23話 天使教の支部を見つけた
二人も敵にしてしまった。形勢不利なのは間違い無し!
グリムは相変わらず「まあまあ」しか言わないし。そんなんじゃ静まらないぞ、これは!
と、まあ人のせいにするのも良くないが。
そこへ再び現れたのが店長だ。
「まぁた問題起こしたのかよ」
何か口調が変わってるんだけどな。
でもまた何とか誤魔化せるだろう。
「いや、何でもないから。じゃれ合ってーー」
そこまで言った所で、店長の様子が激戦してるのを感じ取ってしまった。
「ーーえっと〜、店長さん、そんな怖い顔しなくても大丈夫だって……」
そうは言ってみたんだが、その返答は凄まじかった。
「2度目はねぇ〜んだよ、2度目はよ。ちょいと裏へ来いや、おっさん」
お、おっさんだと?
まだ20代の独身男を捕まえてオッサン呼ばわり?
「おい、こら。誰がおっさんだと?」
つい、言い返してしまった。
すると店長事変勃発!
「てめぇしかいねぇだろ〜が、変な帽子被ったおっさん!」
何でこんなおっさんに、おっさん呼ばわりされなきゃいけないんだよ!
「わ〜た、おっさん店長、行ってやんよ。その裏って所によおっ。後悔すんじゃねえぞ、こら!」
グリムが「はぁ〜」と溜め息をつく中、桜木さんとフェリスは大興奮。
「キャハハハ、面白くなってきたじゃん!」
「どっちが本当のおっさんか対決にゃん!」
俺とグリムが店の奥へと案内され、最終的には薄暗い部屋に通された。
案内されたのは俺とグリムだけだった。桜木さんとフェリスは仕事中だからな。
「え〜、見たかったのに〜」とか「見たいにゃ〜」とか言いながら戻って行った。
それで案内されたその部屋だが、照明が一切無く、ロウソクの火だけが灯る部屋だった。部屋の中には祭壇のようなものが壁際にあるだけで、他には何も無い。
一言で表現するならば「不気味」である。
さすがに暗すぎて、サングラスは外した。
それで祭壇をよく見ると、そこには何かが祀られている。近くで見るとそれは石膏で作られた像だと分かる。
その像は羽の生えた女性と、その周囲に群がる使い魔を象っている。その使い魔が、どことなくゴブリンに似ている気がした。
それで分かった。
ゴブリンは空から来た事と、使い魔に似ている事から、この像とゴブリンが信仰対象と被ってやがるな。馬鹿な集団だな。
俺はくるりと振り返り、おっさん店長に言ってやった。
「お前ら天使教だよな。悪いがぶっ潰させてもらおう…………か」
だがおっさん店長一人ではなかった。
いつの間にかに4人に増えている。しかも全員が包丁を持っていた。
「さっきまでの威勢はどこいったんだ、ああん?」
そんな事をおっさん店長が、ニヤニヤしながら言ってきやがった。
メイスと盾はカバンの中だ。持って来てはいるけど、取り出す時間なんかくれないよな。
俺はカバンの中にそっと手を入れようとすると、おっさん店長が直ぐに怒鳴ってきた。
「おいっ、変な帽子のおっさん、動くんじゃねえよ!」
「だから俺はおっさんじゃ、ねえ!」
まあ、俺が動けなくてもこっちにはグリムがいる。神官服を着たグリムなら、普通に魔法が使える!
と期待してグリムを見るが、小声で返された。
「攻撃魔法は持ってないんですよ」
な、なんですと〜!
意外とピンチじゃね?
店長がなおも言葉を続ける。
「おら、つべこべ言ってないで、持ってるもん全部出すんだよ!」
強盗と変わらないじゃねえか。
だが、そこで救世主現る。
「も〜、うるさくて起きちゃったじやな〜い」
そう言って俺のバックから出て来る星。こいつバックに隠れて、付いて来てやがったか。
そして妹を見た天使教の4人だが、目玉が飛び出すんじゃないかと思うほど驚いている。
そしておっさん店長が恐る恐る話し出す。
「も、もしや、貴方様は天使様でしょうか……」
するとあっけらかんと返答する我が妹。
「そだよ」
ああ、バラしちまったよ。
しかし天使教達の反応は想像と違った。
「天使様だぞ、皆の者、頭が高い!」
「は、はは〜」
「天使様が降臨した、はは〜」
「はは〜」
天使教の4人は土下座状態となった。
しかし俺の妹が天使?
