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神による、仕事という名の異世界旅行  作者: 馬鳥件
第二章【楽しい楽しい異世界旅行】
6/10

第二話【違和感の正体】

前方にはいろんな意味で近寄りがたい雰囲気を醸し出している男に

後方にはおそらく先ほど人を殺したばかりであろう血の匂いが漂いまくっている正体不明の人物。


まさに前門の生ゴミ、後門のUMA(未確認生物)というところだろう。

さて先ほども言ったように神でも面倒ごとは避けたいのだ。

俺は仕事という名目の旅行をしにこの世界に足を踏み入れているが仕事を増やすために来たのではない。

そんな中でも今もなお、にじり寄ってくるこいつらにどうやったら見逃してもらえるだろうかと考えた。


一つ目は命乞いをする。

典型的かつ、相手の性格によっては有効的な手段だ。騎士団や王族相手になら通用したかもしれない。

だが盗賊などが相手ならどうだろうか。きっとじわじわ嬲り殺しにされるに違いない。

そしてこいつらを見るに人殺すのとか楽しんでそうなので無理だな。


二つ目は交渉する。

これは『お金を差し出すのでお互い無かったことにしよう』と持ちかけることだ。

売買とかでよく見受けられるが娯楽小説でよく出てくるこの展開は上手く行った試しがない。

大体こいつら殺してから金品取りそうだし、というか金がない


三つ目は普通に逃げる

もうこれは普通に無理だな。別に壁を伝って上まで逃げられるが、この世界の盗賊がどんなレベルの力を持っているのかわからないため、普通にリスキーな内容だ。


どれをとっても地獄ならば一番マシ地獄を選ぶとしようか。



一番の命乞いを選んだ。←



「あの…見逃していただけませんか?この通り金品は何も持ち合わせていません。

それにこの事を言う気もないのでどうか哀れな旅人に慈悲をいただけませんか?」


「随分肝が据わってるじゃねぇか…坊ちゃん。

だけどよぉそんな良い身なりしといて金の一つもねぇなんて嘘ついちゃいけねぇよ」


うーんやはり無理か。

と言うかなぜか怒らせたような気もしなくないな。後ろの前も鼻曲がりそうな匂いしかしないし、

仕方ないここは大人しく逃げよう


「にがさねぇよ!!」


足に力を込めて上に飛ぶと、逃さんとばかりに前にいた生ゴミ…じゃない盗賊がこちらにくってかかってくる。

顔を狙ってナイフを突き立ててきたので逆方向に顔を向けて回避。

すかさずナイフの方向を変えて頭を狙ってきたので足を思い切り振りそいつの胴体を横に蹴り飛ばした。

すると後ろからじゃらじゃらと音を立てて鎖のようなものが暗闇から勢いよく飛んできたので胴体を捻り、鎖を避けると逆にそいつの武器を掴んで自分側に引っ張って壁に激突させる。せめて姿見せろ


まぁ顔を一応確認して今度こそ逃げようと思い、壁に足をかけると、

『探知スキル感じ取る世界(ワールドセンス)』が発動して思わず壁を蹴り飛びバックステップで回避した。


盗技(とうぎ)三重百連(さんじゅうひゃくれん)!!』


三重百連って、それなら三百で良くないか?と思ったが明らかなスキルなのでとりあえず距離を取って一つずつ技を避けてやった。

その盗技とやらが当たったところは見事にその形に建物がえぐれていて咳が出そうなほど砂埃を立てていた。


「俺の盗技を避けるなんて坊ちゃん、ただの貴族かと思ったがなかなかやるじゃねぇか。

大体これで死んでくんだけどよぉ ヒヒヒ」

「はぁ、そりゃどうも」


砂埃がついてしまったマントを手で払いながら言葉を流す。殺せないって実にめんどくさいな………ん?


「だがよぉお前は次の攻撃で必ず死ぬ…この攻撃を繰り出されて生きていた奴は」

「あーはいはい、いないんだよな?すごいすごい」


ぱちぱちと拍手してやると相手方のこめかみがピキピキっと筋を立てていく。

怒らせてどうすんだと思うかもしれないが、こっちだってずっと鼻くさいし、マント汚れるし少しぐらい挑発してしまうのは許してほしいものだ。


「そうやって弱い奴を嬲り殺して、他の弱い奴に力見せつけないと力の証明ができないんだもんな?

いやーほんっとすごいすご…」


言い終わる前に先ほどの斬撃が容赦なく三重どころか六重ぐらいで飛んでくる。

これ以上マントが汚れるわけにいかなかったのでマントの先を胸側に入れて無駄な広がりを抑えるとそのまま壁を横から走り抜ける。

そしてキレ散らかしてる盗賊達に上から飛び降り、踵落としをお見舞いしてやる。


ガガバゴン!! 


力加減がうまく行かず、踵はそいつの脳天をつき落ち地面にクレーターを作りながら大きな音と共にめり込んだ。

すかさず隣でアホずらを晒していたアホの持っていた鎖を引っ張り、バランスを崩した顔面に膝蹴りをお見舞いしてやる。

たまらずそいつは後ろの壁にめり込み動かなくなったため、持っていた鎖を投げ捨てて手をパンパンと軽く払った。


「殺さなければセーフだ」


そう、別に殺してはいけないのであって怪我をさせてはいけないというわけではないので何も問題はない。

我ながらによく考えたと思う。……だけど


「ちょー…っとやりすぎたか…?」


爆発音のような音と半壊してしまったレンガブロックとえぐれ見えている地面。

いくら奥の方の路地だからと言っても通報されてしまってもおかしくない。

ここは素直に逃げるのがよろしいだろう。

そうと決まれば実行しか残されていないので早速壁を蹴り上がり屋根の上まで登ると、後ろの道からバタバタを人の声と共にこちらに走り寄ってくる音が聞こえてくる。

(まずい…早く逃げよう)そう思い、屋根を乗り越えた。



だが後々思えば、スキルをかけてから逃げればよかったものを俺はそれを忘れてしまっており、それが後々面倒な事を引き起こす火種となっている事を俺はまだ知らなかった。



『あれは…黒い髪………』



能力説明

・探知スキル、ワールド・センス(感じ取る世界)

一定以上の殺気を浴びると発動するスキル。

ただ殺気の規定量が高いため、あまり発動はしない。

ただ相手がどれほどの殺気を向けているのかが分かりやすくなる。


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