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3話 未知の武器を手にした






 そのゴブリンの右手には、石が取り付けられた50センチほどの棒が握られている。その棒はファンタジーゲームに良く出て来る、ワンドと呼ばれる魔法の杖そっくりだ。


 そいつと俺は目が合ったまま、お互いに動かない。

 なんだか、動いたら戦闘が始まりそうな気がした。だから動けない!

 二人して身動きしないまま、十秒ほど経った頃だ。


 ほぼ同時だった。


 そのゴブリンと俺は動き出した。


 ゴブリンがワンドを頭上に掲げて、聞いたこともない言語を喋り出す。

 まるで呪文だ。

 

 だが俺には銃がある。圧倒的にこっちが早い。

 俺は狙いをその祈祷師の格好したゴブリンの胸に向け、残った弾丸二発を全て撃ってやった。


 銃口からユラリと煙が溢れ出る。


 一呼吸ほどの間を開けて、ゴブリンがグラリと崩れる様に倒れた。

 その手から落ちたワンドは、石の部分が光っている。しかしその光も徐々にに消えていき、最後には元の普通の石となった。


 ゴブリンは荒い息だが、まだ息がある。

 胸に拳銃の弾丸が当たったと思われる穴が二つ空いているのだが、血液は流れない。

 やはり地球人とは違う。

 そのせいか、人を撃ったという罪悪感が薄い。


 そこで俺はその祈祷師ゴブリンの指に輝く指輪が目についた。

 やはり石がめられた指輪だが、ちょっと高価そうだ。それに他の武器のような単なる石じゃなく、黒色をした石だった。ブラックスピネルっていう石に似てるな。

 まさか魔法の指輪じゃねえよな、とか思いながらそれを奪って自分の指にはめてみた。


 ……特に変化はないな。


 するとゴブリンは大きく息をしたかと思ったら、その場から忽然こつぜんと消えた。一緒にワンドも消えた。

 どうやらこいつらは、死ぬか重傷を負うと装備ごと消えて無くなるみたいだ。

 だが俺の指にはめた指輪は消えていない。

 どうなってんだか全く訳分らん。まあ、ラッキーとしか言いようがないな。


 さて、あとは逃げるだけ。

 でも逃げる場所は一か所しかないんだよな。

 出入口は開いたままだが、外は見えない。暗闇しか見えない。

 ここから出るのは何だか勇気がいる。

 俺はひとり「せーの」とか言いながら、暗闇へ踏み込んだ。




 そこは見たこともない広い空間だった。

 証明らしきものは無く、全体的に薄暗い場所だ。

 その薄暗い空間には、ゴブリンが乗っていた球体と同じものが、数え切れないくらい整然と止まっている。それにコンテナのような物が山積みされている。


「もしかして、ここが立方体の中とかやめてくれよな……」


 ひとりつぶやきながら、恐る恐る周囲を見回す。

 どう考えても立方体の中だろこれは。俺は敵の母船の中に来てしまったのかよ。

 

 すると球体に乗り込むゴブリンの集団が見えた。もしかして、地球に向かうんじゃないだろうか。それなら一緒に乗り込めば、俺も地上に戻れる。

 そう思って奴らを観察しながら、乗り込む方法を考えた。

 するとゴブリンどもは、大きなコンテナを球体に載せているのが見える。ゴブリンどもが自分達の乗り込む球体に、コンテナも積み込んでいるみたいだ。不思議なのは入口より大きなコンテナが、何故か球体に入ってしまう。


 そしてコンテナが積み込み終わりゴブリン達も乗り込むと、扉が閉まり球体は空中に浮いた。そして空間が歪んだ様に見えたと思ったら、一瞬で消えた。


 SFとかでいう空間転移じゃなかろうか。ワープとかハイパードライブと言うやつか。いや、ファンタジーだから転移魔法って言った方が良いか。

 そこへ突然、空間からゴブリンの集団が現れた。

 これはまさしく転移魔法だな。

 そしてそのゴブリン達は他と同様に、球体にコンテナを積み込むと一緒に乗り込んで消えて行く。

 それならばと、俺はコンテナのひとつに隠れることにした。コンテナが山積みの場所がある。その一つに忍び込めば、きっと地球に戻れるはずだ。


 俺は早速コンテナの山にそっと近付くと、その中に宝箱のようなコンテナを見つけた。

 ふたを開けると、中には槍や剣に盾などの武器が入っていた。

 どの武器にも石がめられている。

 ゴブリンどもが持っていた、光り輝く武器なんだろうな。

 その中でも一際目につく長細い箱があった。

 金ぴかに彩りされた、結構な大きさの箱だ。

 そっと開けると、中には盾と武器がセットで入っている。

 盾は金属補強がされた木製で、革を被せてある。それに一際ひときわ大きな石がめ込まれていた。他の石は色が付いてないが、この石は緑色だった。

 武器の方はゲームに出てくる“メイス”と呼ばれる殴打武器だった。神官クレリックとかが使う武器だったりする。このメイスにも、他の武器同様に石がめ込まれているのだが、宝石みたいに色鮮やかで綺麗だ。これも緑色の石だな。


