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世界中が俺を狙ってる~地球がファンタジー化していくのだが、ずばり俺は救わない!~  作者: 犬尾剣聖
第二章 世界が変わり始めた

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22話 戦慄のメイドカフェ








 メイド女子高生姿のフェリス何だが、中々に様になっている。違和感が全くない。あのプロポーションでJK姿とか、ちょっとずるいよな。ただ獣耳と尻尾が現実逃避しているが。

 グリム曰く、尻尾も本物らしい。普段は服の中に隠しているんだと。

 本物の獣耳に本物の尻尾とはな。これが世の中に知られたら、その手の嗜好男が世界中から殺到しそうだ。気を付けないとだな。だが今までバレなかったのが不思議で仕方ない。

 

 フェリスはメイドカフェの職場に、俺達が来る事を知らない。だから俺達のテーブルに来ても、直ぐに気付かずにいた。


「いらっしゃいませご主人……様、にゃん……」


 気が付いたようだ。さすがに帽子とサングラスだけでは、近くで見たら直ぐにバレるか。


 するとフェリスは、営業スマイルから急激に不機嫌モードになった。そこでこっちから声を掛けてやった。


「よお、元気に働いているか?」


「何でここにいるにゃ!」


 ちょっと怒ってるようだ。

 折角来てやったのに。


「客に向かってその態度は何だ。店長呼ぶぞ?」


 慌てて猫招きポーズをとるフェリス。 


「お、おかえりなさいませにゃん、ご、ご主人様にゃ……ご指名有り難う御座いますにゃん」


 笑顔が引きつってるな。

 まあ良いか。

 ネームプレートにはしっかり“にゃおみ”と書いてある。


「お勧めの料理は何があるのか言ってみろ、にゃおみ!」


「ぐぬぬぬ……お、お勧めは“女子高生パンケーキ”にゃっ」


「それじゃ、それひとつと……こ、これも貰おうか」


 俺が指差したのは定番のオムライスだ。メニューには“JKオムライスだぴょん”と書いてある。恥ずかしくて言えなかった。

 するとフェリスが勝ち誇った顔で言った。


「ご主人様にゃ、ちゃんとメニュー名で言ってもらわないと、分からにゃいにゃん」


 フェリスが腰に手を当てニヤニヤしてやがる。

 良いよ、言ってやんよ!


「女子高生オムライスだぴ、ぴょんをくれ!」


 言い切ったつもりがちょっとだけ噛んだ。するとフェリスがいやらしい笑みを浮かべる。


「ブッブー、違いますにゃ〜。JKオムライスだぴょんが正解ですにゃ〜。JKにゃよJK。にゃはははっ」


 ああ〜マジウザい。

 にゃおみのクセに生意気だ。

 

「おいっ、ちょっと乳がデカいからって、デカい顔すんじゃねえぞ!」


 そう言って立ち上がると、フェリスも負けずに言い返す。


「デカい乳は関係にゃいにゃっ。悔しかったら真似してみろにゃ!」


 そう言って胸を張るフェリス。


「これでどうだ!」


 俺も胸を張る。


「……」


「……」


 睨み合う二人。


 何やってんだ俺?


 口喧嘩してる俺が言うのもなんだが、子供の喧嘩より酷い気がする……


 するとグリムが「まあまあ」と言ってなだめてきた。

 しかし今更後には引けない。

 俺は胸を張って前に出る。

 するとフェリスも負けじと胸を前に突き出す。


 そんな俺とフェリスが胸を突き出し合う中、奥から蝶ネクタイの男が出て来た。


「お客様、どうなさいましたか。何か不都合でもお有りでしょうか」


 蝶ネクタイ男が揉み手をしながら、俺達に近付いて来る。

 するとフェリス。


「あ、店長にゃ!」


 この男が店長らしいのだが……何だが違和感があるというか、気に食わない。


「いや、特に問題は無い。ちょっとじゃれ合ってただけだよ」


 俺がそう言うと店長は、フェリスの方を向いて尋ねた。


「そうなのかい?」


「え〜と、そうにゃ。遊んでただけにゃん」


 フェリスも話を合わせてくれた。

 すると店長は「こゆっくり」と言って、店の奥へと去って行く。

 

 やはりあの店長と呼ばれている男、どうにも怪しく感じてしまう。何故だろう?


