餌
ユオは救急車で救急病院に搬送された。
衰弱がひどい為、集中治療室で治療を受けている。
治療が済んで体力が戻ってから、中毒患者の治療施設に入院する事になるだろう。
詳しい事は、ユオの回復を待ってから直接聞こう。
川口警察署鑑識課
部屋には、ラッキーデカ長とバンの2人きり。
バンの机に腰掛けて、タバコに火をつけるラッキーデカ長。
「さ~て、“愛國者”という池に“裏帳簿”という石を投げたけど、どんな波紋が生まれるかな」
灰皿を出すバン。
「多分、お前をを消しにかかる?」
「警視庁に“石”を投げてから、直接ここ、川口署に来て一歩も外に出ていない。多分、これから家に帰る時に襲って来ると思うんだ。そこがチャンスなのさ」
「殺しに来たところを捕まえるって事か?」
「そうさ!」
「上手くいくかな~」
「よし!いくよ!」
灰皿にタバコを押しつけ、部屋を出て行くラッキーデカ長。
「ちょっとちょっと、まったくせっかちなんだから~」
後を追うバン。
2人はマイクとイヤホンを付けて作戦を開始した。
ラッキーデカ長が車で川口署を出る。
しばらくしてからバンが車で後をつける。
バンのかなり先を走るラッキーデカ長の車。
すると、脇道から黒のベンツが出て来た。
ラッキーデカ長の車が左折する。
黒のベンツも左折する。
「ラッキー、後ろのベンツ見えるか?」
「ああ、来たみたいだな」
ラッキーデカ長の車が右折する。
黒のベンツも右折する。
ラッキーデカ長は言った。
「家に着いて車から降りるところを狙って来るんじゃね~か?」
「同感」
「よろしく頼むよ。バンちゃん」
ラッキーデカ長の家に着いた。
門を開ける為に車を降りる。
ベンツがライトを消して止まった。
バンは既にライトを消していて、ゆっくりベンツに近づく。
ベンツには2人乗っていて、1人が音もなく降りた。
バンも降りてベンツに近づく。
ラッキーデカ長が門を開ける。
降りた男はナイフを出して走り出した!
バンはベンツの運転手の頭に銃を突きつけた。
「動くな。ラッキー!気をつけろ!」
ラッキーデカ長がバンの声に振り向いた!
その時、男のナイフがラッキーデカ長の腹に刺さった!
ガチッ!
「ん?」
ラッキーデカ長の腹にナイフは刺さらなかった。
ラッキーデカ長はナイフの握られた手を取って、男を投げ飛ばした!
その手をひねり上げて手錠を掛けた。
「殺人未遂の現行犯で逮捕する!」
「ラッキー!大丈夫かー!」
「こんな事もあろうかと思って、防弾チョッキ着て来たのさ」
「さすが!」
ナイフ男と運転手を逮捕した。
川口警察署捜査1課
ラッキーデカ長とバンを取り囲む、ボッサン、ホヘト、モリモリ。
ボッサンは言った。
「水くさいっすよ、ラッキーさ~ん。言ってくれれば協力するのに」
ホヘトも言った。
「そうですよ。それに2人だけじゃ危険すぎます」
モリモリも心配そうに言った。
「そうッスよ。死にそこなったって言うじゃないですか~」
ラッキーデカ長はつっこんだ。
「モリモリ~、意味違うぞ~」
バンは苦笑いしながら言った。
「実は、私1人じゃ不安だったんよ」
ボッサンは言った。
「ラッキーデカ長を殺ろうとしたやつ、“辻斬りのすず”は、音も無く背後に現れ、めった切りして、音もなく去ってゆくという奴だよな」
ホヘトが付け加えた。
「たしか、暴力団“漆黒誠”の組員だよね」
「“愛國者”と“漆黒誠”はつながってるって事だな。この接点が分かればいいんだがな。」
腕を組んで考えるラッキーデカ長であった‥