえ」


 ツグアさんの異常なハイテンションに付き合う気もないのでそれ以降は適当に聞き流すことにする。

 それよりも周りの注目を集めてるのがつらい。なんか小声で囁かれてもいる。


「おい、あのツグア様に目を付けられるなんてあの仮面女何者だよ」

「知らねえのか? 参加申請の時にな……」

「お姉様と呼んでもいいかな……」

「あ、あの~……」


 ……なんだこれ。まず『ツグア様』って何? あとお姉様は俺じゃないよな、ツグアさんだよな?

 参加申請の時のはもう仕方ないから諦めよう、あれだけでかなり話題になってるらしい。


「ああそうだ、貴女と当たるのは第三ブロックの最終戦だったな」

「……当たるとしたら、ですけどね?」


 確定事項のように言わないでくれ。こちらに向いていた視線の何割かが剣呑なものに変わり始めてるじゃねえか。


「こっちは眼中にないってか、流石騎士サマってか?」

「まさか今まで敢えて出場していなかったツグア様が突然出ることになったのって……」

「誰だよ勇者のためとか言ってた奴。だが、ますますあの仮面剣士が気になってくるな」

「ああ、お姉様……」

「ツグア様に近付くなんて、私がこの手で……!」

「すみませ~ん」


 ……なんか違うのも多いしヤンデレが追加されてない?

 あと声だけで恍惚としてるのが分かるくらい『お姉様』って言ってる奴誰かどうにかしろ。


「ところで、ソルル」

「はい?」

「そこのシスター、先程から貴女に話しかけているようだが?」

「え、シスター?」


 そんなの居たっけ、と思いつつ後ろを振り返る。


「あぁ、やっと気付いてくれました……!」


 そこには背が低く愛くるしい、気弱そうなシスターが居た。

 この声、さっきまで地味に紛れてた奴か。真後ろにいながらそれを悟らせないとは……こいつ、できる!

 なんて冗談はさておき。


「え~っと……すみません、気付けなくて」

「いえ! こ、こちらこそ声が小さくてごめんなさい! 折角の任務もできないようなダメシスターで本当にごめんなさい!!」

「あ、あの……?」

「分かってるんです、私なんかが聖女様に直接お願いされることなんてないって。たまたま手が空いていたのが私だけだから頼まれただけなんだって」


 ネガティブかっ。この娘もツグアさんとは違う意味で話聞かなさそうだな。


「で、何の用でしょうか?」

「あ、ご、ごめんなさい。え~と、聖女様にソルル様を連れてくるように言われたのですが……」

「そうか。では私もご一緒させてもらおう」

「あの、本当に申し訳ないのですが……他の人はダメだそうです……」

「何……!?」


 いや『何……!?』じゃねえよ、何当たり前のようについて来ようとしてんだ。


「……本当にダメか?」

「う……だ、ダメなものはダメです」


 諦め悪いなおい。この娘も心が揺れそうで目を逸らしながらもちゃんと言い切っているあたり厳命されてきたんだろうな。


「むう、もっとソルルと話していたかったが仕方ないな、戻って鍛練でもするとしよう。ではまた、試合で会おう」

「あ、はい、さようなら」


 例によってツグアさんは俺が言い終わる前に去っていき、俺たちもニルルさん、恐らく小夜たちも待っているであろう場所へ向かうことにする。

 因みに、シスターに連れられていることで『教会とも繋がりがある』と噂のネタが増えてしまった。




「あ、ソルルさん、遅かった、ですね。……大丈夫、ですか? 疲れている、ようですけど」

「ああ……ちょっとな」

「申し訳ありません、教会の者がご迷惑をお掛けしたようで……」


 あの娘、事あるごとにネガティブを発揮するもんだからホント疲れた。

 あまりに進みが悪いことにイライラして一度脅かした時に『私なんかに手を下して頂けるのですか』なんて感激された時には、もうどうすればいいのか分からなかった。


「人一倍熱心で仕事もきちんとこなせるので、あとは自分に自信を持っていただければ良いのですが……」

「うん、あれは何を言っても悪い意味で捉えるタイプだった。余程なことがないと無理だと思う」


 むしろ諦めずに切り捨てない教会凄いと思ったほどだ。教会としては悪人でない限りどんな人物であれ捨てちゃいけないんだろうけど。


「まああの娘については置いといて、着替えたいんだけどどっか部屋借りれるところある?」

「ご用意しております。こちらへどうぞ」

「どうも。……小夜、別について来なくてもいいんだぞ?」


 ニルルさんについてこうとした俺の後ろに何故か小夜がちょこんと立っていた。


「え? だ、ダメ、ですか?」

「いやもう流石に手伝いはいらねえよ?」

「そう、ですか……」


 落ち込んで元の位置に戻っていく小夜。女になった俺を手伝ってばかりいたせいで習慣になってしまったのだろうか。

 ……これはこれで男に戻った時に苦労しそうな部分が増えてしまったな。小夜に世話される俺の図……二つ下の女子に一方的に世話される趣味はない、気を付けることにしよう。


 まあいいや、今はとりあえずさっさと着替えてフェツニさんの試合を観戦するとしよう。

次回予告


小夜  「依存させる作戦は失敗か……」

ヴラーデ「さらっと何言ってんのアンタ」

小夜  「いえ、大分手伝いを、してきましたので、私がいなきゃ、生きていけない、というのも、ありかなって」

ヴラーデ「……サヤはヨータをどうしたいのよ」

ネージェ(あいつも私がいないとすぐ……)

ロティア(お、食い付いておりますなあ)

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