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第17話 シズとコンタクトを取ろう

「えっ、あっ? どういうことだ?」


「ふおおおっ!?」


『シズ』からのDMを受け取った俺たちは、盛大に混乱していた。


 特に俺たちを混乱させているのは、

『あ、あの。フィルルさんってもしかして異世界転生者だったりしないですか?』

 の一文だ。


「この子、なんでフィルルが異世界出身者と分かるんだ!?」


「もしかして、わたしのことが……見えてる?」


 自分の狼耳を触るフィルル。


 確かに、俺たちのアカウントのアイコンには、龍華とフィルルのツーショット写真が使われている。

 だが、こちらの世界の人間からはフィルルの姿は認識できないはず。

 よしんば、アイエク内のカメラ機能がサポカ扱いになっているフィルルの姿を捉えることが出来ていたとしても、一緒に写っているのは”ゲームキャラ”の剣埼龍華であり、別のゲームキャラと合わせてアイコンにしていると思うだろう。


「それか、シズが俺と同じ異世界からの帰還者だったりしてな」


 思い付く可能性はそれくらいである。


「あ~、だからあんなに凄い声を持っているのかな?」


「そのせいで帰還者だとバレるのを恐れ、鍵垢にしているとか」


 確かに、シズの声色変化は人間業とは思えない。

 能力を隠すために鍵垢に……とはいえ、全ては推測である。


「とりあえず、返事をしてみるか」


 どちらにしろ、龍華のCVを見つけないとアイエクの再開は出来ないのだ。

 彼女が異世界からの帰還者なら、俺たちのことを理解してくれるかもしれない。


「ごくり」


 俺は一度つばを飲み込み、震える手で返信メッセージを打ち込んだ。



 ***  ***


「シズ……なんてことをしたのですか!」


 DMを送信した直後から、強烈な後悔がシズを襲っていた。

 フレンド申請をくれた初対面の人に、『あなたは異世界転生者ですか?』と聞くなんて。


「あ、ああああっ!?」


 恥ずかしさのあまり、畳の上を転がりまわる。

 普段は陰ダンゴムシのくせに、テンションが上がると突拍子もないことをしでかす自分である。

 よく見たら、金髪ビッチ(偏見)女子高生の方もなんとかって言う爆死ソシャゲのキャラクターじゃないか。

 普通にゲーム好きの人なのだろう。


 そんな人に対して、最低のコミュ障ムーブをしてしまった。


「ううっ……」


 恐らくブロックされたに違いない。


 ぴこん!


 そう確信していたのだが、送ったDMに返事が来た。


「……え?」


 恐る恐る、そのメッセージを開く。


『はい。確かに俺……私たちは”帰還者”です。もしかしたら同じ境遇ではないかと感じたシズさんとお話をしてみたくて……良かったらボイチャお願いします』


 どくん、どくん


 自分の心臓が高鳴っているのが分かる。

 このアカウント、何を言っている?

 シズが、帰還者?

 あれか? 最近Web小説サイトで流行りの、異世界で戦った転生者が元の世界に戻り、スキルを活かして無双する的な?

 先日読んだ小説が、確かそんな設定だった。


「いやいや、どういうことですか。何かの詐欺アカウントとか?」


 例えば投資詐欺とか闇○イト募集のような。

 だがプロフィールにほとんど何も載せていない、女としか分からないぱっと見怪しいアカウントにわざわざ詐欺集団が反応するだろうか?


「き、気になります……!」


 リュー&フィルルと名前の付いたアカウントのサムネには、緑の星が踊っている。

 これは、相手がオンラインであることの印。

 更にボイチャのリクエストを示すマイクアイコンが、くるくると回転している。


 どくん、どくんっ!


 心臓の音が、さらに大きくなる。


 これを押せば、何かが……変わる?

 常に引っ込み思案で、ド田舎な地元でも陰の中に生きていた。

 自分を変えたいという願望をごまかすため、異世界転生系の小説を読み漁る事しかできなかった。

 密かに応援していた作品がアニメ化され、イメージ以上の声を当ててくれた声優さんの演技に感激し清水の舞台から飛び降りるくらいの覚悟を持って都会の高校に進学した。

 だが、その挑戦は、何も成すことなく終わろうとしている。


(最悪、とんでもないことになったとしても……)


 ひるむことなく戦場に飛び込めば、別の花が咲くかもしれない。

 ボイストレーニングの為に始めたラップの歌詞が、自分の背中を押してくれる。


「ああもう、どうにでもなれ! ですっ!!」


 ぷしゅううっ


 思考がオーバーヒートした。


 シズはPCの横に置いてあったヘッドセットをひっつかみ装着すると、

 マイクアイコンをぶっ叩くのだった。


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