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〜七夕〜

『おめでとう』


 心にも無い事を、言った。


今日は、キミの結婚式なのに心から祝えない。


今、キミは素敵なカレを見つけ、友人から祝福を受けている。


ボクは、そんなキミを一歩輪から離れて見つめていた。


あんなに一緒に時を過ごしたのに、キミの隣にはボクじゃなくカレがいる。


何故か、悔しいと言った感情は無かった。


 ただ、ポッカリと穴が開いたように、何かが無くなった。



 ボクとキミが、初めて逢ったのは9年前。ありきたりな友人の紹介だった。


まだ当時はボクも17歳で、キミは一つ下だった。


『高校生』そんな響きも懐かしくなる年齢にもなったと思う。


初めて逢ったとき、年下の割には大人っぽい子だなぁ〜って思った。


正直、一目惚れだった。


まだ、女性と付き合った事の無かったボクにとっては、『高値の花』。


それがキミの印象だったよ。


『恋はするものじゃなく、落ちるもの』何処かで聞いた台詞。


まさに、それだった。


ボクはキミにこの言葉のように、『恋に落ちた』。



 思春期のボクはなかなかのヘタレで、女性の接し方が解らなかった。


どんどんキミの事を好きになって行くのだけは解っていた。


そして、無謀な告白をしてしまった・・・振られた。


解っていた事なのに、自分で自分を傷つけて、キミとの接点を失った。


まさに『自業自得』。



 新婦の友人で男はボクだけ。元職場の人間はもちろん男性もいる。


今の時代は新婦が男友達を呼ぶのはそんなにダメじゃないらしく、ボクは女友達とともに、結婚式に出席した。


 純白なドレスにいつものメイクとは違うキミが、ベールの下で少しうつむき、


ボクの横を、おじさんと一緒にゆっくりと通り過ぎた。


素直にキレイだった。


 最近購入したデジカメ。この日のために買った用なもの。キミをたくさん撮るために。


液晶から写るキミはとても綺麗で幸せな顔。カレを見つめる、その顔がとてもいい表情をしていた。


キミは、ボクに気付き、笑顔でボクの元にやって来て


 『ありがとう』・・・


 ・・・『おめでとう』


自分の言葉に、心がきしむ音が聞こえた。


非現実なことを思ってしまう。ドラマやマンガみたいに過去に戻れたら・・・なんて。



 告白をして半年が過ぎ3年生になった。それなりに引きずっていたけど半年もたてば、どこか心の奥に閉まっておける。


高校生なんて頭の中の半分は『恋に恋してる』ような生き物だから(ボクは特にそうだった)次の出会いを探していた。


 その日は、隣町の七夕祭りでキミの通っていた高校の文化祭。


『・・・そんな事ありえない。ドラマじゃあるまいし。』『七夕だからって』『冗談じゃない』


 期待していた。


 ボクは友達と、文化祭に蕾《出会い》を探しに出かけた。


うろちょろしていたら、『ボクとキミ』の仲介人のマサルを見つけた。


マサルは『キミ』と同じ高校で、ボクと同級生だ。マサルは何やら悪い顔をしてニヤニヤしながらボクに近づいてきて、


『2‐B』それだけ言って、また自分のクラスに戻っていた。


『ムカツク』心の中を見透かされた気分だった。


忘れようとしていたのに文化祭なんかに来たのが、そもそもの間違いで、そんな事を言われれば余計に意識して探してしまう。


なるべくその教室には近づかないようにして、グルグルしながら校舎を見て回った。


 まぁそんな意識して歩いてればどうしたって似ている子には目が行き、見つけるのはそんなに時間はかからなかった。


『よっ、久しぶり』としか出てこなかった。


『久しぶり〜』キミは何も無かったかのように、自然に振舞い、笑いかけてきた。


 僕の中の『キミ』と書かれた心の引き出しは簡単に引き出され、半年前の想いが溢れ出てきた。


半年前の出来事が何も無かったかのようにキミはボクに話しかけ、ボクもそれに合わせたかのように、


内容の薄い話をして、別れた。ボクは心の底からヘタレだ、確信した。


 また遭遇してしまうのが嫌で、友人に無理を言って帰る事にした。


だが、その日は七夕祭り。気分を変えてまた新たな場所で蕾を探すことにした。


祭りに来たのはいいけど、ヘタレが二人。ナンパなんてものはしたことがなく、出会いもあったもんじゃない!


当然、収穫は0。夜も遅くなり、トボトボ歩いて疲れたので帰る事にした。


(この日は七夕、空を見上げれば、満天の星空。織姫と彦星はこの日を待ちわびたに違いない。)


 奇跡は起きた。


『あれ?偶〜然!』


少しハスキーだけど、女性特有の高い声が、斜め後ろからボクの肩を叩くと同時に聞こえた。


キミがいた。


(おいおい、ドラマじゃね〜ぞ。)そんな声が聞こえてくる。


一日に二度も会うって、運命?織姫と彦星に感謝すらしたくなる。


二度目の再開は、話が弾んだ。昼とは違い、祭りが後押しするかのように、自分でもビックリするくらい話をした。


話の内容なんて覚えちゃいない。ただこの時間が楽しくて、夢の中にでもいるかのようだった。


現実は違い、帰るときになった。『帰りたくない、また逢いたい』そんな気持ちが渦巻いた。


『今度・・・』


自分でも驚いた。ヘタレなボクがキミを誘っていた。


『今度・・・みんなで遊ぼうよ。』


所詮、ヘタレ。一度振られて臆病になっているのか、二人で遊ぶ勇気は無かったらしい。


『いいよ。じゃ〜来週の・・・。』


また、キミとの道が繋がった。












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