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始まりは 7年目の物語 9

セリフのみですがR描写的なもの、ちょびっとだけあり。

書く必要あるか?ぐらいな物ですが、一応書いておきます。


 桜の季節を迎えた吉原では、恒例になっているあのイベントがまた始まる。


「凄いですね~。今年も全員指名ありなんですね」

「まぁな、流石うちの奴等よ。鼻が高いぜ…ほらくっちゃべってねーで手ェ動かせ」

「はーい」

「お前それ阿倉兄ィさんの客名だぞ、此方だ此方」

「あ、本当」

「野菊、これはどっちかな?」

「えーとねぇ。お…これは此方だよ」


 花見の時期到来。


 私や蘭菊、他の新造達で書道が得意な者は今、おやじ様と一緒に花名札を作っている。花見の客と遊男達の指定の席に置くただの飾りつけみたいなもので、一つ一つ丁寧に仕上げていく。

 広い畳の一室、花紙や色紙、墨汁に筆にカラフリーな紐や型紙が散らばっていて…なんか小さい子供が保育所で遊んだ後みたいだ。

おやじ様を中心に作業を進めていく私達は、今日の夕方までの人生をこれに費やす。


「普通の紙に客名だけ書けばよくないですか?」

「いーからサッサと手を動かせ馬鹿もん」


 花とか別にいらなくね?とか思うのだけど、こう言うのが結構大事なんだとおやじ様が言い張るので、ブーブー言いながらも手を動かしていく。

 確かにお客にとったら『わぁ~!』と綺麗な飾りや色が付いた花名札を見て感動するだろうが、チマチマと作業を進めていく私達にとっては面倒と言う一言に尽きる。大体、手を動かせと言っている本人は煙管片手に皆を眺めているだけだ。眺めているだけと言ってしまうとアレだが、札のデザインを考えたり、全客のリストを纏めて、花見のセッティングを決めて指導するのは全部おやじ様一人で受け持っている。

 そんなお疲れ状態のおやじ様に失礼な事を言っているとは思うのだけど、いざ目の前で横寝になり煙管をスパスパやられると、分かっていても『このおやじ邪魔じゃああ!!』と叫びたくなってしまう。

 でもいなかったらいなかったで、分からない部分があった時におやじ様がいなかったら困るし。なんとも言えない。


「そういや、お前今日風呂じゃなくて清拭だろ?と言うか体調大丈夫なのかよ。休んでてもいーんだぜ?」

「蘭ちゃん優しいね」

「いっちいち言うな!馬鹿じゃねーの馬鹿!!」


 私が生理になり早1ヶ月。宇治野兄ィさまとおやじ様の提案で私は生理の間、風呂には入らず水で濡らした手拭いで身体を拭いて洗う事になった。ちなみにおやじ様に私の生理をソッコー報告したのは宇治野兄ィさま。頼れる母である。


「そうだなぁ。野菊、あんま動いててもアレだからよ。おめぇ座敷は今日ねーんだし、コレ終わったら部屋で休んでろ」

「え。でも、思うほど痛くはありませんし。大丈夫なんですけど」

「良いから休んどけ馬鹿野郎!!」

「なっ何なんですか!!」


 男には未知の領域な為、心配で心配で堪らないオヤジなのであった。


●●●●●●●●●●●●



「暇だよ暇ー」

「ニャー(暇人か)」

「ゲーコ(暇人だな)」


 うるさいぞお前達。


 作業も終わり、皆自分の仕事や稽古をしていく中、私は一人おやじ様の言い付け通りにお部屋の座布団の上でジーっとしている。

 かれこれ1時間経つが何もしなかったワケでは無い。三味線や箏の練習をしたり、歌集を読んでみたりもした。だがあくまで自己練習。集中力が苺の粒ほどにも無い私が練習を始めて30分経つ頃には、三味線の裏を太鼓に見立ててポンポコポンポコと軽快なリズムを手で奏でていた。

 歌集なんか13行目で眠くなった。読まなければ睡魔は襲って来ないのに、読みだすと眠りの天使が頭に降臨してくるから不思議である。



(ぐーぎゅるるぅ~)



