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命題背反


ヒドい事されたり理不尽な目に遭わされた時は、抵抗すること・抗議することが大事らしい。

黙って耐えるっていうのが一番の悪手!そんなことした日には相手が調子に乗って行為をエスカレートさせるかもしれないし、何より周りの見る目が『アイツ何されても何も言わねぇよなぁ』的な寛容ムードになりかねないからね。


というこの世の真理に基づいてできる限りの抵抗と抗議をしてみたんだけど、目の前の二人には何をやっても無駄だったらしい。うん。知ってた。

いっそ清々しいよここまでくると!僕が何を言っても1ミリたりとも自分の意見を曲げないんだもん!


ただ僕は職員を呼ぶ前に、改めて今後の事について話をしたかっただけなんだ。

だって知らない間に強制戦闘フラグとか立てられちゃってたんだよ?どう考えても最重要検案だと思うんだよね。


それに『職員なんて呼びたくないでゴザル!』なんてワガママも言ってない。

話し合いが終わったらそりゃギルド職員でも何でも呼べばいいさ。どうせ僕に拒否権なんてないんでしょ?黙ってドナドナされてやるさ。


でも無駄でした。

これ言うの2回目ですね。そうです。大事なことなので2回言った訳です。


「心配すんな!今後については俺に全部任せとけってッ!」

従兄弟は終始こんな感じだった。取り付く島なんて1ミクロンだってありはしなかった。

なぜなら彼はパーフェクトだからだ。つまりパーフェクトな彼が決めたプランはパーフェクトなのだ。だから再考の余地なんてないんだ。つまりもう話し合う必要はないってことだなんだ。チクショー。


元気よく部屋から走り去る従兄弟の背中を、僕はただただ見送ることしかできなかった。

で、そんな僕の心境なんて微塵も理解してないもう一人の問題児がウキウキしながら話しかけてきた。


「そんな事より、早く【料理】ギフトの説明を聞きたいですね!どんなギフトかワクワクしますね!」

『そんな事』っていうのはひょっとして僕の今後の事じゃないですよね?エキセントリック少女さん。

自分の知識欲を満たす事と、僕の今後を天秤にかけて知識欲を選択したって訳じゃないんですよね?エキセントリック少女さん。


あ、ちなみにギルド職員には『使い方の分からないギフトの説明をする』って役割もあるらしいんだ。

っていうか、ほとんどのギフトの詳細説明やHowToは使い物にならないらしく、αテストでは職員からギフトの説明を受けるっていうのがほぼテンプレ化してたらしい。

で、その例に漏れず【料理】ギフトについてもよく分かんないから、こうやってギルド職員を召喚することにしたらしいんだよね。


ちなみにこの情報初耳だからね。

つまり彼らは、主役の僕を差し置いて『職員!職員!』と騒いでたんだよ。僕一人だけ置いてけぼり。いつものことだけどね。チクショー。


超ゴーイングマイウェイとでもいうのかな……。

ギルド職員を伴って部屋に戻ってきた従兄弟を、遠い目で眺めながら僕はそんな事を思っていた。


それにしてもギフトの詳細説明やHowToにもっとまともな情報を記載しとけばいいのにね。

わざわざギルド職員を呼んでギフトの説明させるなんて、すっごく二度手間だとおもうんだけどなぁ。



+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-



――――――――――――――――――――――――――――――

【料理】

幸せ系ギフト


[詳細]

おいしいご飯が作れるようになるよ。

美味しいご飯を振る舞ってあげれば、みんなニコニコ笑顔間違いなし!

モリモリ作って、モリモリ食べよう。


[HowTo]

いつでもどこでもいくらでも。

食材さえあればキラッと料理がつくれるから、色々試してみてね。

――――――――――――――――――――――――――――――


おいしいご飯が作れるらしいです。パンが紙粘土製のこの世界では大活躍間違いなしの神ギフト!

なお戦力にはならん模様。チクショー。


さらに『いつでもどこでもいくらでも』作れるのがニクいよね!

