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世界中が俺を狙ってる~地球がファンタジー化していくのだが、ずばり俺は救わない!~  作者: 犬尾剣聖
第二章 世界が変わり始めた

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27話 桜木さんとモフモフ








 

 子供の頃から空手をやってる桜木さんの攻撃は、やはり俺が太刀打ち出来るレベルじゃなかった。それに加えて、赤い石を使ったあの鈎爪武器とブーツだ。俺と桜木さんの間にコンテナがなければ、俺は防戦一方だった気がする。


 ただ今の俺はメイスの鎖を伸ばして、時々けん制してやるだけで良い。桜木さんを近付けさせなければ良いだけだ。俺の役割は時間稼ぎ。

 

 そして待っていた者が現れた。


「うるさくて眠れにゃいにゃん!」


 真っ先に部屋に入ってきたのは、フェリスだった。耳が良いフェリスが、最初にこの騒ぎに気が付くと思ってた。一人で無理して戦う必要なんて無い。

 獣耳と鼻をヒクヒク動かし、部屋の扉から顔をのぞかせる。


 そこへ鈎爪が襲う。


「ふんにゃあっ」


 それを叫び声を上げて、紙一重で避けた。


「それ、避けちゃうか〜!」


 避けられたことに驚きながらも、さらに攻撃を加える桜木さん。


「にゃにするにゃあっ」


 瞬発力はピカイチのフェリス。桜木さんが繰り出す鈎爪攻撃に空手技まで、猫の様にしなやかな体裁きで全て避ける。


 そこへ俺が飛び込んだ。


「俺の事、忘れんじゃねえ!」

 

 桜木さんの足元へメイスの鎖を伸ばす。

 さらにフェリスが頭部を狙って、少しだけ丸めた拳を振るった。猫パンチとも言う。


 桜木さんは両方とも避けるのは無理と判断したのか、俺の放ったメイスの方を避けてフェリスの攻撃は無視した。


 メイスから伸びた鉄球が、バキバキと音を立てて床にめり込む。

 桜木さんはジャンプしてそれを避けたのだ。

 その代わり……


 スパパパーン!


 良い音が鳴ったと思ったら、頭を抱えてその場にうずくまる桜木さん。フェリスの連続猫パンチが、桜木さんの頭にクリーンヒットしたのだ。


「痛いって〜」


 殺し合いをしていたとは思えない言い方。

 拍子抜けして、次の攻撃を出せない俺とフェリス。


 そこでやっとメイプルとグリムがやって来た。


「何事か!」

「こんな時間によお、バタバタうるせえんだよ」


 現れたは良いが、桜木さんは頭を抱えたまましゃがんでいる。「来るのが遅いんだよ」と言おうとして、桜木さんがニヤリとするのが見えた。

 しまった、この二人が来るのを待っていたのは俺だけじゃなかった!


「桜木さんに近付くな!」


 そう叫んだが遅かった。


 狙われたのはメイプル。

 低い姿勢からの回し蹴りが、メイプルの腹に決まった。

 「ゴフッ」と肺の空気を一気に吐き出し、くの字に身体が曲がる。

 

 慌ててグリムが助けに入る。


 そこへ三日月蹴り。


「ぐふっ」


 脇腹を押さえてうずくまるグリム。


 だがフェリスも黙っていない。


「にゃあ!」


 凄い早さで再びの連続猫パンチ。


 しかし突然その戦いが止まった。


「動いちゃ駄目だよ〜、動いたらメイプルちゃんがどうなってもしらないからね〜」


 メイプルが人質になったのだ。

 桜木さんはメイプルの背後にまわって、鈎爪を首に当てていた。

 堪らずフェリスが叫ぶ。


「ラムちゃんがにゃんで私達を襲うにゃん」


 その疑問に桜木さんがしっかり答えた。


「仕方無いのよね〜。いずれはこうなると思ってたし。私、異星人側の人間だから〜」


「にゃに? どういう事にゃん」


 そこで俺が説明する。


「そこのコンテナの中に異星人武器が入ってたのを俺が見つけてな、こうなったんだよ」


「本当に、本当にラムちゃんは異星人側にゃ? メイドカフェであんにゃに盛り上がってたにゃん。お互いの女子高生姿の写メ撮って大笑いしたにゃん。あれは全部ウソだったかにゃ!」


