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間話「言い訳をさせてください」

 清水が愛理とイチャコラ(野菊いわく)していた日の、野菊が座敷を終えての風呂タイム時に起きた出来事。


*短いです。



『では、またね』

『はい野菊様。でも私、…私次こそは、絶っっ対に野菊様に床入りさせてみせますわ!』

早苗さなえ…(すいませんごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ…)』



 座敷は今日もいつも通りに終わり、夜はとうに更けている刻。


「疲れたなぁ」

 

 自室に戻っている私は、敷いた布団の上でゴロンと横になっていた。

 だが長着も羽織も着たままなので若干寝心地が悪い。

 あぁでも眠い。


 しかし、このまま眠りにつくのはおやじ様的にアウトなので、一日の身体の汚れを落とす作業を必ずしなくてはならない。

 そう、常に清潔でなければ!ね。

 

「臭うのはイヤだ…」


 さて、風呂にでも入ろうかな。


●●●●●●●●●●


「ふぃ~。…寒っ」


 寒い廊下をひたすら手を擦りながら歩き向かう。こんなに寒いのに、ちょっと冷めちゃった残り湯の私。

 …大分前の発言は撤回する。

 後の入浴に若干の不満ありました。



 ――パシッ


「ちょっと待って」

「え?」


 脱衣所がある右の角を曲がろうとしたら、パシッ…と手首を掴まれ風呂に行こうとするのを誰かに止められる。


 いきなり誰?…どうしたのかと相手の顔を覗き見れば、困った様な笑みで私の顔を見つめる清水兄ィさまがいた。

 何故に困り顔?


「わ、兄ィさま!」

「久しぶりに一緒に入る?」

「えっでも、兄ィさまは今出たばかりでは…」


 兄ィさまの髪は水で濡れている。それに私の前から来たと言う事は、今さっきまで入っていた筈なのに。


「嫌?」

「とっとんでもない!!」


「じゃあ脱いだらちゃんと手拭いで前は隠して入っておいでね」

「は、はい」


 それにけして暖かいとは言えないお湯に兄ィさまを浸からせるのは、なんだかいただけない。

 そうは言っても、兄ィさまは我先にと来た道を戻って脱衣所に行っちゃったし。


「………うーん」


●●●●●●●●●●




 ――…ポチャーン


「兄ィさま、私ちゃんと遊男としてやれているでしょうか」


 兄ィさまに後ろから抱き抱えられながらお湯に浸かっている。…何も言わないで欲しい。


「花魁として不十分じゃないでしょうか」


 結局一緒に入る事にした私。うぅ、兄ィさまには一生勝てない気がする。


 だが久しぶりに一緒に入り、話も2人きりでしたので、仕事の悩みをこれでもかと兄ィさまにブツける。女と言うことがいつかバレないか毎日ヒヤヒヤだし、体格も大きくはない私が果たして、女の人に男としての力強さを示せているだろうか等。上げれば悩みは本当に尽きない。


「…私としてはね、あまり上手になられても嫌なんだけど」

「嫌ですか!?」

「うん。イーヤ」

「嫌ですか」

「……なんてね」


 冗談だよと笑いながら私の頭を撫で付ける兄ィさま。



 ――トクン…


 チラと後ろ目で見えたその相変わらずの優しい笑顔に、いつもより何故かチョットだけ心が跳ねたのは、何故、なのか。


「あ、あ~、だっ大好きです。兄ィさま」


 そして何故か気恥ずかしくなりクルリと後ろを振り返り、同期の皆とするように、ぎゅうっと兄ィさまを抱き締める。状況的には、兄ィさまに抱きつくってのが正しい表現かも。

 というか、気恥ずかしくなったのに抱き付くっておかしいぜ私。何故、だ。


「野菊。…男はね、我慢強さが必要なんだよ」

「忍耐力を鍛えると言う事ですね」


「私は、結構我慢強い方だと思うんだ」

「?」

「そう思わない?」

「そっそうですね!我慢強いです」



あとがき。



『野菊、今日の愛理との事なんだけど…』

『今日の?…あ、愛理ちゃんと』

『助けただけだからね』

『…抱擁を』

『階段から落ちた時のせいで、足首がまだ良くないらしくて。立ち上がった瞬間に転びそうになってね』

『ふふ、へ~。そうなんですか~ふふ』


『…信じてくれないなら、野菊の体に直接教えてあげようか』

『え…(殴られる!?)』

『あぁ、そんなに怯えなくても大丈夫。ちょっと疲れるかもしれないけど』

『疲れる…(殴り合いだ!!)』




 さて。タイトルは、誰の言葉でしょうか。

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