キラッと作れるらしいしね!ん?キラッと?キラッとってなんぞ。要説明。


従兄弟に命ぜられるままにメニューを開き、ギフト一覧から【料理】ギフトを表示させた僕は、改めてそんな事を考えていた。現実逃避とかじゃないです。多分。

で、そんな僕の事なんて毛ほども構わず、僕の右手のひらのメニューを見つめる6つの瞳。


一人目はギルド職員のお姉さん。ボブカットの眼鏡っ娘で、見るからに『THE・公務員』って感じの人だ。

「はい、確かに【料理】ギフト確認しました」

と、これまたいかにも事務的な、感情の全くこもってない声音でそれだけ言うと、彼女はアッサリとメニューから視線を逸らした。さすがプロや。


続く二人目は我が従兄弟殿。端正なルックスに、これでもかという程のドヤ顔を乗せてらっしゃいます。

『目は口ほどにものを言う』というのはホントだね。一言も発していないというのに非常に煩い。得意気に光る従兄弟の目は『俺の従兄弟どや?ええギフトもってるやろ?どや?』と力強く語っている。つまり非常にウザイ。


で大トリの三人目はエキセントリック少女。ふんわり系の可愛らしい娘――だったのも今は昔。

血走った目でメニューを食い入るように見つめ、何やらブツブツと切れ目なく呟く様はまさに幽鬼。いや情報ジャンキーと言うべきだろうか?何にせよメッチャ怖い。反射的に土下座したいくらい怖い。


と、まぁこんなカオスな空間に成り果てたんだけど

プロ職員のお姉さんは手馴れたもので淡々とした様子で職務を開始した。


「それじゃギフトの説明始めますね」

当然僕に向かって告げられた言葉だったんだけど、真っ先にお姉さんに視線を飛ばしたのはエキセントリック少女だった。

ビュオッと風切り音が聞こえそうな勢いでお姉さんの方へ顔を向けると、それまで呪詛のようにブツブツやっていた呟きをピタリと止めお姉さんを凝視している。


ハンパねぇな……。


僕はその様子を見て静かに決意した。

ついでに他のギフトも説明してもらおうかと思ってたけど――今日は自重しておこうと。


だって【料理】1つでこの反応なんだよ?他にも珍しいギフト持ってる事がバレたら間違いなくバーサクかかっちゃうよこの人!

流石に身の危険を冒してまで知りたいとは思わないからね。情報に命を懸けるどこぞのジャンキーとは違うんです。それに後でコッソリ聞きに来ればいいんだしさ。


「お、お願いします」

若干声を引きつらせながら職員のお姉さんに返事をすると、彼女はコクリと頷いて人差し指を1本だけ立てた。

そして唱える。


【マニュアル】


その詠唱に反応して彼女の人差し指の先端がピカーっと光る。

今にも『トモダチ……』とか言ってその光る指を近づけてきそうな光景だ。自転車で空を走るタイプの男子ならイチコロで陥落したことだろう。


ってホントに近づけてきたぞ。

彼女はゆっくりと僕の右手に光る人差し指を近づけ――ピロッ。


ピロッ……?

お姉さんの指が僕の右手に開いたメニューを触れた瞬間、唐突に間の抜けた機械音が鳴る。

あと機械音に混じってエキセントリック少女の方からチッと舌打ちする音が聞こえたんだけどコッチは気のせいだと思いたい。もう面倒事はお腹いっぱいです。


「あのギフトさえあれば私にも……」

聞こえない。うん。気のせい。気のせい。

悔しそうな顔とか見てない。僕は気づかなかったぞ。


剣呑な少女を華麗に無視して右手のメニューに視線を落とすと、先ほどまでとは表示内容が異なっていた。

いや【料理】ギフトの詳細画面はそのまんまんなんだけど、表示内容がさっきまでと明らかに違ってるんだ。


――――――――――――――――――――――――――――――

【料理】

幸せ系ギフト


■現在Lv:0

■LvUP難易度:高


[アクティブスキル]

■Make!ウマイモノ

・クールタイム:即時

--------------------------------------------------------

料理を思い浮かべて料理名を叫べば料理がキラッとできちゃうよ。

あ、食材は自分で準備してね。


料理はイメージ。イメージ超大事。

美味しいご飯をイメージすれば出来上がりにも反映されるよ。


逆にイメージ次第では微妙な味も再現できるし

料理じゃなくて調味料なんかも作ることが可能だよ。色々試してみてね!