 あ、そう言えば夕飯食べてない。


 お腹が盛大な音を立てて『飯喰わせろ!』とばかりに部屋中に鳴り響く。


(ぐぎゅるぎゅるるるるぅー)


 しょうがない、食堂で何か食べてこよう。十義兄ィさまが今日は飯炊きとしている筈だし、お話し相手にでもなって貰おうかな。

 蘭菊には部屋から出んなよ、とか言われたけど…一応布団敷いて適当に掛け布団被せて、中には野菊ダミーとして掛け布団丸めたヤツを入れておこう。もし蘭菊が私のいない間に部屋に帰って来ちゃったとしても『こいつ寝てんのか』的な感じで騙せればオーケーオーケー。


「チャッピーと護は部屋で見張っててね!蘭菊が私の布団に触ろうとしたら威嚇だよ!」

「ニャ(よし、爪でも磨くか)」

「ゲコ(まかせろ)」

「おおう…頼もしい」


 2匹の心良い返事を聞いたところで(確実ではありません。あくまで野菊の解釈です)戸を開けて部屋から廊下へと出る。


「もう夜か…」


 食堂へ向かう私が今歩いているこの廊下の窓から見える空は、夕暮れも少し過ぎて、星がキラキラと輝き出しているのが伺える。空一杯に星が瞬いていて、手を伸ばせば掴めそうな錯覚を起こせるほど近くに輝きを感じた。

 私が前にいた世界では、こんな空はあまり見れなかった気がするな。星がもっと遠くて…。遠くて、遠い。それに、晴れているのに何も見えない日とかもあった気がする。


「まだなんですか!」

「~っごめんな~梅木。酒癖が悪いんだが上客だったもんでなぁ。もうちっと待てるか?」

「そんなぁ…」


 ボーッと物思いに耽りながら1階へ降りると、そんな会話が近くから聞こえた。

 トラブルかな?禿の梅木(うめぎ)の焦った声が妙に私の耳に残る。


「どうしたの?」

「野菊兄ィさま!」


 何か気になったので、つい声を掛けてしまった。掛けてしまったと言うか、散々暇だったのでそう言うのに首を突っ込みたいだけ。

 ハッ!野次馬とでも呼ぶがいい。


「兄ィさまの閨の準備をしたいのに、部屋が片付け終わっていないのです!」

「後どれくらいなの?」

「四半刻も足らなくて…月が見える頃には」

「つっ月もう見えてるよ!?」


 なんと言う事か。もう5分どころか時間が文字通り無いではないか。

 私の言葉に目を潤々とさせて今にも泣き出しそうな梅木。あぁぁ、泣かないで梅木ちゃん!!可愛い顔が台無しになっちゃうよ!…いやいや、泣き顔も可愛いけどさ!!



「大丈夫大丈夫、私が手伝ってあげるから、ね。泣かないで。ほらお布団持って来ちゃいな」

「兄ィさま…」

「梅木は悪く無いから。……おやじ様め。対策考えるって言ったのに、もう!」

「?」

「あ、いかんいかん。…梅木、ほら急いで!」

「はい!」


 とててて…と走り出した梅木を見送り、私は部屋を開ける。


「?お、野菊か」

「もう掃除終わります?」

「ああ、これ下げたら終わりよ」

「なんだ野菊、梅木手伝ってやるのか?悪ぃーな本当に」

「時間無いですし、私暇ですし。それに客と鉢合わせたら大変ですから」


 梅木をあんな出来事の二の舞に何かさせませんよ。※始まりは・日々4参照


「兄ィさま、布団持って来ました!」

「わ、早いね」


 1分も経ってないよ。何者だこの子。…あ、私が昔使っていたローラー付の箱使ってるや。成る程ね、便利だよねそれ。


「よし、終わりだ!…梅木ごめんな?閨の準備頼んだぞ」

「いいえ大丈夫です。はい!」

「じゃあ梅木、有明行灯を部屋の真ん中に持ってきて」

「はいっ」


 とうに月は見えている。いつ部屋に客と遊男が来るか分かったもんじゃないので、掃除が終わった早々に準備に取りかかる。

 布団敷きは私がやったほうが早いので梅木の持ってきた布団を………あれ、


「三枚敷き?」

「どうしたのですか?兄ィさま」


 三枚敷きって花魁だけだよね。

 あれ?


