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世界中が俺を狙ってる~地球がファンタジー化していくのだが、ずばり俺は救わない!~  作者: 犬尾剣聖
第二章 世界が変わり始めた

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41話 星になる



最終話!











 キララが俺を見ている。


 だが彼女を元に戻すという事は死を意味する。だから人間の姿には戻せない。

 だから今の妹に掛ける言葉なんて無い。


 俺は視線を逸らす。


 するとキララが俺の顔の前に、パタパタと羽ばたいて来る。そして俺をジッと見つめながら言った。


「お兄ちゃん、私の事はもう良いから、地球を元に戻して、お願い」


 返答に困った。


 何も言葉が出てこない。

 戻さない理由はひとつ、地球を元に戻せば妹が天使になる前の状態に戻るから。つまり死んだ状態になっちまう。


 俺が黙っていると、キララは話を続けた。


「このまま放っておくと、地球はどんどんゲーム世界みたいに魔物で一杯になっちゃうんだよね。そうなると沢山の人達が苦しむ事になっちゃうよ。そんなの駄目だよ。だからお兄ちゃん、世界中の人達、ううん、それだけじゃないよ。動物に植物も全部、地球上の全てだね。救ってあげてよ。お兄ちゃんが地球を救ってあげて」


 地球を救ってときたか。

 こんなチッポケなモブな男が地球を救うだと、笑わせるよな。

 小さな会社にやっと就職したは良いが、足を引っ張ってばかりの毎日だった俺だぞ。それこそ世間に大した貢献もしてこなかった社会の底辺にいる存在だぞ。妹一人を救えなかった男だぞ。そんな奴が地球を救うって、冗談にも程がある。

 それも大切な妹の命と引き換えにだと?


「そんな事、出来る訳ねぇだろっ!」


 思わず怒鳴ってしまった。


 さっきまで盛り上がっていた新人類のメンバーも、静まり返って俺に注目している。



 沈黙が続く。


 

 誰もが言葉を出せないでいた。



「あの〜、これが地球を元に戻すスイッチです」


 沈黙を破ったのはリザードマンだった。

 すかさず頭を鷲掴みにして締めてやった。


「痛いって〜」


 何事も無かったかの様に妹が話を続ける。


「そのスイッチを押すのは、お兄ちゃんしかいないよ。お願い、決断して。地球がこのままだと、私はずっと悩み続ける事になるんだよ。私のせいで地球がこんなになってるって。嫌よ、そんなの。私一人の為に地球の皆が苦しむなんて、そんなの嫌だからね」


キララ、そんな事、そんな事言うなよ。俺には……俺にはお前を消すなんて出来ないよ!」


 俺は立っていられなくなり、しゃがみ込む。


 俺の視界がにじんできて、床にはポタポタと何かが落ち始めた。

 俺は袖で目を拭う。


 だが妹は話を止めない。


「ねえ、お兄ちゃん。私が幼稚園の頃にさ、お兄ちゃんに将来の夢を教えたの覚えてるかな?」


 何となく覚えている……


「幼稚園の演劇会の時だよな……」


「そう、そう。私、お星さまの役だったよね。セリフなんてなかったけど。それでその時に私、大きくなったら星になるんだって言って、お兄ちゃんを困らせたよねーー」


 俺はうなずく。


 妹の目が光っている。

 涙を堪えているんだ。


「ーー今なら私、お星さまになれるんだよ。それにはね、そのスイッチを押さないと駄目なんだよね。これはね、お兄ちゃんに押して欲しいの。お願い、スイッチを押して。私、お兄ちゃんに押して欲しい」


 俺は妹の顔を見つめる。


 必死に涙を堪えているのが分かる。


 妹は決心してしまった様だ。

 こうなったなら俺も覚悟を決めなくてはいけない。

 俺は必死に言葉を絞り出す。


キララ、これを押したら後戻りは出来ないぞ。それでも、それでも良いのか」


 妹は無言でうなずいた。


 俺はリザードマンからスイッチを奪い取る。

 

 それは赤いスイッチだった。


 いざ手の中に運命のスイッチがあるとなると、さっきの覚悟が揺らぐ。

 これを押せと?

 妹を死なせろと?


 出来ない……やっぱり駄目だ。


 俺は自然と叫んでいた。


「俺は……俺は地球なんてどうでも良い。キララの方が大切だ。だから地球は救わない!」

 

 俺達を狙って来る奴らがいる地球なんか救いたくない!


「お兄ちゃん?」


 俺は妹に視線を移して言った。


「だけどキララの魂を救う為に……スイッチを押す」


 俺は赤いスイッチを押した。


 妹の表情が柔らかいものとなる。


 そして巨大な黒い魔石に、放電の様なものが注がれ出す。すると魔石にヒビが入っていく。

 そして突然粉々に砕けた。


 その瞬間だった。


 妹の身体からキラキラと、輝く何かが発散し始めた。

 俺は叫ぶ。


キララ!」


 妹は笑顔だった。

 いや違う。涙を流しながら必死に笑顔を作っていた。


「これで私、ほしになれるね」


 妹の身体が徐々に消えていく。


キララっ、キララ!」


「私、お兄ちゃんの妹で良かったよ」


「俺もだ、俺も……キララの…………」


 涙が止まらない。

 言いたい事は沢山あるのに、言葉が出てこない。


 そして最後に妹は言った。


「お兄ちゃん、大好き……」


キララっ〜!」


 俺は手を伸ばす。


 だが妹は俺の伸ばした手の中で、キラキラと輝く粒となって消えていった。


 俺は恥も外聞も捨て、その場に泣き崩れた。


 何度も床を叩きわめき散らした。


 俺だけじゃない。


 フェリスにメイプルにグリム、そして桜木さんも号泣していた。


 俺は涙が枯れるまで泣いた。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


 その後、皆の反対を押し切ってリザードマンを開放した。

 その理由のひとつに、こいつを奴らの世界に戻らせて、他のリザードマンを地球に来させない様に説得させる為だ。

 それで二度と地球には来ないし、地球人はさらわないと約束させる。守るかどうかは分からないが、俺はこのリザードマンを信じる事にした。

 少なくてもその時はそう思った。


 そしてリザードマンを自分達の世界へ帰らせるため、俺達はカプセルから降りた。

 その時リザードマンがニヤリと笑った様な気がした。

 

 やっぱぶっ殺せば良かったかな?


 そしてカプセルは消えて行った。









 その日からファンタジー化していた環境が、日を追うごとに元に戻っていった。

 あと1ヶ月もすれば元の地球に戻るだろう。


 だが各国の情報機関は、まだ俺を狙っていた。

 だけど新人類に桜木さんを加えた4人と俺は、無茶苦茶強い。

 それもそのはずで、スイッチを押して黒い魔石が砕けた後、その全ての破片を持ち帰ったからだ。


 それを既存の魔道具の魔石と交換するだけで、無敵の性能となった。

 グリムの神官服が良い例で、呪いが無くなった上に魔力が増した。

 それにリザードマンから貰ったコンテナの中身の武具も凄かったしな。


 それと誰にも言っていないのだが、妹が輝く粒となって消えた時に小さな魔石が残っていた。キララの魔石だ。金色をしたその小さな魔石を手にした時、俺の指輪が光り輝いた。

 そして俺の頭の中に情報が入ってきた。


 フェアリー召喚で無くてはならないもの、それは金色の魔石。

 俺はフェアリー召喚方法を知った。









 ーー完ーー










最後までありがとうございました。





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