ミッション
私は英語ができません。
という日本語を英訳できないくらい、英語が苦手です。
怒涛の一日だった。だけどそれももう終わる。
もう面倒事はお腹いっぱいだ。ってかこれ以上面倒事が起きると僕が終わる。息の根的な意味で終りを迎えてしまう。
だというのに――
涙を拭って【帰還】した僕を待っていたのは、白銀オブジェの前でざわざわしている有象無象共だった。どういうことなの。
さぁ後は宿屋に戻って寝るだけだねッ!って意気込んでたのに。どういうことなの。
ん?まだ夕方にもなってないって?
だからどうしたと言うのだね。
疲れた時が休み時と言うじゃないか。まさにその時は今ぞ。
ってか日が落ちるまで持ちこたえられる気がしない。『日中に寝る訳にはいかん!』とか意地張ってたら僕は死ぬ。脅しなんかじゃないぞ。
とはいえだ。
眼前に展開される有象無象共の様子を眺めつつ思案する。
流石に"これ"をスルーして宿屋に直行するっていうのは……無理臭いなぁ。
僕個人としては無視一択なんだけど、その他三名がスルーする気がしない。
そしてそれは、僕には巻き込まれる未来しか存在しない事を意味する。泣いてない。泣いてなんかないぞ。
至るところでガヤガヤドヤドヤと雑談を交わす人たちの姿を改めて確認し僕は溜め息を吐いた。
見渡す限りの黒頭。どっからどう見ても日本人にしか見えない。
たまに毛色の明るい人もいるけど、そういう人に限って凄まじいまでの和顔だったりするから始末が悪い。
つまり眼前に広がる喧騒は一言でまとめると、小煩い日本人の集団だった。
別の言い方をするのなら――本物のクソヤロー達の集団。つまり物騒な集団ってことだ。
あうぅぅぅ……。
思わず唸る。
だってこれ……確実に厄介事だよね?
何なに何なの?どういうことなの?なんで皆集まってんの?そんで何をそんなにザワつく事があるっていうの?
事件ですか?そうなんですか?
既にグロッキーな僕に更なる追い打ちをかけるつもりですか?
ひたすら心中で愚痴ってみたものの、既に答えは決まりきっていた。
うん。間違いない。これは――
パターン青!厄介事ですッ!
きっとまた僕だけが泣き叫んで、僕だけが苦労して、僕だけが不幸になる。
そんな予定調和なシナリオが始まるんだろッ!?
はいはい。分かってます。皆まで言うな。どうせロクでも無い事に決まってんだから。
自慢じゃねぇけどなぁ。コッチとらトラブルに巻き込まれる事に関してはプロフェッショナルなんだよ。泣いてない!泣いてなんかないぞ!
何たって僕専用のトラブルプレゼンターが近くにいるからね。
近くにいるっていうか、引っ付いて離れない。誰得だよ。少なくとも僕得で無い事だけは確かなんだが。
しかもそいつってばコッチが引くくらい仕事熱心なヤツでさー。
僕が寝てようが休んでようがお構いなしにトラブルをプレゼントしてきやがるんですよー。
ワロスッ!圧倒的ワロスッッ!!
逃げたくても逃げれねぇぇぇぇぇぇ!
何故ならヤツはチートマン。抵抗しても跳ね除けられるに決まっている。
切りたくても切れねぇぇぇぇぇ!
何故ならヤツは血縁者。水より濃い赤い液体で繋がっている。
僕は後ろにいるトラブルプレゼンター――という名の従兄弟の方を振り向いた。
どうせ無視できないのなら、さっさと事情を説明してもらって一刻も早く宿屋でばたんきゅーしたい。
「なんだろね。このザワザ――
と言いかけたところで言葉を止める。
従兄弟は僕の話が聞こえなかったのか、ただひたすらに白銀のオブジェを見つめていた。
よく見ると従兄弟だけじゃない。隣にいるジャンキーさんと俊平君も同じようにオブジェを見つめている。
何事だ。
疑問に思ってヤツらの視線を辿るとオブジェの先頭部分が目に入った。そして気づく。
な、なんだろアレ……。
オブジェのてっぺん近くにある板状の部分に、ドス黒い赤文字が浮かび上がっていた。
その乾いた血のような色に彩られた文字は、よく見ると短い英文のようだった。
"Lost in Peace"
ろすと・いん・ぴーす?
英語苦手でイマイチ自信がないけど、"Lost in"って構文じゃなかったっけ……?