 俺は自然とそれを手に取った。

 ゴブリン用だからか、思ったより小さい気がする。

 よく見ると、取っ手の所には見知らぬ文字の様な物が、びっしりと書き込まれていた。まるで古代文字の様だ。

 しかし何故か手にしっくりくる。

 

 俺は盾とメイスを握りしめ、コンテナ中へと身を沈めた。

 拳銃は弾切れだから、最悪の場合はこの武器で戦う事を覚悟した。


 そして俺は息を殺して時が来るのを待った。


 ・

 ・

 ・

 ・


 しばらくすると、また僅かな振動を感じた。恐らくこの振動は、球体が移動している時の挙動なんだろうと思う。


 そして突然コンテナのふたが開かれた。

 開けたのはゴブリンだ。


 あまりに突然開けられたので俺は、そのゴブリンを見つめたまま固まってしまった。

 明けたゴブリンも驚いたのか、コンテナのふたを手に持ったまま俺を見つめ固まっている。

 そいつ以外のゴブリンどもが、近くに寄って来て同じように驚いた顔でコンテナの中の俺を見つめる。

 その視線の先は俺というよりも、俺の握っている武器のようだ。

 頭の中で試行錯誤を繰り返す。

 どうすれば良い?


 結局俺はその盾とメイスを握り締め、コンテナの中から立ち上がる。


 ゴブリンどもが、わっと俺のいるコンテナから遠ざかっていく。

 革鎧は着ているが武器は持っていない様だ。奴らの武器は全て、このコンテナの中だからか。

 つまり武器を持っているのは俺ただ一人。


 何だかやる気がみなぎってきた。

 周囲のゴブリンを見回すと、明らかに俺を見る目が違う。地上で人間を襲う時の目とは全く違い、逆に俺を恐れている目だ。

 奴らの今の恐怖の対象は俺だ。


 俺はゆっくりとコンテナから外に出た。

 するとゴブリンどもが後退あとずさる。


 何だかニヤけてしまう俺。


 それを見たゴブリンがさらに後退あとずさる。


 た、楽しい〜!


 ゴブリンどもは俺から四〜五メートル離れている。

 それ以上は近付いて来ないみたいだ。

 

 そこで俺はメイスを構える。


 それを見た一体のゴブリンが、背中を見せて逃げ出した。

 

 俺は反射的にメイスをそいつに浴びせる。


 どう考えても届く距離ではない。

 しかし届いた。

 届いてしまった!


 メイスの柄と鉄球を繋ぐ鎖が出現し、その鎖がどこまでの伸びていく。そしてメイスの鉄球がゴブリンの背中に直撃。

 ゴブリンの身体が逆くの字に曲がった。

 その一撃でゴブリンは消滅した。


 やはり消える様だな。一定のダメージで消えると考えるのが妥当か。

 

 次の瞬間、他のゴブリンも一斉に俺に背中を向けて逃げ出した。

 俺は鎖の伸びた鉄球を引き戻し、今度は頭上でグルグルと回す。


 ヒュンヒュンと不気味な音が空間に響く。


 十分な遠心力を得た所で、俺はゴブリン共に向かって鉄球を円を描く様に振り回す。

 

 投げ放った瞬間、再び鎖が伸びていき、逃げるゴブリンどもをまとめてぎ払った。

 そしてやはりゴブリンどもは、忽然こつぜんと消えて無くなった。


 一撃でとは凄い威力だ。

 それに俺は初めてこの武器を使ったのにも関わらず、まるで昔から使っていたような感覚。

 手に馴染んでいる。

 

 地球上の銃の様な飛び道具じゃないが、接近武器としてはずば抜けていると思う。まさにファンタジー世界の武器だ。

 残念なのはこれがメイスってことだ。

 出来れば格好良い剣が良かったんだがな。


 でもすげえ武器を手に入れてしまったな。それに盾か、使わなかったけど。

 もしかして俺って国の英雄になれんじゃねえか。

 ああ、今のシーンを誰かに見せたい。会社の同僚に見せて「どうだ俺、凄いだろ」ってやりたい。


 生まれて29年経ったけど、パッとしない人生だったよ。

 30歳を目の前にして俺は人生の逆転の岐路に立ったのだ。


 ああ、泣きそう!


 そこで急に扉が開いた。


 これでここから抜けられると思ったんだが、俺はそこで躊躇ちゅうちょする。

 というのも、扉の外が地球だと良いのだけど、違う可能性もあるからな。しかし今の状況で、ここに残るという選択肢は無い。


 そして意を決して、俺は扉の外へ足を踏み出した。


 








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