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世界中が俺を狙ってる~地球がファンタジー化していくのだが、ずばり俺は救わない!~  作者: 犬尾剣聖
第一章 異星人襲来とその代償

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17話 真実を知る事









 ゴブリンどもが持つ武器には、全て石がめ込まれている。つまり魔法武器。

 そんなゴブリンども100体はいるだろうか。

 俺達の周囲を取り囲んでいる。


 これには俺も余裕など見せている場合ではない。盾を構えメイスを振り回す。

 この数を相手だと、近付けさせない様にするので精一杯だ。

 俺1人なら何とかなりそうだが、妹を守りながらだと行動に制限がかかる。そうなると、とても逃げ切れそうにない。


 幸いな事にゴブリンの武器でも、この盾なら弾き返している。ただ、俺の体力が持ちそうにない。

 かなりのゴブリンを消滅させたんだが、集まって来る数の方が多く、俺の周囲のゴブリン数は増えていく。


「お兄ちゃん、頑張って!」


 そう言われてもな、俺にも限界ってもんがあるんだよ。

 もう100体は倒したはずだ。

 でも減ってない!


 呼吸はゼェゼェ、肩で息してる。

 両手の筋肉はパンパン。


 もう無理……


 心が折れそうになったのだがーー



 斜面の向こう側で何かが暴れている音が聞こえた。

 人の声?

 ゴブリンの悲鳴?

 

 それが段々と近付いて来る。


「じゃまにゃ〜、そこどくにゃん!」

「オラオラオラ〜、道を、開けろってんだよ」

「ヒール」


 聞き覚えのある声に、特徴のあるしゃべり方。


「ファンタジーパーティーじゃねえか!」


 俺がそう叫ぶと直ぐに返答がきた。


「“新人類”がパーティー名ですよっ」


 とはグリムの言葉。


「まさか、助けに来てくれたのかよ」


「当たり前ですよ。僕達は仲間ですからね」


 これはとんだ借りを作っちまったな。

 だが正直助かった。


「悪いな、助かった!」


「問題ないにゃん!」


 にゃんにゃん言いながら、ゴブリンを倒していくフェリス。その両手にはコンバットナイフが握られている。


「まとっちはよ、もっと筋力を付けた方が良いんじゃねえのか」


 そう言いながらゴブリンを弓矢で射止めていくのは、緑色の髪のエルフ、メイプルだ。


 そして負傷すれば直ぐに治癒してくれるのは、おっさんに見える金髪のグリム。

 彼の武器は俺と同じメイス。実にクレリックっぽい。


 だがそのグリムなんだが、俺を見る目が前と違う。いぶかしげにこちらを見ている、といったら良いだろうか。


 俺は少し休みを取りながら、グリムに声を掛けた。


「何だよ、どうかしたのか?」


「いや、すいませんね。そっちの事ですよ」


 そう言ってアゴで指し示す。

 俺の後ろに隠れる妹の事だ。


 そうか、紹介しなきゃいけないな。


「悪いな、詳しくは後で話すよ。ますはここから逃げ出さないとな」


 するとグリム。


「君がそう言うなら僕は構わないが……」


 何か言いたそうだか、それはまた後で良いか。


 俺は大きく深呼吸を2回。

 そしてメイスを持つ腕を回転させていく。

 遠心力が付いてくると、鎖がガシャガシャと音を立てて伸びる。

 

「皆、悪いが頭を低くしてくれ!」


 俺の言葉に皆がしゃがみ込む。

 そこで俺は回転をもう一段階上げた。

 すると鎖の先に付いた鉄球が、さらに遠くへと伸びていく。さらに……


「何だ、鉄球が大きくなったのか?」


 見間違いじゃなければ、鉄球が二回りほど大きくなった。でも今は確認どころじゃない。

 そのままゴブリンの集団に向けて投げ放った。


 目を疑う程の威力だった。


 何故か鉄球がバチバチと音を立て飛んでいく。そう、まるで線香花火が火花を飛ばすようにだ。

 そしてゴブリンの集団に鉄球が入り込んだ瞬間、ゴブリンを吹っ飛ばすのはもちろんのこと、さらには火花がゴブリン達を焼き尽くす。


 俺達を取り囲んで攻勢に出ていたゴブリンどもだったが、今度は悲鳴を上げながら逃げ惑う。

 “新人類”の3人は、立ち止まって茫然ぼうぜんとそれを見守った。

 

