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20/22

投げ倒せ!ホブゴブリンズ!(仮)


コイツら頭おかしい。

一人としてまともな神経してるヤツがいやしねぇ。


地面に横たわりゼェゼェと全身で呼吸してる僕の耳には

さっきから信じられない内容の話が飛び込んで来ていた。


「やっぱゴブリンじゃもの足りねぇなぁ」

とか言ってる人間のクズ。


もの足りた。100回は『死ぬゥ~』って思った。

うち5回は『先立つ不幸を~』とか考えて、さらにうち2回は走馬灯が走った。


「せめてもう少し数がいれば盛り上がったと思うんスけどねー」

とか言ってる人間のクズ。その2。


いたじゃん。無限沸きしてんじゃね?ってくらいいたじゃん。

100や200じゃ効かない数のゴブリンさんたちと戦ったじゃん。


「このまんまじゃ涼太も不完全燃焼だろうしな……」

とか言い出す人間のクズ。


そんな妄想垂れ流す前に見ろ!今の僕をしっかり見てみろよ!!

どこからどう見ても完全燃焼しとるだろうが!白き灰がちになりてワロス状態だろうがッ!


しかし僕の心の叫びが通じる相手じゃない。それが現実。

息一つ乱さず、いっそ涼しげな様子で従兄弟は頷いた。そして――


「もう一狩り行ってみるか!」


ギャァァァァァァァァァァーーッスッッッ!!!!!!

何言ってだコイツァァァァァァァァァァァァァァッッッ!?!?!?!?!?


ピカピカ輝く笑顔で死刑宣告してくる従兄弟に抗議するため、僕は咳き込みながらも大声で叫んだ。


「む、無理ッ!!これ以上は無理だから僕!!」

「無理じゃないッ!!」


言い切りおったぞコヤツ!?

お、お前に僕の何がわかるッ!


信じられないモノを見る目で従兄弟を凝視すると、ヤツは目を瞑りフッフッフと不敵に笑った。


いやよく見るとヤツだけじゃない。

隣に居る俊平君とジャンキーさんも優し気な笑顔を浮かべているではないか……!


彼らの視線は、まるで聞き分けのないヤンチャ・ボーイを見つめる母のソレだった。

そしてヤツらは口々に訳の分からない事を言い出した。


「いいか涼太。意識が残ってるうちはまだ大丈夫なんだぞ?」

「そうッス。よく言うじゃないッスか。意識が残ってるヤツは戦力。気絶してるヤツも殴り起こせば戦力ッス」

「"もう指一本動かせません"なんて主張する人もいますけど、そういう人でも服に火を着ければ、元気よく飛び起きて消火活動を開始しますからね。

つまりそんな寝言いってるうちは大丈夫って事なんですよ」


そこで一斉にスゥッと息を吸い込み、ヤツらは一斉に言葉を吐き出した。


「だから涼太はまだ戦えるぞ」

「だから涼太君も戦力の一員ッス」

「だから涼太さんも動けるはずですよ」


コイツら頭おかしい。

一人としてまともな神経してるヤツがいやしねぇ。


どこまで訓練されてんだよコイツら。ちょっと待てよオマエら。

こっちとら人生初の全力投球で身も心もズタボロなんだよ。見りゃ分かんだろ。ってか見て分かれよ。勘弁しろよ。何だ?何が望みなんだよ一体。許してくれるのであれば靴くらいは舐めさせていただくぞコノヤロー。


「次はもうちょい歯ごたえのあるヤツがいいな」

「んー……かなり背伸びにはなるッスけど、この辺だとホブリンとかッスかね?」

「えっ!?流石に初心者引き連れてホブゴブリンは無茶かと。下手しなくても死にますよ」


だからちょっと待てと言っている。

今靴舐めるから。だからもうちょい待って。死にそうなくらい疲れててスグに動けないけど、ちゃんと舐めるから。嘘じゃないから。


だから僕を無視して僕を破滅させる計画を話し合うのを直ちに止めて。

僕の人生だぞ。勝手にそんな計画立てちゃメッ!でしょうが。


コイツら頭おか(ry

一人としてまともな神経して(ry


「ハァ?馬鹿かお前。ホブゴブなんかでどうやって死ぬっていうんだよ」

「いやいや。そんな事言えるのあなただけですからね?

