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応急手当と不器用な手

訓練四日目、午後の実技授業。

装備の扱いに続いて教えられたのは、「応急手当」の基本だった。


屋外訓練場の片隅。教官オルドは、簡易的な手当て道具を手にして言う。


「外に出れば怪我はつきものだ。手当てができなきゃ、死ぬだけだ。覚えろ」


言葉は短く、だがその重さに、私たちは自然と背筋を伸ばした。


用意された人形と道具を手に、私たちはそれぞれ練習を始める。


私は婆様に教わった記憶を頼りに、包帯を手早く巻いていった。


「患部を上げて……出血を抑えて……巻き止めは、ここ」


思ったよりすんなり手が動く。無意識に息を吐いたとき――


「……訓練生にしては、やるな」


隣から低い声が聞こえた。エルマーがこちらを見ている。


「意外だな。荒っぽく見えて、巻き方は丁寧だ」


「……褒めてるの?」


「一応な」


彼にしては珍しい柔らかな言葉に、少し驚いた。


そこへ……


「うおっ!? うわぁ!? え、結び目どこいった!?」


カイルの混乱した声が響く。


見れば、人形の腕に絡まりまくった包帯。なぜか首まで巻いてある。


「それで助かったら奇跡だな」とエルマー。


「お前ら冷てぇな!? なぁレイナ、助けて!」


「仕方ないな……まず、力を抜いて。はい、こことここを持って。ゆっくり」


私は笑いながらカイルの手を取り、もう一度一緒に巻き直した。


「おおっ、なんかそれっぽい! サンキュー、レイナ!」


「やれやれ……」とエルマーは小さくため息をついたが、少しだけ頬が緩んでいた。


「実戦で慌てないために、今きっちり体に覚えさせておけ」


教官の最後のひと言は短く、それでいて重たかった。


命をつなぐための「手当て」。

地味で目立たない。でも、確かにそれは仲間を守る力なのだと、私は胸の内に刻んだ。



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