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世界中が俺を狙ってる~地球がファンタジー化していくのだが、ずばり俺は救わない!~  作者: 犬尾剣聖
第二章 世界が変わり始めた

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34話 モブだって格好つけたい








 俺は大男の目の前まで来た。

 大男は瀕死状態で、もう何の抵抗も出来ないでいる。

 俺は大男が持つ魔道具が気になっていたので、まずはメダルに触れてみた。

 すると指輪の知識から、どんな魔石でどういった魔道具なのかが理解出来る。ただ、魔石自体は理解出来るがそれ以外の情報、例えば材料が理解出来ないし入手の方法も分からない。地球には無いものだろうと思う。だから同じ物を作るのは難しい気がする。ベルトも同様だ。

 それに認証登録しているから、奪うことも無理だ。

 ちなみにベルトは『巨人の力』の魔法、メダルは『再生』の魔法の魔道具だった。


 う〜む、折角手に触れて性能が分かるのに奪う事も出来ないなんて、それは酷というもの。俺が悩んでいると大男が瀕死の中、言葉を発した。


「残念だが、認証……登録している……お前に、渡す訳……ないだろ」


 ちょっとカチンときた。


「ああ〜、あんだと〜っ、ならこうしてくれるっ」


 俺は怒りに任せて、魔道具のベルトを分解し始める。魔道具の分解など、指輪の知識のおかげでお手の物。俺は魔石を使った魔道具が作れる職人だからな!

 その場で完全分解してやった。


「き、貴様…………」

 

「どうだ!」


 大男はそれを最後に悔しそうに息を引き取った。

 すると斧と魔道具のメダルが、煙を吐き出しながら燃えていく。そして最後には灰だけが残った。認証登録した魔道具の末路である。


 しかし分解したベルトはその場に残る。


「あれ、何で燃えないの」


 まさか、分解したから認証登録が解除したとかなのか。それしか考えられないよな。それならメダルも分解しとけば良かった!

 悔しがってももう遅い。

 それでもベルトは手に入った。組み立てればちゃんと使えるかもしれない。

 分解したベルトをかき集めてバックに仕舞う。組み立ては後回しだな。


 取り敢えずは桜木さんの所に戻ろう。

 

 俺はエレベーターに乗り込みインターフォンで俺だと告げると、エレベーターは最上階へと向かった。


 エレベーターの扉が開くと、皆がそこで待っていた。

 俺はエレベーターから降りて軽く手を上げて一言。


「よおっ、勝ったぜ」


 すると女性陣4人が目を輝かせながら寄って来て言った。


「お兄ちゃん、かっこよかったよ」

「中々やるじゃねえか!」

「せん君さあ、実は凄い人なんじゃ〜ん」

「まとっちは魔物にゃん?」


 何だか良い気分なんだけど!

 

 こんなにもてはやされたのは、生まれて初めてだ。俺の心が叫んでいる。


「生きてて良かった〜〜っ!」


 皆がキョトンとしている。

 しまった、心の声がダダ漏れだ!


 そこでグリムが申し訳無さそうに言ってきた。


「まとっち、幸せそうなところ申し訳ないのですが、口を挟んでもよろしいでしょうか」


 いったい何だろう。


「何、グリム?」


「はい、このマンションの周囲の空に、球体状の物体が飛び始めました」


 ゴブリンじゃねえか!


「それを早く言えっての。皆、逃げるぞ。異星人が来た!」


 すると桜木さん以外は、大慌てで逃げる準備をする。


「桜木さんも、一緒に逃げよう。早く準備して!」


 そう言ったのだが、桜木さんは首を横に振る。


「私は無理。半分あっちの世界で暮らしてきたんだよ。今更地球人になんか戻れないよ……」


 心無しか桜木さんの表情は悲しげだ。

 その表情を見ると桜木さんの本当の気持ちは、地球人として地球で暮らしたいんだろう。だけどスパイとしてここに来たのだから、後ろめたい気持ちがあるのだと思う。

 それなら俺が全力でサポートしてやる。


「何言ってんだよ。自分の姿を見てみろよ。ゴブリンに見えるのか。違うだろ。誰が見ても桜木さんは地球人だろ。異星人なんかぶっ飛ばして、堂々と地球人としてここで暮らしていけば良いんだよ、悩むことなんか無いだろ」


