とっても甘い君
「ね、起きて。遅刻するよ?」
耳元で優しく、遥人がささやいた。浩亨は寝返りを打って、遥人の腰を取った。
「ほら、ふざけてないでさ、起きてよ」
遥人が困ったふうに声を上げ、続けて言った。
「浩亨の好きなフレンチトースト、メープルシロップたっぷりかけて作ったからさ。コーヒーも淹れたてだよ」
「ううーん、そんなのより、俺、遥人のほうがいい~」
目をつぶったまま、抱き寄せる。強引な力に遥人は浩亨の寝ているベッドに倒れ込む。
「ちょっと、そんなこと言ってる場合じゃないだろ? フレンチトースト食べたいって言ったの、浩亨じゃん」
「覚えてない~、そうだ……、メープルシロップかけた遥人が食べたい。早く準備して」
その言葉に、陽仁が目を細める。
「浩亨さ、ほんとは目ぇ覚めてるんじゃない?」
「そんなことないよ~、陽仁のキスでなら……」
浩亨の甘えた声に、遥人の口元が緩んだ。
「仕方ないな……、ほんとにもう」
チュッと軽くキスすると、腰に巻きつけられた腕がさらに遥人を引き寄せて、もっと深く口づけを要求してきた。
「ん……」
恋人と交わす起き抜けの甘いキスに逆らえず、そのまま二人は柔らかなベッドの中に埋もれていった。