ケロベロスの飼う利点
ケルベロスを飼う利点
ケルベロスは偏見を受けていると私は考えている。今日もだ。今日も河川敷で散歩していたら周りの奴らは悲鳴を上げたり、コソコソ「怖い」だの「危ない」だの言って私の愛犬を馬鹿にする。
まったく嘆かわしい。
本物のケルベロスは危ないだろうがお前らは知らんのか。このペットケルベルスは本物のケルベルスからとったDNAを元に作り上げた品種改良の犬だぞ。そもそも本物のケルベルスなんて飼える訳ないだろ10メートルはあるのに。
大きさだってライオンよりは一回り小さいし、全国のペットケルベルスが起こした事件も、今年は10件と去年より2件も少ない。しかも今年は死傷事件もまだ起きていない。
それに今法案でペットケルベルスを飼う事を禁止する法案が出ているがまだ可決されていないだろう。
ニュースでは法案はほぼ100%可決されるというが、それは恐らく猫派の陰謀だ。まったく嘆かわしい。私のケルちゃんの餌にしてやりたいぐらいだ。
それになんだ、最近はケルベロスを飼っている人は怖い人が多いとか言いやがって。偏見も酷いぞ。仮釈放が終わったらそんな輩みんなぶん殴ってやる。
ペットケルベルス以下『ケルベルス』はとてもペット向きな動物だというのになぜみんな分からないのか。飼っている人間にしか恐らくわからんのだろう。
そんな事を考えていると動物好きな子供なのだろう小さな子供が
「わー、ワンちゃんだ!」
と近づいてきた。
「いかん!触ってはだめだ!」
私が大きな声を出したからだろう、急いで母親のもとに行き。母親もこちらを一瞥するとそそくさとどこかに行ってしまった。
危ない、危ない。ケルベロスは基本子供の指はソーセージぐらいの感覚でいるからな。まったくいつも神経を張らなければならなくて困るよ。
大声を上げたせいか喉が渇き近くの自販機で飲み物を買うことにした。
(あの子供。ケルちゃんを嫌いにならないと言いが)
子供の怖がっている顔を思い出す。私のせいでケルベロスが嫌いになってしまった可能性もあるが、ケルベロスを飼うことはとても大きな利点があることを子供には知って欲しい。
財布を取り出し探していると数人の男に囲まれた。
「おいおっさん、金出せよ」
そのうちの一人はナイフを持っており、他の連中もどうやら何か武器を持っていそうな様子だった。ふとケルちゃんの方を向くと。
背中を地面にこすりながらお腹を見せ、服従のポーズをしていた。そう、ケルベルスは危機察知能力が高い。そのため相手が自分より弱そうでも、怪我する可能性があると判断するとすぐに媚びを売ったり逃走する。無論主人がピンチでも。
「あ…すみません。これしか持ってなくて」
多勢に無勢。もしやり合っても俺はただで済みそうもないので大人しく財布を渡す。不良共は
「ありがとおっさん!」
と、軽やかに財布を取って去っていった。
「おい、少しは吠えたりしろよ」
流石に苦言を言うが。無視して顔を合わさない。基本的にケルベロスは人に懐かないのだ。
なんだか、どっと疲れ帰ることにした。
「おい、帰るぞ」
帰ろうとすると逆方向に行こうとし始めた。まだ帰りたくないのは分かるが、さすがに今はいう事を聞いてほしい。
リールを引っ張ろうとするがものすごい力で進もうとする。こんな力があれば不良共に使えよと思うが仕方ない。こんな犬でもペットはペット。それにケルベルスを飼うことはいいことも多くある。
「今日の飯、ステーキにするからよ」
そういうと急に力を抜き、ゆっくりと変える方向に歩き始めてくれた。ケルベロスはとても頭がいい。話せないが人語は理解できる。しかし基本的に言う事は聞かないためもので釣るしかないのだ。
ただでさえ食費が人間以上あるのに、いちいち何かするとき物で釣らなければならないので、金がかかって仕方ない。
やっとの事家に帰りケルちゃんの餌の用意をする。俺の飯より豪華な献立で腹が立つが仕方ない。それを補えるほどの利点があるからだ。
ケルちゃんは食事を済ますと、歯が気になるのか椅子の足を噛み始めた。噛まれた椅子の足は簡単に砕け欠片が部屋を汚す。北欧の高い椅子だったのに。
これで今月3つ目だ。ケルベルスは後先考えずに物をすぐ間で壊してしまう、これは個体差などなく皆そうだ。内に眠る破壊衝動がそうさせるのだろう。おかげで俺はいつも金欠だ。
だがそれでも俺はケルベルスを飼う事をお勧めしたい。他の犬にはない良さがあるのだ。
ケルちゃんはペット用のトイレに向かってフンをし始めた。ここだ!この時がケルベロスを飼う最大の利点なのだ!
ケルベロスのフンは!
全く匂わない!!!!
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