 そんな事を考えていたら、注文した“女子高生パンケーキ”が運ばれて来た。

 思ったよりもデカい。

 パンケーキと言うよりも、普通のスポンジケーキに近い。

 そこでフェリスが生クリームを手に持ち、何かやってくれるらしい。


「今から文字を書き込むにゃ」


 そう言って、生チョコクリームのチューブを両手で握り締めるフェリス。

 そしてケーキの上に、生チョコクリームで文字を書き始めた。

 「Love」と書きたいらしいのだが、どうにもフェリスは不器用らしく、手が震えて文字が歪んでいる。


 思わず「下手くそだよなぁ」と漏らしてしまった。


「ふんにゃあぁぁっ!!」


 キレた!

 

 生チョコクリームを思いっきり握り締め、ケーキの上にブチューとブチまけやがった。

 そしてフェリスの殺気だった声での一言。


「ラブ注入にゃっ!」

 

 愛のカケラもない。

 でも、食べられ無くはない。


「ちょっとナイフで切り分けてくれるか」


 俺がそう言うと、フェリスは「ケーキナイフお願いしま〜す」と声を上げた。

 すると奥から先程の蝶ネクタイ店長が、ケーキ用のナイフを持って現れた。

 そのナイフ姿を見て思い出した。


 こいつは前に俺を襲って来た、新興宗教のメンバーの一人じゃん!

 確か「天使教」とか言ったか。

 包丁を持って襲って来た奴らの中に、こいつが居たのを覚えている。今はケーキナイフだが、あの時は包丁を持っていた。幸いな事に巧みな俺の変装〈夢のランドの犬帽子にサングラス〉のおかげで、まだこちらには気が付いて無いようだ。

 こんな奴がいる所でフェリスを働かせるのは、ちょいと気が引ける。それに他にもまだ、天使教の信者が働いているかもしれない。


 店長は俺に気が付いた素振りも無く、ケーキにナイフを入れる。

 俺を襲って来た時とは、全然違う表情をしてやがる。ニコニコと善人振りやがって。


「は〜い、4等分しました。どうですか、お客様はお二人なんで、もう1人女の子をご指名しては如何でしょうか。ちょうど良い子が入ったばかりなんですよ」


「いや、指名とかは……」


 俺の言葉など、はなっから聞く気はないようだ。勝手に女の子を呼びやがった。


「ラム〜、ちょっとおいで〜」


 ラム?


 そして店長は呼ぶだけ呼んで、さっさと店の奥へと退散。


 そしてラムと呼ばれた女。それは奴だった。


「ラムで〜すっ、よろしくおなしゃ〜す!」


 だがそいつは、女子高生というにはちと苦しい年齢。どう見ても20歳は超えているようにしか見えない。っていうか、俺はこの女が実年齢24歳だと知っている。そんな女が女子高生の姿だ。しかも、やけにスカート丈が短いしヘソは出てるし、そしてこいつも無駄にスタイルが良い。


「風俗嬢?」


 思いが口に出た。


「はあ?」


 俺の前に出て来た女、それは桜木さくらぎ蘭夢らむだった。俺の会社の同僚のギャル女である。

 もう絶滅したと思われる、ギャルファッションの女だ。そいつが女子高生の姿……


 勘弁してくれと言いたい。


「ラムってそのままの名前かよ……」


 俺がそう言うと。


「あれ? そのえない風貌ふうぼう、どっかで会いましたっけぇ」

 

 一言多いな。


「べ、別に俺は知らないけどなあ」


 一応とぼけて見せる。


「ああ、その声〜、せん君じゃ〜ん。うっわ〜、マジでないわ〜、何でここにいるのよ〜」


 やっぱりバレたか。

 しかし嫌な奴にあっちまったな。よりによって天使教の信者がいるメイドカフェで、しかも味方のフェリスが働き始めた職場とか、話が入り組み過ぎて訳分からんぞ。


 そしてこのタイミングで、“JKオムライスだぴょん”が運ばれて来た。

 すると桜木さん。


「あらま、せん君凄いの注文したんだね〜。それ私に任せてよ、得意だからさっ」


 そう言って、俺達の許可も取らずにケチャップを握り締める。そして得意げに文字を書き始めた。


 それを見た俺は自然と口が動いた。


「何て書いてあるか読めねえ〜」


 桜木事変勃発。


「ええ〜、ひっど〜い。さっきからさあ、風俗嬢とか言ってくるし〜、せん君ちょっと酷くなあい?」

 

 しまった、またもつい本音が出ちまった。










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