たしか"夢中になる"とか"専念する"とかそういう意味じゃなかったかしら……。
ってことはあの禍々しい赤文字は"平和に夢中になる"、"平和に専念する"みたいな意味なのかな。
それにしては禍々しい色してるけど。平和とは真逆の色合いしてるけど。
オブジェを見上げたまま慣れない英語に頭をひねっていると
「"Last Piece" の次は "Lost in Peace" ですか」
まるで独り言のように呟くジャンキーさんの声が聞こえて来た。
らすと・ぴーす??
なんじゃそりゃ。
疑問に思って後ろを振り返ると、アゴに手を当てて思案中のジャンキーさんと目が合った。
彼女はパチリと一回瞬きすると、ハッと思い出したかのように口を開いた。
「あ、そういえば涼太さんはミッションの事知らないんじゃないんですか?」
うん初耳。ご察しの通りサッパリです。
そしてそこはかとなく厄介事の臭いが漂ってるのは気のせいではあるまい。
「ミッション?」
「あー……。つまりはですね。全プレイヤーを対象としたイベントみたいなものです」
「それがミッション?」
「そうです。であそこに書かれてるメッセージが現在の進捗状況です」
「進捗って……あの英文?」
つまり現在の進捗は "Lost in Peace" って事?
それって『平和ナウ!』って事?
僕的には全然平和でもなんでもないぞ。今の状況。
ちょっとどうなってんのよ。こんなヒドく小ざっぱりとしたメッセージじゃなんも分かんないって。責任者出せコノヤローめ。
さらにワケワカメな状況になり頭を捻っていると
ジャンキーさんはいつもの如くピッと人差し指を一本立てて言った。
「ミッションには四つのフェーズがありまして
まず、ミッションの開始条件を満たすまでの期間を『Wait』
条件が揃った後から実際にミッションが開始するまでの準備期間を『Ready』と言います。
そして、準備期間が終わってミッションが開始したら『Start』に移行して
ミッションが終了したら『Finish』へと移行します。
『Finish』のメッセージは一律で『Congratulations』なんですけど、一週間程で消えちゃいますね。
で、更に一定期間過ぎると次のミッションの『Wait』に入って~
って感じでグルグルとサイクルするんですよ」
セリフにあわせて、立てた人差し指をくるくる回す。
何となくその指の動きを目で追っていると突然動きがピタリと止まり、ジャンキーさんは進捗メッセージの方を指差した。
「フェーズが進むとメッセージも更新されるんです。
逆に言うと、メッセージが変わっていればフェーズも進んでる訳ですから、そこから現在の進捗を確認することができるんですよ」
「へー。それで今はどのフェーズなんですか?」
「えっと、メッセージが切り替わったのは今回が初めてなので
『Wait』が終わって『Ready』に移行したと見て間違いないかと思います」
なるほど。『Ready』ね。
話を聞く限り、『Wait』『Ready』『Start』『Fnish』と規則的に遷移するみたいだし、ジャンキーさんの推測で間違いないんだろう。
「つまりミッションの開始条件を満たしたってことなんですよね?」
念のため確認すると、ジャンキーさんはコクリと頷いた。
「はい、そうなりますね。
きっとミッションを開始するための "最後の欠片" が見つかったってことなんでしょう」
「最後の欠片?」
オウム返しに聞き返すと、彼女は再び頷いた。
「えっと、涼太さんはご存知ないかと思いますが今回のミッションの『Wait』のメッセージは "Last Piece" って英文だったんです。直訳すると "最後の欠片"。
恐らく "ミッションを開始するための最後の条件が足りない" って意味のメッセージだったと思うんですよねー」
ああ。"らすと・ぴーす" は "Last Piece" だったのか。
ようやく単語を当てはめる事ができ、一人で納得していた僕の耳に不穏なセリフが飛び込んできた。
「あ、ちなみにメッセージはリアルタイムに更新されてるわけじゃなくて、毎日正午に更新されます。
つまり今表示されてる『Ready』のメッセージも、今日のお昼に更新されたはずなので、"最後の欠片" が揃ったのは、昨日のお昼から今日のお昼までの間ということになりますね」
ふむ。随時更新じゃなくて一日一回、お昼に更新されるのね。
昨日のお昼って言ったら、ちょうど僕がこの世界に降ってきた頃くらいかな?
ショルダータックル食らったり、気絶したり、ご飯作ったり、ドナドナされたり、と僕が強制的なアドベンチャーを満喫してる間、この世界も最後の欠片を求めてアドベンチャーしてたってわけだ。
その "最後の欠片" っていうのが
最後の一個なのか、最後の一枚なのか、最後の一つなのか、最後の一人なのかは知らないけど――
……ん?
