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世界中が俺を狙ってる~地球がファンタジー化していくのだが、ずばり俺は救わない!~  作者: 犬尾剣聖
第二章 世界が変わり始めた

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40話 人間の姿に








 ゲートから出て来たのは人間だった。それも一人や二人ではない。多くの人々が出て来た。

 その人々に桜木さんが反応した。


「みんな、私、ラムだよ!」


 どうやらこの人達が連れ去られた人間らしい。酷く汚れた格好な上に、かなりやつれた身体をしている人々ばかりだ。向こうの世界では過酷な生活を強いられていたのだろう。

 桜木さんに気が付くと、ゲートを抜けた人々がワラワラと集まって来た。


 そこで桜木さんが、事の成り行きを簡単に説明する。どうやら俺が皆を助けた的な話をした様だ。すると俺が神様かの様に拝み始めた。

 結果的に助けた形になったが、こういうのには慣れてないんだよな。勘弁して欲しい。


 そして人々をカプセルの外に案内すると、屋上からの景色を見るや誰もが涙を流して喜んだ。久しぶりに見る地球の景色なんだとか。

 

 俺達はその間にカプセルに戻り、リザードマンとの話を進めた。

 リザードマンは相変わらず子供のような声を発しやがる。


「ほら、ものは違うけど約束の武具だよ。その中に入ってるからさ。あのオークの武具は消えちゃったからね。変わりだよ」


 そう言ってコンテナを指差す。

 そこにはいつの間にかコンテナが置かれていた。

 コンテナを開けてみると、中には沢山の魔石付きの武具や魔道具が入っていた。どれも色付きの魔石がはまった魔道具だ。


 さらにリザードマンは言葉を続ける。


「えっと、それから地球を元に戻すって話はどうするんだっけ?」


 俺は即座に返答。


「戻すな!」


 そう言ってリザードマンの頭を再び掴んで、ちょっとだけ力を込める。


「ひぃっ、ほ、本当に良いの?」


 妹の命には代えられん!


「ああ、その代わりフェリスとメイプルの姿を人間に戻せ。それとグリムの呪いの神官服もなんとかしろ」


「それって、地球の魔物達は放置で良いんだね?」


「何度も言わせるなっ、フェリスとメイプルとグリムだけって言ってんだろっ」


「わ、分かったよ。分かったから、頭を潰さないで〜」


 俺が頭を開放してやると、リザードマンはブツブツと文句を言いながらも操作盤をいじり始める。

 すると床から透明な入れ物がせり上がり、それが光を放ち始めた。中身は巨大な黒い魔石だった。


 しばらくするとメイプルの体が輝き始める。

 そして徐々に体に変化が見え始めた。元の人間に戻り始めた様だ。そして普通に華奢な体型の女の子となった。尖った耳は人間の形に、変な色していた肌も元通りになる。

 もちろん胸が大きくなったりはしない。


「も、戻った。元の体に、戻った〜っ。あれ、でも、もっと胸は大きかったはず……」


「そんな訳ねえだろ!」 


 つい突っ込んでしまったのだが、よくよく考えたら俺は元のメイプルの姿など知らん。まあ、良いか……

 しかし元に戻ってメイプルは大喜びだ。


 グリムの神官服はもっと簡単。

 リザードマンの操作ひとつで巨大な魔石から光が発せられ、神官服の色合いが変わった。

 そして「もうそれ脱げるよ」の一言。


 グリムは恐る恐る神官服を脱いでみると、普通に脱げたから大喜びだ。

 だがグリムの年齢だけは元に戻らなかった。

 呪いで失った年齢は元に戻らないらしい。おっさんのままだな。

 それでもグリムにしたら感動的な出来事であったらしい。おっさんが泣いていた。


 続いてフェリス。


 猫耳が無くなり尻尾が消えて行く。


「あ、猫耳が……あ、あ、尻尾が……」


 そうつぶやくのはフェリスではなく、桜木さんだった。フェリスの獣人の箇所が無くなる度に、悲しそうな表情を浮かべる。


 そして完全に人間の姿になったフェリス。


「やったにゃ〜、人間に戻れたにゃん!」


 何故か言葉は直らない。

 初めて見る人間の姿のフェリスだが、西欧人っぽい外見が増した感じだな。はっきり言って美人系。だけど猫娘も良かったな。モフモフしとけば良かったよ。


 そこで桜木さんが、何かを思い出したかの様にリザードマンに詰め寄った。


「おい、あれを出せっ。前に人間に付けさせてた獣人の魔道具、ほら、早く出しやがれ!」


 血相を変えてまで必死になる桜木さんは、以前に向こうの世界で見た魔道具を欲しているらしい。それをリザードマンに出せと言っている。

 そうは言っても、そう簡単に出してくれる訳が無い。


 だが桜木さんは、リザードマンの頭を鷲掴みにして凄む。


「このトカゲ頭を握り潰されたくはないだろ。早く出さんかい!」


 まるで別人の様な言葉遣いである。


「わ、分かったから、は、離してよ。今出すから……」


 いじめっ子の会話だな。

 これを見ると、リザードマンは弱いからアバターを使っていたのかもしれないな。

 

 再び操作盤をいじるリザードマン。

 するとリザードマンの足元に魔法陣が現れ、その上に着ぐるみの様な何かが現れた。

 

「ほら、これで良いよね。2人分あるよ」


 リザードマンが2人分出したと言っているそれは、猫の様な手をした手袋と、猫の足の様な形をした靴。そして猫耳のカチューシャに加えて、尻尾付きのベルトに鈴の付いた首輪。


 見るからに分かりやすい魔道具だ。

 これを着ければ猫獣人になれるやつだろ。似たような道具がドンキ◯ーテで売られているのを見たぞ。


 桜木さんはその魔道具を嬉しそうに持ち、「はい、フェリスの分だよ」とか言って渡す。


 するとフェリス。


「ありがとうにゃ、んじゃこれはラムちゃんの分にゃん」


 そう言って、もう一組の猫装備を桜木さんに渡すフェリス。


「ありがとう!」


 そして何故か今、このタイミングで装備を着け始める二人。

 装備が終わるとお互いの姿を見て感想を言い合い始める。


「フェリスちゃん、お似合いだよ。猫耳が可愛い!」


 いや、さっきまで本当の猫耳だっただろ。


「ラムちゃんも可愛いっ、尻尾がキュートすぎにゃん」


 何なんだろうか、このくだらないやり取りは。そしてお互いの猫装備を突き合いながら、キャッキャッニャンニャンやっている。今それやるか?


 「だったら人間に戻らんでも良かったじゃん」という言葉は飲み込んだ。


 これで全部終わったな。後はこいつらが2度と地球に来なければ一件落着なんだが……


 そこで俺を見つめる視線に気が付いた。


 キララだった。


 何か言いたげに俺を見つめる。










次回、遂に最終話!





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