表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶の檻~禁じられた愛の行方~  作者: MCdragon


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/12

第三章:綻びゆく仮面

洗面所の狭い空間で、俺たちは互いの熱を貪り合った。

すぐ近くの寝室では、兄が、そして隣の部屋では寝たきりの親父が眠っている。

その静寂が、かえって俺たちの鼓動を騒がしくさせた。

知美の肌は、月の光を吸い込んだように白く発光していた。

彼女が押し殺した声で俺の名を呼ぶたび、俺の中の倫理観は砂の城のように崩れ去る。


「雄一くん……もっと、強く……」


彼女の指が俺の背中に食い込む。

それは、かつてのマネージャーと部員という関係では決して見ることのなかった、女としての剥き出しの執念だった。

高校時代、俺は彼女の好意に気づいていながら、サッカーに夢中で、あるいは「いつでも手に入る」という傲慢さから、彼女を放置していた。

今、その報いを受けているのだろうか。

兄の所有物となった彼女を、盗むように抱くことでしか、俺は己の存在を証明できない。


翌朝。

食卓には、何事もなかったかのように朝食が並んでいた。

焼き魚の香ばしい匂い。味噌汁の湯気。


「おはよう、雄一。昨夜はよく眠れたか?」


兄さんが新聞を広げながら、コーヒーを啜る。


「……ああ。まあな」


俺は兄さんの目を見ることができず、手元の納豆を執拗にかき混ぜた。


「最近、知美の顔色が良くなった気がするんだ。お前が実家に戻ってきて、話し相手が増えたからかな。感謝してるよ」


兄の言葉は、毒のように俺の胃を焼いた。

知美は、トースターからパンを取り出しながら、わずかに口角を上げる。

その微笑みが、俺に対しての共犯の合図なのか、それとも兄への冷笑なのか、俺には判別できなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