ゴブリンを無双できるようになったビギナーが、調子に乗ってホブゴブリンに手を出して、ボコボコに返り討ちされるまでがチュートリアルじゃないですか」

「あー確かにテンプレッスねー……。オレも慣れないうちはよくボコボコにされたッスよ。死角から飛び道具使われるとどうしても被弾しちゃんスよねー」

「……?

そんなもん避けりゃいいだけの話だろ……?」

「いやいやいやいや。死角からの攻撃をそんなにヒョイヒョイ避けれるわけないですから」

「…………??

じゃあ端から死角なんて作んなきゃいいじゃねーか……??」

「だーかーらー。そんな規格外な事出来るのはチートキャラのあなたくらいのもんなんですよ。普通はボコボコに返り討ちにあうんですってば」


やや呆れたような口調で不満を漏らすジャンキーさん。

そんなジャンキーさんを不思議そうな顔で見つめながら、従兄弟はさも当然の話をするような口調で言い切った。


「よく分からんが……それなら別に問題ないだろ?

だって涼太はオレを上回るスーパーチートだぞ?」


……え?

従兄弟のセリフを反芻する間もなく、3対6個の熱い視線が僕を捉える。


何なに何なの。こ、こっち見んじゃねぇよ。な、な、な、何見てんだよテメェら。

え?まさか信じたわけじゃないんだよね?あれは従兄弟なりのナイスジョークだよ?……だ、だからそんな目で見てんじゃねぇよ!


「た、確かに言われてみればそうッスね……!」

「初撃から容赦なくビンを投げつけたド根性、初陣だというのに場馴れした高い順応力、最後まで投球し続けた見上げたガッツ……。も、もしかして……!」


馬鹿かテメェら。なに真に受けてんだよ。そんな訳ないでしょうがッ!?

現実見ろよッ!!どこからどう見ても人畜無害な草食系男子でしょうがぁぁぁ!?


だからお願い!神妙そうな顔で頷いてないで否定してよ俊平君ッ!!

『こいつは面白いことになりそうだぜ』って顔止めてッ!いつものヘタレな君に戻ってッッ!!


ジャンキーさんもしっかりしてよ!従兄弟の甘言に騙されてる場合じゃないでしょうが!

死んでまう!!従兄弟の言いなりになったりしたらワテ死んでまうんやでェェェェ!!


「つーわけで次はホブゴブを血祭りに上げるッ!!」

「異議ありぃぃぃぃぃぃぃ!!」


クソがッ!このクソ役にも立たないゴミクズ共が!!

テメェらが助けてくれないのならば、単身で従兄弟に刃向かうまでのことッ!!


僕はギンッと従兄弟を睨みつけ、まるで産まれたての小鹿のごときプルップルな状態で膝立ちになった。

そうして脳からドバドバと溢れ出すアドレナリンの力を借りて一気に立ち上がる。当然プルップルだ。だが僕はここで倒れる訳にはいかん!いかんのだよぉぉぉぉ!!


思えば初めての戦闘を終え気分がハイになってたんだと思う。

いつになく凶暴な気持ちになった僕は、プルップルな状態のまま吠えた。


「嫌だからねッ!僕は絶対に行かないからなッ!!」


命をかけた叫び。

まさに心が震えるような僕の絶叫を聞いて三人がポカンとした表情を見せる。


通じておくれ我が思い。

ホント無理なんです。死ぬんです。助けてください。勘弁してください。


ありったけの思いを込めて訴えた。次の瞬間――

僕は深い後悔に苛まされる事になった。


「おぉぉぉぉぉ!!!流石涼太ッ!ナイスガッツだッッ!!!!!!」

「ま、まさかあの状態から立ち上がるとは……!スゴイッス!!涼太君スゴすぎるッス!!!」

「お、恐ろしい……!なんて末恐ろしい新兵なのかしら……!!」


今にも絶命しそうな程疲労困憊してた人間が立ち上がる。

そんな奇跡を成し遂げた僕に向けて、三人が畏怖とも賞賛とも呼べる声を上げた。


そんな三人の声を聞いて僕はハッキリと自覚した。

『あぁ……これはやっちまったな』と。


「ち、違うッ!そうじゃないんだッ!僕はもう戦いたく――




当然連行された。



+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-



遮蔽物になってる土壁から頭を出してソッと覗くと、先ほどまで死闘を繰り広げていたゴブリンを縦に2倍、横に1.5倍にしてプロテインをぶっかけたようなムキムキマッチョゴブリンたちがいる。恐らくあれが噂のホブゴブリンってヤツなんだろう。