天使教だから天使崇拝なんだろうげど。
確かに妹本人も「天使になった」と言っていた。でも恐らくだが、こいつらが信仰する天使では無いとか思うぞ。星はファンタジー的な天使だと思う。神様とは全然違う妖精であって、逆に言えば神様であってたまるか!
だけどこれを利用しない手はない。
「おい、お前ら、ここに居られるのはキララ天使様だ。今はこの下界に、お忍びていらっしゃっているだけなんで、こんなちっちゃい姿である」
そこで星が口を挟む。
「だ〜か〜ら〜、ちっちゃい言うな」
「そう、キララ天使様をちっちゃい呼ばわりしたら許さん。それに活動の邪魔も駄目だ。キララ天使様は下界の視察に来ているだけだ。この店に来たのもその一環としてだ。決して邪魔してはいけない!」
そこまで言うとおっさん店長は、顔を伏せたまま言った。
「これは大変失礼しました。どうぞごゆっくりしていって下さい」
やっぱり凄まじい変わりようだ。
そう言えばこいつらに、聞きたい事があるんだよな。
「このビルの店ってお前らの店なのか?」
「はい、教団の所有するビルでございます」
それは良い事を聞いたな。
「なら、毎月の上がりをキララ天使様へ献上しろ」
「はい、分かりました!」
「そうだな、定期的にここへ取りに来るとしよう」
「はは〜、了解しました。いつでもお待ちしております」
すげ〜な、なんか急に偉くなってしまったな。それに、こんなビルを所有してるくらいだから、きっと大金を用意してくるだろうな。
俺がニヤニヤしていると妹。
「何か良く分からないけど、お兄ちゃん嬉しそう?」
すると店長が眉間にシワを寄せて言った。
「お兄ちゃん、ですか?」
あ、ヤバい!
兄妹関係だとバレると、誤魔化し切る自信が無い。
「ああ、そ、それは地上での設定だ。あまり気にするな……」
そう言い訳をしたのだが、店長はまだ俺のことを怪しがる目で見ている。
「では、貴方様と天使様のご関係はどういったものでしょうか」
「護衛だよ。それに地上の案内役でもある」
「そうですか。ところで私とどこかで会った事はありませんか。よろしければその帽子をとって、明るい所でお顔を見せて頂けませんか」
マズいな、サングラス外しちゃったのが悪かったのか。俺のことに気が付いたか?
そこで星が助け舟を出してくれた。
「この者は私の案内役、それ以上の何を知りたいの。あまり無礼はしないで欲しい」
しっかり口調もそれらしくしゃべっている。
それを聞いた店長と信者達は「はは〜」と言って、再び頭を深く下げるのだった。
ナイスフォローだよ、星!
俺がこっそり親指を立てると、星はウインクで返した。
「さて、天使様、そろそろ次の視察場所へ参りましょう」
そう言ってくれたのはグリムだ。
そうか。ボロが出る前に、この場は逃げるに限るな!
だが最後に俺は言う事がある。
「おい、先程の指名した者達だが、天使様がその二人を所望している。連れて行くが問題は無いな?」
あの二人から俺の素性がバレるのは避けたい。下手したらあの二人にまで、奴らの手がまわってしまうからな。
店長は頭を下げたまま「ご自由にどうぞ」と言ってくれた。
暗かった部屋を出ると、直ぐにサングラスを掛けるのを忘れない。顔バレしたくないからな。
そして適当な事を言って、桜木さんとフェリスをビルの外へと連れ出した。
連れ出した後の説明が大変だった。
フェリスは俺達の事を知っているから良いのだが、桜木さんはそんな事は全く知らない。
取り敢えず危ない宗教団体だからと言ったら、何とか納得してくれた。
しかしあれだな。
帰る前にさあ、せめて女子高生メイドの服を着替えるとか、出来なかったのかよ。
町中で注目の的じゃねえか!
おぢ達がエロい目で見てくるんだよな。
気持ちは分かる、分かるぞ!
けどさ、桜木さんとフェリスは全然平気っぽいけどな、意外と一緒にいるだけで俺は恥ずかしいんだぞ……
評価ポイントありがとうございます。
ブックマークもやっと4件まできました。
しかしながら思ったほど伸びませんでした。
残念。