って、ちょっと待てよ。
ドクンと強く波打った心臓部分の服をギュッと握り締めながら僕は、さっきまでの思考を反芻した。
えーっと……。
最後の一人って事もありえるのかな?
自問する。
いや、問う間でもなく既に答えは出てるんだけど。
昨日のお昼にはこの世界に居なくて、今日のお昼には居る人物に心当たりがあるんだけれども。
いや、心当たりがあるなんてレベルじゃない。ぶっちゃけこれ以上なく身近な人なんだけれども。
「………………」
ってか僕なんだけれども。
「………………ッ!!」
ゾッとした。
背筋がヒュッ!ってなった。
いやいやいやいや!れ、冷静になろうッ!!
状況に呑まれてはダメだ。僕は目を瞑り震える息を吐き出した。
いくらなんでもそんな事あるわけない。
僕みたいな地味なモブキャラがそんなワールドワイドなイベントのキーマンになれる訳ないんだ。
そうだよ。何を勘違いしそうになってんだ僕は。自意識過剰か!
そういうキラキラした役回りは、従兄弟みたいなキラキラしたヤツらが担当するに決まってるじゃないか。
そう。そんないかにも主役っぽいイベントはヤツの専売特許のはずだ。
何故ならヤツは主人公だからだ。お前がガンダ○だッ!!僕には関係ないッ!!
僕は目をうっすらと開いて、ゆるゆると頭を左右に振った。
なんとか冷静さを取り戻した頭で改めて考えてみる。
まず、『Wait』のメッセージはいつから表示されていたのか。ここから確認してみよう。
昨日従兄弟は、ここ三日ばかり新しい人間は来ていないと言っていた。
僕を除く全プレイヤーは三日前にこっちに来た人ばかりであると。僕は三日遅れでやってきたルーキーであると。
まさに "最後の一人"。テラワロえない。
けどさ、もし三日前から『Wait』のメッセージが表示されてたのなら、僕は関係ないよね?
だってその時系列だと
"Last Piece" というメッセージが表示される
↓
僕外のプレイヤーがこっちの世界にドナドナされる
↓
三日遅れて僕もこっちの世界にドナドナされる
って流れになるじゃん?
"Last Piece" が "最後の一人" って意味だとしたらこれはおかしな話だ。
逆に最悪なのが、二日前ないし昨日からメッセージが表示されたって場合だ。
この時系列だと
三日前に僕以外のプレイヤーがこっちの世界にドナドナされる
↓
"Last Piece" というメッセージが表示される
↓
三日遅れて僕もこっちの世界にドナドナされる
って流れになるから、少なくとも流れ的には『僕=最後の一人』という条件が成り立ってしまうんだ。
これはいけない。非常によくない。
具体的に言うと僕の精神衛生上非常によくない。
「あのー……。
『Wait』のメッセージって、この世界に来た初日から表示されてましたよね?」
願わくば、この世界に来た初日から表示されていますように。
祈る気持ちでそう尋ねるものの
「ん?いえ、初日は表示されてませんでしたよ?
『Wait』のメッセージが表示されたのは、その翌日――二日前ですね」
容易に斬り捨てられる。どういうことなの。
「そ、そうなんだー……」
で、でも希望を捨てるのはまだ早いッ!!
ジャンキーさんは言った。
『昨日のお昼から今日のお昼までの間に条件を満たした』と。
そして僕は昨日の『お昼ごろ』にこの世界にドナドナされてきた。
そう。『お昼ごろ』だ。もしかしたら『お昼前』だったかもしれないじゃないか。
昨日の『お昼前』にこっちの世界にドナられたんだとしたら、当然『Wait』から『Ready』に切り替わるのは昨日のお昼ってことになるよね?
つまり僕が『お昼前』にこっちへ来たって事が証明された時点で、僕の白が確定する。
おし、これも確認してみよう……。
僕は意を決して、ジャンキーさんの隣にいる従兄弟に視線を送ると――
ジリッと効果音がつきそうな程熱い視線で僕を見つめる従兄弟と目が合った。
「……………………ッ!?」
声すら出せなかった。
16年間培ってきた僕の第六感がけたたましく『逃げろッ!』『死にたいのかッ!』と警告を発しているのに身動きが取れない。
僕に出来たのは、コンガリ肉になりそうな熱視線にジリジリと身体中を焼かれながら、酸欠の金魚みたいにパクパクと口を開閉する事だけだった。
そんな僕の様子を見て、僕にトラブルをプレゼントする能力にかけては他の追随を許さない悪魔のような男は、それはそれは嬉しそうに唇の端を歪めて笑った。
その笑顔を見た途端『オワタ』と言い残し第六感が沈黙する。
と、同時に従兄弟へ尋ねようとしていた質問が頭から溶け落ちた。
だって聞くまでもない。
従兄弟の尋常じゃない様子を見れば、答えなんて決まりきってるよ。
間違いなく、僕がこの世界にドナられたのは昨日の『お昼過ぎ』だ。
分かった。そして納得もした。だからいい加減その『涼太、やはりお前だったのか……!』って表情止めてぇぇぇぇぇぇぇッッ……!
