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1話 謎の立方体現る







 間藤閃輝まとうせんき、29歳、独身。

 小さな会社のサラリーマン。街はずれのボロアパートで暮らす冴えない男。

 どこにでもいる、パットしないモブである。

 いつもの変わりばえのしない朝、自宅のアパートの部屋で出勤前にテレビを付けたまま朝食を食べている時だった。


『ーー番組の途中ですが、緊急速報が入りました』

 

 その緊急放送という言葉に釣られてテレビ画面を見ると、どこかの街から中継された映像が流れていた。

 その画像を見て俺は画面に釘付けになる。

 

 空に変な物体が浮かんでいたからだ。

 

「何でニュース番組にこんなフェイク動画が……」


 いつも見ているアナウンサーが、その映像を流しながら解説している。


「これはフェイク動画や映画の宣伝ではありません。これはたった今、実際に起こっている出来事を映しています。繰り返しますこれはーー」

 

 画面には首都である東京が映されており、その上空に巨大な物体が浮かんでいる。

 俗に言うUFOというやつだ。最近ではUAPって言うらしい。


 でもテレビの特番やネットで見る円盤型UFOとは、形がまるで違った。

 恐ろしく巨大な立方体なのだ。

 数キロはありそうな大きさだ。


 しかし形はどうあれ、空に浮かんでいることに変わりはない。

 少なくとも地球製のものではないことくらいはひと目で分かる。これほど巨大な空飛ぶ物体を地球人が造れるはずが無い。


 仕事に行く時間などそっちのけで、俺はテレビ画面を食い入る様に見つめた。

 ふと思い、チャンネルを変えてみる。

 すると、どのチャンネルも空中に浮かぶ物体の映像ばかりで、混乱しながらも番組を続けている。

 俺はテーブルに置いてあるスマホを慌てて手に取る。

 スマホで検索すると、大量の動画がヒットした。どれも巨大UFOのものだ。

 取り敢えず俺はテレビの映像に集中する。


 しばらくするとその立方体から、多数の小さな球体がいくつも出て来た。多分だが直径が2~3メートルの黒っぽい丸い物体。

 アナウンサーは驚きを隠せない様子だが、プロ根性で解説は続けている。


 その小型球体のひとつを見ていると、物凄い速さで下降して行ったと思ったら、地上スレスレでピタリと止まった。それは交差点の真ん中だ。着陸した様に見える。

 不思議な事に、朝の渋滞で車が多数ある交差点に止まった。着陸というか、少しだけ浮いているように見える。

 多分だが、地上から数メートルとかの空中静止なんだろうと思う。完全には着陸していない様に見える。

 テレビ映像だとちょっと分かりづらいが、そうしないと車が邪魔で着陸出来ないはず。

 他の球体も次々に着陸していく。

 それは公園だったり、ビルの屋上だったりと、あらゆる所に着陸した。

 そして突然、球体の扉らしきものが開いた。

 アナウンサーは大興奮だ。


「あぁっ、球体の扉が開きました。中から何か出てきます。大変な事が起こっています。これは異星人なのでしょうか。これが人類初の、宇宙人との接触となるのでしょうか!」


 中から出てきたのは、緑色の小人のようなヒューマノイド。それも十数体だ。

 画面がそのヒューマノイドをアップで捉える。

 身長はかなり低く、人間の子供くらいだろうか。腕や足も細い。

 昔話題になったグレイという宇宙人っぽい。ただ灰色ではなくて緑色だ。

 手には地球での中世の頃の槍や剣に盾といった、乗って来た乗り物とは似つかわしくない武器を持っていた。


 それに肌が剥き出しの様に見える。剥き出しの肌、つまり緑色。

 革鎧っぽいものを着てはいるが、全ての肌を被っている訳では無い。

 これはあれだ、アニメとかで見る、ゴブリンって奴じゃないのか?

