舞台裏
川口警察署鑑識課
部屋で一緒にテレビの『人生色々』を見ているバンとラッキーデカ長の愛娘レミ。
「そろそろレミのお父さんが登場するよ」
「え~!パパも出演するの?」
「あぁ、主役だからな」
「主役?」
レミは首を傾げた。
「ほら来た!」
(困ります。今、テレビの生放送中なんです!)
「パパだ!え?どこ行くの?‥え~!」
(お、おい!きさま!)
(予告通り、お前を殺しに来たぜ!)
(キャ―ッ!)
(見せもんじゃね~んだ!怪我したくなければ出て行きな!)
「え~?パパどうしちゃったの?」
「あれは芝居さ」
『番組を変更して【秘密組織“愛國者”の黒幕、園田総監の化けの皮を剥がせ!】をお送りします。』
『これが極秘に入手した、秘密組織“愛國者”の名簿と裏帳簿です。
“愛國者”とは、暴力団と手を組み、不当な利益をえる闇の組織なのです。
“愛國者”のボス、園田総監の化けの皮を剥がすため、川口警察署捜査1課の面々が、空砲の銃で芝居をします。結末がどうなるか、とくとご覧下さい!』
バンは自慢げに言った。
「名簿と裏帳簿の後に幹部会の映像が映ったでしょ?あれ、僕が撮影したんだから」
「へぇ~、見かけによらずやるわね」
「一言余計だな~」
警視庁会議室
“愛國者”の幹部たちが、テレビの前に集まっている。
「ヤバい!俺の名前が映った!」
「マズいぞ!放送を止めさせろ!」
「フジテレビに電話しろ!」
お台場
フジテレビコントロールルーム
フジテレビのお偉いさんたちが、扉の前で怒鳴っている。
「おい!ここを開けろ!放送を止めろ!聞こえないのか!」
「お前らみんなクビだぞ!いいのか?」
コントロールルーム内では、モリモリがスタッフと立てこもっていた。
「ここは絶対開けないっスよ!皆さんご協力ありがとうございまっス!」
「いえいえ、一度こうゆうのやってみたかったんです!」
「一応、銃で脅されてやったって事で、口裏合わせといて下さいね」
警視庁地下駐車場
フジテレビ中継車
警視総監室から飛び出した取材班が、中継車に戻って来た。
伊呂波プロデューサーがみんなを出迎えた。
「は~い、みんなお疲れ様~!」
角籐アナが心配そうに言った。
「私の悲鳴、どうでした?不自然じゃなかったですか?」
「いや、よかったよ~!あれこそ、絹を裂くような悲鳴ってゆ~んだな」
「ちゃんと映ってます?」
「ばっちぐ~だね。あ、荻野目刑事と北川刑事が入って来た~!カメラ、パーンして!」
スタッフが遠隔操作でカメラを動かす。すると、画面が動いて2人を映し出した。
「凄い!あのカメラ、遠隔操作出来るんだ!」
「川口警察署の鑑識課の人に作ってもらったんよ。ハイ、そこでズーム!」
川口警察署鑑識課
バンはテレビを指差して言った。
「あ、ボッサンとホヘトが入って来た」
「来た来た」
(ラッキー刑事長!そんな事は止めて下さい!)
(銃を下ろしてください!ラッキー刑事長!)
(うるせ~!俺の邪魔をする奴は、例えお前らでも容赦しね~ぞ!)
(ズギュ―ン!)
「ボッサンは、ヒラリって感じで避けたけど、ホヘトさんは、ドッコイショって感じ」
「緊張してるんじゃないか?」
(ズギュ―ン!ズギュ―ン!)
レミは楽しそうに言った。
「刑事ドラマみたい♪」
(ズギュ―ン!)
「あ、ホヘトさん撃たれた。血がリアル」
バンが自慢げに言った。
「あの仕掛け、僕が作ったんだよ。手に隠し持ってるリモコンで、銃の発射音に合わせて血糊を破裂させれば、
いかにも銃で撃たれたように見えるってわけ」
「へぇ~、鑑識って凄いんだね!」
「鑑識が凄いんじゃなくって、僕が凄いの!」
(ズギュ―ン!)
「あ~あ、ボッサンも撃たれた。‥あ~、痛そ~!あの倒れ方、頭打ったね」
(だから言ったじゃね~か。容赦しね~って。)
「パパカッコいい♪」
「さあて、ここからがクライマックスだな」
「どうなるの?」
「見てれば分かるよ。」
「ケチ!」
警視庁
警視総監室
ラッキーデカ長は、しゃがんで小さくなっている園田総監に、銃口を向けている。
「年貢の納め時だな。言い残す事は‥ないな。せめて楽に逝けるように祈ってな。あばよ!」
園田総監が小さくなって目をつぶった!
ラッキーデカ長が引き金を引いた!