見るからに強そうだ。少なくとも空きビンぶつけてどうこうなる相手には到底見えない。

唯一の攻撃手段が効かないとなると大問題だ。とても困る。この状況はとてもとても困る。


いやに冷静じゃないかって?そりゃ冷静にもなるさ。

過去を引きずって、いつまでも『もう戦いたくないんだぁぁぁ!』などと喚き散らすなんて馬鹿のヤルことだ。


全力で拒否したけどダメだった。ならば頭を切り替えねばなるまい。

いつまでもメソメソしていてば命が危ない。比喩でも大げさでもなくガチな意味で危ない。


そう。だから今考えるべきは、これから繰り広げられる死闘をどう生き残るか。この一点に尽きるのだ。


やるからには常に全力で。手を抜くなんてもっての他。

ベストを尽くした上で、更にベストを尽くすくらいのド根性で臨むべきなのだ。じゃないと死ぬ。一切の容赦なくな。


少なくとも僕は今までそうしてきたよ。


ゴブリン狩りに行きたくなかった。だから抵抗した。けど無駄だった。

だから全力でゴブリンにビンをぶつける作業に従事した。泣きながらな。


ホブゴブリン狩りに行きたくなかった。だから抵抗した。けど無駄だった。

だから全力でホブゴブリンにビンをぶつける作業に没頭する覚悟をした。もちろん泣きながらな。


もちろん戦歴のクソヤローである他三名も同じ心構えだと僕は信じていた。


そう。間違っても

『ゴブリンなんて余裕だから、別に防具なんて必要なくね?』

なんてフザけた考え方は持つまい。ウサギを狩るにも全力を出すからこそ獅子は獅子なのだ。


あまつさえ

『アレ?説明してなかったっけ?』

なんてクソフザけた事を言うことなど許されるわけがない。ってかこの僕が許さん。



だというのに

どういうことだってばよコレは。



「万が一に備えて【装身】やっとくッスか?」

「……?ホブゴブ相手に必要ねぇだろ?」

「チートは黙っててください。私も流石にホブゴブリン相手にこの格好は舐めプ過ぎると思います」

「んー……。まぁいいか。別に減るもんでもねぇしな」

とか何とか三人だけで話し合ったかと思ったら、突然ペッカーッ!と三人が発光した。


うおッ!ハンパなく眩しいッ!


ってかパーかお前ら。隠れてるとはいえ目視できる距離にムキムキマッチョゴブリンが居るってのに何光ってんだよテメェら。

気づかれたらどうすんだよッ!常識ねぇのかよッ!!


とか心の中で罵倒すると、まるでそれを聞き届けたかのように光が収まる。

突然始まった発光は、終わるときも一瞬だった。


「もー……一体なんだったんだよー」

ショボショボする目をこすりつつ不満を口にする。

謎の発光の原因について説明してもらおうと三人の方へ視線を投げると、そこにはなんと言うか……信じられない光景が広がっていた。


「……へ?」

思わず声が漏れる。訳が分からない。


「ん?どうしたんだ涼太?」

白銀のプレートメイルに身を包み、真っ赤なマントをたなびかせた勇者様が不思議そうな声音で聞いてくる。

どことなく従兄弟に声が似てる気がする。ってか従兄弟だコイツ。


何なに何なの。どういうことなの。

何だよそのイカツイ出で立ち。伝説の剣を抜いたのか?竜を退治してお姫様を救うのか?お前の身に何が起こったんだよ。


「やっぱこの格好すると身が引き締まるッスね」

どことなく和風な衣装の上から、金属製の胸当て腰当てを装着したよく分からない格好の男がウキウキと声を弾ませる。

どことなく俊平君に声が似てる気がする。ってか俊平君だコイツ。


従兄弟が赤マントなら、コッチは長羽織っていうのかな?

正式名称はよく分かんないんだけど、とにかくエンジ色した和風な外套を風にたなびかせている。どういうことだ。


「フフフ。戦場に戻ってキターッ!って感じがしますよねッ!」

厚手の丈夫そうな服の上から、肩当て胸当て腰当て肘当て脛当てと、俊平君よりもカッチリとプロテクターを装着した少女が楽しそうに笑う。

どことなくジャンキーさんに声が似て――っていい加減しつこい?そうだよ。コイツも正真正銘あのジャンキーさんだよ。


ただジャンキーさんは『え?今から山登りすんの?』ってくらいのドデカいリュックを背負ってるので、他二人と違って何もたなびかせてはいない。ってかどうでもいいかこんな事。


「えーっと……」

あまりに突然に出来事に何を言っていいか戸惑ってると、おもむろに従兄弟が聞いてきた


「涼太はそのまんまで行くのか?」

「ヘ……?」


ちょっと待っておくれ。質問の前にキチンと説明してくれないと分かんないよ?


