ワンツースリー
ユオが入院している
中毒患者治療施設
ボッサンはユオの様子を見にやって来た。
担当の医師が部屋のカギを開けながら言った。
「くれぐれも、患者を刺激しないように。何かあったらベルを押して下さい」
部屋に入るボッサン。
白い壁の部屋。
ベッドとテレビと机と椅子。
天井の隅に監視カメラ。
ユオはベッドに腰掛けて、テレビを見ている。
ボッサンは普段通りに声を掛けて椅子に座った。
「よお、元気か?」
ユオはテレビを見ながら答えた。
「元気ならこんなとこ居ないよ」
「まあそうだな」
ユオの両手を見ると、小刻みに震えている。
「ガンダム見たいな。テレビでやんないかな」
「・・・」
「この芸人ばっかじゃね~の。ハハハ、ハハ‥」
「ユオ‥」
しばらく沈黙した後、ユオは呟いた。
「シャブくれよ」
「?」
「なあ、シャブくれよ。シャブ打ってくれよ~。頭がどうにかなっちまうよ~。なあ!シャブくれって言ってんだろ!おい、ボッサンよ~!!」
ユオは立ち上がって、ボッサンに掴みかかった!
ボッサンは必死になだめた!
「ユオ!落ち着け!」
ユオはボッサンを押し倒して馬乗りになった。
「頼むからシャブくれよ~!!」
ユオはボッサンをぶん殴った!
1発、2発、3発!
ボッサンは抵抗しなかった。
ユオは殴るのを止めて泣き崩れた。
「ボッサン~、僕を殺してくれ~!」
ボッサンはユオの両肩を揺さぶって叫んだ!
「ユオ!しっかりしろ!」
部屋に白衣の男が2人飛び込んで来た。
「おい!何やってる!」
「大丈夫ですか?」
「あぁ、何とも無い」
「鎮静剤打ってやるからな」
ユオは男2人に抱えられて、部屋を出て行った。
ボッサンは立ち上がり、口の血を拭った。
「ユオ、頑張れ!」
警視庁
警視総監室
電話をしている園田総監。
「お前んとこの兵隊は何をやっとるんだ。ネズミ1匹殺せないんか。何でもいいから早く殺せ。
もう失敗は許されんぞ。今度しくじったら、お前の組を潰すからな!いいな!」
電話を切る園田総監。
「まったく、どいつもこいつも!」
川口警察署
駐車場
ボッサンはセンチュリーのドアを開けながら言った。
「ラッキー親分、今日は自分がお供させていただきやす」
「ヤクザか!」
「冗談はさて置き、なんだか今日は胸騒ぎがするんすよね」
ラッキーデカ長とボッサンは車に乗り込み、駐車場を後にした。
あの襲撃事件以来、ラッキーデカ長の送り迎えを、みんなで交代でやっている。
「親御さんは実家に預けてるんだから、危険をおかして帰らなくてもいいんじゃないすか?寝込みを襲われたらどうします?」
ラッキーデカ長は腕を組んで言った。
「うちのセキュリティーはバッチリさ。イーサン・ハントだって侵入出来ないさ」
「マジっすか!」
2人を乗せたセンチュリーは、音もなく走ってゆく。
いつの間にか、後ろにベンツがついて来ている。
ボッサンはルームミラーを見ながら言った。
「後ろのベンツ、怪しいな」
ベンツが加速して横に並んだ!
「そら来た!」
ベンツの助手席の窓が開いて、ショットガンが顔を出した!そして火を吹く!
運転席側の窓に、弾痕が1つ、2つ、3つ!しかし貫通しない!
ボッサンはあっかんべーをしながら言った。
「へっへっへっ、防弾ガラスなんだよ、このボケが!」
このセンチュリー、要人警護仕様の、言わば装甲車なのである。
ボッサンは、ベンツに体当たりを食らわす!
ベンツも押し返して来る!
今度は助手席の窓から男が身を乗り出し、タイヤ目掛けてショットガンを、
1発、2発、3発!
タイヤはビクともしない。
「残念でした。パンクレスタイヤなんですー!」
ベンツが車半分前に出た時、ベンツのリヤフェンダーにバンパーを当てた!
ベンツはスピンしてガードレールに激突!
大破して止まった。
ボッサンたちは、Uターンしてベンツの前に止まる。
ボッサンは車から降りて、中で弱ってる2人に言った。
「『ボッサンのドラテク講座』、受けた方がいいぜ。」
そして、中の2人を逮捕した。