扉の向こうへ
ふと気がつくと、目の前には大きな扉が立っていた。
「ここは……」
そう思った、そのとき……
ズキッ。
突然、頭に鋭い痛みが走った。
でも、それはすぐにおさまった。
痛みが引くと同時に、私は思い出す。
どうして、ここにいるのかを。
そうだ。
ここに来るまでに、私はずっと歩いてきた。
たぶん、疲れがたまっていたんだと思う。
小さく息を吐いて、
私は目の前のドアノブにそっと手をかけた。
ギィ──……
古い音をたてながら、重い扉がゆっくりと開く。
そのまま一歩、足を踏み入れる。
バタンッ。
無意識のうちに大きな音を立ててしまい、思わず肩がビクッと動いた。
でもすぐに気を取り直して、奥に見えた小さな光をたよりに、私はさらに進んでいった。
中の部屋は、驚くほど真っ白だった。
中央には「受付」と書かれたカウンターがぽつんと一つ。
左右にはそれぞれ扉があるだけで、他には何もない。
とてもシンプルで、どこか冷たい雰囲気の空間だった。
「……誰もいないのかな?」
そうつぶやきながら、私はなんとなく左の扉へ歩き出した。
「ようこそ~、冒険者養成所へ!」
ビクッ!
背後から聞こえた明るい声に、体が跳ねた。
あわてて振り向くと、さっきまで誰もいなかったはずの受付カウンターに、小柄な女の人が立っていた。
「あらあら、ごめんなさいね。びっくりさせるつもりじゃなかったのよ~」
その人は、ふんわりと笑っていた。
あたたかそうな笑顔なのに、どこかふしぎな空気をまとっていて、私はなぜか、その場から目が離せなかった。