なお生野菜サラダや刺身等の「火を通さない」系の料理はダメな模様。

--------------------------------------------------------


■キープキン

・クールタイム:即時

--------------------------------------------------------

料理に必要な精霊たちを保管できるようになるよ。


空きビンなんかを用意して大気中の精霊に呼びかければ、アラ簡単。

精霊をギュッと固めた粉末精霊がビンの中に溜まるよ。


コーボ精霊や、ニューサン精霊なんかは色んな料理に使うから

常時保管を激しくオススメするよ。


コッチでは精霊って言葉で統一してるのでご協力ください。

--------------------------------------------------------


■どこでも!ウマイモノ

※Lv10にて解放


――――――――――――――――――――――――――――――


結論。どういうことだってばよ。


「えっと……」

何を言えばいいのか。どこからツッコんでいいのか分からず取り敢えず呟いた。

つまりこれが、職員によるギフトの説明って事なのかな?だとしたら取り敢えずこれだけは言っておきたい。


結 局 ふ ざ け た 内 容 じ ゃ ね ぇ か ! ふ ざ け ん な ッ !


何だよコレッ!

元の『キラっと作れる』とか『いつでもどこでもいくらでも~』とかに比べたらそりゃましになったけど、根本的な解決になってないよッ!

この説明だって十二分にふざけてるよッ!ツッコミどころしかないよッ!


その上

「説明は以上です」

とか言われて納得できるわけねーッ!


そもそもこれを説明と呼ぶのは何か間違ってる気がする。

光る指でメニューにタッチしただけで終了て……。そんな馬鹿な……。


「あの、もう少し詳しく説明してもらえないですか?」

おずおずと職員のお姉さんに尋ねると、彼女は口持ちに笑みを浮かべて言った。


「それは無理ですよ」

なん……だと……?

無理とはどういう事なんだ?貴女はギフトの説明をしにここに来たんじゃなかったのか?


「私たち職員はギフトについての知識があるわけじゃないです。ですので全ては【マニュアル】ギフト頼みなんですよ」

「マニュアル……?」

「ああ、ご存知ありませんでしたか?【マニュアル】ギフトがあれば、他のギフトの詳細情報が閲覧できるようになるんですよ」

そこまで言うとお姉さんは、僕の右手に表示されているメニューを再び指差した。


「アナタの【料理】ギフトも表示が変わってますよね?これは私が【マニュアル】ギフトを発動させたからなんですよ」

な、なるほど。そういうギフトだったのか……。

そりゃエキセントリック少女が舌打ちするわけだよ。情報ジャンキーの彼女にとって垂涎の的みたいなギフトだもんね。


いや、今はこんな事どうでもいいか。

うん。いまだにメニューをガン見したままピクリとも動かないエキセントリック少女の事はいったん置いておこう。気にしたら負けな気がする。


「って事は、マジのマジマジでこれ以上の説明は無しなんですか?」

恐る恐るお姉さんに尋ねると、やはり彼女はうっすら微笑みながらこう宣った。


「はい。ムリのムリムリでこれ以上の説明は無しですね」

はい。ノゾミガタタレターッ!


「あ、でも」

と思ったけど、何やら続きがあったみたいだ。ヤッターッ!

期待を込めた目でお姉さんを見つめていると、彼女はハッキリと言い切った。


「Lv10になったら次のギフトが取得できるみたいなので、そうなったら改めてお越し下さいね」

結局これ以上の情報は得られないってことじゃないですか。ヤダーッ!


お姉さんのトドメの一言に打ちひしがれてると、ユラリと視界の隅で人影が動くのを感じた。

人影はスッと動いたかと思うと、ガシッと僕の肩を鷲掴む。


パターン青。危機ですッ!

脳内アラームがウォンウォン鳴った――けど時すでに時間切れだった。


僕の肩をギリギリと鷲掴んだまま、エキセントリック少女は満面の笑顔で言った。


「詳細は把握しました。それでは実験に入ります」

何の実験?愚問か。当然【料理】ギフトの実験だろうから。

それより問題なのは、僕に何の断りもなく勝手に結論をだしちゃってる事だろう。忘れてるみたいだから声を大にして言いたいんだ。これは僕のギフトだからねッ!?


