冒険者の証をつくるために
名前、入所の理由、最後の意思確認。
すべての項目を書き終えた私は、記入した用紙をマリアさんに手渡した。
マリアさんは紙をちらっと確認すると、
カウンターの下から、見たことのない長方形の箱のようなものを取り出した。
書類をその中へ差し込むと、次に取り出したのは、銀色の平たいプレート。
その表面には、手のひらの形がうっすら描かれていた。
「レイナちゃん、このプレートの上に、利き手の手のひらを置いてくれるかしら?
色が変わったあとに、ちょっとだけ“チクッ”とするけど、命はおとさないから安心してね~」
「はい。分かりました」
私はうなずいて、右手をそっとプレートの上にのせた。
プレートの感触は、ひんやりと冷たくて、まるで金属みたいだった。
しばらくじっと見ていると……
銀色だった表面が、ほんのり赤く光りはじめる。
そして次の瞬間、
「……ッ!」
手のひらに、するどく小さな痛みが走った。
でも、それは一瞬だけで、すぐに光も消え、プレートは元の銀色に戻った。
「はい、ありがとうね~。
これはね、今から作る“冒険者の証”のために必要なステップなのよ~」
「そうなんですね……」
私はそっと手のひらをなでながら、うなずいた。
マリアさんはプレートを片づけると、また長方形の箱を取り出して、何やらカチャカチャといじり始めた。
「う~ん……やっぱり、この機械、難しいわぁ……。研究者さまたちが作ったってだけあって……。
ええと、ここを押して……あれ? ちがう? こっちだったかしら~?」
ぶつぶつと呟きながら、真面目な顔で機械とにらめっこしているマリアさん。
その姿を見て、私はちょっぴりだけ不安になりながらも……
静かに用意されたイスに座って、その時を待つことにした。