第15話 TSおっさん異世界帰り、ラヴスタデビューする
「いや、さすがにこのポーズは……恥ずかしすぎるって!」
「ダメだよリューカ! 1500万人の中から見つけてもらうには、いんぱくとが大事! 一撃で目を惹かなきゃ!!」
「ううっ」
ソファーに座り、組んだ両脚を少しだけ上に上げる。
いつもの制服姿だが、スパッツは履いていない。
意外に肉付きの良い龍華の太ももがブロックしているとはいえ、これじゃ下着が見えてしまうんじゃないか?
「うんうん! 表情もいいよ!! 男勝りでワルな女の子が見せる恥じらい……それにリューカのすべすべでちょうどいい太ももがっ。あっ、少し足開いてよ。うへへっ」
「こらフィルル! 最後のは絶対お前の欲望だよな!?」
とんでもないことを言い出すフィルルに思わずツッコむ。
そのはずみに、両脚に入れた力が少し緩んだ。
「!! シャッターチャーンス!!」
物凄いスピードで龍華の背後に回り、左手で龍華のポーズをがっちり固定するフィルル。
ぱしゃぱしゃぱしゃ
「んぎゃ~~~!?」
容赦なく炊かれるフラッシュ。
俺とフィルルは、シズとフレンドになるため……ラヴスタアカウント用の写真を撮っているのだ。
*** ***
「うう、もうお嫁にいけない……」
「だいじょうぶ! ジュンはわたしの旦那さん (ガチ)だし、リューカはわたしの嫁 (ガチ)だからね!! おぱんつ写真はわたしだけの宝物にするよ!!」
「どーん!?」
超愛らしい笑顔でとんでもないことを言うフィルルに悶絶する。
俺の可愛いお嫁さんは、10年会えない間に愛欲モンスターへと進化したらしい。
「むふふ~、心配しないでリューカ。ギリギリ見えないアングルにしておいたから!」
丸く加工されたプロフィール写真とトップに固定されたお気に入り写真。
そのどちらもギリギリ龍華の下着は写っておらず、すらりとした龍華の脚が目を惹く。
ていうかフィルルさん、現代日本の技術への適応が早すぎませんか?
「確かに可愛いし、色気もあるよな」
「でしょ!!」
頬を真っ赤に染め、少し開いた口が可愛らしい。
色気ゼロ、クソヤンキー、チンピラアイドル……さんざんネタにされまくった剣埼龍華の姿はそこにはなかった。俺的にも推しキャラの可愛い姿は嬉しいのだが、問題は中の人が俺という事で……なんだろうこの複雑な気持ち。
「ていうか、このフィルルのポーズは何?」
そう。
龍華のプロフィール写真には、フィルルが写り込んでいる。
左手で龍華の肩を押さえ、右手で目隠しポーズ。
ぺろりと舌を出していて……言い方は悪いがヤバいイメージビデオ (隠語)のパケ写みたいだ。
「へへ~、こっちの世界のヒトからわたしは見えないみたいだからね! ちょっと遊んでみましたっ!」
「まったく」
フィルルが異世界生まれだからなのか、ゲームのサポカとして仮(?)転生しているからなのか理由は今度女神様に聞いてみるとして、フィルルはこちらの世界の人間……例えば瑠璃などから認識されない。
それを利用して悪戯を仕掛けたつもりなんだろうけど。
「でもなんというか……このフィルルを見ているとゾクゾクしてくるな。旦那の知らないところで、ヤヴァイビデオの撮影に出ている嫁みたいな」
「あれ、なんか話のレベルが高くない!?」
フィルルとじゃれ合いながら、ラヴスタのアカウントを仕上げる。
アカウント名は、『リュー&フィルル』……ゲームのキャラクターである龍華がラヴスタアカウントを持っているのはおかしいからな。
ちょっと気取った女子高生のアカウント、という設定だ。
まあ、龍華の知名度ならゲーム内そのままでも気づかれないかもしれないが!
「さて、シズにフレンド申請してみるぞ」
「らじゃー!」
シズのアカウントをクリックし、フレンド申請ボタンを押す。
反応してくれればいいのだが……フィルルのハッキングスキルは最後の手段だ。
*** 神奈川県某所 ***
「むむむ……なんでしょうこの子たち」
急ぎ自宅アパートに戻ったシズは、ラヴスタアプリを前に唸っていた。
今までシズに来たことのあるフレンド申請は、明らかな業者とヤリモクの絨毯爆撃アカウント。
いつもなら速攻ブロックするところなのだが……。
「名前はリューカ、18歳女子高校生……シズと同い年ですね」
明らかに染めているだろうキラキラの金髪。
意志の強そうなオレンジの瞳が陽キャオーラバリバリで、見ていると動悸が起きる。
まあ確かに、ラップバトル会場のクラブでよく見る人種ではある。
その辺にいるヤリモク男とずっこんばっこんワンナイトする系の!
ちっ、リア充爆発してください!
もちろん(?)彼氏いない歴=年齢のシズである。そういうことに興味はない……と言えばウソになるけど。
「それよりも、こっちの子ですよね」
彼女の肩に手を置き、右手で目を隠しているもう一人の少女。
『リュー&フィルル』というアカウント名から考えても、この子がフィルルだろうか。
「お、狼耳……」
そう、何より目を惹くのはふわふわの狼耳だ。
「どう見ても本物……ですよね」
写真を拡大してみるが、頭の上部に生えている狼耳は完全に頭髪と一体化しており付け耳にはとても見えない。
最近流行りの生成AIかと思ったのだが、どう見ても実写……しかもピコピコと動いている。
「も、もしかして、異世界転生者的なっ!?」
小さいころからスマホで小説サイトに入り浸っていたシズは特に異世界転生モノが大好きだ。
自分が転生者になる妄想でいくらでも時間を潰せるし、押し入れの奥には禁断の自作小説が眠っている。
世界は広い。一人くらい転生者がいてもおかしくないと信じているシズである。
「き、気になります! で、でも」
かたや陽キャリア充ビッチ (偏見)女子高生……かたや推測異世界転生ふわふわ狼耳少女。
「うっ、ううううっ」
怖いけど気になる、怖いけど気になる、怖いけど気になる気になる気になる。
「え、えいっ!」
好奇心が打ち勝ったシズは……とりあえずこのアカウントに、DMを送ってみることにした。
*** 同時刻、アイエク内自室 ***
ぴこん!
「おっ!」
ラヴスタで『シズ』にフレンド申請を送って1時間後……PCにインストールしたラヴスタアプリが通知音を立てる。
「どれどれ……」
『シズ』から送られてきたのはフレンド申請の受諾メッセージではなく、普通のDMだ。
「ふおおおおっ! シズちゃんなんてなんて!?」
興奮したフィルルが抱き付いてきた。
「まってろ、今開くから」
俺もドキドキと胸が高鳴る。
シズから送られたDMに書かれていた内容は……。
『こ、こんにちは。ふ、フレンド申請ありがとうございます……あ、あの。フィルルさんってもしかして異世界転生者だったりしないですか?』
「「え、ええええええっ!?」」
DMを読んだ俺たちは、驚きのあまりその場から飛び上がるのだった。