「なるほどな……。主役は遅れてやってくるってわけか」
凶悪面のまま、クックックと喉の奥で従兄弟が笑う。ちょっとヒーローさん。表情その他が悪の帝王みたいになってまっせ。
僕が動けないのをいいことに、ヤツはそれはもう上機嫌な様子で続けた。
「喜べ涼太。世界もお前の事を強烈に歓迎したくてたまらないらしいぞ!」
グワシッ!と肩を掴まれた衝撃で、ようやく身体の硬直が解け動けるようになった。
が、絶体絶命の状況に変わりはない。ドゲンカセントイカン。
「ど、ど、ど、ど、どーいうことでしょうか、おにーたま……」
「今回のミッションはド派手なもんになるって事だ。期待してろよ涼太ッ!」
「ド派手……?」
震える声で呟く。
何だ。ド派手なミッションって何だッ!?
「ど、ど、ど……どーしてそんな事、分か、る、の?」
「決まってるだろ。お前が主役のミッションだぞ。凡庸な内容で終わるわけねぇじゃねぇかッ!!」
わ、分かってたけど、やっぱりお前の中では『僕=最後の一人』で確定しちゃってたんですねーッ!
「涼太さんが……主役?」
「どういう事ッスかね……?」
流石に聞き流せなかったのか外野の二人も反応してきた。
けど今は無視ッ!ちょっと今手が離せないからッ!!従兄弟との大事なお話の最中だからッッ!!
ゴウゴウと非常に宜しくない炎を巻き上げる従兄弟の目をしっかり見据えて、僕は意を決してヤツに聞いた。
「超ド派手になる根拠が……他にもあるの?」
なければ従兄弟の妄想で片付けられる。
『馬鹿な妄想オツ』で切り捨てる事ができる。が
「当然だろッッ!!」
僕の希望はあっけなくブチ破られた。うん。知ってた。お約束通りってヤツですね。
「いいか涼太。
『Wait』のメッセージが "Last Piece"
『Ready』のメッセージが "Lost in Peace"だぞ?
"Last Piece" はまだしも "Lost in Peace" なんて妙な英文、普通だったらまず使わねぇだろ?
なのに使った。つまり、使わざるを得ない何らかの理由があるって事じゃねぇか」
妙な英文とすら気づけませんでした。
ってことは、あのメッセージって "平和に夢中になる" って意味じゃないのー……?
「そうだな。無理やり訳を付けるとしたら "平和の終焉" ってところか」
まるで僕の思考を見透かしたように、従兄弟が語る。
そして知る。
どうやら先ほど僕が考えた日本語訳は、どうしようもなく間違いまくっていたという事を。
平和終わっちゃうってさ。ハハッ!ワロス!
そりゃ血文字で書かれるわけである。オドロオドロしさ満点なのである。マジふざけんな。
「でも、今回のミッションメッセージの肝は、んな所じゃねぇ。
"Last Piece"
"Lost in Peace"
響きが似てるとは思わねぇか?」
ヒドく嬉しそうに従兄弟が言う。
ヤツの言葉が頭の中にリフレインした。たしかに似ている。
「つまり "Lost in Peace" なんて英文を使ったのは、音を似せるため……?」
ポツリと呟くと
「そうだな。そして恐らく『Start』時のメッセージも似たような響きの英文を使ってくるだろうな」
らすと・ぴーす
ろすと・いん・ぴーす
そういえば、英語苦手な僕でも知ってる超有名な英文の中に、こいつらに似た響きを持つ英文があったような……?
えっと……なんだったっけ?
思い出そうとするのに頭がジンジン痺れて思考がまとまらない。
まるで思い出す事を拒否してるかのように思考がふわふわと宙に浮く。
確か、えっとー……。
半分夢見心地のまま、フラつく記憶を追いかける。
えっと、えっと、確か、あれは……。
確か――
「"Rest in Peace"」
ああ、そう。それだ。
従兄弟の発した超有名な英文に、思わず心の中で賛同する。
と同時に、曖昧に霞んでいた思考が一掃され、僕の思考は夢の中から現実世界に引き戻された。
"Rest in Peace"
つまるところ日本語で
"安らかに眠れ"
……………………。
ダメじゃんッッッッ!?!?!?!?