あ、話の流れから目の前の三人が【装身】なるギフトを使ったっていうのは分かる。で、こっからは推測なんだけど、恐らく【装身】ギフトっていうのは魔法少女よろしく戦闘用のコスチュームに早着替えするためのギフトなんだろうなーってのも想像がつくんだ。


「ホブリン相手にノーガードッスか……。こんなクレイジーな新兵見たことないッス……」

「りょ、涼太さん……?その、気を悪くしないで聞いて欲しいんですが、流石の涼太さんといえども【装身】せずにホブゴブリンを戦うのは無理がありますよ……?」


だから待てと言っている。なに勝手に話進めちゃってるのさ。まず説明しておくれよ。

それとさっきからチョイチョイ僕をチート扱いすんの止めてくんないかな。従兄弟と同列の扱いを受けるほど人間止めてないからな僕はッ!?


そもそも【装身】なんてギフト、僕は持ってないぞ。

俊平君とジャンキーさんは知らないだろうけど、僕のギフト構成って『目も当てられないほど大崩壊ッ!』状態だからなッ!


……ん?


いや待てよ……。

実はコレっていいチャンスなんじゃないか?


不安気な二人の視線をシャットアウトして、僕は思考を働かせた。


少なくとも従兄弟以外の二人は【装身】せずにホブゴブリンと戦う事に関して否定的な立場をとっている。

つまり逆に言えば、ホブゴブリンと戦うのであれば【装身】する必要があると考えてるってことだ。


ということはだ……。

ひょっとして上手く話をもっていけば


ですよねー。僕も二人と同じ意見です。やっぱいくらなんでも【装身】なしは無謀ですよねー。

そうだよ。そうだよ。

でもぉー僕ぅーそんなギフト持ってないんですぅー。

えー!?そうなの?

はいぃー。だからホブゴブリン狩りでは最後衛に配置してもらっていいですかぁー?

そうだねー。それなら仕方ないね。それじゃそうしよっか。


って未来を勝ち取ることが出来る可能性も微レ存……?


ここまでドナドナされてきたんだ。ホブゴブリンとバトルについては腹を括った。

お望みならば投げましょう。この肩が爆発するまで投げつけてやりましょうとも。


しかし、ならばせめて安全な場所からブン投げたいと思うのが人情ってもんでしょ。

おーし!久々にテンション上がってきたってばよッ!心なしか元気も湧いて来たってばよッ!!


と、ここまでの思考をジャスト一秒で終わらせ、僕は目の前の二人へ向かって口を開いた。


「確かに【装身】なしでホブゴブリンと戦うのはムチャすぎますよね」

「そうッスよ!だから涼太君もチャッチャと着替えちゃって欲しいッス」

かかったなバカめがッ!


「でもね……。そのー……非常に言いにくいんだけど、僕【装身】ギフト取得してないんだよね」

出来る限り最大限の『申し訳なさ』を醸し出しつつ、そう告げた次の瞬間――


「あ、心配しなくていいッスよ。【装身】は【生活魔法】で使えるギフトッスから、誰でも使えるッス!」

なん……だと?

僕の夢はたちまち儚く散って霧散した。


想定外や。

こりゃあきまへん。


な……な……なッ……!

何でもありかよ生活魔法!!


バトル方面のサポートまでやるとか聞いてねぇぞ!ちょっとは自重しろッ!


それにだ。僕にも使えるんだったら何故もっと早くに教えてくれなかったのかッ!?

ゴブリン狩りの前に教えてくれてば、従兄弟のプレートメイルにも劣らないガッチガチのガチ装備で挑んだものをぉぉぉぉぉ!!


