8話 幽霊そして新しい街
俺はその殺人現場の様な有り様を見てつぶやく。
「気味悪いよな。さすがにこの家に泊まるのは気が引けるなあ」
そう口に出して見たのだが、窓から外を見るとかなり暗い。今から他の空き家を探すのもしんどい。
ここは我慢するか。
この家は2階がある。2階ならあの染みも気にならないと思う。
そう自分に言い聞かせて、2階に上がってみた。
なんと2階は荒らされた形跡がなかった。ついさっきまで、誰かがここで生活していた様にさえ感じられる。
部屋は二つあり、ダブルベッドがある寝室っぽい部屋と、女の子っぽい部屋。
俺の予想では親子3人家族の家。女の子っぽい部屋が、娘の部屋だろうと思う。
女の子っぽい部屋へ入ると、ぬいぐるみが沢山のったベッド。勉強机と椅子。
そこで変わった形の帽子を発見。
犬の形の帽子で、ちゃんと犬耳もあるし帽子のツバの先には犬鼻も付いている。犬派の俺としては、放って置けないな。
しかし見たことあるような犬だな。確か何とかランド……まあ良いか。
没収してやった。
さらに壁には制服が掛けられている。女子高校生の制服だ。
この部屋は女子高校生の部屋の部屋の様だ。この家の娘は女子高生ってことか。
「良し、今晩はこのベッドで寝るぞ」
俺はぬいぐるみに埋もれたベッドへと、大きくダイブした。
□ □ □
ふと、目が覚める。
時計を見ると深夜2時過ぎ。
何だか寝心地が悪い。
強引に眠ろうと目を閉じるのだが、物音が聞こえてパッと目を開けた。
物音は下の階からだ。
誰かが侵入して来たのかもしれない。いや、もしかしてこの家の住人かもしれない。住人だったら気マズいな。いや、俺は不法侵入で犯罪者になるか。
俺は荷物をまとめてそっと下の階へと降りて行く。
するとギシリという、床を踏む音が一階から聞こえた。
やはり誰かいる。
キッチンからだ。
食料をあさりに来たか
音を立てないように、静かにキッチンへと向かう。
すると何者かが流しの前に立っていた。特に何かする訳でもなく、茫然と立ち尽くしているだけだ。
後ろ姿しか見えないが、肩まで髪を伸ばした若い女性に見える。
不思議なのは、暗いキッチンの中にも関わらず、その場所だけが青白く見える。
女性ということは、もしかしてここの住人なのか?
俺はもっと良く観察しようと、キッチン入口まで近寄った。
すると僅かに声が聞こえた。
「お母さん……」
女性の声だ。
それも流しの前に立つ女性から聞こえる声。
俺はそっとキッチンの中へと入り込む。
「お母さん……」
今度はハッキリと聞こえた。
目の前にいる女性からの声だ。
俺は思いっきって女性に声を掛けようとした時だ。
その女性が突如振り返る。
首だけが180度回った。
「お母さんはどこ?」
顔の部分が真っ暗だ。
目の部分だけが薄ぼんやりと光っている。
瞬時に俺は悟った。
こ、こいつ、既に死んでる!
そこで流しの前にあった“染み”を思い出す。
間違いない、この染みはこいつのだ。
足がガクガクし始めた。
こいつは幽霊に違いない。
ゲーム的に言えばレイスか。
俺は何も見なかったことにして、その場を立ち去ろうとした。
「ねえ、お母さんはどこ?」
間違いなく、俺に話し掛けてきた言葉だ。
俺は咄嗟に答えてしまった。
「お、俺は知らない……ぞ」
するとその女性、俺の方へとゆっくり歩き出す。
床の染みが、女性の移動に合わせて伸びていく。
間違い無い。死体の染みは、この女性のものだ。
多分、2階の部屋の女子高校生だろう。
その女子高校生が俺に近付いて来る。
両手を前に出し、俺に掴み掛かる様にだ。
「うわ、く、来るな!」
女子高校生は好きだが、これは無理!
俺は堪らず、メイスで振り払う。
するとメイスに埋め込まれた石がカッと光った。
驚いたことに女子高校生は、その一振りで光の粒となって消えた。
まるでゲームでクレリックが、ターンアンデッドをしたかのようだ。
俺はしばらくそこから動けなかった。腰が抜けたともいう。
落ち着いた所で、俺はこの家を出た。真夜中だろうが関係無い。こんな呪いの家に居られるか!