「想像以上のデキですね。正直ここまで高性能なギフトだとは思っていませんでした!腕が鳴りますねッ!!」

いや、鳴ってるのは僕の肩だよ?君に鷲掴まれてミシミシギリギリ鳴ってるのは僕の肩なんだよ?

でも今はそんな事を気にしてる場合じゃないか……。僕は生理的ににじみ出る涙を無視して思案した。


少女の言葉の端々からはイヤな予感しかしない。そう。これはとても良くない兆候なんだ。

何が良くないかって?そうだなぁ、具体的に言うと『想像以上』って部分が良くない。非常に良くないんだ。


もし想像未満だったら、彼女の興奮ボルテージは大いに減少するところだったと思う。

で想像通りだったら、彼女の興奮ボルテージは最高潮に盛り上がるところだったと思うんだ。


だというのに結果は想像以上。

これは確実に彼女の興奮ボルテージが天元突破する。つまり僕がとっても不幸になるって事なんだ。


た、対策しないと大変なことになりそうだ……!

だ、第一種戦闘配置ッ!総員持ち場に着くんだッ!急げコノヤローッッ!!


僕はさらに脳をフル回転させて、この場を切り抜ける方法について考え始めた。

――その時だった。


「おい、いい加減に涼太を離せ!」

イ、イレギュラーの登場……だと?


声のした方を見ると、何やらお怒りな様子の従兄弟が仁王立ちしている。その鋭い双眸で睨めつけるのは僕――じゃなくて僕を鷲掴んだままのエキセントリック少女だ。

しかしそんな従兄弟の怒号にも負けず、少女はフフンと得意気に笑った。


「ギフトの調査・実験に協力していただけるお約束だったのでは?」

「涼太の肩掴むのが調査・実験に何の関係があるんだよ!」

「これは便宜上の措置というやつです。こうやって物理的に確保してないと涼太さんに逃げられる可能性がありましたので」

「それは『無理やり調査・実験に付き合わせない』って契約内容に抵触しないか?」

「……そんな条件ありましたっけ?」


僕抜きでぇぇ……、僕に関する事をぉぉぉ……、勝手に決めるんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!!

契約って何だよッ!?条件って何なんだよッッ!!


でも今はツッコまない。我慢する。だから親愛なる我が従兄弟殿。その女を黙らせてくださいッ!

ソイツは嘘ついてますよッ!『無理やり僕を付き合わせない』って条件がある事を知っててとぼけてますよッ!!


しばし二人は睨み合い、期待通り折れたのはエキセントリック少女の方だった。

流石自慢のお兄ちゃんやでッ!僕の従兄弟は世界最強なんやでッ!!


「まぁいいでしょう。でも実験には絶対付き合ってもらいますからね」

そう言ってエキセントリック少女は僕の肩から手を離した。痛みから解放された肩がジンジンする。


「フンッ。馬鹿にするな。涼太は一度約束した事を反故にするようなヤツとは違うからな!」

いや、待て。反故にするもなにも、僕は何一つとして約束を交わした覚えはないんだが。

……一体コイツらはどんなことを約束したんだろうか。


気になる。けど聞けない。いや聞かない。

聞けば絶望するに違いないから聞かない。絶対に聞いてやるもんか。


ねぇ、神様。誰か一人でもいいんです。僕に優しくしてくれる人をどうか用意してはもらえませんか?

人生がハードモードすぎてクソゲー化してるんです。是非ともお願いしますよ……。


辛い現実からしばし目を逸らしていると、遠慮がちなお姉さんの声が聞こえた。


「あの。お取り込み中のところ悪いんですが、私もう帰っていいですか?」

そういえば忘れてました。とは流石に言えない。正直に告げたところで誰も得しない事は言わない。

代わりに僕は、いまだにいがみ合ってる二人に向けて尋ねた。


「あの……職員さんが帰ってもいいかって言ってるけど、もう用事はすんだの?」

うん。そうなんだ。ギルド職員を呼ぶことに関して、僕の意思は1ミリも入ってないんだよ。

だから用事が済んだかどうかなんて僕には判断つかないんです。


僕のギフトの事なのに、全部あの二人が決めちゃうんだぜ……?