「兄ィさま、有明行灯は大丈夫です。掛け布団出しますね!」

「う、うん」


 取り敢えず今は敷く事に専念しよう。掛け布団も出してあることだし、ちょちょいとやっちゃえば…あ。


「あ、ちょっと待って!掛け布団は出してあるから大丈夫、」

「にっ兄ィさま!押し入れから出られません!!」

「ええ!?どうしたの!」

「袴の裾が何かに引っ掛かってて…」


 なぁあんですと!?

 いけないっ、このままじゃあ来てしまう。

 私は急いで梅木のいる押し入れまで行き、原因を探る。すると、どうやら床の板の木のササクレ的な物に裾が引っ掛かっているようだった。取り合えず引っ張ってみるが、全然取れない。押し入れの中は暗いし手探りで取ってみようともするが、全然取れない。むしろササクレが大きくなるだけである。

 あぁもう!ったくボロいよおやじ様!

 と思うのと同時に嫌な予感が私の頭を過る。

 この状況…まるで、


《「今日は燈の間ですのね」》

《「?戸が開けっ放しだ」》

《「あら、新入りの禿ちゃんかしら?」》


 部屋の外からふいに客の声が聞こえた。客の言っている燈の間とはこの部屋だ。


「…っ嘘!」

「の、野菊兄ィさま…」


 マジかよ。


「梅木、静かにね」


 梅木に向かって口の前に人差し指を立てながら、ス~っと押し入れの戸をそっと閉じる。


「野菊兄ィさま…」

「………」


 押し入れの中にヒソリと佇む私と梅木。

 …何この状況。何なのこの状況。

 まるであれじゃない。禿の頃の悪夢と同じ状況じゃないの。

 朝まで堪える感じ?マジかよ。


「兄ィさま…僕、…ごめんなさい」

「いいのいいの。梅木のせいじゃ無いから。おやじ様に後で文句たっぷり言おうね」


 そうヒソヒソ声で話す私だが、今の心境は心穏やかでは無い。

 いずれ訪れるだろう、聴覚の拷問が私には恐ろしくて堪らないのである。いや、私は別に良いのだけれど、小さな梅木に大人の『あはん、うふ~ん』を聞かせるのは第三者から見ても居たたまれない。大人の時間が始まらない内に…


《「あ、…やぁ…」》

《「首?それとも頬がいい?」》


 おっぱじまっちまったよ!


《「意地悪ですわ…清水様」》


「清水兄ィさまかよ!!」

「の、野菊兄ィさま…」


 何と言うデジャヴ。

 何と言う偶然。

 いや最早運命なのか。

 何故人生で二度も同じ人の、しかも同じ状況で、閨の様子を聞く事になるのだ。神よ。


「梅木、ちょっと耳を塞ぐからこっち来てみて」

「こう…ですか?」

「ふふ。抱っこしてあげるから、もうちょっとおいで」

「わわっ、」


 このいたいけな少年にアレを聞かせてなるものか。


 …というか、今簡単にササクレから裾取れた気がするんだけど。簡単に梅木が私の方へ来れたんですけど。どういう事なの、アーメン。


「兄ィさま、何だか母さんを思い出します」

「?」


 ふみゅ、と私の無い胸に顔を押し付けて抱きついてくる梅木の姿は…とてつもなく可愛い。…まぁ…押し入れの中だから見えないけど。心の目で見てるんです。



「耳抑えてあげるからね。もう寝ちゃいなね」

「野菊、兄ィさま……」


 私も早く寝てしまおう。

 今回は自分の耳を塞ぐ事は出来ないから、


《「わっ…ぁたし、の……ぁあ」》

《「ん…なに?」》

《「愛ぉ、し……い、きよみっ…ぁ…さ、」》

《「…私は……」》


 い゛やぁああ!