 まさか、このゴブリンが宇宙人なのか!?


 問題はそこからだった。

 多数の球体から降り立った緑色のヒューマノイド、もうゴブリンで良いか。

 そのゴブリン達が地上に降り立つと、球体は母船である立方体へと帰って行く。



 ―――そして残されたゴブリン達は、手当り次第に人々を襲い始めた

  


「た、大変です。球体から出て来た異星人が、人を襲っています。皆さん、直ぐに避難して下さい。撮影より命を優先して下さいっ」


 解説しながら、アナウンサーの顔が青ざめてきた。

 テレビ画面の中で、ゴブリンが槍で人を刺すのが映ってしまい、直ぐにスタジオに画面が切り替わる。


 しかし俺はしっかりと見てしまった。ゴブリンの槍の一部分が光り輝いたのを。

 きっと未知のテクノロジーに違いないと俺は確信した。

 単なる槍や剣ではなく、未知のテクノロジーで作られた武器なんだろう。


 そこからテレビのチャンネルを変えてみたが、どのチャンネルも現地の映像を映さなくなった。人が殺されているからだろう。


 まさかと思い、俺はアパートの窓から顔を出した。


「嘘だろ……」


 俺の住む街にも、あの球体が着陸し始めていた。

 そこで俺は空を見上げた。

 すると空高くには、やはり巨大な立方体が浮かんでいた。

 

 この流れって、地球が異星人に侵略されるやつじゃねえか。

 いや違う、ゴブリンに侵略されるんだ。


 気が付けば、近くの建物の窓から外を見ている人が多数いる。

 その誰もが襲われる人を指さして、何かをわめいていた。

 中には真っ青な顔をして、自家用車に荷物を積み込んでいる人までいる。どこかに逃げようとしているらしい。

 でもどこへ逃げるの?

 やっぱり、人里離れた山奥か。

 

 そうだ、それより我が国には、陸上自衛隊があるし海上自衛隊もある。きっと蹴散らしてくれるはず。

 それに警察がいる。

 警察機動隊がいる。

 それに警察官なら拳銃を所持している。拳銃ならば、あの光り輝く武器にも勝てるんじゃないだろうか。


 だかそれは甘かった……


 俺のアパートの横で警察官が、ゴブリン達に袋叩きに合っているのを見てしまったからだ。

 その警察官は拳銃を一発だけ警告射撃したんだが、その直後に多数のゴブリンに突撃されてボコボコだった。

 警告射撃とか、いらんだろう。最初から急所を狙えよ。ゴブリンに法律は無効だと思うぞ。

 真面目過ぎる日本警察も問題だな。


 そして何も知らずに通りを歩く人々を、ゴブリンは襲いまくっていく。

 建物があれば次々に入り込んで、住んでいる人を襲いまくる。

 数分もすると、あちこちから悲鳴や助けを求める声が響き始めた。

 町中がパニック状態となるのに、大して時間は掛からなかった。


 そこで俺は、自分の身体の異状に気が付いた。

 身体中が小刻みに振動している。

 いや、違う。

 俺は震えていたらしい。

 両手を開くと指が震えている。

 足を見るとガクガクしっぱなしだった。


 小説や映画の中の出来事が、実際に目の前で起こっている。目の前で人が襲われている事実に、俺は体感した事がない程の恐怖を感じていたのだ。

 気持ち的には冷静だと思ってたが、そんなことは無かった様だ。


 ここは冷静になろう。

 まずは落ち着け俺。

 

 大きく深呼吸。


 そて、俺はどうしたら良いだろうか。この後の行動に悩む。


 スマホ、そうだスマホで情報を……


 お、重い。

 皆が一斉にネットに繋げたからか、まともに繋がらない。直ぐに固まる。

 電話も同様だ。

 混み合っているとかの、アナウンスが流れる。

 完全に連絡方法は遮断された。


 ヤバい、会社に遅刻する……











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