 するとちょたとだけ嬉しそうな顔をするが、それも直ぐに暗い表情となる。


「でもね、せん君。あっちの世界にはさ、私の第二の家族がいるんだよね。私だけ地球でのうのうと暮らしていくなんて出来ないじゃん。だから、無理なんだよ……」


 桜木さんは今にも泣きそうな表情だ。

 それを見ていると、心を揺さぶられる。


 何とかしてやりたい。

 助けて上げたい。

 

 だけど今の俺に何が出来る?


 すると桜木さんの目に光るものが見えてしまった。


「ごめんね、ガラにも無く泣いちゃったよ。ははは、ほんとゴメン、ほんと……ゴメン……」


 桜木さんの目からポロポロと涙が落ち出した。


 そうなると誰も声を掛けてやれなくなる。

 フェリスが「ラムちゃん……」とかつぶやきながら、手を出したり引っ込めたりしている。


 昔の俺ならうろたえる場面だが、今の俺は昔とは違う。俺は自然と言葉を発していた。


「桜木さん、俺達がいるだろ。もっと頼れよ。俺達は仲間だろ。ほら、周りを見てみろ。皆が力を貸してやろうって目をしているだろ。俺なんかさっき、皆のために命を張ったくらいなんだぞ。もっと信頼してくれよ。ここの誰もが同じ気持ちなんだよ。俺達が全部引っくるめて解決してやるよ。ほら、言ってみろ“助けて”ってよ!」

 

 桜木さんの顔はくしゃくしゃだ。

 そして桜木さんは絞り出すように言った。


「お願い、助けて、下さい……うう……」


 そこで堪えていた感情が開放されたのか、桜木さんの目からは止めどなく涙が溢れ出た。

 

 俺は桜木さんの直ぐ側まで歩み寄る。


「折角の可愛い顔が台無しだぞ」


 そう言って指で涙を拭ってやる。

 すると……


「うえ〜ん、何で、何でそういう事するのよ〜〜……うえ〜ん、ひっく……」


 今度は余りに不細工な泣き方で号泣だ。

 しかも桜木さんは何故か俺に向かって両手を伸ばして来た。


 しかし俺は思わず後ずさり、手で桜木さんのひたいを押さえて防ぐ。

 「汚い!」と口に出しそうになるが、それはギリギリ堪えたぞ。

 

 すると桜木さん。


「な〜ん〜で〜避けるの~……うわーん、避〜け〜た〜。なんで手で防ぐのよ~~うえ〜ん」


 うっわ、面倒臭い奴!

 盾が自動防御を発動しそうになったのは黙っておこう。


 そして再びグリムが口を挟む。


「ドン引きしているところ申し訳ないのですが、異星人どもが屋上から侵入して来ています」


 なに落ち着いて説明してんだよ、って突っ込みは後回しだ。


「一階の方からはどうなんだ」


 グリムは監視モニターを見ながら答える。


「いえ、屋上からだけの様です。しかしすごい数ですね……」


 一階から逃げるしかないか。


「良し、エレベーターで降りるぞ。時間が無い、急げ!」


 俺は桜木さんの手を引っ張ってエレベーターに乗り込む。他の皆もエレベーターに乗り込んだのを確認したところで、一階行きのボタンを押した。

 そして扉が閉まる寸前、俺はエレベーターから飛び降りて言った。


「俺が時間を稼ぐから先へ行け。メイドカフェで待ってろ」


「あ、ちょっと待つにゃーー」


 入口扉が閉まる。

 「先へ行け」、一度言って見たかったセリフだった。

 

「さてと、思いっきり暴れるかな」


 俺が振り向くと、屋上に繋がる非常口が勢い良く開いた。


 ゴブリンの集団だ。


「絶好のタイミングだ。ぶっ飛ばされたい奴から来いよ。ただし順番でな!」


 先頭のゴブリンが奇声を発しながら向かって来た。


 さあてと、ここからは俺の時間だ!









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