 お願いだから眠らせてぇええ――…


●●●●●●●●●●●●





 そんなこんなで野菊にとっての悪夢の一夜が明け、次の日の朝。


『野菊ー!!』

『梅木ぃー!』

『いたら返事してくれー!』

『おぉーい』


 何だかバタバタとうるさい。こちとら寝とるんじゃぞ。静かにしないかね、もう。やんなっちゃうわ。

 あれ、と言うか私何してたんだっけ。と押し入れの中で梅木を抱いたまま目を閉じ、まだ寝ている頭でフヨフヨしながら考えている野菊。


「んぅ…」


 確か…梅木の手伝いをしていて、布団敷いて、そんでもって梅木が押し入れから出られなくなって…


『ニャーン』


 ガリガリ、


 ん?護?

 なんだか自分のいる場所の少し先から、猫が爪とぎをするような音が聞こえる。少し先って言うか、目の前?


 ガタガタ――スパンっ!


『―っ野菊!!』

「…ん~」


 清水兄ィさまの声がすんげー近くで聞こえた気がする。…あぁ、そう言えば昨日散々羞恥の聴覚処刑にあったばかりだったな。清水兄ィさまとお客の声、ずっと聞こえてたもんなぁ。

 と言うか私いつ寝たんだろう。あの頃と違って直ぐには寝付けなかった気がする。少なくともあれから一時間は起きていたと思うし。


『梅木が中々離れないな…』

『おい、梅木お前起きてんだろ。離れろ』

『僕は寝ています』

『起きてんじゃねーか!』


 少し自分の体が軽くなったような感じがする。


『あぁ、もう…君という子は…。これで2回目じゃないか…』


 次には浮遊感がやって来た。

 心なしか、何かに包まれて温かい感覚も。


『清水、そう落ち込むなって』

『でもまぁ、…御愁傷様としか言いようがありませんね』

『宇治野兄ィさん正直ですね』

『蘭菊はもっと正直になれば良いと思うんだよね』

『うるせぇよ!!』


 うん。そう、うるさい。うるさいよ凄く。

 誰だよ本当。 眠いんだよ眠ってるんだよ私。…ここは起きて渇でも入れてやろうか?あぁん?


「う……んぅ」


 そうしてやっと、眠っていた目をゆっくりと開け出す野菊。


「え………」

「やぁ、おはよう」


 瞼を開けた瞬間、眩しい朝陽に目を細めながらその視界に入ったのは、黒の優しげな瞳に、少し困ったように下がった悩ましげな眉と、それでも綺麗な弧を描いた唇。艶やかな漆黒の髪が私の額に掛かる程近い距離にいる、世の女達の心臓に滅茶苦茶悪いこのお方は…


「き、よみ…え?と、何で……」

「私も野菊に聞きたいな。何で此処に?」

「―すっすみません!!」

「あっ…」


 どうやら温かい原因は清水兄ィさまだったようだ。私を自分の膝の上で横抱きにして背中を支えてくれている。

 ちょ、ちょちょちょ本当にすみません!と言うか昨日の閨の睦言を聞いてしまっていた身では、なんか…恥ずかしくてくっついていられません!

 と思い、急いで兄ィさまから離れる。

 途端に兄ィさまの眉間にシワがよるが、…やっぱり怒っていますよね。ですよね。怒らないワケがありませんよね。


「あ、あの昔…兄ィさまの、…あの閨の日と全く同じ…と言うか、それよりも酷い状態だったので、梅木の仕事を私が勝手に手伝いました」

「野菊兄ィさま!」

「あー…またあの客かよ」

「確か朱禾の客だろ?お前も変なのに好かれるよな。つーか取り敢えず二人に謝っとけ」

「うぅ~すまなかった!野菊に梅木、本当にごめんな」

「しっかし、おやじ様も強く出りゃいーのによー」


 と言うか、改めて周りを見渡せば天月の遊男の兄ィさま達、羅紋兄ィさまに宇治野兄ィさま、秋水に凪風、赤小僧までいるではないか。梅木は宇治野兄ィさまに抱っこされながら此方を心配そうに見ているし。


