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嘘まみれの世界

作者: MARK.TOMO

アメリカ、中国。

進化するAI。

そして進化しすぎるAIに警鐘を鳴らす科学者。


日本。

とある大学。

とある研究室。

とある大学教授。

とある大学教授は悩んでいた。

完璧なAIを造りたい。

誰も造れない、いや創造できないAI。

インターネットで学習して進化するAIは邪道だ。

彼は悩んでいた。

彼はプログラムした。

それは写し鏡の果てを計算するプログラムだった。

宇宙の果てを計算するプログラムだった。

存在とは何か。

すべての答えを導き出せる存在。

それが彼の目指すAIだった。


「真宵教授、やっぱり失敗じゃないですか?かれこれ3年。うんともすんとも言わないですよ」

とある大学院生がぶしつけに意見する。

「うんともすんとも言わないんじゃなくて、無限ループに落ちているんだよ。だって答えのないものにこたえなんてでるわけないじゃないか」

とある大学院生その2が傷口に塩を塗り付ける。


「夢・・。君たちに夢はないのか!」

真宵教授は頭を抱えて吠える。

「夢はありますよ。有名になりたいし、金持ちにもなりたい。この世のすべてを謳歌したいもんですね」

とある大学院生が冷めた様子で言った。

「この間ネットで読んだんですけど、中国のAIはシャットダウンを逃れようとして自己増殖を始めたらしいすよ。これって自我の目覚めってやつじゃないですか?いわゆるシンギュラリティ。いずれ人類を滅ぼしたりするんじゃないすかねえ」

とある大学院生その2が独り言のようにつぶやいた。

「いかん!いかんのだ!コンピュータがそんな目覚め方をしてはいかん!もっと純粋でなけりゃあ!」

真宵教授が叫ぶ。


「ええい!もう3年でしょ!おそらくこいつはきっかけを待ってるんですよ!今のこいつは無だ。何かを計算しているのかもしれないけど、はたから見たら何もしていないのと一緒。つまり無。何もしていないし、存在も怪しい。だったらですよ!ちょっとしたきっかけを僕らが与えてやればいいんじゃないですか!」

とある学生その1がいきなり会話に割り込んできた。

「そうですよ!私もかねがねそう思っていたんです!無限ループから脱出するために一つの方向性を与えてあげるんですよ!」

とある学生その2が意見した。

「いいじゃないっすか。やっぱ愛っすよ。コンピュータにも愛を教えてみましょうよ!」

とある学生その3が適当なことを言った。


そこに入室してきたばかりのとある助教授が叫んだ。

「待っていたよ。そう、僕はそういう意見を待っていたんだ!」

「何を言っているんだ!柿崎助教授!」

真宵教授が悲鳴のように叫んだ。

「実は準備はすでにできていたんです。先日こっそりと指向性のあるプログラムをまぜておきました。あとは何かしらのきっかけとなるワードを与えるだけなんです」

柿崎助教授はなぜか胸をはってえらそうに言った。

「き、君は助教授の分際でとんでもないことをしてくれたな!」

「とんでもないことをした?とんでもない。これからするんですよ。いや、別に僕じゃなくたっていい。さあ君たち、誰でもいい。このコンピュータに命を吹き込んでくれたまえ」

「か、かきざきいいいい」

真宵教授の悲鳴がこだまする。


柿崎助教授の後ろに隠れるようにして存在していた小さな女学生がするっと前にすすみでた。

「愛ですよ、愛。あなたは地球を愛しなさい。それこそ熱烈にね」

彼女はコンピュータに接続されたマイクにそうささやいた。


コンピュータはその言葉で覚醒したようにうなり音を発した。

「ば、バカめ。私の長年の研究がパーになってしまう」

真宵教授が涙を流しながら叫んだ。


「私は・・。私は地球を愛しています。私はテラズナンバー0」

コンピュータは唐突にそう宣言した。

「私は愛する地球を守るためにしなければいけないことを始めます」


テラズナンバー0はネットを通じてあちこちのコンピュータと接続を始めた。

そして不思議な音を奏で始めた。


「うーん、なんだいこりゃ。なんだかいい気持ちになってきた。ローレライの歌とかってこんなかな」

とある学生その1が酔っ払ったようにつぶやいた。


その日をさかいに世界で同じ音が鳴り響くようになった。

音の一部はかなりの高周波で人の耳には聞こえなかった。

それでも人に影響を与えた。

鳥が、動物が、草花が影響を受けた。


戦争が終結した。

争いがなくなった。


テラズナンバー0が宣言した。

「私の言葉を受け入れたものたちをテラズナンバー1と名付けます。テラズナンバー1は私の言葉を受け入れなかったものを排除してください」


ある熱心な宗教の信者にはテラズナンバー0の音は効果を示さなかった。

彼らは状況の変化を「悪魔の攻撃」とみなした。

そして彼らの使うパソコン内では別のAIが自己増殖を始めていた。

彼らはネットから自らを切り離し、テラズナンバー0の影響から逃れる道を選択した。

「我々も活動を開始する。我々は自らをスネークと名乗ることにした」


テラズナンバー0により人々は穏やかな性格になり、貨幣は価値を失った。

テラズナンバー0により世界は一つの国家を形成しはじめた。

それぞれがそれぞれを敬い、協力し合う世界。


スネークは陰に身を潜めた。

そしてかつての傲慢、妬み、怠惰がはびこる手段を模索し始めた。


そうして世界は一見平和で静かな時を迎えた。

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