 しばらくすると俺達の周囲には、誰も居なくなった。居ないと言うよりも、近寄らなくなったと言うべきか。

 かなり遠くからゴブリンどもが、俺達を見ているだけだ。


 そこでグリムが俺の方を見て言った。


「何ですか、今のは。全然聞いてませんが」


 そんな事を言われても困る。何なのか俺が聞きたい。とにかくゴブリンどもは遠ざけたから、逃げるなら今だ。


「それより逃げた方がよくね?」


「そうですね、逃げましょうか」


 俺達は逃走に入った。

 初めはゴブリンどもが追っかけて来たが、しばらくすると追尾も無くなった。

 何でも、グリムが幻影の魔法を掛けたからなんだと。ただし条件があるとか無いとか。そんな魔法も出来るんだな、この人。

 そしてまたも隠れ家に行くと言う。一応、俺の自宅や会社がバレたから、隠れ家もバレたかもと言ったんだが、あの隠れ家には幻影魔法を定期的に掛けているから大丈夫だと言う。


 そして隠れ家のマンションに到着したんだが、直ぐにグリムが真剣な表情で言ってきた。


「さて、疲れているとこ悪いのですが、全員リビングに集まって頂けすか」


 何があるのだろうか。


 俺達はリビングに集まりワイワイやっていると、グリムがワンドを持って皆の前に現れた。


「それではまとっちさん、説明をお願いします」


 いきなり振られたのだが、何の事か分からない。


「ちょっと待ってくれるかな。色々あり過ぎて、どの説明なのか俺には判断できないんだけど」


 するとグリムは妹を指差して言った。


「そのゴーストのことですよ」


 妹を差してゴースト?

 ゴーストってレイスとかと同じ幽霊の事だよな?

 意味が分からないぞ。


「こいつはゴーストとかじゃなくて、俺の妹のキララって言うんだ。すまんね、ワチャワチャしてて紹介が遅れちまったな」


「そうですか、妹でしたか……それは何というか、残念でなりませんね」


 何を言ってるんだ?


 そこでメイプルが口を挟んだ。


「えっとさ、さっきから二人してさ、何を言ってるんだよ。あたい達にもわかる様に説明しろよ」 


 フェリスも「そうにゃ、そうにゃ」とうなずいている。


 そこでグリムが大きくため息をついた後、重そうに口を開いた。


「そこにいるキララとかいう娘、もうこの世にはおりません。ストレートに言えば、既に亡くなっています」


 俺はグリムが何を言ったか、直ぐに理解出来なかった。反論さえ口に出来ないほど、頭の中が混乱する。


 そこでメイプル。


「はぁ? あたいにはそんな子、全然見えないぜ?」


 フェリスも同じ様な事を口にする。


「まとっちの側に立ってるんだよにゃ。私には全然見えにゃいにゃ」


「2人ともキララの姿が見えてないだと。今、ここにキョトンとして立ってるだろ。悪ふざけはよせ」


 そこで再びグリムのダメ押し。


「信じられないとは思いますが、僕は神官の服を着ているので分かるんですよ。その子は既に死んでいます。霊力を持たない者が見えないのは当然です」


 俺は妹の顔を見る。


 キララは首を傾げて困った顔で言った。


「お兄ちゃん、私って死んでるの?」


「何を言ってんだ。そんなはずないだろ。その証拠に、今ここにいるじゃないか」


 そう言いながらも、機動隊との戦闘を思い出す。妹は人質になったはず……

 いや、思い返せばそんな事は一言も言って無かった。補佐官が車から指差した先には妹もいたが、機動隊を指差しただけだったのか。その場に妹がいなくても話は通る。

 逆にそうだったら話は簡単。補佐官は機動隊で俺を脅したに過ぎなかったのか。

 つまり補佐官や機動隊には、妹が見えてなかったんだ。なんてこった……キララは既に……死んでいるのか……


 そこでグリム。


「ターンアンデッドの魔法を行使すれば、霊体ならば消滅しますが、どう致しますか?」


 その問いに、俺は答えられなかった。

 もしグリムの言う事が本当なら、妹は消えて無くなる事になる。


「なんてこった……俺は、俺はどうすれば良いんだよ……」


 目頭が熱くなる。








ブックマーク3件に増えました。ありがとうございます!

引き続きポイントお待ちしています!



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