情けねぇだろ?笑えよ。笑ってくれよ……。ヘヘッ……。


「あ、そうですね。もうお引き取りいただいて結構ですよ。【料理】ギフトの詳細は私の網膜にバッチリ焼きついてますから!」

網膜て……。軽く人を超越してますよ情報ジャンキーさん。


「俺も大丈夫だ。あの程度の文章量、2秒もあれば丸暗記できるからな!」

はい。従兄弟は平常運転だね。コイツが人を超越してることなんて10年くらい前から知ってた。ってか強制的に知らされた。知らされた時の詳細は思い出したくない。絶対に思い出したくないでゴザル。


「それじゃ私はこれで失礼しますが、その前にいつもの確認をさせていただきますね」

お姉さんは眼鏡のツルをクイッと動かして位置を直すと、僕たちに向かって告げた。


「今回確認した【料理】ギフトにつきましては未確認のギフトだったため、ギルドで管理しておりますギフト一覧に記載いたしますが、よろしいですか?」

「はい。問題ありません」

明らかに僕に対する質問だったんだけど、淀みなくエキセントリック少女が答える。解せぬ。

でもお姉さんの言葉から、僕以外に【料理】ギフトを保持してる人がいないっていうのだけは分かった。


「では次に【料理】ギフトにつきましては、命題背反の条件を満たしております。つきましては情報を公開したいと思うのですが、よろしいですか?」

「しばらくはダメだな」

もちろんコレも僕に対する質問だったんだけど、今度は従兄弟が答える。うん。もういいや。

ってか『めいだいはいはん』って何なのさ。よく分からないけど大仰な響きに聞こえるんだけど、当事者として僕は知らないままでいいのかな……。


しかし当然の如く、そんな僕のことなんてサッパリ無視してお姉さんは微かに眉根を寄せた。

どうも断られるとは思ってなかったみたいだ。そんなお姉さんの様子を見て従兄弟が思い出したかのように付言した。


「あぁ、別にずっと伏せておきたいわけじゃないぞ。時期が来たらコッチから連絡するから、それまではダメだと言ってるんだ」

「つまり隠す気はないってことでしょうか?」

「もちろんだ。涼太はそんなセコい真似するようなヤツじゃないからな!」


そしてまた僕の知らないところで、僕の分からない『僕のこと』が決まっていくんだ……。

ねぇ、時期って何?セコいってどういう事?そもそもこれって大事な話だったりするの?当事者無視して進めていい話じゃないんじゃないの?


「ではご連絡をお待ちしてますねッ」

これまで一切感情をあらわにせず、事務的だったお姉さんの声が、少しだけ弾んだ気がした。

つまりそれだけ『めいだいはいはん』ってヤツが大事な事だったのかな……?


「ねぇ……色々と説明して欲しいことだらけなんだけど」

いそいそを帰り支度を済ませるお姉さんを見つめながら、ポツリと呟く。

長いものに巻かれまくり、大流に流されまくりの僕だけど、流石に看過できない事もあるんだよ。


「もちろんちゃんと説明してやるぞ!」

できれば事後報告じゃなくて、事前に相談して欲しいんだけど……。うん。高望みしすぎだね。

だからお願い、そのキラッキラした目をやめてください。お前がその目をした時は100%の確率で厄介事が起こるんだからホンキで勘弁してください。


部屋の入口でノンキに寝息を立てている金髪バンド少年を跨いで

部屋を出て行くお姉さんの後ろ姿を眺めながら僕は心の中で溜め息を吐いた。



うん。また面倒事が始まるな。

それは予感なんてチャチなものじゃなく――まごうことなき確信だった。



39度を超える熱なんて久々に出しました……。

1週間も臥せることになろうとは、今冬の風邪は一切容赦する気がないみたいですよ。


皆様もこんな小説読む暇があったらうがいとかした方がいいですよ!

嘘です。うがい薬一気飲みするのでどうか読んでやってください。頑張って書きましたので……orz

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