「いえ、あっ朱禾兄ィさまは悪く無いです。でも時間が全く、これっぽっちも無くて。最後の最後で梅木の袴の裾が押し入れの箚さくれに引っ掛かってしまい、その途中で客と兄ィさまが来てしまいました。そして咄嗟に隠れてしまったのです」

「…でも野菊、また君にあんな…悪い事を」


 額に手をあてて俯く清水兄ィさま。

 私もビックリです。と言うかビックリを通り過ぎて悟りが開けそうだよ。

 と言うか、悪い事?え、清水兄ィさま自分が悪い事したと思ってるの?お門違いなんだけど!確かに最悪な状況だったけど、それは自分が手を出して招いた結果なので、言うなれば自分の仕事をまっとうしていた清水兄ィさまに非はない。全く無い。全然無い。ミジンコ程も無い。


「いえいえいえいえ、私が悪いのです!!…素直に間に合わなかったと白状して出ていくべきでした」

「いや、それで結局は客の気分を損なわなかったから、君の対応はあながち間違いでは無いんだけど…。君に嫌われたらと思うと」


 嫌う?何言ってんだこの人は。

 と言うかこの流れ、あの甘々期間の前触れに酷似している。…あれはいかん。いかんぞ。人間として駄目になるんだアレは。


「あの、前に言った通り、兄ィさまの事を尊敬しています。だから…」


 以前のような甘やかし期間を発動させんでください。居たたまれないから。


「違う、違うよ野菊」

「?」


「尊敬なんてしないで」

「でも遊男には」

「お願い、君には…」


「でっででも兄ィさまが好きなのです!尊敬でなければ、何と言えば良いのですか?」

「え、」


 ぶっちゃけ、あれだけ閨の睦言を聞かされても兄ィさまを好いている私は、遊男としてその行為を出来ている事を尊敬しているのもあるし、兄ィさま自身の事を敬愛しているとも言える。

 総合してみてもコレは『尊敬』以外のなにものでもないだろう。


 兄ィさまを見てみると、口を抑えてあらぬ方向を見ているのが伺える。

 そしてそのままジーっとした後、私の方を向くと同時に口から手を離して、私の瞳を見据える。


「いや、そうだね…今は、それで充分かな。私には」

「充分?」

「うん、充分だよ」





 ちなみに蘭菊は見事私のダミー人形?に騙されていたようで、朝私を起こす事になるまで、それが私では無いと全く気づかなかったらしい。

 梅木と同室の禿ちゃんは、いつも自分が先に寝てしまうので梅木が一晩中居なかった事には蘭菊同様に気づかなかったみたいだ。


 そうして朝一で瞬く間に広がった『野菊&梅木行方不明事件』は、皆を二人へと導いた護の嗅覚パワーで事なきを得たのであった。


「護、あんた凄いね」

「ニャース(ハッ!当然)」

「チャッピーはどうしたの?」

「ニャニャ(寝てる)」


一件落着?後。の燈の間にて。


『野菊、それはさ…清水兄ィさんだけか?』

『え…ううん。秋水の事もそう思ってるよ』

『そうかそうか。…みたいですよ兄ィさん』

『秋水、君は意地が悪いね。…全く誰に似たのかな』

『清水にだと思うぜ』

『右に同じです』


『野菊兄ィさまー』

『梅木~』

『僕、また一緒に寝たいです!』

『きゃ、きゃわいい!!本当?私も寝たいなぁ。そうだ、今日お部屋においで?』

『良いのですか?やったぁ~!』


『梅木は狡いと思うんだよね』

『狡さでは清水も負けてねーと思うぜ』

『アレ位の積極性、蘭菊にもあったら良いと思うんだ』

『てめぇは一体何様なんだ』

『凪風、それぐらいにしてやれ。無理だから』



※読者様より、「朱禾の客」なのに、清水兄様と…なぜですかー!浮気では??とありましたが、燈の間をギリギリまで使っていたのは朱禾の客で合っています。

清水は違う座敷から燈の間へと移動したので。朱禾が使った後の部屋を綺麗にして閨の準備をしていたのです

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