切り裂きジャック
そごう川口店 一階化粧品売り場
土曜日の午後とあって、OL、今どきの女子高生、着飾ったミセス、
自分を美しくしたい、綺麗になりたい、綺麗に見せたい
そんな女性たちで化粧品売り場はごった返していた。
化粧品売り場の店員が、40代の婦人に口紅を勧めている。
「これは今年の冬の新色なんですよ、奥様」
椅子に座って、鏡を見ながら口紅を塗る着飾った婦人。
「あら~♪いいじゃないこれ~♪」
鏡を見ながら、顔の角度を変えてみる。
店員は大げさに褒めた。
「すごいお似合いですわ!」
「そ~お?それじゃあ、これ頂こうかしら♪」
婦人がバッグから財布を出していると、男が婦人にぶつかって通り過ぎた。
「痛、ちょっと!何よ!ぶつかっといて‥痛、い、い‥!」
婦人は椅子から転げ落ちた。
腰を抑える手の隙間から血が溢れ出す!
店員は立ち上がり覗き込んだ!
「お客さま!‥キャーッ!」
その男の、ダランと下げた手に握られているサバイバルナイフから、
血のしずくが、床にポタリ、ポタリと垂れていた。
男は怒鳴った!
「メス豚が!」
「キャーッ!」
男の周りから人が居なくなった。
「臭せ~んだよ、おめ~ら!臭せ~んだよ!」
男はゆっくりと歩き出す!
「臭いニオイは元から絶たなきゃダメ~!!」
男は、周りで怯える女性たちに向かって走り出した!
店の警備員の110番通報で駆けつけたボッサン、ユオ、ホヘト、モリモリ。
店の外では-
救急車にかつぎ込まれる女性!
救急隊員に包帯を巻かれている女子高生!
治療が終わってガタガタ震えているOL。
横目で見ながらボッサンたちは中に入る。
内側のドアの前に警備員がいる。
ボッサンは警察手帳を見せながら聞いた。
「通報したのは君か?」
警備員は敬礼して言った。
「あ!はい!自分であります!」
「どんな状況だ?」
「はい!ナイフを持った男が女性を人質に取って立てこもってます!」
「わかった」
ボッサンたちは中に入る。
誰も居ない店内。
奥で女性のすすり泣く声が聞こえる。
一階化粧品売り場はそこら中に血が飛び散り、惨劇を物語っていた。
男は売り場の奥で、女性を人質にして立てこもっていた。
ボッサンはホヘトとモリモリに言った。
「ホヘトとモリモリは、正面から行って男を説得しろ。その間に俺とユオで、ヤツをとっ捕まえる。いいな!」
「了解!」
「おいっス」
ボッサンはユオを指差し、犯人の左を指差す。
ユオは親指を立てる。
ボッサンとユオは左右に分かれ、ホヘトとモリモリは正面からゆっくり近づいた。
ホヘトとモリモリは、犯人と人質が見えるところまで来た。
ホヘトは拡声器で言った。
「犯人に告ぐ!こちらは川口警察だ!人質を解放して、武器を捨てて出て来なさい!」
男は、女性を後ろから羽交い締めにして、サバイバルナイフを首筋に当てて立っていた。
男は言った。
「臭いメス豚は、血の匂いで中和させてると臭くなくなるんだよ!
だから俺は臭い匂いを取ってやってるんだよ!こうやってな!!」
男は女性の腕を掴むと、サバイバルナイフの先で腕をなぞった!
赤い筋から血が流れ出す!
「いやーーー!!」
「な!臭くなくなっただろ!ひ~っひっひっひっ!」
ボッサンとユオは、犯人と人質の両側で息を潜め、チャンスを待っていた。
モリモリは叫んだ!
「やめろ~!人質を傷つけるな~!」
「貴様~!俺に命令するな~!」
男はサバイバルナイフを前に突き出した!
チャンス!
ボッサンは目の前にある傘を取り、ユオに目配せをすると飛び出した!
ユオも飛び出す!
男が突き出したサバイバルナイフを、ボッサンが傘の柄で叩き落とした!
その腕をユオが掴んで一本背負い!
大の字になって倒れている男の腹に、ボッサンはジャンプしてとどめのひと蹴り!
「アチャァァーー!」
男は気絶した。
ボッサンは手をはたいて言った。
「ふざけんな!このボケが!」
ユオが男に手錠をかけて、事件は解決した。
最近この街で、異常者の犯罪が増えて来た。
なんとか食い止めなければ、
そう思うボッサンであった‥