それってダメダメじゃんッッッッッッ!?!?!?!?!?!?
つまりそれって……!
ガンガン痛む頭で、何とか考えをまとめようとする僕の耳に、それはそれは楽しそうな従兄弟の声が聞こえて来た。しかもご丁寧にも副音声付きだ。
「"Last Piece"」
"最後の一人"
"つまりお前が見つかった。"
「"Lost in Peace"」
"平和の終焉"
"お前を歓迎する舞台が整った"
「"Rest in Peace"」
"安らかに眠れ"
"生きて返す気のないド派手なミッションの開始だ"
「な、涼太。今回のミッションは楽しくなりそうだろ?」
「ど、ど、ど、ど、ど」
とてもじゃないけどこれ以上言葉にできなかった。
だから心の中で叫ばせてもらおう。罵倒させてもらおう。
どこが楽しそうなんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!
アカンッ!死んでまうッ!ガチでヤバイってばよッッ!!!!!!
「なるほど。今回のミッションメッセージはシャレてますね。ところで涼太さんが主役ってどういうことですか?」
「何かラップの歌詞みたいッスね。久々にガチのバトルミッションみたいなんで腕が鳴るッス」
正気か貴様らッ!?
そうだった、コイツら二人も向こう側の人間だったんだっけッ!?
従兄弟の話をアッサリと受け入れて、口々に勝手なことを言い始めた二人を見つめながら僕は更に絶望した。
味方がいない。
せめてこの怒涛のように押し寄せるエクストリーム・不幸を共に嘆ける友が欲しい。けどいない。
いるのは敵ばかりなり。
そんな敵の中でも最大級に厄介な男――まぁつまり従兄弟が、フラッフラな僕の背中をバンバン叩きながら言った。
「大丈夫だぞ涼太ッ!ミッション開始までにオレがお前を強くしてやるからなッ!!」
それはつまり明日以降も死地へ送られるってことですね。分かります。
あと一つ確認してもいいかな。確かお前僕のギフト構成知ってるよな?
見たよな?ガッツリ見たよな?だからこっからは僕の所持ギフトを把握してるって前提で話を進めるからな?
強くなんねーよ。
どんだけ死線をくぐり抜けようとも、強くなんねーよ。
だって戦闘用のギフト持ってねーもん僕。
いいか。よく聞け。
僕は、戦闘用のギフトを、持ってねーんだよ。
もう一回言うぞ?
僕はァッ!戦闘用のギフトをォッ!持ってねぇぇぇぇぇんだよォォォォォッ!!!!
もう声を出す気力もない。頭クラックラ、身体フラッフラ。
マジでバタンする9秒前。略してばたんきゅー。
にも関わらず従兄弟に便乗するように、他二人もしゃしゃり出て来た。
人好きのする笑顔で金髪少年が元気よく宣言する。
「オレもガンガン手伝うッスよ!」
頼んでねぇよ。
でもいざとなったらちゃんと助けろ下さい。おながいします。
金髪少年に負けじと、元気ハツラツな声で残念な少女も宣言する。
「もちろん私も全力でサポートしますからねッ!
惚れちゃってもいいですよ!献身的な私の姿にクラッと来ちゃってもいいですからねッ!!」
クラッとこねぇよ。
でもいざとなったらちゃんと助けろ下さい。おながいします。
どうやらこの後
『しかもオサワリ可ッ!乳でも尻でも思う存分――』とか続いてたみたいだけど、僕の耳には入ってこなかった。
何故なら軽く意識が遠のいたからだ。
初バトル。しかも連戦。
常軌を逸した馬鹿のせいでボクノカラダハモウボドボドだった。
その上、ミッションに関する精神的なダメージの上乗せだよ?
そりゃ気も遠くなるってもんだよ。
カクッといとも容易く膝から力が抜ける。
バランスを失って、崩れ落ちた僕の背中に誰かの腕が回された。
『オイ大丈夫か涼太』
遠くで従兄弟の声がする。
どうやら従兄弟が助けてくれたらしい。
力強い腕に全体重を乗せたまま、僕は囁くような声で呟いた。
「もう無理」
そこで意識も途絶えた。
もうどーにでもなーれ。
作中で使ってる英語について
多分間違ってるんだろうなーと思うんですが、どう間違ってるか分かりません。
だからそのまま書いてみた。
間違ってる前提なので、恥ずかしくないもん。全然恥ずかしくなんてないもん。