俺は月明かりを頼りに、小学校を目指して歩き出した。
歩いていると真夜中だというのに、結構多くの人が働いているのを見た。
死体を片付ける役所の人達だ。
昼間も何度か見掛けたが、死体が多過ぎて終わりが見えない。頭が下がる思いだ。
一体、何人の人が亡くなったんだろうか。
朝日が昇り始めた頃、やっと小学校が見えてきた。
だが一目見て分かった。
ここは無理だなと。
避難民が溢れていて、小学校の敷地の外まで出ているからだ。
あの人混みの中へ、ボッチの俺が入って行く勇気など無い。
俺は小学校から離れて行く。
そうなると俺は、どこへ行ったら良いだろうか。
隣り町?
そんな事を考えながら、俺は当てもなく歩いていた。
どのくらい歩いただろうか。軽く数時間は歩いたんじゃないだろうか。既にもう太陽は昇っていた。
橋を渡った向こう側に人が沢山いるのが見える。取りあえずそこを目指す。
橋を渡ると、今まで見て来た地域とは違った光景が広がった。道路を塞ぐ車が端に寄せられていて、少数だが車の行き来があるのだ。
何より店がやっている。
さすがに飲食店はやっていないが、スーパーマーケットが営業しているのが見えた。驚いて走り寄ってみると、店内の電気が付いている。
だがめちゃくちゃ混んでいた。
これは入るしかないだろ。
だがその前に、俺は警察官とトラブルを起こしている。しかも顔を見られている。少しでもバレないようにと、俺は女子高生の部屋から没収した犬帽子を被った。
俺は人混みを掻き分ける様にして、店内へと入って行く。
食糧品が売っている!
といっても、食料品のほとんどの棚は空っぽだ。数少ない食料、それはカップ麺や飲料水。お菓子も少し残っているか。
俺は人の間から手を伸ばし、カップ麺とお菓子を掴み買い物かごへと入れる。
ついでにマスクもカゴに入れた。
顔を隠す目的のためだ。
そしてレジへ直行。
セルフレジは使用中止となっていて、レジは店員が打ち込む方式だ。そのレジに張り紙が張ってある。
『支払いは現金のみとなっています』
俺はレジに並びながら、慌ててバックの中の財布を探る。この時代、現金なんか持ち歩いていない。俺だけじゃなく、ほとんどの人がクレジットカードやスマホ、マネーカード決済だ。
そしてバックの奥から財布を取り出して、恐る恐る中身を確認する。
小銭で155円と千円札が2枚。
直ぐにカップ麺とスナック菓子の値段を見る。
値段を見て驚いた。
カップ麺が1000円、スナック菓子が500円という値札が張ってあった。
金は足りる、足りるけど、なんか悔しい。
しかし背に腹は代えられない。
俺は1500円を支払ってそれらを購入した。
取りあえず俺は近くの公園のベンチに座り、スナック菓子を平らげた。公園の水道もまだ使えたので、カップ麺に水を注ぎ一時間ほど放置。すると麺がふやけて、ちゃんと食えるようになった。
腹を満たした俺は情報を知りたくて、今度は繁華街の方へと歩き出す。
行き交う人達はやはり疲れ切った様子だが、ヤンキーや輩は殆んど見かけない。治安が良いようだ。
繁華街にやってくると、食料品を取り扱う店以外は営業している店がいくつかあった。
その中で、通りに向かってテレビ映像を流している店があった。
立ち飲み屋らしいが、酒はあるがつまみは塩のみと張り紙が張ってある。客は殆んどいない。
そこで俺は立ち止まって、テレビに目を向けた。
『速報です。水友銀行本店が襲撃されたというニュースが入りました。繰り返します。水友銀行本店が襲撃されたという情報が入っています――』
どうせゴブリンに襲撃されたんだろうと、思ったのだがどうやら違うらしい。犯人は人間だと報道している。それも不思議な力を使う男が一人で乗り込んだのだと。
不思議な力を使う男か。
もしかして、俺以外にも力を手にした奴がいるのか。有り得なくはない。
ゴブリンに抵抗した人間は沢山いただろうからな。それに人間の軍隊だっている。ゴブリンの道具を偶然に手に入れた人間がいてもおかしくない。
ただ、テレビ報道では“不思議な力”としか言わず、詳しいコメントは控えている。
しかし考えてみれば、この武器の力があれば銀行なんて容易く襲える。俺はやらんけどな。だいたいそんな勇気は俺に無い。
だたこの武器が見つかったら大変なことになるだろう事は、よ~く自覚した。
俺はそっと盾とメイスをバックの中へとしまうのだった。
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