これは苦情を申し入れねばなるまい。


「そんな便利なギフトあるんだったら、ゴブリン狩りの前に教えて欲しかったよ!」

「ゴブリンごときに【装身】は不要ッスよ?」

「その判断は僕が下すッ!」


だからその『またまたぁ余裕だったクセに』的な表情を今すぐ止めろ。不快だ。不愉快だ。


「落ち着け涼太。取り敢えず【装身】の説明するから【メニュー】出せ」

「あ、【ギフト】タブを開いたらリストが表示されるんで【生活魔法】ってとこタップしてみてくださいね。

そしたらまたリストが表示されるんで、今度は【装身】をタップしてください」


そして従兄弟とジャンキーさんのこの平常運転っぷりである。

何なんだアンタら。何淡々と説明おっ始めようとしてんだってばよ。


まず一言謝れよッ!『伝えるのが遅れて誠に申し訳ないことで御座いました』と地面に額づき詫びろッッ!!もちろん許すつもりは欠片もねぇけどなッッッ!!!


「……どうした涼太?」

怒りにワナワナ震える僕に対して、心底不思議そうな表情でこんなことを聞いてくる従兄弟が心底恨めしい。

そんな従兄弟に対して半ば意地になってダンマリを続けていると、突然従兄弟がハイテンションになった。


「あッ!そうか。そういうことか涼太ッ!!」

キラキラ笑顔でヤツが言う。


「だよなッ!やっぱホブゴブに【装身】なんて必要ねぇよなぁ!

おし。涼太がそんまま突っ込むんだったら、オレも【装身】解除して付き合うぞ!!」


どうやらいつまで経っても【メニュー】を開かない僕の態度を

『フンッ!ホブゴブリン相手にそんなの必要ないんだぜッ』的な意味に捉えたらしい。


この流れはダメです。

流れに身を任せてしまうと死んでしまいます。だからダメです。



おーのーじーざすくらいすと。



調子に乗ってしまいスイマセンでした。お兄様。

今すぐ地面に頭を擦りつけて詫びるので、今すぐその危険思想を引っ込めてください。


開きます。言われた通りマッハで【メニュー】開かせていただきます。

ですから何卒……なーにーとーぞーテンションをお収めください。そしてつまらぬ意地を張っていた愚かな僕に【装身】をご教授ください。


【メニュー!】


従兄弟が次のセリフを発するよりも早く、サッと右手に【メニュー】を表示させると

スマートフォンで培ったタッピング技術を集結させて目的のページを目指した。


【ギフト】>【生活魔法】>【装身】


「開きました」


驚くべき速度で【装身】のページを開くなり、従兄弟へ告げる。

【メニュー】をイジっていた時間はほんの数秒だったと思うんだけど――



視線を向けた先の従兄弟は

赤マントたなびかせる勇者様ではなく、普段着のヤツの姿に変わっていた。


そして――

ヤツの腕は何かを捕まえようと僕の方へ伸びてきていた。


ゾッとした。



あ……あ……あ……。

危ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!

間一髪ッッ!まさに間一髪じゃねぇかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!


後一秒でも遅れてたら間違いなく『そんじゃ行くぞッ!』って腕引っ張られてドナドナされてたぞコレッ!!


「ん?【装身】するのか涼太?」

出鼻を挫かれたせいかテンションが正常値にまで戻った従兄弟が聞いてくる。

ええしますとも。僕もガチガチにプロテクターを装備したいのでござる。


何とかギリギリで従兄弟の凶行を回避できた僕は

この時ようやく【装身】の内容を確認する猶予が出来た。


――――――――――――――――――――――――――――――

【装身】

生活魔法


[詳細]

取得したギフトに応じた防具を装備するためのギフトだよ。

色々な種類の装備があるから、最適な装備を選択してね。


[HowTo]

いつでもどこでもいくらでも。

TPOを弁えて豊かなコスプレライフを楽しんでね!


[選択可能装コスチューム]


○旅人さん

 --------------------------------------------------

 (詳細)

  武器ギフトも魔法ギフトも取得してない人用のコスチュームだよ。

  ってかこのゲーム舐めんなよ。お前何しに来たんだよここに。

 

 (詳細)

  旅立て。ここはお前の生きる世界ではない。

  旅立て。貴様に生きる資格はない。

 --------------------------------------------------


――――――――――――――――――――――――――――――


旅人さん……だと?


ど、どういうことなの。

何だコレは。どうしてこうなった。


色々ツッコミたいことだらけだったけど、ジャンキーさん辺りに見つかると大騒ぎになりそうだったんで、僕はそっと【メニュー】を閉じた。




次話から本格的にストーリーが始動する予定です。


プロローグ+下地作りで20話消費……orz

いわゆる導入部分を2、3話でまとめれる人って凄いなぁと思います。


ホント羨ましいなぁ……(´・ω・)

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