 こいつらならやってそう。光景が思い浮かぶな。

 すると桜木さん。


「私だってさ、やりたくてやってるんじゃないよっ。しょうがないじゃん、異星人の元で長い間育てられたんだからさ!」


 感情的になる桜木さん。その表情はもはや真剣そのもの。


 そこでグリムがやっと復活して話に入る。


「桜木さん、もしかして君は、過去に異星人にさらわれた人間の子供なのかな。異星人の元で生まれ育てられ、地球に送られたってところだろうか」


 桜木さんは視線を逸らしたまま何も言わない。恐らく今グリムが言った事が、少なからず間違ってないのかもしれない。


 桜木さんが無言だからか、さらにグリムが話を続ける。


「我々はそういう者達を助ける為に、結成されたパーティーなんだ。ここにいるフェリスも、アブダクトされてこんな身体になった一人だ。メイプルも異星人のせいで記憶が欠如している人物のひとり。この僕も異星人に襲われた過去を持つんだ。どうだろうか、君も我々のパーティーに入らないか」


 すると桜木さんは。


「ちょっと待ってよね。フェリスがアブダクトされたってどういう事よ」


 え?

 一目見れば分かるだろ。


「桜木さん、フェリスの獣耳なんだけど、一目見て分かるでしょ。それ、本物なんだけど……」


 俺がそう言うと桜木さん。そ〜とフェリスの頭に手を伸ばす。


「そんな訳無いでしょう〜が……って何これ、どういう事よっ。モフモフじゃない!」


「だから、本物なんだって。何で気が付かないかな〜、俺はそっちの方が不思議だぞ」


 桜木さんアワアワした状態で、フェリスの獣耳をフニャフニャ触り続ける。そこでフェリスが我慢できなくなったらしく。


「ふんにゃ〜っ、くすぐったいにゃ〜!」


 そう言って頭をブルブルさせた。


「ちょっと待ってよ、まだちゃんと触れてないから〜」


 桜木さんは武器を捨てて両手を自由にすると、指をわきわき動かしながら逃げるフェリスの頭を負い始めた。


「しつこいにゃ〜、勝手に触るにゃ〜」


「減るもんじゃないし〜、ちょっとぐらい良いじゃ〜ん」


 さっきまで殺し合いしてたよな?

 そこで俺は言葉を挟む。


「桜木さん、内緒だけどさ、フェリスの尻尾がまた凄いぞ」


 すると桜木さんは目を輝かせながら叫ぶ。


「し、尻尾もあるのっ。ラムちゃん、尻尾、隠さないで見せて〜。だから〜、隠さないでよ〜。お〜ね〜が〜い〜だ〜か〜ら〜、尻尾~、見せてよ〜」


 防戦一方となったフェリスが騒ぐ。


「こら〜、まとっち〜っ、余計な事を言うにゃ〜!」


 何かこの二人、見ようによってはエロことしてる様に見えるな。


「なあ桜木さん、その様子だともう戦いはしなくて良いんだよな」


 俺がそう言うと桜木さんは、フェリスの獣耳をモフりながら答えた。


「そ、そう言う感じだよね……わあモフモフだねえ~」


「ならさ、色々と聞きたいことがあるんだけど、聞いても良いよな」


 そこまで言うと桜木さんはフェリスを手放し、床に腰を下ろし深く息を吐いた後に言った。


「そだね、私が答えられる範囲なら良いよ、質問して」


 俺達も桜木さんの周りに腰を下ろす。全員が一息ついたところで俺が最初に話を切り出した。


「まずはスリーサイズから――フゴッ」


 女3人からの激しい突っ込みを浴びた。


「場を明るくしようとしただけだからな……え~っと、まずは桜木さんの今日までの流れから離してもらおうか」


 そこから桜木さんの壮絶な半生が語られた。











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